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ks*
そっと足音を立てぬように廊下に敷き詰められた絨毯を歩く。
商談先の国に招待されキンタローと来たのはいいものの、毎夜のような夜会とつまらない視察にシンタローは辟易していた。
昼は総帥服でなくガンマ団色を廃して地味目のスーツを、夜はというときっちりとした礼服での毎日に疲れきっている。
そんな折に昔馴染みの仲間が補給ついでに近くまで来たのはシンタローにとって僥倖だった。
軽くて口当たりのよい飲み物を会話の端々に口をつけるのもよいが、やっぱり酒は気の合うヤツと自分のペースで飲む方がいい。
幸いなことに今回はキンタローと別々の部屋だった。
壁に耳を当ててアイツがシャワーを浴びているのを確認してから、こっそりと部屋を抜け出すことにした。
どうせ、アイツのことだ。俺がとっくに寝ていると思って部屋に電話をかけることもないと思う。
今朝だって昨日の夜会で睡眠時間が削られたのを心配していたから俺の部屋に訪ねるわけがない。
アイツだって疲れてるし、そのまま寝ちまうだろう。

(バレねえよな……たぶん)

総帥服じゃねえし、とシンタローは己の格好を見て笑った。
念のため、アラシヤマから勝手にSP専用の黒いスーツを取り上げて着ている。
親友の頼み、を口にすると快く貸してくれた。
勿論、寄ると触ると煩い自称親友はここにはいない。
なんとか丸め込んで飲ませた睡眠薬入りのジュースで今頃はベッドの中だ。
万が一、起きたとしても、あるいはキンタローに気づかれても犬猿の中ゆえに俺の不在はばれないだろう。

(いい夢見ろよ。キンタロー)

夜目にもはっきりと分かるホテルのひかりを見ながらシンタローはタクシーを捕まえた。



このときはバレやしないと思って勝手に飛び出して行ったのだ。
キンタローに言えば勝手なことをするなと怒られるし、絶対部屋から出してもらえなくなると思ったから。

ただ、軽い気持ちで行動しただけだったんだ。





***





久しぶりに気持ちのよい飲み会だった。
旧交も温めることが出来たし、なにより地酒がうまかった。
旬の野菜を刺身と和えてカルパッチョ風に仕上げたものも洋風串焼きも酒にあって美味かった。
ほろ酔いのいい気分でホテルへ戻ると出迎えたのはベルボーイだけで部下達はいなかった。
よし!気づかれないでうまくいったぜ!とシンタローはほくそ笑んだ。

(キンタローのヤツ、今頃ぐっすりだな)

勿論、アラシヤマも夢の中だろう。
シンタローの行動に聡い二人に気づかれなかったのだから他の団員は言わずもがな、である。
深夜はエレベーターの止まる音も小さい。
敷き詰められた絨毯の上をそっと歩き、部屋の前のドアに立つとシンタローは安堵のため息を吐いた。

あとはこのまま眠って、キンタローが起こしに来る前にシャワーを浴びればいい。

朝になれば酒も抜けるだろう。明日の予定は確かたいしたことのないものだった。
夜に招待での観劇があったと思ったがごねれば断れるものだ。
ノブを回す音にも気遣い、薄暗い部屋に入る。
ぱちりと電気をつけるとシンタローは思わず声を上げた。

「キンタロー!」

叫ぶシンタローにキンタローは冴えた眼差しのまま近づいた。
そしていきなり抱きすくめられる。


「シンタロー」
低い声がシンタローの耳朶を這う。

「どこへ行っていた」
かり、と耳翼を噛まれシンタローはその刺激と刺すようなキンタロー声に背筋を震わせた。

「えっとな……、その……外で飲んできたんだよ」
吐く息に酒気が混じっている。
それがなくともシンタローのことはすべて分かっているといっても過言でない従兄弟を誤魔化すことは出来ない。

「それで」
一人ではないんだろう、と冷たい声音が耳に吹き込まれる。
誰と行動したのかはとっくに調べがついているぞ。向こう3ヶ月は減給だな。
おまけに大事な総帥をここまで送り届けもしなかったようだ、とキンタローが言う。
そんな仕打ちはねえだろ、と旧友を思ってシンタローが抗議の声を上げると突き飛ばされるようにベッドへと押し付けられた。
  

「キンタローッ。てめ、なにす……!う、ぐっ」
「ここがどこだかわかっているんだろうな?いいか、ここはガンマ団ではない。勝手な行動は慎むのが当たり前だと思っていたが」

おまえはそんな常識も持ち合わせていないようだな、とキンタローは囁くように言った。
馬乗りに乗り上げられてシンタローは従兄弟の重さに呻く。抗議の声はキンタローによって封じ込められた。
襟首を掴まれて息が苦しい。
そんなシンタローを見ながら、ぎらりとキンタローの目に不穏な色が灯った。


「ガキの頃に伯父貴に知らない土地で一人で出かけるなと注意されただろう?ああ?友達とやらがいたといういいわけは聞かない。
おまえは一人で出かけて一人で戻ってきたんだからな。総帥の自覚が足りなすぎるんじゃないか?
物覚えの悪い総帥閣下には仕置きが必要だな」

口角を上げて、キンタローは嘲笑った。口元を歪めるその仕草は、従兄弟の後見人であるドクター曰く、亡き叔父譲りだという。


「二度とおまえが勝手なことをしないようにその体に刻み付けてやる」


やべえ。コイツぶちきれてやがる。
不敵に笑みながらキスを落とす従兄弟に身を竦ませながら、シンタローはこれからのことを思って己の軽率さを後悔していた。





悪い総帥にはお仕置きをしないとな、と言いながらキンタローはシンタローの眼球を舐めた。
ざらりとした舌の感触と狂気じみた眼差しに背中に汗が伝わっていく。
そして、喉元に指を当てられシンタローは従兄弟の突然の行動に驚愕した。

「答えろ、シンタロー。この服は誰のものだ?」
ぎらつく獰猛な目で問うキンタローの声は冷たい怒りを孕んでいる。



*



「……アラシヤマだよ」
キンタローの指は軽く当てられただけだった。それでも急所を封じる脅しにシンタローの声は乾いたものしか出せなかった。
SP用のスーツの持ち主を告げるとキンタローはやはりなと呟く。

「道理で抹香臭いはずだ。酒のにおいだけでなくこの服から陰気な感じがすると思ったらそういうことか」
言いながら喉元に突きつけた指をキンタローはすべらかに下に下ろしていく。
スーツに何かが憑いているとばかりに忌々しげ呟くキンタローにシンタローはそれはないだろうと思った。
ぶちっと引きちぎるかのようにボタンを弾き飛ばされ、下に着込んだシャツまでもが同じ運命を辿らされる。

(悪ぃ。アラシヤマ……。おまえの服、ダメにしちまった)

無理やり丸め込んで借りたとはいえ、自称親友の煩い部下にどうやって言い訳しようかと思う。
押さえ込まれ、怒り狂った従兄弟にシンタローはなすすべもなくじっとするしかない。
それでも弾き飛ばされたボタンがシーツの上や床に散らばるのを横目に見ながらシンタローはどうやって逃げようかと思案していた。


「逃げようなどという気はおこさないほうがいいぞ」
ぐい、とシンタローの顎を長い指で捉えて、キンタローは酷薄そうに笑った。
喉元を苦しめていた指が離れて、シンタローはようやく息をつく。
ふ~っと肩を揺らしてため息をつくとキンタローはネクタイを緩めていた。
無理やりヤるつもりかよ、と仕置きと言っていた従兄弟に諦めを感じつつそれでも逃げ場を探る。
どうせこのフロアにはガンマ団の連中しかいない。
総帥が半裸で廊下を走りまわっても、皆一様に口を噤むだけだ。

顎にかかっていた指がふ、と離れ、よし!と従兄弟の鳩尾に蹴りを入れようとシンタローは動いた。

(動けなくなっているうちに絶対逃げてやる!)

すっとキンタローに押さえ込まれていた体を動かし、シンタローは身を縮めた。
すり抜けるついでに一発お見舞いしてやろうと踵を上げる。けれども、

「馬鹿め。そんなことはお見通しだぞ、シンタロー」

くくっと笑い声が耳に反響したかと思うとシンタローはさっきよりも力強くシーツへと体を押し付けられた。
くそっ、と舌打ちをしてもがこうとすると視界をやわらかなものが遮る。
きっ、と睨みつけて文句のひとつでも言おうと見上げれば目の前が閉ざされている。
しゅるり、と布の擦れる音がして、それから頭の後ろをに引き攣った痛みが走るかと思うとキンタローが、

「おまえのきれいな目が潤む様を見れないのは残念だが」

と囁きながらシンタローの耳朶に噛みついてきた。
ネクタイで閉ざされた視界ではキンタローの隙を窺うことも出来ない。

「てめ、キンタロー!解け!解けよッ!このッ変態ッ!」

なに考えてんだ!とシンタローが噛みつくように叫ぶ。
するとキンタローは半裸のシンタローの喉元へと舌を這わせながら「おとなしくしろ」と低い声音で牽制した。

「暴れると痛い目にあうぞ。俺は、これからおまえの身が無事だったかチェックするんだからな」
この体を俺以外に触らせていないだろうな、とキンタローはシンタローの胸に手を這わせる。
撫で回す手の感触はいつもと同じだ。
けれども閉ざされた視界が刺激を助長してシンタローはうっと息を飲んだ。

「だいぶ酔っていたようだが、酒場でふらついて介抱されたりはしなかったかシンタロー?
背を摩られたり、胸元に手を入れられたりはされていないだろうな」

言いながらキンタローはシンタローの胸の尖りをきゅっと摘む。
薄い色の乳首が従兄弟の指で赤みを帯びはじめているのを想像してシンタローは照れ隠しに
「そっ、そんなことするのはおまえだけだろッ!」
と叫んだ。事実、酔ったときにシンタローは従兄弟にセクハラ紛いの介抱を受けたことがある。

「どうだろうな?この服を貸したアラシヤマあたりなら血迷ってやらないとも限らないだろう?」
忌々しげに"アラシヤマ"と口にするとキンタローはシンタローのズボンに手をかけた。
かちゃかちゃとベルトが音を立てて、それからジッパーが引きおろされる音がシンタローの耳に届く。
足をばたつかせて抵抗しようかと思ったが視界が閉ざされている状況ではどうにもならない。
抵抗しなくてもどうせうまくキンタローにあしらわれて、前戯もそこそこのきついお仕置きを喰らうだけだ。
明日は視察があるというのに、出かける気が起こらないほど攻め立てられることは予想している。
だが、予想以上のことをシンタローはされるつもりはなかった。

(ここはおとなしく我慢だ……我慢)

抵抗してキレたキンタローにとんでもない目に合わされるのは嫌だ。
目隠しくらい受けてたってやろうじゃねえか。周りが見えないくらいどうってことねえよ!
そんな気持ちでシンタローは、ズボンが下肢から引き抜かれるのをなすがままにされていた。

「……抵抗しないんだな」
おとなしいおまえはめずらしい、と下着も抜き取りながらキンタローが言う。
意地悪く囁くその言葉にシンタローはおまえが喜ぶ反応なんかしてやらねえよ!と心の中で舌を出した。

そんなシンタローの考えすらもキンタローにはばれているということも思い至らずに。





***





下肢から下着を引き抜かれ、シンタローの体はキンタローにシーツに縫いとめるように押さえつけられている。
カエルの解剖みたいだな、とキンタローが言った呟きにシンタローはまざまざと己の姿を脳裏に描いてしまった。

(ンなこといちいち言うんじゃねえよ!)

