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ss
 
 「ウフフ・・・わて、もしかしなくても天才でっしゃろか!?」
 テーブルの上に広げられた写真を一枚手に取って眺めながら、男はニヤニヤと笑っていた。
 「ほんま、よう撮れてますなァ・・・。特にっ、この角度のシンタローはん、ナイスショットどすえ~!!」
 彼は、ペタリ、と写真をアルバムに貼った。
 (それにしても、わてのシンタローはんコレクション、充実してきましたナ!どれもこれも命懸けの逸品ばかりどす)
 テーブルの上の写真に視線を移し、彼は、腕を組んで何事か考え始めた。


 久々にガンマ団に帰還したマーカーが廊下を歩いていると、よく見知った気配が30メートル程先の方角にあった。どうやら、角の所で待ち伏せしているらしい。
 マーカーは、青龍刀の柄に手を掛けた。
 「お師匠はーん!、お、お久し」
 目に見えないぐらいの速さで飛んだ青龍刀は、どうにか避けたアラシヤマの髪を数本切り落とし、鈍い音を立てて後ろの壁に突き刺さった。
 「外したか・・・」
 舌打ちをすると、マーカーは笑顔で固まっているアラシヤマの横を通り過ぎ、壁に刺さっている刀を片手で引き抜いて鞘に収めた。
 「何の用だ?」
 「し、師匠ッツ・・・!久しぶりに会うた愛弟子に、随分なご挨拶ちゃいますの??」
 「おまえの様な馬鹿を弟子に持った覚えはない」
 「あっ、今ものすごく冷静にキッパリと言わはりましたナ!?相変わらず、コミュニケーションが苦手なお方どす・・・」
 俯いて、アラシヤマは小声でブツブツと呟いていたが、顔を上げ、
 「ま、それはともかく、今から少しお時間いただけます?ちょっとお師匠はんに見てもらいたいもんがありまして・・・」
 と言った。


 自動販売機や椅子などが置いてある休憩スペースに2人が入っていくと、そこに居たガンマ団員たちはギョッとした顔をし、自然な態度を装ってそそくさと出て行った。巻き添えをくって怪我でもしたらたまらない、というのがその場にいた団員達全員の胸中であったかもしれない。
 「師匠、缶コーヒーか何か飲みはります?」
 「いらん。さっさと用件を言え」
 「へぇ、ほな早速本題なんどすが・・・」
 椅子に座ったアラシヤマは、先ほどから大切そうに持っていた風呂敷包みをテーブルの上に置いた。そして風呂敷包みを解くと、『My Prince☆シンタローはんv⑲』と表紙に書かれたアルバムが出てきた。
 「まぁ、見ておくんなはれッツ!」
 何やら頬を染めてモジモジしている。マーカーは、そんな気持悪い弟子の姿を見ているのも嫌だったので、アルバムを開くと、どれもこれも新総帥の写真ばかり、であった。
 (盗撮、か?倫理的にどうのこうのと言うつもりはないが・・・)
 「お師匠はん、よう撮れてますやろ??シンタローはんの格好よさも可愛さも、あますことなく激写どすえー!!・・・ほんまやったら個展を開きたいぐらいなんやけど、わてのシンタローはんを狙う不埒者が今以上に増えても困りますしナ・・・」
 得々と喋っていたアラシヤマは急に言葉を切ると、警戒したように辺りを見回した。しかし、団員たちは先程皆出て行ったので、彼とマーカー以外、部屋には誰もいなかった。
 「勿論、新総帥の了承はとれているんだろうな?」
 「―――師匠がそないに野暮なことを言わはる人や思いまへんでしたわ・・・」
 嬉しさ一転、アラシヤマは、恨みがましそうにマーカーを見た。
 その瞬間、マーカーによってアルバムは炎に包まれたはずであったが、少し表面がごくごく薄い茶色に変色しただけであった。
 「あーッツ、わてのパワーが~!って、今回は大丈夫なんどすvvv師匠驚かはりました??実はコレ、最新の耐火・防水加工なんどすえ~!!」
 アラシヤマが嬉しそうにそう言った瞬間、
 「蛇炎流ッツ!!」
 彼自身が炎に包まれて、黒焦げになった。
 「―――まぁ、よく撮れている、と言えなくもない」
 マーカーは立ち上がると、休憩室を後にした。


 特戦の仲間達が集まっておそらく酒盛りをしているであろうロッドの部屋に行こうとすると、先程話題の人物であったシンタローが向こうからやってきた。
 特に今まで彼に対して興味もなかったが、自分を見つけたシンタローが一瞬だけ嫌そうな顔をしたのが気にかかった。
 「こんにちは、新総帥」
 と、マーカーが声をかけると、彼の目が丸くなった。
 「ああ」
 返事はしたものの言葉が続かない。立ち止まり、子どものように目を丸くしたまま、マーカーを見ていた。
 (新総帥は、特戦部隊にあまりよい感情をお持ちではないからな・・・)
 無理もない、とマーカーは思ったが、反面、素直な表情を浮かべる彼を面白いとも思った。
 「嫌な相手かもしれませんが、挨拶ぐらいでそれほどまで驚かれなくても。別に貴方をとって食ったりはしませんよ?」
 相手が年長者であることを思い出したのか、シンタローはバツの悪そうな顔になった。
 「悪ィ。アンタを見ると、ついアラシヤマを思い出しちまって。俺、そんなに嫌そうな顔をしてたか?」
 (―――私とあの馬鹿弟子ごときを一緒くたにしていただとッツ・・・!?)
 「お気になさらず。では、またお会いしましょう。シンタロー様」
 少し片頬を吊り上げて笑い、一礼すると、マーカーは去っていった。
 シンタローもそのまま総帥室に向かって足を進めたが、
 (何だ?最後らへん、ものすごく不機嫌そうだったよナ・・・?)
 マーカーの一癖も二癖もありそうな笑みを思い浮かべると、シンタロー自身理由は分からなかったが、何故か背筋に悪寒が走った。









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