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酒はがぶがぶ飲むし、煙草はぷかぷか吸うし、おまけにギャンブル浸りの借金まみれ。
誠実さ、なんて言葉と対極の位置に居て、何時までも精神は子供のまま。
でも。
アイツだけが一族の中で唯一俺を俺と見てくれていたのかもしれない。
親父のように猫可愛がりをする訳でもなく、サービス叔父さんのように誰かの面影を俺に重ねる訳でもなく。
回りの人間のようにマジックの息子って肩書ごしに俺を見るんじゃなくて。
俺自身をシンタローとして見てくれた大人は、釈然としないがハーレムだけだったような気がする。
それに、ほら、あるじゃねぇか。悪い雰囲気に引かれる年頃ってやつ。
まさにソレ。
尖ったナイフって危険っぽい。でも、それに憧れる。そんな感覚。
叔父と甥の関係から一線を越えてしまった夜、ハーレムはお決まりのように煙草を加えてひと吹きした。
煙草の煙りは灰色で。
随分強いの吸ってるなぁ、なんて、熱でぼうっとした頭で思う。
「オイ、シンタロー、起きてンだろ。」
ぶっきらぼうにそう呟く。
低音の声が脳を刺激した。
「ああ。」
返事をするのが怠かったが、とりあえず答えてやる。
「責任はとってやるから安心しろ。」
「………いらねーよ。」
眠くなった頭を少し揺らしてキャンセルするが、ハーレムは「そう言うな。」と言ってシンタローの頭を撫でる。
大きなその手でガシガシと乱暴に撫でられた。
乱れた髪を余計乱されたが、不思議と嫌じゃない。
温かい手の平の体温に、シンタローは心地よくなる。
瞼が重くて目を開けてられない。
シンタローは、心地良さを感じながら睡魔に身を任せて眠りについたのだった。
眠ってしまった為、あのあとハーレムが何を言ったのか、何をしたのかは知らない。
何かあったかもしれないし、逆に何もなかったかもしれない。
「オイ、シンタロー。大丈夫かぁ?」
ぼうっと物思いにふけっていた所をハーレムの声で現実世界に引き戻される。
今日は部屋に二人きり。
何をする訳でもなく、ただ居るだけ。
でも、邪魔じゃない。
うるさいし、自分勝手だけど、それが当然というか、例えるなら空気みたいな。
そんな感じ。
ハーレムがシンタローの部屋に居るのは別段珍しくもなんともない光景であった。
昔から。
シンタローは何かあるとハーレムに相談していた。
彼の感覚の中で、ハーレムが一番自分に近い匂いを持っている、と、シンタローは知っていた。

マジックという巨大な壁にいつも勝てなくて、でも離れる事もできなくて。
サービスのように綺麗に割り切れたり、グンマのように勝てないのが当然と思う事もできなくて。
ただ、真っ直ぐに進むしか脳がない。
それをシンタローは嗅ぎわけていた。
コイツになら全てを話せて、全てを肯定してもらえて、同時に否定してもらえる。
そのカンは当たっていた。
だからこうして二人で居るのがとても心地いいのだ。
弱者の傷の舐めあいとも違う。
お互いトラウマは乗り越えてきた。
「オイ、酒ねーのかよ。」
「ねぇよ。俺の部屋で煙草吸えるだけありがたいと思え!」
そう悪態をつきながらも、シンタローは自らハーレムの側に寄る。
体をハーレムに預けるように左肩に寄り掛かった。
ハーレムもシンタローが咳込まないように煙草を少し遠ざけた。
ハーレムの側に寄ると、ハーレムの吸っている煙草の匂いが鼻に入ってくる。
この匂いイコールハーレム。の方程式が成り立つ位嗅ぎ慣れた匂いだ。
すり、と、擦り寄ると、ハーレムの大きな手がシンタローの左肩を優しく掴む。
「どうした、甥っ子。」
いつもと違う優しい声がする。
「別に……」
そう言いながらも甘えるように擦り寄る事は止めない。
正直甘えたいのだ。
この同じ匂いのする子供みたいなこの叔父に。
ベロベロに甘やかすんじゃなくて、何て言うか、自分の全てを理解して、それでも優しくしてくれる。
それをシンタローは求めていて。
ハーレムもそれを理解して、甘えさせてやる。
口に出せばこの甥っ子は甘えるのを止めてしまうだろう。
だから気付かない振りをして、受け止めてやるのだ。
何もしないでこうしてのんびり二人で過ごすのは心地良いのではあるが、ハーレムとしては少し物足りなさを感じる。

折角の休みで一緒に居るのに何もしねぇってぇのはアレだよな。

ちら、とシンタローを見ると、朧げに下を見ている。
短い睫毛と、何だか憂鬱そうな瞳がひどくハーレムには艶やかに見えた。
シンタローに触れている左手がじんわりと汗ばむ。
戸惑う事はしなかった。
元々我慢強くはない方である。
無防備なシンタローを床に倒すのはそんなに難しい事ではなかった。
トサ、と、優しく倒し、覆いかぶさると、シンタローは一瞬驚いたように目を見開いたが、直ぐに何時もの目付きになる。
これからハーレムがしようとしている事。

シンタローだってもう子供じゃないのだから解っている。
しかし。
「………いやだ。」
「俺はお前が拒むのが嫌だ。」
まるで子供の屁理屈。
そうだ。このオッサンは図体ばかりがオッサンで中身は子供なんだ。
チッと、舌打ちをして顔を背けると、ハーレムは肯定の印かと思い顔を近づける。
もう少しで唇に到達する、という所でシンタローの唇が言葉を紡ぐ。
「……やだって言ってンのにするなら親父に言い付けるゼ。」
………………。
“親父”という単語に、苦い思い出が脳裏に浮かぶハーレム。
ルーザーが彼は一番苦手ではあったが、そのルーザーですら勝てなかった長男マジックの名前が出れば分が悪い。
しかもマジックは息子のシンタローを異常に溺愛している。
二人の関係も内緒なのだ。
ばれたら……。
息子は可愛いから殴れないだろうが、ハーレムは確実に殺される一歩手間までボコボコにやられるだろう。
「テメ…何でそこで兄貴が出て来るんだ。」
「アンタが一番怖いって思っていて俺の絶対の味方だから。」
使えるモンは親でも使うゼ俺は。
勝ち誇ったように笑い、そう呟くと、ハーレムは苦虫を噛み潰したような表情をした。
体を退けると、シンタローも後から又座る。
「あ、もしかして“そんなの関係ねぇよ。”とか言って押し倒した方がよかったか?」
「……阿保か。アル中は脳みそまで発酵してンのか。」
少し距離を置かれたのが寂しい。
さっきの方が密着していたのに。
早まったかな、と、思うが、亀の甲より年の功。
ハーレムの頭がキュルキュルと高速回転した。
何やらガサガサと服のポケットを漁る。
カツンと何か固いものに指が触れたらしい。
ズボンの後ろのポケットだ。
訝しげにシンタローが見ていると、するりと取り出されたのはDVDロム。
ダビングしたものらしく、題名は書いていない。
「何、ソレ。」
指を指して嫌そうな顔をすると、すました顔でさっさとシンタローのデッキにはめ込む。
「何勝手に入れてンだ!」
AVとかならどうしよう、と、シンタローは焦った。
仮にそうだとしたら拒める自信はない。
なんだかんだ言って、イイ所のお坊ちゃまである。
そういう類いの物は余り見た事がないし、もう大人の階段を登ってはしまったが、同年代の男性と比べると、まだまだ純情なのである。

しかし、パッと写った画面は明らかに違うもので。
王手洋画メーカーのものである。

一体コイツは俺に何を見せる気なンだョ。

鼻歌混じりで上機嫌なハーレムをじとりと見る。
すると、明らかに画面がおかしい。
微妙に暗い。

ま……まさか……。

血の気が引いた。
ハーレムはといえば、そんなシンタローの百面相をニヤニヤ面白がっている。
「ホラー映画だぜ?シンちゃん。」











画面にはおびただしい量の血肉がスプラッタされている。
女性の甲高い叫び声や、男性の野太いうめき声。
所狭しと並べられている拷問器具の数々。
目をつぶっても耳を塞いでも情景が浮かぶし、聞こえてくる。
ハーレムにしっかり抱き着いて、それでも馬鹿にされないように画面を見る。
しかし、はっきりとは見れないので、見ているように見せ掛けて実は違う所を見ている。
しかし、目の端にはチラチラと赤いものが見えるし、耳をつんざく断末魔も聞こえてくる。
その度シンタローは、ビクン!ビクン!と体を震わす。
それを見ているハーレムはご満悦。
シンタローが兄貴に言えない事。
それは自分が言い訳ができない恥ずかしい事。
AVじゃハーレムが無理矢理見せた、と言って逃げられればそれでオシマイだし、実力行使も又然別。
しかし、ホラー映画は違う。
無理矢理見せたとマジックに言う→怖くてシンタローの奴俺に抱き着いてきたんだぜと、チクられる。→シンタロー恥ずかしい。
この方程式が成立するのだ。
勿論ハーレムはボコボコにされるが、シンタローは自分が恥ずかしい事はしない。
プライドの塊のような男なのだ。
ゾンビが居る暗い地下室。
知能を持った、半分白骨化したゾンビがバーナーに火が点し、いたいけな女性は鉄の仮面を被せられて声が出ない。
しかし、目だけは見える。
バーナーがゆっくりと音を立てながら女性に近づけられる。
「―――ッツ!も、嫌だっ!消せよ!消せッツ!!」
いつもならしないのに、ハーレムの少し前の開いたワイシャツに顔を埋める。
鍛えられた胸板の感触とか、そういったものは一切感じない。
ただ怖くて怖くて仕方がなかった。
「なんだよ、イイ所なのに。」
ヘラヘラと笑うハーレムをこれ程までに憎いと思った事はない。
さっきまでのゆったりとした時間は何処へ行ってしまったのか。