かあぁっと頭に血が上ったが、シンタローは我慢、我慢だと心の中で唱えた。
  

「少し冷たいだろうが、我慢しろ」
言うなりキンタローはなにやら蓋を開けた。きゅぽん、と小気味のよい音はいつも彼が使うローションのキャップとは違う。
もっとも旅先だから適当に用意したものなんだろうか、とシンタローが考えていると鼻先に甘いにおいが突きつけられた。

「分かるか、シンタロー?」
キンタローの声は楽しげに耳に響いた。
なんだよ、それ?と視界が閉ざされてはいるものの真上にいるだろう従兄弟へとシンタローは視線を向けた。

「リキュールだ。目の覚めるような紫色をしているんだが、おまえには見えないな。
だが、くらくらするほど甘ったるいにおいなのはわかるだろう、シンタロー」?
言うなり、シンタローの頬に冷たくとろりとした液体が塗りつけられる。
くん、と鼻で嗅いだときよりもずっと濃密な香りが鼻腔へと届く。

「おまえはハーレム叔父貴のことを言えないくらい酒が好きなようだしな。たまにはこういうものを使ってやるよ」

どうやって、とシンタローが口を開けるとその隙に乗じてキンタローの指がシンタローの口腔へと進入する。
シンタローに説明している間にリキュールを指の腹に纏わせていたのだろう。
上顎にぬちゃりと当たった粘液をうっかりと舐めてしまいシンタローは眉を顰めた。
  
(なんだよッ!この甘さ……!)

甘い、とシンタローが顔を顰め身じろいだ拍子に、キンタローの指が歯の裏を擦る。
歯茎に指を軽く引っ掛けた後、長い指が口腔を彷徨った。

口腔を蹂躙する指に刺激された唾液とリキュールとが混ざり合う。
少しずつ嚥下を試みるが喉を焼け付かせるよう酷い甘さにシンタローは咽た。

「っ、けほっ、くっ、っ……ッ」

タイミング悪く甘い唾液が気管に入る。
シンタローが咳こむとキンタローはそのままでいたら指を噛まれることに思い当たったのだろう。
薄紫の唾液が絡みつく指をシンタローの口腔から撤退させた。


「すまない。少し痛い思いをさせてしまったな」
こういった場合は水分をとって落ち着かせたほうがいいんだろう、とキンタローが濡れた指先をシンタローの顎へとかける。
たしか飲みかけのミネラルウォーターがベッドサイドにあったはずだ。
従兄弟の口唇が己のものへと合わさったときに、シンタローはてっきりそれだと思って与えられた液体をごくりと飲んだ。


「――ッ!!」

確かに与えられた液体はリキュールとは違うものだった。
だが、舌先に残る辛さと喉を焼くアルコールのキツさにシンタローは視界を覆うネクタイの下で目を見開いた。
げほげほ、と指を咥えさせられたときよりもさらに咳き込む。口の端には溢れた唾液がつうと首元へと流れようとしていた。


「したたかに酔った体には効くだろう?もう指一本も動かせないはずだ」
ふ、とキンタローが力を抜く気配がする。
膝を割った状態で無理やりにシーツへと縫いとめていた力がなくなったが、シンタローは逃げ出すことも不可能だった。
カエルの解剖、とキンタローが揶揄した姿をとったままシンタローはだらしなく唾液を口唇から溢れさせた。







ぬちゅぬちゅと淫らな音が下肢に響く。
常ならば耳を塞ぎたいはずなのに、指先から直腸へとじわじわと流し込まれたリキュールによってシンタローの思考は低下していた。
だらんと枕に頭を預け、キンタローの目の前にがばっと足を開いたままでシンタローは恍惚のため息を漏らす。


「俺以外のヤツが触れていないか、軽く指でチェックしていただけなのに……。
シンタロー、おまえはもうこんなになっているんだな」

言うなり指を引き抜かれ、シンタローは名残惜しげな声を漏らした。
  
「おまえの中を弄くっていたのは人差し指だけだというのに……。これでは人間ドックへと入ることも出来ない。
いやらしい体だな、おまえの体は。こんなんじゃ俺でなくても、医者だろうがなんだろうが指を突っ込まれただけで喘いでしまうだろう。
俺が遠征に行っているとき誰に慰めてもらっているんだ?アラシヤマか、それともさっきおまえが会っていたヤツラか?」

自慰ならば死人は出ないが、と笑いながらキンタローは目の前で勃ち上がっているシンタロー自身を指でピンとはじく。
はじかれたシンタローのものがふるんと腹部へと揺れて、シンタローの腿が震えた。

「ッわけ、なっ……ア、ヒイィッ!」

シンタローが首を振り、否定しようとするとキンタローは従兄弟のものをきゅっと掴んだ。
己の中心を握りこまれ、じわじわ嬲るような指での刺激とはちがう直接的な行動に悲鳴を上げる。
きゅっと蛇が獲物を締め付けるようにキンタローはシンタローのものを掴みながら従兄弟の乳首を撫でた。

すう、と乳暈を撫でた後にキンタローがぷっくりと勃ち上がった蕾をぎりと捻る。
胸と下肢への痛い刺激にシンタローは涙を浮かべた。
溢れる涙がネクタイの布地へと吸い込まれ、そして瞼が布地に張り付いていく。



「ここへ来る前に俺は何度もおまえに言ったはずだが」
「っ、な……に、やぁっ、やめッ!ひ……ッ」

胸から引っこ抜くんでないかと思わせるくらいにキンタローは乳首を摘む指に力を込めた。

「治安の悪い場所でひとりで行動するな、と注意したことをおまえは聞いていなかったようだな。
おまえに会ったヤツらがガンマ団のバッジをつけていたからいいものの普通ならばどうなっていたか分かるか」

ぎゅ、ぎゅと左右に乳首を捻られ、そして自身を痛いほどに締め付けられてシンタローは体を強張らせる。
足指は強すぎる刺激にぴんと突っ張り、口元は恐怖でひくひくと震えていた。


「女でなくても、見目のよい若い男は売り物になるそうだ。
酔ったおまえを捕らえるくらい、ずる賢い商人には容易いことだろうな。起きたら、素っ裸で競りにかけられていてもおかしくない」

「ッ、な、わけ……ね……」
「ないとは限らない。人身売買の組織を先ごろ潰したばかりだったな?浪士崩れの男が捉えられていた報告は受けただろう?」
俺は写真を見たが人買いが置いた用心棒ではなかったぞ、とキンタローは口元を歪めて笑った。

「事態に気づいて俺が落札すればいいが、そうでなかったら明日にでもヒヒ爺のハーレムだな。
そうでなかったら……そうだな。あの辺りの歓楽街ではよく××国の組織が談合を行うそうだ。
偶然、おまえを見つけたらどうするだろうな?ガンマ団総帥を捕らえて拷問にかけるのはそう不自然なことではないが」

ここを切り落とされるかもな、と笑いながらキンタローはシンタローのものを扱いた。
きつく握られ、必死で耐えていたというのにいきなり戒めがなくなり、やわやわと快楽が与えられてそのギャップにシンタローが呻く。
すぐさま、キンタローに
「痛いほうがよかったのか?」
と自身を扱かれながら問われ、シンタローは首を振った。

「イッ、アッ……アッ!きんたろ、気持ち、い……ふっ……ん、あ、あぁ」
「素直だな、シンタロー」
気持ちいいほうがいいのか、とキンタローは笑いながら乳首への負荷も解いた。
それから充血したそれに紫色のリキュールを塗りこむ。
そのときに慰めてくれていた手が離れてシンタローはもどかしさに足を揺らした。

「どうしたんだ?シンタロー」
やさしくリキュールを刷り込みながらキンタローは問う。

「やっ、だ……きんたろ、あ、触れ、よッ!」

キンタローへとシンタローは必死で指を伸ばした。
愛撫の途中でベッドから従兄弟が降りないように腕の中に閉じこめようともどかしい体を動かす。
そんなシンタローの行動にキンタローは笑いながら、胸元へと口唇を近づけていった。

「ふッ、ああ……キン、タロ……ッ」

キンタローの舌で紫色の艶を帯びた乳首を舐め上げられシンタローは思わず差し伸べた手をぶれさせた。
ひととおりリキュールを舐め取るとキンタローが今度は吸いつく。
たっぷりの唾液と一緒に口で吸われてシンタローはその刺激に手をシーツへと落とした。
カエルのように上げていた足もいつの間にか軽い膝立ちの状態になってシンタローはキンタローのやわらかな愛撫に身を任せた。


乳首への責めに飽きたキンタローが再び内奥を弄りはじめると、シンタローの脳裏からは我慢という言葉が抜け落ちていった。
キンタローの責めたてへ抵抗の言葉でなく、感じるままに喘ぎ、啜り泣くシンタローにキンタローは満足げに熱いため息を吐いた。






「これから、どうしてほしい?いや……違うな。おまえはどうすればいいんだ、シンタロー?」
汗で湿ったシーツに力なく乗るシンタローの手首をキンタローは掴んだ。
もう片方の手もシンタローの肩口を押さえて、キンタローはシンタローの顔に視線を落とす。

シンタローの顔は涙と唾液でぐちゃぐちゃで、髪もすっかり乱れていた。

「も……おま、えの言いつけやぶんなっ……から許し、てっ……くれよ」
お願いだ、とシンタローは顔を必死に上げてキンタローにキスをした。

見えなくても口唇の位置くらいは分かる。子どものようなたどたどしいキスにキンタローは微笑んだ。

「……今日のところはこれで許してやるが」
そう言ってキンタローはシンタローの足首を掴んだ。

目隠ししたシンタローからは分からなかったが、キンタローはシンタローの淫らな姿にいきり立っていた。
シンタローが喘いでいるうちに脱ぎ捨てた服は床の上で散らばっている。
このまま放置しておいて皺になることくらいすでにどうでもよいことだった。

「次はないぞ、シンタロー」
瞳をぎらつかせて一気に押し入る。

「……ッ!!ア、アアッ……キンタロー!」

指でかき回されたそこはもうぐちゃぐちゃに解れていて、抵抗することもなくキンタローを飲み込んだ。
シンタローの体内で温められたリキュールが押し入ったキンタローに性急にかき混ぜられる。
そのたびにキンタローの熱と内奥の熱さとが摩擦を起こしてさらなる熱の上昇が体の奥で起こった。

熱の進行を食い止めたくてシンタローは下肢に力を入れようとした。
けれどもそれはキンタローのものを締め上げ、むしろ余計な熱を生む。


首を振ったりしていてすでに最初の位置からずれていたネクタイをキンタローはシンタローから引き下ろした。


「見ろ、シンタロー。見えるだろう?俺の目に映るおまえの淫らな姿が」
「っ、な、こと……わかんね……ア、ア、アアアッ!」

がしがしと打ちつけられる腰にシンタローは甲高く泣いた。
視界が開けたというのに彼の目は瞑っている。

「や、あ……イイッ、すご、キンタロー!ア、アアッ!ん、あぁ……」

喘ぎ、髪を振り乱しながらシンタローはキンタローの名を呼ぶ。
瞑った目尻から涙が溢れて、それからそれはキンタローの舌先へと消えていった。




「シンタロー」
愛している、と囁かれシンタローは目を見開いた。
限界を超えた昂ぶりを穿ちながら、キンタローは「心配させるな」と掠れた声で囁く。

首筋に噛みつかれながら、キンタローの爆ぜる熱の本流を受け止めるとシンタローはびくびくと震え、そして意識を手放した。




END



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ks*
二人揃って商談に赴くのはめずらしくない。
けれども、ガンマ団から離れて誕生日を迎えるのは初めてのことだった。



*



「あ~!くそっ。値切られるなんてな!!」
シンタローは髪をかき回しながら、ノブを回した。
カード式のキーが蛍光色に点滅しているのが夜目にも分かる。
ドアが開くとすぐにそれは引き抜かれ、色を失ったがそんなことどうだっていい。

「まあ、そういうな。あれ以上請求したら商売敵に持っていかれる」
この国は財政難なんだ、と宥めながら従兄弟のあとに続いて部屋に入る。
ドアを閉めて、内鍵も下ろす。
シンタローは「財政難!俺たちを最上階のスイートに泊めてかよ」とジャケットを乱暴に脱ぎながら言った。

「三ツ星だろうが国と癒着しなければ経営できないだろう。ここは経済統制された国だ」
「せめて、もう少しランク落としていいっていうのになあ」
落ちつかねえよ、とシンタローは言いながら靴を脱いだ。

「そうはいかないだろう。警備に穴があるのは危険だ。おまえに何かあったら困る」
「……にしたってスイートはねえだろうよ」
ジャケットを脱ぎ、ついでにベッドへと放り投げられたシンタローのものも一緒にクローゼットへ仕舞い込む。
彼の方はといえば、スリッパを履かず裸足のまま冷蔵庫を物色していた。


小さな冷蔵庫から飲み物を取り出しているシンタローを置いて、バスルームの扉を開く。
脱衣所と洗面台は朝とは違いきれいに片付いていた。
奥のガラス扉を開き、スリッパを脱いで裸足で進む。
金色の猫足がついたバスタブはなだらかな曲線を描いていて、優雅だった。
バスタブにためられた湯は一定の温度を保ち、いつ入ってもいいように適温が保たれている。
今朝、通訳にバスタブには何も入れるなと頼んだが覗き込むと改善はされていない。
昨夜と同じく、色とりどりの薔薇の花弁が浮いていた。


「シンタロー」
扉を閉めて、彼のほうへと向かうとシンタローはなにかを読んでいた。
ちょうど掌に収まるくらいの小さなカードだ。


「あれほど注意したのに風呂に花があったぞ」
「そうかよ」
ろくに聞いていない。
昨日「甘いにおいがウゼエ!!」と騒いだのはおまえだろう、と言ってやろうと近づくとそれに気づいたシンタローが「ほらよ」とカードを投げて寄越した。

「見てみろよ。俺たち二人に誕生日カードだ」

寄越されたそれは金色の文字で俺たち二人の名前と祝福の言葉が印字されている。
そういえば、誕生日だったなと思いカードを眺めているとシンタローはさらに「ケーキもあるってさ」と言った。

「ケーキ?」
「ああ。冷蔵庫にあるって最後の方に書かれてる」

ああ、本当だ。
少し小さめの文字で書かれている。
わざわざ、そんなサービスはしなくてもいいんだが。

「なあ、食おうぜ。さっきの会食、デザートはシャーベットだったから平気だろ」
「あまり甘いものを夜取るのはよくない」
「誕生日だしいいだろ。今日だけだから太らねえよ」
酒だって同じだろ、とシンタローは言った。
「それはそうだが……」

二人だけの誕生日なんてはじめてだろ。
お祝いしようぜ、とシンタローは口にする。

「少しならいいだろう」
仕方なく譲歩するとシンタローはにやっと笑った。



***



食べる前にとりあえず風呂に入ったほうがいいだろうと提案するとシンタローは承諾した。
彼のことだ。おそらく、ケーキだけじゃなくて酒も開けるに決まっている。
さっき、冷蔵庫を漁っていたときは結局ヴォルビックを開封したようだったが、ここにはなんでも揃っている。
飲み始めたらシンタローも俺も止まらない。
とくに明日は兵器工場の査察だけだった。どうしようもなく気分が悪かったら部下に頼むことも出来る。
久しぶりに彼と飲み明かすのもよいと思った。

「じゃあ、先に入ってきてくれ。俺は今日のことをまとめて本部にメールをしている」

「なんでだよ。一緒に入ろうぜ」
持ってきたノートパソコンと書類の類を用意しようとすると、シンタローはそれに対して怪訝そうな声を上げた。

「別に帰ってからでも間に合うだろう。第一、誕生日だぜ。
しかもここには煩い親父はいない。俺とおまえだけなんだぜ。楽しむにはピッタリだろ?」

ふ、と意味深な笑みを浮かべながらシンタローは言った。
一緒に入ってしまえばそれだけでは収拾がつかなくなる。
艶めいた色を瞳に浮かべたシンタローにそれでも、
「明日も仕事だぞ」
と酒だけならばまだしも、体を重ねてしまえば明日が辛いだろうと言い募っても彼は引き下がったりはしなかった。


「たまには甘い夜も過ごしてみたいんだよ。誕生日だしな、それとも嫌なのかよ?」


そこまで言われてしまえば頷くしかない。
もっとも、こんなチャンスは滅多にないのだ。普段だったら誕生日に二人で過ごすことなど出来ない。
誰かしらが互いの傍にいる。

甘い夜を、と所望されれば叶えるしかなかった。
誕生日のシンタローの望みは叶えてやらなくてはならない。



***



バスルームのドアを開けるとシンタローは服を脱ぐことはせずに、先程の俺と同じようにことバスタブを確認しに行った。
扉を開け、そこを覗き込むと彼は眉を顰めた。
「なんだ、ちっとも変わってねえじゃん。花が入っている」
とバスタブを覗き込みながら文句を言う彼にため息が出る。

さっき言ったじゃないか。聞いていなかったんだな。

言ったじゃないか、と思っているとシンタローはうすい白い紙に包まれた石鹸を手にとっていた。
包みを開け、バスタブの奥の壁についている小物入れに手を伸ばして戻している。
丸めた白い紙を左手に、右手には石鹸を持つ彼は不安定だった。
入るときにやればいいのに、馬鹿なやつだ。

「落ちるぞ」
彼のシャツには湯が少し染みていた。腰を支え、引き戻してやるとシンタローは悪戯っぽく笑った。

「落ちても風呂に入るにはかわりないだろ」
「服が濡れる」
ホテルでクリーニングに出すのは面倒だ、と口にするとシンタローは笑った。

「そうだな。じゃあ、濡れないようにおまえが脱がせろよ」





じゃれ合いながら互いの服を剥ぎ取り、邪魔になったそれらを籠に放り込もうとすぐ隣の脱衣所へと戻る。
シンタローはすでにバスタブの中だ。
二人分の衣料とはいえ、大した嵩ではない。彼の手を煩わす必要はないのだ。

シャツや下着類はそのまま籠に放り込み、ズボンだけは皺にならないように折り目に沿って畳む。
手早く作業を終えて、シンタローの元へと戻ると彼はゆったりとバスタブの縁に足を伸ばしていた。
美しいモザイクのタイルに溢れた湯と花びらが模様を描いている。

「シンタロー、石鹸をくれ」
促すと彼は放り投げて寄越した。
まだ使っていないから手の中で滑らずにきちんとキャッチできる。

彼が温まっている間に適当に洗ってしまおうとシャワーを捻る。
シンタローは機嫌よく鼻歌を歌っていた。




「シンタロー、交代しよう」
香りつきの風呂は好きではないが仕方がない。
シンタローはバスタブから立ち上がった。けれども、そこをどこうとはしない。

「シンタロー?」
「一緒に入ろうって言っただろ。早く来いよ」

仕方がない。今日は徹底的に甘やかすと決めたわけだし、と思いバスタブに足を入れる。
ぬるくも熱くもない。温度はちょうどよかった。

二人分の体積で湯と花びらが流れ出す。
同じようにバスタブの中で立ったままのシンタローを抱き寄せると彼は甘えるように俺の名前を呼んだ。



互いに向かい合いシンタローが上に乗り上げた格好でバスタブの背に凭れかかる。
湯に沈んでいないあらわになった彼の背中に黄色と白の花びらが付着していたのに気づいて指で払ってやるとシンタローはくすぐったそうに身じろいだ。

「なあ。いつもみたいにおまえが洗ってくれよ」

いつも一緒に入ったときは俺が洗ってやると怒るくせに、シンタローはそう言った。
バスタブに浸かるときに戻しておいた石鹸を手に取るとシンタローは俺の額にキスを落とす。