いや、今はそんな感傷に浸っている余裕はない。
ドンドンとステレオから流れる心臓を圧迫するようなBGMが流れている。
早く消さなければ。
リモコンを取ろうとしたが、ハーレムに先に奪われ、シンタローの指先は空を切った。
「かっ!返せッツ!俺のリモコンだッツ!!」
下から睨みつけるようにハーレムを見るが、ハーレム美ジョンでは上目使いにしか見えない。
「ヘッ!バーカ!大人しく見てろよ。それとも何か?怖いのか?」
怖いからこんな真剣に消そうとするのだが、ハッキリ怖いのか?と聞かれれば肯定しずらい。
シンタローのプライドが揺れる。
『きゃああああ!』
そんな事をしている間に話は進んでいって、耳をつんざく女性の悲鳴が聞こえ、思わず振り向き画面を直視してしまった。
しかし、バーナーは彼女に届く前にゾンビの足元に落ちた。
どうやら彼女を助けに来た男性がゾンビのバーナーを落としたらしい。
本当、間一髪。
シンタローは短い安堵の溜息を漏らす。
しかし、ゾンビ相手では圧倒的に不利で。
又シンタローは怖くなる。
「ちょ!しし舞!テメ、リモコン返せ!!」
「やーいやーい怖がりシンタロー!!」
「はりきりムカつくーーッツ!!」
いつも張り詰めた顔をして、清潔感たっぷりのこの甥の変わりようはハーレムにとって楽しいもので。
言い方は悪いかもしれないが、楽しい玩具を手に入れた感覚に似ている。
もっともその玩具は、とても大事なものなのだが。
無理矢理シンタローを自分の足の間に座らせ、画面を見させる。
顔面蒼白なシンタローを見て守ってやりたいなんて思うのはおかしな事なのだろうか?
嫌がり暴れるシンタローの腕を後ろから掴みあげ、動けないようにする。
その素早さは、流石特戦部隊の隊長なだけはあった。
DVDはクライマックスを迎える。
おぞましい血の滴るグロテスクなゾンビが男性を殺そうとするが、男性も負けじと近くにあった鉄パイプで応戦する。
『何に変えても俺が貴女を守る。』
そう呟いて戦うのだ。
女性は縛られ動けない状態で何かを叫ぶが、鉄のマスクのせいで言葉が聞き取れない。
シンタローはぎゅ、と、ハーレムの手の平を掴んだ。
ハーレムもその手を握り返す。
画面いっぱいに男性が映り、ゾンビの横っ面に改心の一撃をくらわせた。
飛び散る赤い肉片と白い骨。
ぐちゃっ、と嫌な音を立てて崩れさる。

ボスらしきゾンビを倒しても、まだ回りのゾンビが残っていて。
男性は仕掛けておいた爆薬の導火線に先程倒したゾンビが落としたバーナーで火をつける。
ジジッ……と音がしたかと思うと、男性は女性を抱き抱え階段を駆け登る。
間一髪の所で二人は無事逃げ出す事ができたのであった。
エンディングロールが流れ出す。
シンタローはほっ、と一息ついた。
そして、脱力しきったようにハーレムに寄り掛かる。
ハーレムは煙草を灰皿に押し当て、新たに火を付ける。
カチン、と、ジッポを仕舞う音がした。
「もしも、あんな状況になったとしたら……」
そう呟くと、シンタローは恐ろしい顔付きでハーレムを睨んだ。
「ふ、ふざけんナッツ!!あってたまるか!!」
「だから、もしもだって言ってるだろーが。もし、そうなったら。」
煙草を肺に染み込ませ、深く吸って吐いてから続く言葉を紡ぐ。

「俺がお前を守ってやるよ。何に変えてもな。」

そして、ニヤッと笑うので、シンタローは唖然として何も言えなかった。
まさかとは思うが、これが言いたいがためにあの映画を見せたのだろうか。
だとしたらコイツ……。
怒りを覚える反面、新たな計算高さな一面も見れてシンタローの心境は複雑であった。
でも、今はそんな事はたいした問題ではない。
シンタローの一番の問題。
それは………

夜、一人で眠れるだろうか。

これが最大のポイントであった。
時計を見ると、もう夜9:00過ぎ。
あ、寝るだけじゃない。
風呂とかトイレとかどうすればいいんだ。
28にもなって一人でビビって行けないなんて恥ずかし過ぎるにも程がある。
「どぉしたぁ?シンタロー。」
ニヤニヤと笑うハーレム。
明らかにシンタローの心境が解っての台詞だ。
苦虫をかみつぶしたように苦々しげにハーレムを見つめる。
「別にッツ!」
「あ、そ。」
別段興味なさげに相槌をうつ。
「じゃあそろそろ俺は艦に戻るかな。」
片足に手をのせ、加え煙草をしながらよっこら、と立ち上がろうとする。
「え……。」
思わず声が出てしまって、慌ててハーレムから顔を反らす。
勿論ハーレムにもそれは聞こえていたが、あえて聞こえない振りをして。
「と、思ったが、そーいや俺の部屋、こないだの襲撃くらって壊れてたんだった。悪ぃな、風呂とベッド貸してくれ。」

それがシンタローを気遣っての事だと、元々カンのいいシンタローには解っていた。
第一、艦がやられたのだって随分前の話だし、もし本当なら、今まで何処で寝てたのか、とか、コイツだけならともかく、隊員達は一体何処で風呂に入っていたのか、とか様々な疑問が浮かぶ。
こんなバレバレの嘘……。
でも、シンタローは正直嬉しかった。
コイツは二人きりの時はこうやって甘やかしてくれる。
それが酷く心地良い。
さりげない優しさが心に染みる。
きっと似た者同士だから、相手の考えている事が解るのだろう。
相手を理解できれば必然と思いやれる。
それが酷く嬉しかった。
一方ハーレムの考えは、勿論優しさとして言い出したのだが、自分が見せたホラー映画でシンタローがこれ程までに悩むとは思わなかったので、罪ほろぼしという名目も入っている。
でも、一番大きな割合を占めているのは、シンタローと少しでも一緒に居て、甘やかしてやりたい、という気持ちだった。
コイツは又明日から赤い重たい総帥服を身に纏い、上を向いて、世界各国の要人達の前でも威厳を失わないようにしなければならない。
そんな息の詰まる生活の中、少しでもシンタローを総帥としてではなく、一人のシンタローとして休ませてあげたかった。
今日は皆出掛けて居ない。
居るのはシンタローだけ。
二人を邪魔する者は誰も居ないし、邪魔する物も何もない。
「飯食って、風呂入って、早めに寝よう。」
そう呟いて、ハーレムはシンタローの髪に触れた。
思ったよりサラサラのその髪を、パラパラと滑りこませると、シンタローはくすぐったそうに目を細め、肩を竦めた。

やばい。理性が切れそうだ。

ハーレムの喉が上下に動き、唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた気がした。
「シンタロー……」
甘い声で囁かれ、唇に一つキスを落とされる。
「ん……」
先程とは変わって、シンタローもそれを受け入れた。
脳味噌がとろけそうな濃厚で甘いキス。
奪うようなキスではなく、慈しむような。
それでいて、甘美な快楽へ誘う。
シンタローの目が、とろん、として、頬がうっすら桃色になる。
「はっ……」
軽い息継ぎの後、再びハーレムの唇が降ってくる。
舌で優しく口内をかきまぜられ、舌を吸われれば、シンタローの肩が少し震えた。
「ふ、う……」
いいか、なんて聞かない。
嫌だと言っても、もう理性が持たない。
シンタローをゆっくりと床に倒すが、今度は抵抗しなかった。
「腕、まわせ。」
そう言うと、怖ず怖ずとだが、シンタローの健康的な腕がハーレムの背中に手を回した。
ハーレムの指がシンタローのシャツの下に入る。
その時。

「シーンちゃーんッツ!お腹空いたよぉ~!」

躊躇いなくドアが開き、元気よくグンマが入ってきた。
グンマの後ろには当然のように、仏頂面のキンタローが控えている。

わ゛ーーーッツ!!

声にならない声をあげるシンタロー。
ハーレムは押しのけられ、かなりふて腐れていた。
第一、なんでこいつらが。
「お前ら学研は……」
「とっくに終わったよぉ~!今、何時だと思ってるの~?シンちゃん。それより早くご飯作ってよぉ~!」

ペコペコだよぉ~!と、お腹を叩く。
シンタローは苦笑いを浮かべてハーレムを見た。
かなりご立腹の様子で、煙草に火を点けている。
シンタローは苦笑いを浮かべたまま、触らぬ神に祟りなしとばかりにグンマ達と一緒に部屋から出ようとした。
その時、グイ、と腕を引っ張られて、シンタローだけドアから出られなかった。
「今夜覚えてろよ。」
そう、耳元で呟かれ、背中を押された。
そう。どうあがいたって今日は怖くて一人で眠れないのだ。
だったら、温もりの中で眠りにつきたい、と思い、シンタローは笑って部屋を出たのであった。
外では従兄弟達が彼の料理を待っている。
久しぶりに腕がなる。
袖を捲るジェスチャーをして、シンタローはキッチンへ向かうのだった。










終わり。


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その日シンタローは憂鬱であった。
理由は簡単。
今日、激しく彼を愛する男、マジックが訳の解らないサイン会から帰ってくるのだ。
シンタローは別にマジックを苦手な所はあるが嫌いな訳ではない。
昔、コタローの事、一族の事、生き方の事で激しく対立してきたが、今は全て和解し、男らしく水に流した。
過去はどうあがいてもリセットはできない。
だからといってうじうじぐちぐち言っても埒があかないだろう。
だったら綺麗さっぱり水に流すべきだ、というのがシンタローの考えだった。
では何故憂鬱なのか。
その理由もまた簡単である。
これは昔からの儀式のように行われてきた肌と肌との触れ合い。
いわゆる情事。ぶっちゃけセックス。
幼い頃はただの過剰なスキンシップであったが、ある年齢を過ぎた頃から父親は自分を息子という枠組みだけでなく恋愛対象として見るようになった。
まだ知識がなかったことを思うと、多分10歳かそこらだったのだろう。
父親は自分に一般の勉強、経営学、社会学、精神学等いたる学問を学ばせたが、保険体育のいわゆる性の学びは一切学ばせる事はしなかった。
そして、親子でセックスをするのを当たり前の事だと教えてこられては誰でも暗示にかかるだろう。
それは不自然な事なんだと知ったのは士官学校に入って一年位経った後か。
コタローが幽閉された時には知っていた。
知ってからも含めてマジックが遠征から帰って来ると必ずシンタローを求める。
殺した後の興奮からなのか恐怖からなのか解らないが、会えない期間に比例して激しく抱くのだ。
今はもうドロドロの関係は終わり、バカップルとまではいかないが落ち着いてきている。
実はシンタローは抱かれるのが嫌いな訳じゃない。
暗示にかかっているのかどうか、それはハッキリとは解らないが、シンタロー自身マジックを“男”として見ている。
そして、セックスをマジック以外の人間とはしたいとは思わない。
そして。ここからが本題。
マジックの憂鬱ならぬシンタローの憂鬱の答え。
じゃあ何がシンタローは嫌なのか。
実は情事中のマジックなのである。
とにかく五月蝿い。
喘ぎ声ではなく、シンタローにとって死ぬ程恥ずかしい事を引っ切りなしにベラベラ喋りまくるのだ。
何処がいいの、と聞くのは当たり前で。
言わせたがったり、果ては自分で動いてみて、なんて言い出す事もある。
再度言う。
シンタローはマジックに抱かれる事が嫌いではない。
ただ五月蝿いのが嫌なのだ。
邪険にする、とかそうゆう嫌ではなく、何と言うか、まあ、ぶっちゃけ恥ずかしいのである。
あの低音の甘い声で耳元に囁かれるだけで恥ずかしくなるのに、卑猥な言葉を口に出されたらそれは結構なダメージとなるだろう。
何とか逃れる術はないか、と考えるが、あったらとうの昔からやっている。
何をしたって駄目だったではないか。
マジックの方が一枚も二枚も上手なのだ。
「は~ぁ……」
重たい溜息をついて外を見上げれば青空が広がっていて。
自分の心とは対象的な天気にシンタローはまたテンションが下がる。
シンタローが願う事は、マジックが疲れきって帰り、何事もなく終わる事。
さもなければ非常に淡泊なセックスである事。
普通に考えて疲れきって帰って来てもシンタローを抱かなかった事などないし、淡泊なセックスに至っては一度としてない。
それでも願わずにはいられないのだ。
憂鬱な気分ではあったが、テキパキと手を動かし目も動かす。
仕事に私事は禁物。
例え乗り気じゃなくてもやらなければならない。
それが総帥。それが俺。
「これが次の資料だ。」
バサッと無情にも置かれた書類。
やってもやっても終わらない。
「来週のサミットで使われるやつだ。一応目を通しておけ。グラフ化したものはコンピュータにも入れてある。」
「ああ。サンキューな。あーあ。この紙が全部札束だったらいいのにナ。」
パラパラと書類を指で撫でながらそう言うと、キンタローは訳が解らないという風にシンタローを見た。
彼はこの世界に現れて二年しか立っていない。
頭脳面ではずば抜けて優秀なのだが、冗談が通じないのである。
「あ~…、悪ィ。何でもねぇ。」
「そうか。」
とりあえず可哀相だから謝ってはおく。
そして仕事をまたし始めるのだった。










深夜0時。
外はもう真っ暗で。
総帥室とちらほらと何部屋か明かりが点いているだけとなった。
それでも星が余りよく見えないのは大気汚染の関係とガンマ団本部の馬鹿高い建物から鼠の侵入がないかチェックするライトが煌々と目下を照らしているからだろう。
よっぽどの事がない限りガンマ団へ侵入する馬鹿はそうはいない。
が、ごく稀に居る事もある。
あのライトが透明から赤に変わって警報が鳴ったら、侵入者もしくは脱走者が出た事となる。
結局マジックは帰って来なかった。
安堵と不安が同時にシンタローの心に生まれる。
しかし、不安は直ぐに掻き消される事となる。
バラバラバラとヘリコプターのエンジン音が頭上から聞こえ、段々近づいてくる。
サーチライトが一瞬だけそのヘリを捕らえガンマ団のマークを確認すると、直ぐに定位置を照らす事に専念した。
軍用機でないそれは正しくマジックの乗っていったヘリで。
シンタローは深い溜息をついて椅子から立ち上がる。
そして、トントンと書類を整え引き出しに入れると明かりを消して総帥室から出た。
どうせ仕事をこのまましていたってアイツはお構いなしにやってきて、ここで事をおっぱじめる可能性がある。
それだけは潔癖なシンタローは嫌だった。
前にも何度かそういった目にあったが、次の日の朝、ここに来ると思い出してしまうし、バレてやしないかと不安になる。
総帥室のドアをロックしてシンタローは最上階の自室に向かうのであった。










自分の部屋に着くと、ピンクの親父が部屋の前に立って。
シンタローが近づくと気付いたらしく満面の笑顔で片手を上げ、ブンブン振った。
「シ~ンちゃ~ん!」
「はーいはいはい。」
呆れたようにマジックの呼びかけに答える。
マジックの服装や、時間的に行って、屋上のヘリポートから直行してきたのだろう。
「ハイ。お土産。」
そういって渡された小さな箱。
とりあえず部屋にマジックを招き入れてからその箱を開けてみる。
「………。」
「ソレ、すっごくカワイイでしょ!是非シンちゃんに履いて欲しくて思わず買っちゃった☆」
入っていたのはパンツ。
しかも、トランクスや、ボクサーパンツなんかじゃない。
黒いスケスケのレースパンツ。
多分女もの。
ヨーロッパ系のものだからアジア系のシンタローにもはけるものだろう。
「何。死にたいのアンタ。」
「やだー!シンちゃんったら!それ履いてパパを出血死させる気?でもパパ死なないように頑張る!」
「人の話を聞け。会話をしろ。」
パンツを握りしめながら怒りにわななくのだが、あっけらかんとした父に笑顔で交わされた。
深い溜息をついてマジックから視線を反らしたその時。
ぐらりと視界が回り、ベッドに押し倒された。
バフン!と音を立てて倒れ込むシンタローの足を掴んでさっさとズボンを下ろす。
「わー!わー!わー!や、やめろッツ!!」