「よく洗えよな。あとで食わせてやるから」



石鹸を泡立てて、鎖骨のラインをなぞり上げるとシンタローはくすぐったいと文句を言った。
取り合わずにそのまま下へと指を滑らして女の胸を揉むようにやわやわと胸を触りながら泡を擦り付けると彼は怒った。
「そういうヤらしい洗い方はやめろよな!すっと洗えばいいんだよ!!」

別に照れることはないじゃないか。
まあ、怒らせるのはよくない。

胸から腰までのラインをごく普通に洗い始めるとシンタローは「それでいいんだよ」とぼそっと言った。
これでは俺としてはあまりおもしろくないんだが、という言葉は飲み込んで鍛えられた腹筋を触るとシンタローの睫が震えた。

くすぐったいんだろう。

臍をやさしく人差し指で撫でたときは睫だけではなく、肩も揺れた。

「次、背中な」

きゅっと首にかじりついてシンタローから注文が入る。
ここからがおもしろいところだったがまあいい。

抱きしめた状態で背中のくぼみをなぞるとシンタローはぴくっと反応した。
もう一度石鹸を軽く泡立てて、首筋へと指を落とし、なだらかな背中を丹念にマッサージをするように擦っていく。
すべすべした腰から尻にかけてを円を描くように擦りながら洗うと、シンタローはじとっとした目つきで「キンタロー」と言った。
それには取り合わず谷間を割って彼の秘所をやさしくプッシュする。
そのまま中も洗ってやろうと指でつつこうとするとシンタローは吠えた。

「キンタロッ!!そこあんまりいじんじゃねよッ」
「どうして」
別にいいじゃないかと言うと彼は「ダメだ。おまえが欲しくなる」と噛み付くようなキスを仕掛けながら言う。
彼の舌に応えようとさらに深くくちづけようとする。
けれども、シンタローはすっと離れた。

「もういい。こっから先は自分でやる」

立ち上がりシンタローはタイルへと足を落とす。
シャワーを捻り、俺から取り上げた石鹸を使う彼に思わず笑いが漏れた。

べつにここでコトに及ぼうとする気はなかったんだが。警戒されたのか。
それとも単なる意地悪なのか。
ふっとため息を吐くとシンタローはべえっと舌を出して笑った。




***




「もう出る、おまえもシャワー浴びろよ。花ついてるぞ」とシンタローは言ってシャワーを俺に寄越した。
彼が石鹸を戻しタオルで顔を拭っている間にさっと体を流す。
花のにおいは湯で流しても体に沁みついてとれなかった。
シンタローに続いて脱衣所へと入り、乾いたタオルで彼を軽くぬぐってやった後、ローブを着せてやろうとしたが拒否されてしまった。
濡れた足でぺたぺたと歩き、シンタローは全裸のまま部屋へと戻る。
体を拭いているのが面倒になってローブを羽織って追いかけていくと彼は冷蔵庫を覗き込んでいた。
全裸のまま、四つ這いのような格好で小さな冷蔵庫からなにかを取り出すシンタローにくらくらした。

そういう格好はやめてくれ。

「お!これだな、多分!!」
あった、あったとウキウキした口調で銀色の包みを取り出し、シンタローは満面の笑みで振り返った。

「キンタロー!!ケーキ食おう」
包みを手にしてはしゃぎながらシンタローはベッドへとダイブした。それから彼は、
「おまえフォーク知らねえ?冷蔵庫になかったから探せよ」
と言いながらうつぶせの姿勢でリボンを解き、包みを開けている。


「シンタロー」
「なんだよ?あったか?」
きれいに包装紙を開き、うすい白いガーゼのような包み紙の端を持ったままシンタローは言う。
俺を見ようともしない。ケーキにすっかり夢中になっている。
だが、ぎしっとベッドを軋ませるとシンタローは体を起こして俺のほうへと向いた。

「なに?フォークなかったのかよ?」
じゃあ、手か。まあレアチーズケーキみたいだしいいよな、とシンタローは俺に包まれたままのケーキを見せる。

「結構うまそうだぜ。ほら、キンタロー、あ~ん」
指に少し掬い取ってシンタローはそう言った。
突きつけられた彼の指をぱくっと口に入れる。
やわらかな酸味と甘さを舐め取るとシンタローはくすぐったそうに笑った。

「ちゃんと舐めろよ。なあ、うまい?」
「ああ」

それじゃ、俺も食おうとケーキを指で掬い舐め取った。ふわと溶ける食感に目を細めている。
半分こにしてやるからな、と小さめのケーキをぱくつきながらシンタローは言った。
その表情はかわいい。


「うまいからグンマに買ってってやるか」
と彼は従兄弟のことを口にした。
至福といった顔でシンタローは蝕している。白い雪のようなレアチーズから赤いジャムが流れた時は歓声を上げて喜んだ。



「シンタロー」
「なんだよ。勝手に掬って食えよ」
ほら、こっから先がおまえの分と指しながらシンタローは言った。

「いや、ケーキじゃない」
「じゃあ、なんだよ」
いらねえんなら俺が食うぞ、と口を尖らせた彼の頬にはクリームがついている。
それを指先で拭ってやると彼は合点した表情を浮かべた。
「なんだ口で言えよ」

ほら、おまえも食えよとシンタローは勧める。けれども首を振ると彼は「甘いのいやか?酒にするか?」と尋ねた。

「ケーキよりも酒よりもおまえが食いたい」
あとで食わせてくれるといっただろう、と手首を掴むとシンタローは「仕方ねえな」と俺に言った。

めずらしい。
彼はいつもより機嫌がいい。いつもだったら「ふざけんな」とか「すぐにサカるな!!少し待てよッ」とか色々と口にする。
だが、別にいい。願ってもなかなか訪れない好機だ。

彼からケーキを取り上げて押し倒すとシンタローは人が悪い笑みを浮かべた。

「そのケーキ食い終わったら突っ込ませてやるよ」
残りはおまえの分だから、と笑いながら言うシンタローが少し憎らしい。

「いいだろう」
承諾してケーキの包みを開けるとシンタローはおや?という顔をした。

「めずらしいな。おまえあんまりそういうの食わないのに。手伝ってやろうか?」
俺の体の下にいたシンタローは上体を起こしながらそう口にした。願ってもないことだ。

「そうしてもらおうか」
手伝ってくれ、と言うとシンタローはぱっと顔を輝かせた。よほど気に入ったのだろう。
帰りにはグンマと彼の分を買うのを忘れないようにしないと。

クリームを掬い取って口に含む。
ほのかな甘みに口腔が満たされているままシンタローに口づけると彼はやられたという顔をした。

「ん……むぅ。ふ……」

クリームを舌で舐めとり、味わうようにシンタローの舌が動き回る。
キスをやめて、瞼にくちづけを落とすと彼はじっと睨んだ。

「ずりぃぞ、キンタロー」
「手伝ってくれるんだろう。それにシンタローの方が食いたい」
「ったく。しょうがねえなぁ」
勝手にしろよ、と照れくさそうにシンタローは吐き捨てた。



お許しが出たのを幸いに、クリームをさらに掬い取って彼の体に塗りつけていく。
シンタローはべたべたとクリームが塗りつけられるのを口を尖らせて見ていた。
「ちゃんと全部舐めろよ」
それとあとで風呂な、と彼は要求を重ねた。そんなことあたりまえじゃないか、と思うも素直に「分かった」と言うと彼はぷいと顔を背けた。

シンタローの上半身はクリームが擦り付けられ、ところどころ白くなっている。
彼の体に乗り上げてふい、と背けた顔を覗き込むと指でクリームを塗りながらやわらかく体をなぞっていたことで目は少し潤んでいた。

「シンタロー。好きだ」
好きだ、愛していると繰り返し黒い目の縁にやさしいキスを落とすと彼は俺の髪を掴んだ。

「ん……。はやく食えよ」
照れくさそうにシンタローは身をよじった。
彼も俺に愛していると言ってくれないのが少し残念だった。

ちゅ、と喉元に齧りついて肩を甘く噛むとシンタローは小さい声を漏らした。
左肩にはクリームが少しついている。
甘く噛みながらぺろぺろと舌で舐め取ると彼の体が揺れた。
くすぐったそうにしている。
そのまま鎖骨をすーっとなぞり、くぼんだ場所のクリームをちゅっちゅっと音を立てて吸い上げた。

「あ、やめ……キンタロー」
「ここはくすぐったくないんだな」

顔を落として滑らかな胸に頬を当てる。
ど、ど、どと速く鼓動を刻むシンタローの心音が耳に響いた。
赤ん坊が母親に抱かれるような体勢で彼の胸の尖りに舌を伸ばすとシンタローはさらに体を揺らした。
クリームに隠されて小さな盛り上がりになっている乳首に吸い付くとシンタローはぎゅっと髪を掴んでくる。

「あ、ん……。う…ふ、やめ」
白いクリームを舐めてぷくっと膨らんでいるそこを吸い付くとシンタローは反応した。
このケーキと同じだ。
白いところからうす赤くはりつめた蕾が舐めるたびにじわじわと現れてくる。
ちゅ、ちゅと音を立てて吸うとシンタローは顔を覆った。

「な!あ、やめ……この…あ、」
頬を寄せていた右の胸もついでにかるく弄ってやると彼は非難の声を上げる。
やだ、と顔を覆って恥ずかしそうにしている彼が愛しい。
クリームを枕元に置いた包みから掬い取り、覆っていた顔から手を引き離させた。彼の指に纏わりつかせる。
そのまま口に含ませてやるとシンタローは目をとろんとさせた。

「甘くてうまいだろう。指でもしゃぶっていろ」

もう一度、クリームを掬い取って彼の胸に擦り付ける。
再び、乳を吸い始めるとシンタローは指をしゃぶりながら喘いだ。
悩ましいため息を吐く彼の全身は熱を帯びている。
腹に塗ったクリームがとろり、と臍に流れ込んでいる。
胸に吸い付くのはやめて、流れ落ちる溶けたクリームを急きとめようと臍の下から舐め上げるとシンタローは悲鳴を上げた。

「アッ、ア……ン!!」

臍のくぼみを舌先でつつくとシンタローは震えた。
その少し下部へと視線を落とすと彼自身はすでに熱を帯び、じわじわと勃ちあがっている。
それをクリームでぬめる手で絡めとると「ひっ」とシンタローが息を呑んだ。

「舐めているだけなのにもうこんなんになっているんだな」
腰を深く割り込ませて、彼の足を俺の背へと掲げる。
ちょうど子どものオムツ替えのような姿勢になった。シンタローは浮いた足をぴくぴくと震わせた。。
もうひとかけらになってしまったクリームを手にとって彼のモノと奥ずく秘所へと塗り込める。
ぬるぬるした手で握り込んだまま、口に含むとシンタローはびくっと大きく反応した。