足をばたつかせようとするが、現役を退いたとはいえ最強の人間である事に代わりはない。
「ちょっと履いてみよーか、シンちゃん!」
笑顔でそう言い放つと、シンタローのベルトをさっさと取り、ズボンと一緒にパンツも脱がせる。
そして、買ってきたパンツを履かせるのだ。
「いやー!ピッタリだね!パパの採寸に間違えはないみたい。ま、当然だけどねー!」
「~~~ッツ!!」
恥ずかしさと、惨めさでシンタローは顔を真っ赤にしてマジックを睨みつける。
何を考えているのだ、この馬鹿は。
女もののパンツなんか履かせて。
身をよじるがびくともしない。
する、と、マジックの指先がシンタローの中心部分を撫でる。
ビクリとシンタローの体が強張った。
「ふふ。ココちょっと出っ張ってるネ。女の子の下着着て興奮しちゃったのかな?」
「あ、あほか!ンな訳ねぇだろーがッツ!!」
ガアッ!と怒るのだが、マジックは口の端を軽く上げて笑っている。
ムカつくと思うのだが、絶妙なマジックの指捌きに、シンタローも感じる。
イヤ、それだけではない。
慣れない総帥業務をいつも激務でこなしている為疲れているのもその要因なんだろう。
「ちょ、テメ!いい加減にしろヨ!」
「良い加減にしろ、なんてシンちゃんてばだいたーん!」
ふふ、と笑うが目は笑っていない。
しかし、その父の言葉にシンタローは少し殺意を覚えた。
「あれ?シンちゃん。なんだかパンツが湿ってきたねぇ?」
目を細めてシンタローの中心を見てからシンタローの顔を見る。
カァッと顔が熱くなるのを感じた。
マジックと顔を合わせたくなくて、ふい、と横を向く。
事実パンツの中の自身がキツイと訴えているのも当の本人が一番よく知っている。
「ココだけ色が変わってきたよ……。それに何か持ち上がってきてる。シンちゃん、何が持ち上がってきてるのかな?お前の体の何処がパパに顔を見せたがっているのかな?」
くるくると円を描くように先端を撫でると、シンタローが小さいうめき声を上げる。
その我慢する姿がまた愛おしい。
それと同時にマジックのサディストな部分も刺激する。
快感を必死に消そうと試みるのだが、そんなこと出来る訳もなく。
シーツを噛んだ。
「ココ、何処なの?シンちゃん。パパに教えて。気持ちよくってだらし無く泣いてるのは何処?」
ついに下着から顔を出したシンタロー自身を直に指の腹でぐりぐりと押す。

親指がシンタローの愛液で濡れた。
そんなことは構わず、ぐりぐりとピンク色の先端をいじってみる。
「体の名前言えないのかな?そんなお勉強してなかったもんね。でも、知ってるでしょ?28にもなって知らない訳ないよね。」
シンタローの愛液でぬるついた指先でシンタロー自身を刺激しながら言う。
「くぅ……ッ」
唾液で濡れた唇から苦しそうなうめき声を出す。
だが、出した所でマジックの愛撫が止まる訳もなく。
親指と人差し指で円を作り、立ち上がったシンタロー自身をくぐらせて上下にグラインドさせる。
ひくひくと震えるシンタロー自身を見て、心底楽しそうな笑みを浮かべながら。
「ホラ、段々後ろのお口も淋しくなってきたんじゃないのかな。お前は前だけじゃ満足できないからね。そう私が仕込んだ。」
マジックの言った事は当たっている。
もう正常な男子とは違い、女みたいに刺激してもらわないと開放された、という気にはなれなくなっていて。
それは小さい頃からマジックに教えてもらっていたから。
前だけじゃ足りない。
例え開放したとしても後ろはきっと疼いてしまうであろうし、脳から溶けたような快感はもらえないだろう。
「欲しかったら、今パパが触ってるの何処だか言ってご覧。」
円を外し、親指を先端に当て、グリグリしながら上下に動かす。
「あ、あ、あ、し、知るか…アホ……ッツ!」
涙目になりながらもまだ反抗する。
「フーン……」
薄い唇が弧を描いたかと思うと、耳元に近づいてきた。
マジックの息遣いがはっきりと聞こえる。
一番凶悪なパターンがきた、とシンタローは目を強くつぶった。
「じゃあ、今から体の仕組みのお勉強をしようか。」
悪魔の囁きがシンタローの耳から脳髄へ染み渡ったのであった。











「ハイ、シンちゃん。今からパパとお勉強だよ。」
暴れないように、と、ベルトで腕をベッドに括り付けた後、マジックは笑顔でそう言い放った。
「ふざけンナ!解きやがれッツ!!」
睨みを効かすが、マジックにとってシンタローはどんな顔をしても可愛いので怖くない。
「ハーイ。まずはココ。首筋。」
チュウッと強く首筋を吸い上げれば、シンタローはビクンと体を震わせた。
唇を離すと、くっきりと映る赤い跡。
「や、やめろ……」
抵抗もできなくて、小さな声で反論するが、まるで聞こえないというようにマジックは知らんぷり。
「次は…ピンって尖ってる胸、かな。でね、ココは乳輪。」
そう言って乳輪をくるりと指で円を描く。
「―――ッツ!」
シンタローが息を止めた。
ビクリと震える上半身は、寒さに震えた時のものとは異質を放っていて。
マジックはますます嬉しくなる。
「でね、シンちゃんお待ち兼ねのツンツンして自己主張しているココは……」
グリ、と、乳首を親指の腹で押し潰す。
「やあ!ッツ!!」
思わず大声を上げてしまい、シンタローは慌てて口を閉ざした。
は、恥ずかしい……!
なんて声を出してしまったのだろうと歯を食いしばりながら苦悩する。
「気持ちよかったの?じゃあ、ちゃんと覚えておいて。ココはね、乳首だよ。シンちゃんココ指でいっぱいいじめられるの好きだもんね。」
好きじゃねぇ、と悪態をつこうとしたその瞬間。
両方の乳首をマジックの人差し指で上下に弾かれる。
「や、あ、あ、あ!あぅ!あ!」
無意識に腰を淫らに揺らしながらマジックが与える快感に身を任せてしまう。
弾いたかと思えば摘んだり、舌で舐めたりかじったりして、マジックはシンタローの淫らな反応を楽しんだ。
「男の子なのに乳首が気持ちいいんだねぇ、お前は。これだけでイッてしまいそうでパパ、ハラハラしちゃったよ。」
ハラハラなんてしていない。
むしろ楽しんでいたくせに。
嘘ばかりつきやがる。
乳首から唇を離すと、今度は腹筋から脇腹にかけてを緩やかな曲線を描きながら指先で撫でる。
その度にシンタローは感じやすい体を怨む。
しかし、怨んだ所でシンタローの体はマジックの指先にいいように操られ、ビク、ビクと小刻みに震えるのだった。
「そして、ココは……」
先程散々いじくりまわしたシンタローの中止部分を優しく撫でる。
それは愛おしいものを愛を持って撫でるように。
「ン、ふ……ッツ!」
思わずビクリと体を奮わせ、我慢できない声が漏れた。
「ペニスだよ、シンちゃん。男の子の大事な所。シンちゃんはオシッコする時と、こうやってパパに抱かれて精子を出す時にしか使わないけどね。」
まぁ、もっとも他の人間に入れる為や、抱かれる為なんて絶対使わせないけどね。
シンタローに聞こえる程度の小声でそう呟き、意地悪そうに笑う。
悔しそうに睨むシンタローの瞳が心地よくてドキドキする。
「最後はココ。シンちゃんの一番恥ずかしい所。」
前を触っていた手が、シンタローの蕾を布越しに触れた。
「やっぱりパクパクしてるね、かわいい。」
うっとりと見つめ、指で股の部分の布を左にずらす。
ひくひくうごめく蕾を軽く指先で刺激した後、少しづつ埋めていく。
「ンンンンッツ!!」
唇を噛み締めて、痛みと快感に耐える。
ズズ、と、肉の中を割り込まれ、マジックの指が埋め込まれていくのをシンタローは後ろで感じた。
奥まで入った指をくるくると円を描くように掻き交ぜられる。
「あ、あ、や、ヤダ!あ、アッ、や、やめ……!!」
体に甘い電流が走り、涙が滲み出る。
目を見開きマジックにしがみつく。
「あ…あぅ……」
スンスンと鼻を啜り、マジックの肩に顔を埋めた。
「もう、準備万端だね。前からだらしなぐ垂れた精子で、お前のアナルはいつでもパパを受け入れようとしてる。」
そう言いながらも指を出し入れしたり、くるくる掻き回したりして、シンタローの反応を楽しむ。
シンタローといえば、恥ずかしさと苛立ちで、弱い光を点しながらマジックをひたすら睨んでいた。
それがシンタローに残された唯一の反抗だったから。
劣情に全てを飲み込まれないシンタローにマジックは舌なめずりをする。
簡単に落ちないから攻略のしがいがある、といった所か。
そんなシンタローが劣情に落ちた瞬間がマジックは最も好きだったが、そこに行くまでの行程もまた、最も好きなのであった。
シンタローとのセックスは大好きだ。
体だけじゃなく、心も一つになれるから。
全力の愛に押し潰されず、全力で返してくれる。

この子は私の全てだ。

「そろそろ私のペニスも、お前の中に入りたがってる。」
「や……」
「ね、お願い、シンタロー。お前と一つになりたいんだ。」

意地悪ばかりして、都合のいいことばっか。
でも、全部引っくるめてマジックなんだよナ。

「お願い……ね?」
耳元でささやかれて、くらっときた。
マジックの匂いが充満してる。
凄く切羽詰まった声だったから。
そんなに求めてくれるなら。
「うん……」
コクリと頭を下に振ると、マジックの優しい笑みがシンタローの目下に滑り落ちた。
「ありがとう。」
そう言われた瞬間貫かれた。
「―――ッツ!!」
声にならない叫び声を上げて、海老剃りにしなる背中。
しかも、ピンポイントでシンタローのいいところを狙ってくる。
「ッハ、シンタロー、お前の感じる所はね、前立腺っていうんだよ。」
「ぜんりつ、せん」

たどたどしくそれを言うと、マジックは微笑んだ。
「そうだよ、シンタロー。男にしかない性感態さ。」
グイ、と奥まで入れると、シンタローが目を見開いた。
目の前がしてチカチカ星が見える。
「あああ……!」
ぎゅ、とマジックに足でしがみつくと、優しく頭を撫でられた。
そして、さっきまでの乱暴が嘘だったみたいにゆっくり動き出す。
意地悪しないで確実にシンタローを絶頂にまで高ぶらせていく。
シンタローの目に宿していた小さな光は消えて、代わりに劣情を含んだ甘ったるい、瞳でトロンとする。

落ちた。

マジックがそれに気付かない訳がなく、少しだけ唇の端を上げる。
シンタローの自由な足がマジックの腰に絡まり、もっと、と催促するように締め付ける。
「かわいいよ、シンちゃん。お前の中はとっても気持ちがいい。熱くて、締め付けて、パパのをくわえて離さない。」
「ふ、ひ、ぁあぁ、とうさんッツ!」
生理的な涙がぽろぽろ流れてシンタローの睫毛を濡らし、頬に伝う。
ぬぷぬぷと耳を犯す水音。
羞恥を忘れ理性の糸も切れ、シンタローは快感だけを追う。
気持ち良くて堪らないこの行為はきっと、心と心が一つになれるからだとシンタローは頭の隅で考える。
マジックもそう思ってくれたらいいな、なんて思う。
「あ、とうさ……も、もぉ……あ、あ、」
びくびくと太腿の内側に電流が走る。
「いいよ。一緒にイこうね。」
そう言って激しく突き上げる。
シンタローの体が、寒さに震える子猫みたいにフルフルと震えた。
「あ!あ!ダ、ダメ!あ、あ、ああああ―――ッツ!!」
「―――ッツ!」
びゅく、びゅく、とだらし無くシンタローは精子を吐き出し、マジックの腹と己の腹を汚す。
それとほぼ同時にマジックの精子がシンタローの中に注入された。
荒い息遣いだけが部屋を支配する。
マジックがシンタローの額にキスをすると安心したのかそのまま気を失った。
「ふふ、シンちゃんたら、下着すごい事になってるのに無防備なんだから。」
汚れた女性用のパンツは前はシンタロー、後ろはマジックで汚されていて。
いそいそとシンタローの足をM字に立たせると、携帯を開き、パシャ、とその淫らさを収める。
かなり上機嫌なマジックだが、数時間後それがバレてシンタローに携帯ごと破壊され、尚且つ口を一週間聞いて貰えなくなる事をまだ彼は知らない。









終わり

as
「シンタローはん、愛してはります。」
いつもそう言って、俺の回りをチョロチョロしていたから。
愛してる、なんて、言うから俺もその気になったりしてさ。
あいつが俺から遠ざかって行くなんて考えてもいなかった。
あいつは俺が好きなんだ、と、自惚れに似た確信。
だからあいつに俺はノータッチだったのだ。










「わて、今度結婚しますんや。」
昨日までの遠征を終えて帰ってきた第一声がそれだった。
いつもの調子でいつもの顔で。
違うのはいつもの言葉じゃないこと。
「シンタローはんには友人代表でスピーチやってもらわんとなぁ。」
ニコニコと幸せそうに、笑う。
ふわふわした羽みたいな笑顔から紡ぎ出された言葉にシンタローは少し黙った。
コイツ、こんな顔出来るんだな、なんて思う。
凄く幸せそうな、顔。
でもその顔をさせているのは自分じゃなくて、見た事もない誰か。
「……おめでと」
何て言ったらいいか解らなくて、一番無難な言葉を選んだ。
「へぇ、ありがとうございます!」
またニコッと笑って、アラシヤマはシンタローに背を向け来た道を帰っていく。
シンタローはその後ろ姿をただ呆然と見送った。

おめでと、なんかじゃなくて、もっと違う台詞を言えば良かった。
お前みたいなのがいいっていうもの好きよくいたな。とか、お前の本性ちゃんと相手が解ってるのか、とか。

全部シンタローが思った事はただのヤキモチからなのだが、シンタロー自身は気付かない。
回りの風景が鮮やかさを無くし、セピア色に彩られている事にもシンタローは気付かない。
ただただモノクロームの世界に一人心を置いてきていて。
脳裏に残る微かなアラシヤマの笑顔が残像のように写っているだけ。
「あ。」
今気がついた。
「相手は誰なんだヨ。」
別に知ったからといってどうなる事でもない。

アイツ、俺のストーカーやってるような奴なんだゼ。

そう言ってやろうか、と思ってハタと気付く。
これじゃまるでアラシヤマを好きみたいじゃないか。
それはない。絶対に、断じて。
恋人を取られた女でもあるまいし。
フ、と、自笑気味に笑って、シンタローは仕事に戻ってゆくのであった。










書類に目を通し、サインとハンコを押す。
今日はどうやら調子が悪いらしい。
ペンを紙に引っ掛けるし、印の場所ではない所にハンコを押したりするし。


「大丈夫か。」
補佐官のキンタローにも何度か気遣いをされる始末。
普段間違えないイージーミスを連発した所で、キンタローからタイムがかかった。
「少し休憩しよう。」
そう一言言うと、シンタローの返事も聞かず、さっさと立ち上がってコーヒーを入れてシンタローのディスクの上に置いた。
豆の香ばしい匂いが鼻孔をくすぐり、シンタローはモゴモゴと数回口を動かしたが、確かに今日は調子が悪いと認めて、ブレイクタイムにつく。
こんな時キンタローの気遣いは嬉しい。
特に何かを聞く訳でもなく、ただ黙っている。
どうした、とか何があった、とか聞かないで、こちらが話すのを待つ。
言ってもいいし、言わなくてもいい。
流石元同じ体を共有していた、という所か。
「あの、さ。」
コーヒーのマグから唇を離して、シンタローが呟いた。
「どうした。」
何でもない、という顔はしない。
と、いうよりはむしろ、今回は聞いて欲しいのか、助言が欲しいのか、とキンタローは思っていた。
「もし、グンマが急に結婚する、って言ったらお前どーする?」
何だ急に、なんて思わない。
キンタローは少し考えるようにカップの中のコーヒーを除く。
少しして、シンタローの目を見た。
「淋しくは、なるかな。だが、従兄弟だし、家族だから、そんなに悲しくはないと思うのだが。」
その答えを聞いて、例える相手を誤ったと気付く。
キンタローと交流があり、尚且つキンタローに好意を持っている血縁外の人間は……と考えて、ある人物が出てきた。
真っ赤な服を着たマッドサイエンティスト、ドクター高松である。
「じゃあ、高松。」
そう話をふると、キンタローはまた真剣に考える。
「そうだな……やはり淋しいかもしれない。」
「あンだけ犯罪行為されてンのにか!?」
そうつっこむと、キンタローはコクリと頭を倒し、肯定の意を示す。
「俺の為に始めて涙を流してくれた奴だからな。」
目を細めて言葉を紡ぐ。
パプワ島での出来事を思い出しているのだろう。
「そうか。」
そうシンタローは一言呟いてコーヒーを喉に流し込んだ。
独特の苦みが味覚をかすめる。
コーヒーを全部飲み干し、ダンッ、とカップをディスクに置いた。

俺にとってアラシヤマはそんな御大層な間柄じゃない。
むしろ昔はお互い反発しあっていたし、ガンマ団No.1の座をかけて張り合っていた。

ライバルといえばライバルかもしれないが、今となってはライバルというより戦友……。

いやいや、と、シンタローは頭を振った。
長い髪がぱさぱさ揺れる。
友ではない。それはない。
アイツはミヤギやトットリ、コージとは何か違う部類なのだ。
友ではない。かといってただの部下でもない。
酷く曖昧で不安定な場所の奴なのだ。
シンタロー考え事をしている最中に、キンタローはさっさと自分の仕事についていた。
パラパラと紙をめくる音と、サラサラと文字を書く音にシンタローは現実に引き戻される。
そしてシンタローもまた仕事に戻るのだった。










「査定が終わった書類です。」
秘書課の人間はそう言ってアラシヤマに書類を渡した。
「へぇ、確かに受け取りましたわ。」
パラパラと分厚い書類を見ながらそう言って、口元を手で押さえる。
それは笑顔を隠せないから。
サインの仕方、ハンコの押し直し、普段からは考えてられないイージーミスに、アラシヤマはにやけそうな顔を必死に抑えた。

あのシンタローが心を乱している。

それは自惚れに似た確信。
この報告書を持って行った時の「結婚する」発言が引き金だろうと思う。
秘書課の人間と別れた後、自分のディスクに座り、口角を少し上げる。

「これであの人も自分の気持ちが解りますやろ。」
ガタンと引き出しを開けると、そこには隠し撮りしたシンタローの写真。
今まで取った中でも1番出来のいいものである。
ククク、と笑うアラシヤマは不気味過ぎて。
「まぁーたキモい笑いすてるべ。」
「ミヤギくん!目を合わせちゃ駄目だっちゃよ!」
しかし、日常茶飯事なので誰も気に止めないのであった。