「んあッ!!キンタロー!」

白いクリームでべたべのシンタロー自身はすでに達してしまったように見える。
ぬるぬると滑る手で押さえながら、先端に吸い付くと甘さとともに滲み出た彼の蜜が口に広がる。
少しの苦味がクリームの味をアンバランスに壊していく。
けれども、それには構わずにぬめりつく指にもたついた愛撫を施す。
シンタローはしゃぶっていた指を噛み締めながら必死で耐えていた。

乳首に与えていた刺激よりも強く吸い付く。
ぬちゃぬちゃと濡れた音を響かせながら揉みしだくとシンタローは涙を流している。
指を口に入れたまま声にならない喘ぎを絶えず零し、彼の口元は唾液ででろでろになっていた。

クリームの味が薄れ、シンタロー本来の味が口腔を満たす頃合になると彼は「もうっ……はやく、もっ…」と泣きながら懇願し始める。
クリームを塗り込んだまま放置していた彼の秘所はぱくぱくと欲しがるようにひくついている。
真っ白いクリームはシンタロー自身がとめどなく流すカウパー液で少しゆるくなっていた。
張り詰めたシンタロー自身を口腔に含んだまま、左手の指をぬぷっと秘所に差し込む。
自身の熱で温められ、ひくひくと蠢いていたソコはクリームの滑りもあって楽に進入した。

「あっ…ソコ…ふ、い、い。ああ…キンタロー」
早くとねだるように腰をシンタローは押し付ける。
体などとっくに何度も重ねあっている。
さして抵抗も見られず、にゅぷにゅぷと指を奥へと差込み、かき回す様に動かすとシンタローのモノが口腔で震えた。
指を差し込む動きをやめずに先端の敏感な場所を舌でつつき、歯をやんわりと立てる。

「ひっ!や、アアッ!アッ、ア、ァ……」
その途端、シンタローは刺激に耐えられずに蜜を溢れ出させた。
口腔に流れ込む彼の蜜を余さず喉に流し込む。
「あ、飲む…な、やあ、っつ、ふ、あ…」
シンタローはいやいやをするように首を振り、俺の行動を止めようと拒否した。
けれどもびくびくと震え、放出される蜜の奔流は止められない。
ごきゅ、ごきゅっと喉を鳴らし、最後の一滴まで無駄にしないように飲むとシンタローは俺の背へと掲げられた足を弛緩させ、ばたっと落とした。
足は横に広げられ、ベッドに落としたときの反動で膝が軽く曲がっている。
達したばかりの、けれども差し込んだままの指で再び勢いを取り戻す自身と指に翻弄される秘所を曝け出し、シンタローはふるふると頭を振りながらか細い声で俺を呼んだ。

「も、来いよ……いいから。キンタロー」

「シンタロー」
指を引き抜いて、シンタローが広げている足の、ちょうど腿のあたりを掴む。
腰を深く進めるとシンタローは期待に喘いだ。
ぐっと体を割り込ませて待ち望んでいる場所へと高ぶった自身に手を添えて、侵入を開始する。
クリームを刷り込まれ、ぐちゃぐちゃにやわらかくなったソコは俺を拒みはしなかった。

「シンタロー」

少しだけきつそうに眉をきゅっと顰める彼にキスを落とす。
目元にもキスを落とし、流れていた生理的な涙の痕を舌先で丁寧に舐めるとシンタローの睫が震えた。
塩辛いはずの涙も彼が流したものだというだけで甘く感じる。
ぐっと体をさらに奥へと進めると、シンタローのソコは収縮しながら俺をさらに引き込もうと迎え入れる。

「アッ!ひっ、ああ、あ…ああ」
きゅっと俺を締め付け、捻り込まれる衝撃に耐えようとするシンタローの顔は再び涙に濡れている。
だらしなく唾液も少し口の端から溢れていた。

俺の背へとかじりつき、爪を立てる彼を攻め立てながら顔のそこここにキスを落とす。
がむしゃらに彼が悲鳴を上げるところに突き立てるとシンタローは再び涙を流した。
頬から首の後ろへと流れていく涙を舌で掬う。
腰を揺らし、突きたてる度にシンタローは喉を仰け反る。

ぬるめく熱が俺に絡みつく。
ぐちゅぐちゅとぬめりを捏ねる音が響く。
そのたびに立てられた爪に力がこもり、甘い痛みが断続的に背に与えられえる。

溢れ出す思いと熱が高まり、どうしようもないほど気分が高揚してきた。
疾走する動きは止まらない。とめどなく俺を追い込むシンタローの熱と甘い声とが煽り、高みへと押し上げていく。

「シンタロー」
吐き出す声も熱を帯びている。熱い吐息が声とともに彼の顔を掠めるとシンタローは背に回していた腕を首にずらした。

「シンタロー」

「い、ア…アッ!ああっ。ん…きんたろっ、きんたろっ」
彼がもっとも反応を返す場所を抉るとシンタローはぎゅっと抱きしめる力を強くする。
彼の長い髪を掻き分けて後頭部に手を差し込み、「ソコ、いい……うあ…あ」と喘ぎながらいやいやと顔を振るシンタローの顔を固定する。

「あ、見んな…よ。きんたろっ!ふぅ、ん…い、ああ」
キンタローと呂律の回らない声を出すシンタローに深く口づける。

「ん、ふぅ。ん……むぅ…」

シンタローの舌は甘い。
クリームの味などもう消えているはずなのに甘い。ケーキよりも甘く俺の舌を蕩かす。

熱い口内を蹂躙し、絡み合い、互いに味わう。
彼の目は潤んだ熱で沸いた涙で蕩けそうになっていた。
熱いくちづけを終えて、物足りなそうにしているシンタローの瞳に舌を伸ばす。

黒い目が揺れた。
甘い涙が落ちていく。

髪を分けていた手を下へと落とし、彼の腰を掴むとシンタローの瞳が揺らいだ。
また、甘い涙が零れ落ちていく。

「シンタロー、好きだ」
掴んだ腰をぐっと引き寄せると彼の睫が震えた。睫をくるんでいた涙がほろりと落ちた。

「キンタロッ!アッアッー、やあぁ」

捻り込み、抉る角度を浅く深く急速にチェンジする。
ど、ど、どと合わせられた胸から互いの心音が震える。
深く繋がった場所はどくどくと体中の血液が集まっているかのように感じられる。

熱い快楽が途切れぬ波となって襲ってくる。

シンタローが好きだ。彼を深く愛している。
その気持ちとともに彼と共有する甘い熱が押し寄せ、高波を起こし、引き換えせぬところまで押し上げる。

もう、彼をいたわろうとやんわりと動くことなどできなかった。

打ち付ける腰を、揺さぶる動きをなにもかもがスピードを上げていく。
浅く抉り、じんわりとした悦楽を与えていくことなどできない。
深く、深く、彼のすべてを喰らい尽くそうと情動のまま突き進む。

「ああっ、あっ…きんたろー、きんたろー!!」
がむしゃらに彼を動かし、キスをしかけ、雨のようにシンタローに降らせる。
どこにくちづけてもシンタローは甘かった。

思うが侭に翻弄しても彼は甘く啼き、俺を呼んだ。



「シンタロー、愛している」
好きだ、とか何度も彼の名前を呼んだりしながら腰を打ち付けるとシンタローはがくがくと首を振り、首肯する。
ためられた涙も唾液もなにもかもに構わず、彼は俺を呼ぶ。

「きんたろっ、お、れも……」
愛していると彼が言おうとした言葉は俺の口の中に消えた。
甘い言葉とともに彼の唾液を飲み下すとシンタローは目を閉じた。
眉根を寄せ、震える睫が終息の時を告げている。

「シンタロー」
閉じられた瞼にやさしくキスを落として、一番深く彼の内を抉った。

「あっあっ!あ、い、ああ……」

びくびくと彼の体が弛緩する。
伸びた足もぴくぴくと小刻みに震え、仰け反った喉も胸も上下し、体中を収縮させている。
俺を銜え込んでいた彼の奥づく場所もひくつきを止めなかった。
ぬめった彼自身が何度も震え、甘い彼の熱を放つ。

止められない熱の放出にシンタローの体はびくびくとした反応を返す。
腹と胸を少し白く飾った彼の熱が抱き寄せた俺の体にぬちゅっと広がった。

シンタローの締め付けにもう我慢できずに彼の中へと俺も熱を解放していく。

どく、どく、どく。

体中を流れる血液と心音のように熱い波を起こしながら、彼に注ぎ込む。
すでに達していたというのにシンタローは身の内でそれを感じて再び体を震わせた。
きゅっと窄まる彼の奥に搾り取られ、呻くとシンタローは甘い息を零した。





***





つながりを解いても体を離さずに抱き合っているとシンタローが上体を起こし、俺から離れた。
もう少し余韻を楽しみたいのに、と不満そうな表情を浮かべると彼は笑う。

「今、何時かと思ったんだよ」

近くには時計が見当たらない。
彼は起き上がってしまうのだろうか、と見ていると彼は再び体を横たえる。

「シンタロー?」
「も、少しこのままでもいいよな」
顔を見合わせたまま、互いにふっと口をゆるめる。
なんだ、同じ事を考えていたんだな。


じっと彼を抱いたまま髪を撫でる。彼の髪は長い。それに滑らかで手触りもよかった。
ひと房だけ口に持ってくると甘い香りがした。
ケーキの甘さではない。バスタブに撒かれていた花だろう。
髪の先にくちづけるとシンタローはそれをひったくった。

「おまえ、ホント俺の髪好きだよな」
しょっちゅうやる、クセになってるんじゃねえの、と膨れる彼は可愛い。

「シンタローが甘いから」
どこでも味わってみたくなるんだ、と額にキスをすると彼は不思議そうな顔をした。

「好きだ。シンタロー、誰よりも愛している」

抱きしめる力がぎゅっと強くなる。
照れくさそうな顔をして何も言わない彼に笑みが大きくなる。

「愛している。それから……誕生日おめでとう」

頬にちゅっと軽いキスをして、祝福をすると彼は笑った。

「おまえもだろ。誕生日おめでとう、キンタロー」


彼の声は甘い。
くすくすと笑いながら小さなキスを互いに落としていく。じゃれあい、体の位置を変えてベッドの上を転げ回る。

シンタローはどこも甘い。
キスを降らすたびに甘さと愛しさで幸せな気持ちになる。


「好きだ」と言うとシンタローは「馬ー鹿」と一言言った。そんなこと分かってる、と俺の髪や頬にキスをくれた。



愛している。
それから、誕生日おめでとう、シンタロー。


じゃれあい、ふざけまわったまま甘い夜が更けていく。

シンタローは甘い。
そして、誰よりも愛しかった。



END


ks*
交わった後の余韻に浸っていると体が冷えてきた。
すでにシーツは剥ぎ取っていたし、今更がっつくような仲ではない。
着衣ではなく素肌のまま触れ合っていた所為か触れ合うところだけ熱く、剥き出しの肩や背などはひんやりとした空気を感じていた。
  