結婚する、というのはアラシヤマの真っ赤な嘘。
早くこの気持ちに気付いて欲しくてついてしまった狂言。
自分は……充分過ぎる程待った。
体の関係を持ってから4年。
好きになってからは5年。
今だ自分ばかりがシンタローを好きで、言葉さえシンタローからはかけてもらえない。
好きだ、愛している、と自分から何度も言い、態度で示しても依然相手は曖昧模糊の態度を崩さなくて。
体を抱きしめて、貫いて、その時だけは縋り付いてくれるのに事が終われば素知らぬ顔でさっさと乱れた服を直しドアを閉める。
パタンというあの時の音程アラシヤマを寂しくさせる音はこの世に存在しないだろう。

シンタローも自分を好きだ、とは解っている。
だが、シンタロー自身は解っていないのだ。
あの、ガードの固いシンタローの事である。
肌と肌との触れ合いを好きでもない相手とはできないだろう。
初めて彼を抱いた時も初めてのようだったし。
まさか体だけの関係を持てる程彼は大人側ではないはずだ。
ふふ、と笑い、また引き出しに閉まってあるシンタローの写真を見始める。
愛するシンタローを見つめ、今日は早く帰ろうと思う。
シンタロー側から何かアプローチがあるはずだ。
アラシヤマはそう確信していた。
ダラダラと悩むより、悩みの根源、つまり自分をバッサリいきたいはず。
士官学校時代から良い悪いは別として、顔見知りでクラスも同じであったし、嫌でもシンタローは目立つ存在であったから、アラシヤマの方はシンタローをよく知っている。
女々しいタイプではない。
むしろ雄々しいタイプである。
まだ一度も使われていない自分用の団の携帯電話を取り出し、中を見る。
勿論画面設定はシンタローで。

早くかかってこないどっしゃろか。

ウキウキとした気分の中、アラシヤマは仕事を終わらせる為に、さっさとパソコンのキーを打ち始めるのであった。









アラシヤマの思惑通りシンタローは今日の仕事を早めに切り上げアラシヤマに会う気であった。
アポなんて必要ない。
例えどんな重要な用事があったとしてもアラシヤマにとってシンタロー以上の用事なんてないのだ。
ミスが多い今日だからこそ、なのかもしれない。
「今日の書類はこれだけだ。」
キンタローがそう呟いた。
明らかにいつもより少ない量であるとシンタローは勿論解っていた。
が。
だからといって、今日のイージーミスの多さは自分でも理解している。
なので、もっと出来る!などと責任感のない上っ面の言葉は言えなかった。
ガンマ団は正義のお仕置き集団に生まれ変わった。としても、武力団である事に代わりはない。
団の総帥である自分のサイン一つでとんでもない事になる事だってあるのだ。
総帥に回ってくるディスクワークの仕事は団員達の判断では解りきれない事の判断を総帥にしてもらう、というのが殆どで。
シンタロー直属の部下である伊達集のみ報告書を読んでいる。
それ以外はキンタローや、ティラミスやチョコレートロマンス等の秘書科に任せてあった。

今回の事はキンタローの暗黙の気遣いなのだろう。
それに、と、シンタローは思う。
自分もアラシヤマもいつも同じ支部や本部に居る訳ではないのだ。
またいつ顔を合わせるか解らない。
それまでずっとこのモヤモヤを持って生活するのはシンタローにとってマイナスでしかない。
ならば。
「悪ぃナ。」
シンタローはそう言ってキンタローを見ると、気にするな、というようにキンタローが微かに笑った。
プシュン、とドアが閉まる。
キンタローの姿を総帥室に残して、シンタローは早足でエレベーターに乗り込んだ。
こんな時、無駄に高い建物が恨めしい。
苛々するようにブーツを数回カツカツと音を立ててみたが、やった所で早く進む訳でもなく、壁によりかかった。

何で俺こんなにあいつの事で焦ってンだろ。

脳裏に浮かぶのは心底嬉しそうなアラシヤマの顔。
『結婚する。』
その言葉のそのフレーズだけが耳から離れない。
チン、と、間抜けな機械音がして、ようやく目的の階についた。
そのままカツカツと一目散にアラシヤマの居る部屋に行く。

プシュン、とドアが開き部屋に入ると、電気が消えていて誰も居なかった。
定時はとっくに過ぎていたから。
今日たまたま一緒だったミヤギとトットリはどうせ何処か二人で出掛けたのだろう。
だが、アラシヤマまで居ないというのは不思議だ。
ミヤギのベストフレンドであるトットリはアラシヤマが苦手なので、多分アラシヤマは誘わないだろう。
だとすると帰ったのか。

「そーだよな。結婚するって相手が居ンのに残業していく馬鹿なんて居ねぇよナ。」

暗闇のオフィスで呟いた言葉は光には溶け込めず、闇に消えた。
呟いて、ぼうっと焦点を定めずオフィスを見渡す。
言葉にしてしまった事で、全ての出来事を認めてしまった。
この気持ちって、何て言うんだっけ……心がスースーするのって何でだっけ。
「シンタローはん…?」
プシュンといきなりドアが開いてシンタローは、びく、と体を震わせた。
振り向かなくても解るお国言葉と独特の声色。
アラシヤマだ。
「あー…忍者はん電気消していかはったんどすなー。全く嫌がらせのつもりなんどっしゃろか。阿呆くさ。」
辺りを見回して面倒くさそうに呟く。
少しシンタローの返答を待ってみたが、言葉も、態度も何も変わらない。
「シンタローはん。どないしはったんどすか?」

声をかけてみるが返事は、ない。
「………もしかして泣いてるんどすか?」
「泣いてねぇよ。」
くる、とアラシヤマに向き直り、睨み付ける。
黒い髪は暗闇に溶け込んでいた。
電気を付けて確認してやろうと意地悪心がムクムクとでてきたが、シンタローがいつから此処に居たか解らないアラシヤマは、シンタローの目の事を考えてあえて電気はつけなかった。
「そうでっか。で、何の用事どす?忍者はんも、ミヤギはんも、もうとっくに帰りましたえ?」
暗闇に二人佇む。
目が馴染んできたのか、シンタローの顔がぼんやりと見えてきた。
が、真意は見えない。
ただただいつも見ている顔がそこにあるだけで。
怒りなのか悲しみなのか、喜びなのかさえ解らない。
「もしかして、わてに会いに来てくれたんどすか?」
体をしならせ媚びるように頬を染めると、シンタローは少し眉を上げ嫌そうな顔をした。
いけずなお人やなぁ~なんて冗談めかして言うと、シンタローの眉間の皺が深く刻まれる。
思い切り不快感の現れ。
「テメーに会いに来る訳ねーだろ!たまたま通りかかっただけだッツ!」
「へぇ?総帥室から遠いこの部屋まで、たまたま…どすか?」
「報こ…」
「報告書はもう出しましたし、秘書課の方にシンタローはんのハンコとサインを既に頂いとります。」
「くぅ…!だから、その報告書に間ち…」
「間違いがあるわけあらしまへんやろ。何人もがチェックするんさかい。」
「だ、だから!そーだ!ミヤギ!ミヤギと会うの久しぶりだからこれから会おうと…」
「それ、本気で言ってますのん?嫉妬通り越して溜息しか出まへんわ。忍者はんがおるのに出し抜いてまで会うてどないするん?」
「う……」
いくつかの押し問答の末そう言われると、もうぐうの音も出ない。
ミヤギとは当然士官学校からの知り合いではあるが、トットリ程のベストフレンドという訳でもなければ格別仲がよかった訳でもない。
一時はシンタローを倒してガンマ団No.1の座を狙っていた程の男である。
そう言ってしまえば伊達集全員がそうなのであるが。
「素直にわてに会いに来たといえばいいのに。」
そう言って笑うアラシヤマに不覚にも目を奪われた。
こいつは時々冷めたように見せ掛けた熱い目をする。
冗談めかしているのに。
まるで獲物を捕る為に興味ない振りをする肉食動物の目。

「いけずなシンタローはんも勿論好きどすけど、素直なシンタローはんも大好きなんどす。」
そう微笑まれてシンタローは少し頬を染めたが、すぐ、いつもの仏頂面になる。
値踏みするようにアラシヤマを上から下まで往復しながら見遣った。
「何だそりゃ。これから結婚するって奴が言う台詞じゃねぇゼ。」
「そう……どすな。」
肯定されて、ああ、本当にコイツは結婚しちまうんだ、と、シンタローは改めて思った。
今日、仕事が出来なかったモヤモヤはその肯定の言葉でスゥッと消えていったのだが。
新たに心に浮かび上がるモヤモヤ。
「独身最後に…酒盛りでもしまへんか?昔みたいに。」
「………」
沈黙は肯定とばかりにアラシヤマはシンタローの手を引いて部屋を出た。
いつもなら眼魔砲なのにそれをしないシンタローをアラシヤマは心の中でクスリと笑う。
部屋を出るといつもなら気にならない照明が暗い部屋から出てきたせいで眩しい。
目を細めるのはシンタローだけで、アラシヤマは平然としている。
何故なんて聞かない。
知りたくもないし、ましてやアラシヤマだし。
なんて、意味不明の事を思ってしまう。
そうこうしているうちに、もう目の前は本部のアラシヤマの部屋。
そういえばアラシヤマの部屋なんて士官学校以来入った事がない。
あの頃は学生寮の為、ボロイ部屋であったが、今は幹部の一人であるだけあり、しっかりした扉が構えてある。
ドアには金のプレートで“ARASIYAMA”と入っており、ここが彼の部屋だと主張していた。
「そういえばシンタローはんがワテの部屋に来はるんて士官学校以来やなあ。」
自分が思っていた事を言われて、何とも心を透かされているような気がして落ち着かない。
「そうだな。」
無難な言葉を一言吐いた。
アラシヤマがカードキーを差し入れると、解除音と「警備を解除しました」との解除アナウンスが流れ、プシュンとドアが開かれる。
部屋は当たり前だが真っ暗で。
掴まれていた手を離され、先に中に促され、その促されるままシンタローはアラシヤマの部屋に入る。
後からアラシヤマも部屋に入って来たようで、背後から扉の閉まる音が聞こえた。
暗闇でよく部屋は見えないのではあるが、シンタローは辺りをキョロキョロ見回す。
鼻孔をアラシヤマの匂いがかすめていった。

パチ、という音と共に部屋の照明が煌々とつけられ、シンタローは眉間にシワを寄せたのではあるが、すぐに言葉を失う事となる。

「……なんだ、これ。」

ようやく絞り出せた言葉はこの五文字。
呆然と立ち尽くすシンタロー。
アラシヤマは別段なんでもない態度。
なんなんだよ。なんだよ。これ。
血の気が引いた。
部屋にもアラシヤマにも。
電気のついたアラシヤマの部屋。
その部屋の至る所に自分の写真。
しかも撮られた覚えのないものばかり。
こんなものを見せ付けてなお、普段の態度と変わらないアラシヤマを見ると、自分がおかしいんじゃないかという錯覚までおきてくる。
「よく撮れとりますやろ。」
冷蔵庫から酒を取り出しながら笑顔で言う。
罪悪感のカケラもない言葉。
「お前……結婚すンだろ…?なのになんでこんな……。」
「ハハ。嘘に決まっとりますやろ。そんなの。わてがあんさん以外の人間に好意を抱く訳あらしまへん。」
心配かけてみたかったんや、というアラシヤマの瞳は普通で。
それが逆に怖かった。
そこまでやられて、そこまでされて。
もう自分は逃げられない所まで来てしまったらしい。
ああ。無情。











終わり











「ただいまー」
シンタローは今やっと自分の家件ガンマ団本部に帰って来た。
短い遠征ではあったが、やはり幼い頃から慣れ親しんでいる自分の家より住み心地のいい場所はない。
しかも遠征は旅行ではない。
シンタローは飛空艦の中自分の部屋があり寝る事が出来たが、下になればなる程一つの部屋で雑魚寝となる。
まだマシな環境ではあったが、やはりふかふかのベッドと温かいお風呂。そして人の手によって作られたご飯は遠い遠征の地に居る時から夢に見るような環境ではある。
そして何より、この精神的に重たい総帥服を脱ぎ捨てて、ただのシンタローになれるのだ。
団員に威厳を奮う事も気を使うこともない、今自分の行ける範囲でシンタローになれる場所。
行けない所を含めば、あの南国の楽園ではあるのだが、それと肩を並べる位、自室も安心できるのだ。
「おかえり、シンちゃん。パパね、すっっっっごく淋しかったんだよーッッ!!」
凄く、の場所を溜めに溜めてマジックはシンタローに訴えかける。
その目も仕種もパパに構って、パパと遊んでと言っているようで。
懐かしい。
そう思う。
そしてこのマヌケ面を見て俺は帰ってきたんだとしみじみ思うのだ。
そんな事は口が裂けても言えないが。
「あー、ハイハイ。早くナンか喰わせろヨ。」
そんな暖かい感情は見せないように、シンタローはまるでマジックを小間使いのように扱う。
もう、シンちゃんたら。感動の体面ときたらほっぺにチュッ!なのに!
拗ねたように唇を突き出しぶつくさ言う父親にジトッと瞳だけ動かすと、オーバーリアクションで、あー、怖い怖い。と肩を竦めるのだった。
ちょっとムカつく。
大体あの親父はどーして顔に似合わず自分を可愛く見せようとするのだろう。
人には向き不向きというものがあるということをこの五十代の父親に教えてやりたいと心の底から思った。
そう、もっと。
もっと親父の似合うキャラクターがあるのに。
それに気付かない所か真逆に行くンだから、あの親父も相当鈍い。
例えばサービスおじさんのようにクールで物静かで嫌味のないエレガントさで。
そこまで考えてシンタローは想像してしまう。
そんな理想のマジックを。スリスリも抱き抱きもせず、自分に余り関心を持たず、あまつさえ、自分が遠征から帰って来ても顔色一つ変えない。
…………それはそれでムカつく。
結局マジックがどう変わってもシンタローは気に入らないのだ。
「シーンちゃん!今日はシンちゃんが帰ってくる日って知ってたから、カレー、作って待ってたんだよ!」
ニコニコと善人そうな顔でマジックはシンタローに笑いかける。
シンタローもチロ、とマジックを見たが何を話し掛ける訳でもなく、頬杖をついていた。
キッチンから溢れる香辛料たっぷりの食欲をそそるカレーの匂い。
いつかシンタローも父のカレーの作り方をこっそり見て、同じ材料で同じやり方で作った事があったのだが、あの辛みがあるのに甘くてまろやかな味はどうやったって同じには作れなかった。
あの病み付きになるカレーはきっとマジックにしか作れないのだろう。
しかし、いつかは奥義を習得してやると、シンタローはひそかに闘争心をめらめらと燃やしているのであった。
「あーあ。昔はカレーって聞いただけで『パパ大好き!』って飛び付いて笑ってくれたのに…」
はぁ、と重い溜息をついてからとぼとぼ歩くマジックの後ろ姿を見れば、怒られてしょんぼりした犬みたいに肩を下げている。
まったく…
これじゃどっちが親かわかンねーじゃねぇか。
それに。
シンタローは思う。
ガキの頃と違って俺にも人並みの羞恥心はあるし、この歳でそんな事をしたら気持ち悪ィじゃねぇか。
そんな思いを抱きつつ、うざったそうにマジックを見る。
キンイロの髪がサラリと髪にかかっている。
「どーでもいいけど早く持って来いヨ。腹減ってるンだけど。」
呆れたようにそう言えば、マジックは「ハイハイ」と適当に返事をした後、「あーあ。昔はよかったなー。」などとグチグチ言っている。
あー!もう!そんなに昔が良かったってか!
今の俺はどーでもいいと!?
空腹とマジックのグチグチにシンタローの苛々が募る。
ダンッ!
テーブルに両手をついてマジックを呼ぶ。
テーブルに乗っていた花瓶がカタリと揺れた。
「親父ッッ!!」
呼ばれたのと煩い音にマジックはシンタローの方へ振り向く事は振り向いたが、悲しかったのか少し涙を溜めていて。
拗ねているのか、唇を尖らせていた。
「なぁに、シンちゃん。パパこれからお前の為にカレー持ってくる所なんだけど。あーあ。所詮お前にとってパパは小間使いなんでしょ!ふーんだ!」
「俺が全面的に悪い言い方止めろ~…。」

ぐすっ、と鼻を啜った後も、まだグチグチ言っている。
あーもうしょーがねぇなぁ。
どう言われたって、未来が見えないように過去にも帰れない。
一秒前にですら帰れないのだから。
「親父、解った。」
ガタリとテーブルから立つ。
白いレースのテーブルクロスが少しだけ揺らめいた。
来い来いと手招きをすれば、マジックは不信がりながらもシンタローの場所にやってくる。

チョコチョコ
チョコチョコ…。

警戒心全開なマジックはまるで野良猫みたいだな、と思う。
こんなデカイのが居たらたまったモンじゃないが。
マジックがシンタローの射程距離に入った瞬間、
がしっ!
マジックを両手で捕まえる。
マジックは少しびっくりしたようだが直ぐにふて腐れたあの顔に戻ったので、シンタローは気に入らない。
なんなんだヨ。