「寒くないか?」
腕に抱きこんだまま従兄弟に尋ねると彼からは掠れた声が返ってくる。
「…べつに。眠い」
わずかに赤く腫らした瞼は眠たげだった。閉じようとする重力に逆らうように必死で目を開けている。
「明日はオフだ、ゆっくり眠っていればいい」
汗でしっとりした髪を撫で付けてやるとシンタローは上目遣いでじっと見てきた。
「眠い」
「だから眠ればいいだろう」
「体が気持ち悪いんだよっ、中に出しやがって」

それはすまなかった。
抱き込んでいた腕を外し、起き上がってバスルームへと向かう。湯に浸したタオルを持ってくるとシンタローが腕を伸ばした。
  
「ソレ、寄越せ」
自分で拭く、と言いたいのだろう。それには反論することなく素直に渡してやるとシンタローがほっとため息を吐いた。
  
馬鹿なヤツだ。
ぺたりとシーツの上に座り、互いの汗や体液でべたべたとした体を拭くシンタローを俺は黙って見る。
くそっとか舌打ちしながらごしごしと力を入れて拭くシンタローはかわいい。
上体をあらかた拭いて腿へと彼が向かおうとしたとき、俺も彼へと指を伸ばした。

「なにすんだよっ」
タオルを持っていた手首を掴み、転がすように押し倒すと面白い具合に足が浮いてくる。
カエルを解剖する時のような体勢にすると、彼は持っている力を振り絞るように足をばたつかせ始めた。

「ふざ…けんなっ、キンタロー」
あんだけやっといてまだ足りないのかよ、盛るな、やめろ、イヤだ!とシンタローは足をばたつかせ振りほどこうと暴れる。
けれども普段とは違い、情事のけだるさと体への負担の所為で痛くも痒くもなかった。

「シンタロー、勘違いするな」
彼を攻め立てるときのようにぐいっと足を開かせて体を割り込ませる。
「きれいにしてやるだけだ、ココは自分ではうまくできないだろう」
ひくつきながらもとろりと俺の残滓を流すソコを指ではじいてやると、シンタローは小さく声を漏らした。

「や、め…ひとり、…でき、る」
「たまには手伝わせろ。原因は俺にあるんだからな、責任を取ってやる」




暴れ、掠れた喉を振り絞るように喚いていたシンタローも指を差し入れると急に大人しくなった。
もとより、疲労した体ではろくに抵抗など出来ないのは充分分かっていたのだろう。
抵抗も軽いものだった。


慣らしたときのようにじっくりと、たんねんに繊細な注意を払って指を入れる。
緩んでいたそこは難なく俺の指を貪欲に飲み込み始めた。
くぷくぷと音を立てて溢れるそこにタオルを当ててやる。
抵抗などもうない。掴んでいた手は当に離していたし、俺はもうシンタローを押さえ込んでいない。
シンタローは足を自分で閉じて逃げようとすることが出来るのにしないでいる。
人差し指だけでは作業が進まなかったので、中指も差し入れると肉の環が窄まった。

シンタローは全身を小刻みに震えさせている。
必死で歯を食いしばっていた。

気づかない振りをして、鉤型に間接を曲げて掻き回す。溢れ出すくちゅっとした水音に比例するように彼の息が荒くなっていく。
「どうした、シンタロー。具合が悪いのか」
はあはあと熱い息を吐くシンタローを気遣うように装いながらも手は休めなかった。



水音がやみ、出したものはすべてタオルが吸い取ったのに俺は指を引き抜くことはしない。
シンタローも自分の中がどういう状態くらいは分かっているだろう。
粘着質な音ではなく、指で擦る音が内部で響いているはずだ。
じわじわとシンタローの自身が勢いを取り戻し、赤みを帯びながらふるふると天を仰ぐ。
呻き声だけで、声を抑え、息を吐きつづけるシンタローに、
「もういいな、抜くぞ。充分きれいになった」
と言うと彼は自分で俺の指を締め付けた。

「わ、かって…クセ、に」
息を荒くしたシンタローが足を絡めてくる。
「なにがだ」
意地悪く、空いた手で彼の片側の腿を押し開きすばやく抜き取る。

「や、あ…、抜く、な」
シンタローの目には涙が浮かんでいた。ぱくぱくと口を鯉のように開けて荒い息が止まらない。

「そんなことを言っても、充分きれいになっただろう」

シンタローの下に当てていたタオルを再び手にとって、使っていた二本の指を拭く。
あたたかかったはずの布地はすでにぬるくなっていた。



シンタローは息を吐くのも困難になっていた。ぼろぼろと涙をこぼし、シーツをぎゅっと握り締めている。
「ひ、ど…な、」
なんでという言葉すら口から吐けない。
全身を戦慄かせ、必死で俺を引き寄せようと右手を上に上げる。
伸ばされた指を手にとってやると、息を吐くだけではなくだらしなく唾液をたらしていた口が笑みを形作った。
「キ…ンタロ」
俺が彼の熱い熱を取ってやるのかと思ったんだろう。
ちゅっ、と軽く音を彼の指先に立ててやるともう一度俺の名を呼んだ。
「な…キンタロッ、はや…」
口づけた先から、爪や指の関節を舐めしゃぶる。仰ぐ彼自身を口淫するのに見立てて吸い付くと身をよじった。

「キンタロ、ゆび、や…」

だが、ゆびではないものをせがんだ彼を裏切る言葉と動作を取る。

「手伝ってやるから自分でしろ、シンタロー」

仰いでいるシンタロ-自身を彼の手指をとって、間接的に握りこむとシンタローは泣きじゃくった。
「や、だ…キン、タロ…や、やぁ…あ、ふ」
「いやじゃないだろう。気持ちがいいくせに」
俺の指は添えられただけだ。けれどもシンタローは体を震わせ、泣きながらも自分で慰めている。
彼が自身を動かし、肉が擦れるいやらしい音を立てているのを添えた手を通して俺は感じている。

涙声でいやだと連呼しつつ、シンタローは動きを早め続ける。
ぐちゃぐちゃに涙で濡れた彼からは不明瞭な言葉しか漏れない。

「や、や、ああ、あ…ん、ん!あッ」
ぐちゅっと音が立った。今までで一番大きい音が。
握り締めていた彼の手から俺の掌へと熱い感触がじわりと伝わってくる。
呆然自失といった表情のシンタローは固まったままだった。
体を寝かせて、彼が放ったものを拭き清めてやる。


すばやく清拭を終え、シンタローを覗き込むと彼は虚空を見据えていた。
生理的な涙が伝わる目じりに舌を寄せて掬い取ると、うす塩辛い味が口内に広がる。

「最初に一人でできると言ったのはお前だっただろう」
囁いても彼は何も答えぬまま、ただ虚空を見つめていた。



END



ks*
「こんな姿にしてどういうつもりだよ」
睨みつけながらキンタローに訴えるとしらっとした顔でヤツは答えた。

「人間が猫になれるのか実験したまでだ」


ふざけやがって。俺の意思はどうでもいいのか。
勝手に酒に一服盛りやがったな。
大体俺でなくても高松のところの助手とか、若い団員とか、アラシヤマとか親父とか選択肢は一杯あるだろうよ。
なに考えてんだ、こいつは。

「俺じゃなくてもいいだろッ」
こういうことは他のやつにしろ、とソファに体を投げ出して怒鳴ってもキンタローの表情は変わらない。
ふっと口角を上げ、普段から言っている言葉を吐いた。


「おまえでなくては嫌だ」

だーかーら!!俺じゃなくていいだろって言ってるだろ。
俺じゃなきゃ嫌なんて…んなコト、今言うんじゃねえ。


とりあえず鏡の前に立ってみろ、とにやつくキンタローに悪い予感が胸をよぎった。





***


無理やり脱衣所に引きずられ、鏡の前に立たされると案の定異形の俺が写っていた。
ソファに座っていた時から感じた違和感どおり鏡の中でぱたりぱたりと尻尾が動いている。
タンクトップから出た二の腕は目覚めてすぐに気づいた。
灰色がかった濃い紫のふわふわの毛がそよいでいる。
まさか、と思って胸の前を掴んで視線を落とすとそこには毛が生えてはなかった。

「全身じゃねえみたいだな」

剥き出しの方は艶やかな毛並みで覆われてはいない。
胸にもないとなると、腕と尻尾と…ああ、あとは頭の上の耳だけか。

全部が全部、猫のようになったわけではないようだ。

だが、気に入らねえ。
わざわざ騙してこんな姿にしやがって。

拳を握り締めようとするとふにっとした肉球が邪魔をして指が曲げられない。
気のせいではなく、指自体が短くなっているのも一因のようだ。

眼魔砲は…撃てねえだろう。



「おい、キンタロー。早く戻せよ。ちゃんと動物になれたんだろ、実験は終わりにしろ。
おまえのことだから解毒剤は用意してんだろッ!」

寄越せ、と腕を出すものもなんとなく格好がつかない。
そのうえ、キンタローはにやつきながら意地悪く拒否してくれた。



「それよりも、シンタロー。今見えてる部分だけ変わったかと思っているのか」
「ああ?」
「尻尾が生えてるだろう。…ああ、悪いが勝手に穴を開けた。脱がせたときに俺は確認済みなのだが」


急いで胸を確認した時と同じようにカンフーパンツの紐を緩めて、覗き込む。


「…ッ!!なんなんだよっ!これはっ」


俺の下半身は、いや正確に言うと太股までが腕と同じく毛で覆われていた。





***


ふざけんな、なに考えてるんだ、おまえは。
この変態。いつも好き勝手しやがって。
大体、俺を実験にするのがおかしい。つーか、やめろ!絶交するぞ!
あーもー、なに考えてるんだよ。
百歩譲って猫にするのはまだいい。いいか、譲ってやってだぞ。
するんだったら完璧に猫にするとかな…あー、ホントおまえ馬鹿だ。
頭いいけど馬鹿だ。なに考えてるんだ。これじゃ中途半端に露出してて俺が変態みたいじゃねえか。
靴下履いたままスルのとは訳が違うんだぞ!!くそっ。
いいか、今日はもう指一本触らせねえからな。
実験だからって俺は同意したわけじゃないんだからな。

おまえが変だっていうのに…このまんまでいたら誤解うけるだろっ!この×××野郎!



「言いたいことはそれだけか」

ぜえぜえと息をついた俺にキンタローは素っ気無く言う。
なんだって、あんなに言ったのに分からねえのかよ。

「いいからとっとと戻せ。今すぐにだっ!」

「その戻す薬はここにはない。ちゃんとおまえの手が届かない場所に隠してある」

「ふざけんなっ、ぶん殴るぞ」
「その腕でか?」

ぐっと詰まった俺に目を細め、キンタローはさっと視線を横へと移した。


「そういえば飲んでいたから風呂に入ってなかったな」

「俺が綺麗に洗ってやる」



まずい…コイツ本気で言ってやがる。
くるっと背を向けて部屋へと戻ろうとする。
だが、逃げるよりも早くぎゅっと尻尾を掴まれた。

「ぎゃっ!」

爪先から頭の天辺まで悪寒が駆け上がる。
逃げようと思っていたのにへなへなと力が抜けていく。
ぺたりと膝をつくと、キンタローがしゃがみ込んで俺の髪を片手でかき上げた。
もう片方の手は俺の尻尾を掴んで離さない。
二度三度指先に髪を絡め、そしてその指を顎へと持ってくる。


(キスする気かよ?)

尻尾が掴まれたままで力が出ない。
だが。

舌入れてきたら噛み付いてやると待ち構えているとキンタローは思いもかけない行動を取った。



「シンタロー」
少し腰を浮かせて、ふっと新しくできた耳に熱い息と囁く声が吹き込まれた。
何故だか、掴まれている尻尾が震える。



抵抗する力なんか…もう出ない。でも…。



「安心しろ、可愛がってやるから」


ンなこと言われても誰が安心するか。
いい加減に尻尾を離せ。あ、待て。脱がすなっ。


「あとで首輪もつけてやるからな」



ふざけんなキンタロー、ああ、もう最悪だ!!


でも…抵抗なんて。もうできやしない。



ここまでくれば、もう言いなりになるしかないのだ。
意識がない間に穴を空けられたカンフーパンツは無理やり破り取られてしまったし、タンクトップだって引きちぎられて床の上にある。
下着だってとっくに身に着けていない。

変質者としか思えないような姿のままバスルームへと引きずり込まれる。

尻尾は握られたままだ。
ここまできたら逃げることなんて出来ないのは分かっているのに、キンタローは俺の尻尾をしっかりと握りこむ。
足の裏も手と同じように肉球となっている。
バスルームのタイルはひんやりとしていて、思わず掴まれたままの尻尾がじんじんとした。

いつの間にかキンタローはシャツの袖を捲り上げていた。

「……キンタロー?」
できることならここで引き返して欲しい。
願いを込めるように彼の表情を伺う。けれども、彼からは無情な宣告しか聞けなかった。


「シンタロー、綺麗にしてやるから膝で立て」


もう、抵抗は出来ない。
俺はそろそろと冷たい床に膝を着いた。



***



「!!熱っ」

かけられた湯の熱さに耳がふるふると震えた。
また、尻尾にびくびくと振動が伝わる。

「ああ、すまない。今は猫だったな、もう少しぬるめにしよう」

すぐさま温度が調節され、心地よく感じる湯が髪から膝へと伝わっていった。
ふわふわとした毛並みが濡れて張り付くのを確認すると、キンタローがシャンプーを取ろうと腕を伸ばした。
その間、シャワーヘッドは固定され湯が流れていたため寒さは感じなかった。




髪を洗われることはべつに初めてじゃない。
床屋でだってあるし、ガキの頃は親父が洗ってくれたりした。
目の前のこの男が洗ったことだって何度もある。
だが、今ここで俺の髪を流れる指の感触はそのどれもと違う感じがした。



何故違うのだろうと、ぼんやりと考えていると再び湯が注がれる。
髪を洗う気持ちよさにいつのまにか時間の感覚も鈍くなったらしい。
湯を流す間も絶えずキンタローの指先は俺の髪を梳いていた。
耳の後ろを洗われたときようやく違和感の原因に気づく。

(そうか…耳が猫みたくなってたな)



泡をすべて流し去るとキンタローが今度はボディソープを手に取る。
とろりとした乳白色のそれを肩から順に擦りこむように泡立てられる。
髪の毛を扱っていたときと同じように腕の毛並みは丹念に洗われ、立たされてから背筋や腰を洗われ、下肢へと洗う手が進んでいく。
彼の動きに反応しないように耐えようと天井の方を見つめる。必死に別のことを考えようと頭を動かす。
大体、コイツは一緒に風呂に入るとここからやらしい手つきになるんだ。


案の定、キンタローの手つきは緩慢ながらも俺を高みへと押し上げるものだった。
彼の指の動きに翻弄されないように、我を失わないようにと俺は必死で別のことを考えようとする。

太股にソックスのように生えた毛を撫で擦られたときも、胸板へと滑る指先が胸の尖りを掠ったときも。
腰のくびれを泡とともに擦られ、臍の周りを円を描くようになぞられたときも。

必死で別のことを考えてやりすごす。



だが、すっと指が後ろへと回され、尻尾を擦られると「あっ」と小さい声が出てしまった。

「尻尾が感じるのか」
「…ッ!いきなり触るから驚いただけだっ」
「そうか」

くっと笑って、キンタローがぎゅっと尻尾を掴む。その力に擦られたときよりも大きな声が出た。

「ンンッ…アッ!」
「どこが感じてないんだ?シンタロー」

さて、とわざとらしく言いながらキンタローが指を前へと滑らしてくる。

「胸から腹はつるつるのままにしたのに…ここは邪魔だな。猫らしくない。美観を損ねる」
洗うだけじゃないのかよ、と訴えた言葉は当然の如く聞き入られない。
いやだ、と抵抗しても腕に抱きこまれいつの間にか反転させられて背面座位のように姿勢をとらされる。
無理やり足を開かされて、閉じようとばたつかせても尻尾を握りこまれると封じられてしまう。

いつの間にか手に持っていたシェーバーをチラつかせられ、体から力が抜けていく。
もう抵抗は意味を成さない。
心の奥底、いやそんな奥を探らなくても俺はもう抵抗する気など起きていないのだ。

脱衣所とは違い、鏡がない。

けれど、分かる。俺は今きっと怯えの中に媚を売るような表情をしている。
それが、キンタローを煽るのだ。いつも、いつも…。

シェーバーの電源が入った。
朝、身だしなみを整えるときと同じ繊細な指使いが下肢を走る。
尻尾の戒めが外され、長い指が柔らかな毛並みの下に滑らしていく。


「キンタロ、オ…」
「おまえが動かなければ大丈夫だ」

左手で俺のモノを軽く押さえられた。
キンタローの息が肩口に当たる。
熱い。吹きかかった場所がぞわりと粟立つ。


「そのままじっとしていろ」

茂みにそっとシェイバーの刃が当てられる。
ヴィーンと機械音が鳴り、下腹に振動が伝わる。
掬い取るように当てられ、シュ、シュ、シュと軽い音を響かせて剃り落とされていく。

「や、ふざけ…」
動くことは出来ない。
徐々に露出させていくそこを見るのが気恥ずかしい。なんとはなしに目線は風呂場の壁へと逸らされていく。
形ばかりの抵抗を口にしてもキンタローの手は止まらなかった。





「どうする?シンタロー」
剃られた毛を落とすために湯をかけながら、キンタローが囁いてくる。
シェーバーを当てられる間、尻尾に回されていた手が傷つけないようにと前を握りこまれていた。
尻尾を掴んだときのようにぎゅっとするのではなく、ゆるゆると縦にも横にも動かされそこは確かな兆しを見せていた。
今もただ流すだけでなく、シャワーを持っていない手で張り付いた毛を払い落とすように触っている。
張り詰めたそこはじんじんと熱を上げていく。
注がれる湯が止められた後もなお、キンタローは俺を弄っていた。


波のように襲ってくる快感はもうやり過ごせない段階に来ている。
何度も高波を堰き止められ、もうどうしようもない状態に陥って荒い息をつく俺に後ろから熱い息がかかる。

「さあ、どうする?シンタロー」
ここでするか、ベッドがいいかと囁かれると返事をするどころではなく。
キンタローの声だけで堰が崩され、自分が熱い飛沫が放出するのをぼんやりと見ている羽目に陥った。


「答えを貰っていなかったのにな」

べとついた手を見せつけながら、わざとらしくそれを舐めとる。キンタローはうすく笑っていた。





***


風呂から出て、寝室へとどうやって戻ってきたかは分からない。
たしかに自分の足で来たのは覚えているのに、頭の中がふわふわとしている。
いつの間にか猫のように四つ這に姿勢をとらされ、後ろから掠めるようにしか与えてくれないキンタローの愛撫に思考が奪われている。
背骨や腰のくぼみをなぞる指がどうしようもなく焦れったい。
じわじわとしか与えられていない快感をやり過ごそうと頭を振ると濡れて重くなった髪がばらばらと肩へと落ちてきた。
自分の髪が触れる感触すらも今は快感となっている。

「どうしてほしいんだ、シンタロー」

さっきみたいに触って欲しいのか?ちゃんと言えばしてやるぞ。
俺を追い立てようと意地悪くキンタローが尻尾の先を指でつついた。
そのままびくびくと震え、アンテナのように立ち上がったままの尻尾を掴む。
俺を捕まえたときのようにぎゅっと締めるのではなく、指で作った環の中を扱くように擦られた。

「前も後ろも立てていやらしいヤツだ」

まだ猫は発情期ではないぞ、と笑いながら尻尾の付け根に手をかける。
中指で円を作ったまま、親指で入り口を引っかかれてたまらない震えが沸き上がる。


「さあ、どうする?シンタロー」



***




緩やかでもとめどない刺激に観念し、キンタローが言わせたかった言葉を口にするとすぐに熱い楔が打ち込まれた。
待ち構えていたものの感触に体の中が震え、彼を煽ってやろうと言わんばかりに収縮する。

「あっ、や…いや、あ、あ」
「猫みたいに鳴いてくれないのか、シンタロー」
それともまだ足りないのかもな、と打ち込む動きを強くされ、体が刺激でのけぞる。
後ろから攻め立てるキンタローのヘアで尻尾が擦られ、びんびんと震える。


「ひっ…ん、んあぁ…。あっ、い、い」
「こういう楽しみ方も…っ悪くないな」
双丘に手をかけられ、ぐっと開かされてより奥へとキンタローが突き進んでいく。
ゆるやかな突きと抉るような差込とでシーツにぐっしょりと水溜りのようなしみが出来ていた。




「あ、も…キン、タロッ、無理ッ」
快感を最大に得ようと勝手に体が動く。獣のように腰を振って押し付けるようにねだる。
互いの息は荒い。
ラストスパートまでもう少しとなり、ねだる動きも与える強さも激しいものへとなっていく。


「あ、っ…ん、キン…タロ」

荒い息を吐き、言葉にならない声をつむぎながら互いの名を呼び合う。
一呼吸、ぎりぎりまで引き抜いた後、深く抉る刃が訪れた。

「シンタロー」
熱い呼びかけとともに放っておかれていた尻尾が擦られた。
ピンと立ち、敏感になっていたそこから刺激が全身へと伝わる。

「んんんにゃぁぁあ!!っあ、あっ!」
味わったことのない刺激に耐えることが出来ず、本物の猫のように甲高い叫び声が喉をついた。






「目が覚めるころ元に戻しておいてやるよ」

流し込まれる奔流が途絶えた後、そんな囁きが聞こえた気がしたが何か言う前に俺の思考はフェードアウトした。


END





悪夢




何度も、夢に見る。
腕や脚に全くと言って良いほど力が入らなくて、相手のなすがままにされている。
これだけ鍛えた肉体を持っているのに。
ガンマ団No.1と言われた戦闘力。
青の証である眼魔砲だってある。
それなのに、薬か何かを嗅がされたように動けないのだ。


相手の顔はよく見えない。
都合よく頭部に暗くもやがかかっていて、きっと顔なんか見たくないという願望がそうさせるんだな、と思う。
男の舌が体中を這う。
それは気持ちが悪いようでいて、まるで舌と肌を何か薄皮一枚隔てて触れられているような不思議な感触があった。
まるで自分の体ではないかのようだった。
愛撫されるって、こんな感じなのか?
わからない。
止めてくれ。
止めてくれ。
手足に力が入らないのならせめて、体をひねって逃げようとするが、男はいとも簡単に余裕でそれを制する。
にらむと、相手の口元がオレをなだめるように、そして安心させるように、柔らかく微笑んだ。
無理して、笑うなよ。
そんな目をして。


男はオレの両の膝裏に腕を入れると、体を近づけてきた。
止めろ。
それだけは。
他のものは何だってやるから。
せめて目で睨み付けるが、男は意に介していない。
畜生。
オレに片方だけでも目で人を殺せる力があったら。
オレ以外の青の一族みたいに。


ずん、と体の中心を貫かれて、息が詰まった。
「・・・!」
敏感な部分を無理矢理押し広げられ、引きつる。
思わず、抵抗して力を入れようとするが、やはりどうしても弛緩して力は入らなかった。
しかし、不思議だった。
痛くは、無かった。
ただ、先ほど舌を這わされていたときと違って、擦られる感覚だけが妙に生々しかった。
しかし、始めはゆるゆると動かされ、そして徐々に激しくなってくると、徐々に感覚が麻痺していく。
ただ男の動きに合わせて、ゆらゆらと抱えられた腰が動くのみだった。
浮遊感。
でも確かに自分の内部に何かが入ってきて、中を蹂躙しているのだけは何故かわかった。


いやだ。
痛いとか、痛くないとか、そんなんじゃない。
あんたにそんなことされるのがいやなんだ。
目を瞑って頭を振る。
誰か、目を覚まさせて。
誰か、誰か。





「・・・大丈夫か・・・?」
ほんの近くで、ささやかれた言葉に、オレはゆっくりと瞳を開けた。
光のわずかしか入っていない薄暗い視界に、ぼんやりと青が浮いている。
夢の続きかと思って一瞬すくんだ。
でも、すぐ声が違うのがわかって、体から力が抜けた。


瞼が異常に重かったが、それでも、暗い夢の世界から浮上を試みるように懸命に瞼を開ける努力をした。
目が慣れると、そこには2つの青い瞳がこちらを伺うように心配そうに覗いていることがわかった。
「キン・・・タロー・・・?」
やっとのことで声を出すと、その瞳が細められた。
「ああ。うなされていたぞ。悪い夢でも見たのか・・・」
夕べ一緒にベッドに入ったキンタローが、どうやらオレが夢にうなされていたから起きてしまったらしい。
カーテンからわずかに朝日が差し込んでいるが、まだずいぶん早い時間だろう。
横になりながら片肘をついて、髪を撫でてくれるその手が、気持ちいい。
オレはその手を感じながらもう一度だけ目を閉じて、唾を飲み込んだ。
気がついてみると、体中に汗が噴出していて、熱い。
特に、夢で誰かと繋がっていたあの部分が、疼いている。


「顔が赤いな・・・熱でもあるのか?」
キンタローはオレの前髪をかきあげて、額に手を当てて確かめようとした。
「いや・・・。熱はないと思う。疲れてて、ヤな夢を見ただけだ・・・」
ため息をつくと、代わりにキンタローは頬を撫でてくれた。
「どんな夢だ・・・?」
キンタローが心配そうに聞くが、オレは首をゆるく振って答えを言うのをやんわりと拒否した。
それに対してもちろん責めることはなく、キンタローは起き上がって洗面所からタオルをとってきてくれた。
「それとももう一度シャワーを浴びるか?」
と尋ねてくれるが、今はだるくて動きたくなかった。
自分で拭く、と言ってタオルを受け取ると、濡れたパジャマを脱いで全身を拭いた。
空調を切った室内はひんやりとして、ほてった体を徐々に冷やしていく。
一緒にミネラルウオーターを持ってきてくれたので、乾いた唇を濡らしながら一気に飲み干した。


ベッドに腰掛けてボーっとしていると、キンタローも水を飲みながら、隣に座った。
「まだ早いが、寝直すか?」
時計を見ると、まだ5時前。
いつも起床する7時までにはまだ2時間もある。
「起こしちまって悪い・・・でも、もう目が覚めちまった」
そうだな、とキンタローも言い、新しいTシャツや下着など着替えを持ってきてくれた。
「サンキュ」
礼を言って受け取るが、夢の後のだるさに指を動かすのもつらい。
まるで情事の後のように・・・。
そこまで考えて、オレは顔を覆ってうめいた。


それに体は冷えてきたのに、まだあの部分だけが夢以上にむずむずと疼いてオレは自分の卑猥さを恥じた。
何度も、何度も、夢に見た。
オレは、あいつに抱かれたかったのか?
まさか。
オレが着替えもせずうつむいているのを見て、キンタローが再び心配そうに肩を抱いた。
「大丈夫か。こういう時は、どうする?体を動かしにでも行くか?・・・それとも、やはり寝直すか?気分が悪いなら、今日くらい遅れてもいいだろう」
肩を引き寄せられ、オレは、思い余ってキンタローに抱きついた。
「シンタロー・・・?」
キンタローは驚いたようだったが、すぐに冷えた体を温めるように抱きしめ返してくれた。
オレの髪に顔をうずめて、まるでオレを全身で感じているようだった。
オレは顔を上げて、キンタローの形のいい顎や頬にキスをした。
「キンタロー、・・・抱いて・・・」
オレは耳に口付けると、恥じらいにためらいながら、搾り出すように囁いた。
キンタローが息を飲むのがわかった。
体を強張らせたキンタローが、ゆっくりとオレの方を向いた。
「どうした、シンタロー・・・」
初めて許しを出したんだから、ちょっとは喜ぶかな、と思ったけど、キンタローは眉を寄せて幾分訝しげな顔をした。
何だよ、失礼だな、と思ったけど、よく考えたらオレがキンタローでも、突然弱ってる恋人にそんなことを懇願されたらどうしたのかと心配したくなるだろう。


「・・・ごめん、やっぱ、こんな時じゃヤだよな・・・。忘れてくれ」
力なく笑ってキンタローから手を離すと、羞恥に赤くなった顔を背けてTシャツを手に取った。
プールでも行ってこようか、と思う。
きっと欲求不満なんだ。
キンタローの言う通り無心に体を動かしたら何もかも昇華されるかもしれない。
そう思って立ち上がろうとすると、キンタローが突然オレの腕を引いた。
そのまますごい力で引っ張られ、ベッドに押し戻された。
仰向けに倒れたオレに、キンタローが覆いかぶさってきた。
目を丸くしていると荒々しく唇をふさがれ、オレはうめいた。


「ん・・・!」
驚いて抵抗しようとするが、両腕をすっかり押さえられて、全身で体重もかけられて動けない。
一瞬夢の再現のような恐怖に、再び身がすくんだ。
しかし、それは最初だけで、その重みや痛み、息苦しさこそがいつもの夢ではなく現実であることをオレに告げた。
自然と力を抜くと、キンタローの動きも徐々に優しく、官能をかきたてるような動きに変わった。
同時に、オレが抵抗しないとわかると、キンタローは抑えていた手を緩め両の指をオレの指に絡ませた。
下唇を吸われ、舌を侵入させ歯列をなぞられる。
ためらいがあったが、舌を受け入れて自分のを絡める。
長いキスをされながら、剥き出しだった胸を弄られた。
思わず鼻にかかったような甘い声が漏れた。
その声を聞いたキンタローは顔を上げ、オレの目を見つめた。
その視線は熱く、明らかに欲情していた。
「イヤなんて言ってない」
掠れているが、いたって真剣な声で、キンタローは言った。
そしてシーツを手繰り寄せると、2人の姿を覆い隠した。
そのまま濡れた唇をオレの胸に落とす。


白い闇の中、金の頭がオレの上でうごめいている。
冷えていた体が再び熱を帯び、従兄弟に触れられることに歓喜して跳ねる。
時々、愛おしそうに顔中にキスを落として、そしてまたオレの全てを味わうように舌を這わせた。
それは生々しく、夢ではないことをオレに教える。
金の髪がオレの上を滑るのも、濡れた舌が腰をなぞる感触も。
愛しい従兄弟の匂い。
ベッドに感じる重力。
何よりも、キンタローの吐息の熱さ。
五感の全てで感じる。
あの男に余裕で上に乗られていた夢とは違う。


オレはキンタローを掻き抱き、もう一度キスをねだった。
忘れさせて。
悪夢を。
まだきっと見続けるだろう、悪夢を。
青の覇王の、悪夢を。
お前の熱で。



end

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