そう思ってマジックの唇に自分の唇を押し当ててやるのだった。
その瞬間、マジックの背後にはピンクの薔薇が咲き乱れる。
そして、天使達が頭の上を旋回し、黄金の鐘がリンゴーンと鳴り響き、沢山のトランペットの音と共に鳩が飛び出した。
「ん、ん…んむ…」
ぬめりとシンタローの舌がマジックの口内を侵入してきたので、それを絡めとる。
その気持ち良さからか、シンタローはギュッと目をつぶった。
息が苦しくなったので唇を離そうとするのだが、何故か離す事が出来ない。
マジックがシンタローの頭を押し付けていたから。
ダンダン!と、マジックの背中を叩いてみるが微動だにしない。
いや、動いてはいる。動いてはいるのだ。
頭と舌だけはシンタローの快感を引き出す為に、何度も角度を変えて、なぶるようにキスをする。
「ん!ン!んーーーッッ!」
頭がクラクラしてぼうっとする。
霞みがかった意識に、シンタローは次第にトロンとしてきた。
ようやくマジックが唇を離したので、シンタローは苦しかった息が楽になり、肺いっぱいに空気を吸い込んだ。
しかし、いきなりめいいっぱい息を吸い込んだ為、体が拒絶反応をおこし、咳込む。
体を丸めて咳込むシンタローに、まだ夢うつつなマジックは、キラキラ光りながらシンタローの丸まった背中を撫でてやる。
「大丈夫かい?シンタロー…。」
今のマジックは世界征服を企む悪の組織元総帥ではなく、紳士の国ジェントル星から来たファラオ、ジェントルマンであった。


「げほ、げほっ!」
しかし、そのお相手のシンタローはマジックにいらついていた。
が。
自分からした事なので怒るに怒れない。
はーはー、と肩で息をして呼吸を整える。
赤く潤んだ瞳でちら、とマジックを伺うと、幸せそうなマジックと目が合った。「あ~、シンちゃんからのキス!何年ぶりだろう!やっぱり私達は愛し合っていたんだねー!」
無駄にキラキラしつつシンタローを抱きしめる。
しかもオーバーリアクション。
「ば!バッカ!!あ、愛とか言ってんじゃねーヨ!恥ずかしいヤツ!!」
怒鳴って、恥ずかしくなって顔が赤い。
ポーカーフェイスができる柄じゃないから。
睨むようにマジックを見るが、劣情を含んだ瞳と、ひどくほてった体では、マジックは怯まない。
骨張った白い指先でシンタローの髪を撫でれば、ビクリと震えるシンタローがいて。
不覚にもマジックの顔が赤くなった。
それに目敏く反応するシンタロー。
だって、だって。
こんなマジックは珍しいもの意外の何ものでもないじゃないか。
親父でも、こんなツラすんのか。
じっと見ていると、ばつが悪そうにシンタローを見る。
「シンちゃん。私は珍しい動物か何かかい……。」
「そんなよーなモン…あ!バッカ!手で顔隠すんじゃねーヨ!!」
赤くなった顔をこれ以上さらけ出したくなかったのか、マジックは口元から顔を隠す。
「何、アンタでも恥ずかしい事があるんだ。」
アハハと、能天気に笑うシンタローに、マジックは眉をしかめた。
でも、すぐに口元の手を外す。
「当たり前だろう。私はお前の前では常にかっこ良くありたい。恋人の前なんだから当然だろう。」
そう、まだ顔の赤身が引かない顔で言われて。
シンタローの心臓がキューーンと締め付けられる。

恋人の前なんだから

言葉の意味を理解した途端、なんだか嬉しくなってしまって。
「あれ、シンちゃん。顔が赤いよ?」
「………。」
なのになんで雰囲気をぶち壊すような事を言うかな。このアーパー親父は。
肝心な所で鈍い。
ふて腐れていると、ふわりと何かに包まれた。
懐かしい匂いと、キラキラの髪。
それで、自分がどうなっているのかが解った。
俺は今、マジックに抱きしめられている。
「好きだよ。シンタロー。愛している。」
二度目のキスはマジックからであった。




「ふ…うん…っ」
鼻にかかる甘い声と、吐息。
シンタローの体を確かめるようにうごめくマジックの指先。
優しく、優しく、シンタローの体に自分の跡をつけていく。
「あぅ!!」
ビクリ!と、シンタローがわなないた。
そこはシンタローの感じる場所であり、シンタローを知りつくしているマジックならではの攻め方だった。
「大丈夫?シンちゃん…。」
ふうふうと浅い息を繰り返して、ふるふると首を横に振る。
否と言っているのに、その場所から違う場所へ移動する気はないらしい。
言葉は優しいのに、態度は残酷で。
しかも一番触れて欲しい場所には触れてくれない。
「あ、あ、や、やだ…ッッ!」
マジックの手を掴むのだが、やんわりと外されてしまう。
服を着たまま汚され、犯されていく。
「シンちゃん、可愛いよ。凄く可愛い。」
うっとりと耳元で囁かれて、シンタローは耳を塞ぎたくなる。
全身が既に性感態のようになってしまって。
耳元にかかるマジックの熱い吐息ですら、シンタローをおかしくさせる。
「ふ、や、やだ…ぉやじ…や…」
「何が嫌なの。」
こんなに喜んでいるのに、と付け加えて、ズボンの上からシンタローをさわる。
そこは既に熱く、湿っぽくて、シンタローの我慢汁が既に出ている事は想像に難しくなかった。
「あ、あ、」
ぎゅっと目をつぶり、マジックの服をにぎりしめるが、力が入らないのか、ほとんど触っているだけの状態。
やっと触って欲しい所に触れてもらい、シンタローは艶っぽい声を押さえきれない。
ゆらゆらと浅はかに揺れる腰に、己の恥態を恥じるが、止めようと思っても体が言う事を効かないのだ。
「や、あ、も、もぉ手、離せよぉ…」
唇を噛み締めて、イヤイヤと頭を振る。
ゾワゾワと鳥肌が立ち、黒い髪がぱさぱさと揺れた。
「可愛いね、お前は。本当に可愛い。ね、シンタロー。このまま服の上からイッてみるかい?」
言っている意味が余りにも残酷だと理解するのにそうは時間がかからなかった。
それは潔癖症なシンタローにとって、死ぬ程恥ずかしく、嫌な事で。
マジックの手から逃げようと必死にもがく。
「おやおや。まだ余力あるみたいだね、シンタロー。本当にやってしまいそうだよ。」
「は、離せ!変態!馬鹿!スケベ親父ッッ!!」
ヒクヒクとわななく体でそこまで暴言を吐くが、マジックが有利なのは至って変わらない。

「ホントにそんな事したら家出すっからナ!」
そう言うと、マジックは苦笑いをして、「それは困るね」と言った。
そして、シンタローのズボンを緩やかに脱がす。
シンタロー自身が外気に触れ、より一掃感じたらしく、猛々しく、天へヒクヒクと震えながら立ち上がっていた。
そして、その震えて涙を流しているソコに、直に触れられる。
「あぁ………」
待ち焦がれた快感に、甘い溜息を吐く。
早くイキたい。
それを強くシンタローは思う。
マジックの手の中で早く解放してしまいたくて、手の動きに合わせてシンタローも腰を振る。
でも……マジックによって作り替えられてしまったシンタローにとって、それだけじゃ足りない。
快感が足りないのだ。
今待ち望んでいる場所は男としては余り機能する事のない場所。
先程から金魚みたいに口をぱくぱくさせている。
勿論、揺らめく腰もヒクつく蕾も、今シンタローが何を求めているかすらマジックには解っている。
だが、それをあえてしてあげない。
シンタローの口から聞きたいのだ。
酷くストイックな男の口から卑猥な言葉を聞きたい。
普段のガードの固いシンタローも大好きなのだが、劣情に負けて哀願するシンタローもまた好きなのだ。
「どうしたの、シンタロー。物欲しそうだね。」
「ふ、ふぅ……」
声を出さまいと唇を噛み締めるシンタロー。
口を開けば言ってしまいそうになる卑猥な言葉を懸命に堪える。
絹糸のような細い理性にまだしがみついている。
「ここも男の子なのにヒクヒクさせて…言って御覧。その小さな唇でお前の思っている事を。」
そう言って、ヒクつく蕾をツツ…と指でなぞってやれば、シンタローはぶるりと震える。
ふるふると震えるシンタロー自身からはテラテラと白濁の液が溢れ出して、己の蕾までつたってゆく。
それを指で掬い取り、シンタローの目の前で見せる。
親指と人差し指でその液体を擦り、離す。
粘つくそれをシンタローに見せれば、恥ずかしさの余りシンタローは目線を反らした。
「ホラ、シンちゃんよく見て御覧?お前の出した液体だよ。イヤラシイ子だね。何か欲しそうだ。言わなければ解らないよ。ホラ、ね?」
まるで甘い囁きの誘導尋問。
催促するかのように、マジックはシンタローの液で濡れた人差し指をシンタローの蕾に浅く出し入れをする。
にちゃにちゃと音がした。

「あ!あ!あ、あぅ…」
気持ちはいい。
いいのだが、絶頂を迎えられるものではまだない。
もっと奥まで入れて欲しい。
解ってる癖にしてくれない。

意地悪。

シンタローは唇を強く噛み締めた。
「……て」
「ん?」
「―――ッ!」
勇気を振り絞って言った言葉は、マジックの耳に届かなかった。
いや、これだけ近い距離で言ってるのだから聞こえない訳がない。
キッと睨むがマジックは笑顔でそれをかわす。
ああ、俺は何をやってもこの人には勝てない。
もどかしい快感の中、シンタローは一人そう思った。
いや、違う。
わざと。わざと俺が負けてやるんだ。
コイツ精神年齢は俺より下なんだから。
ここは一つ俺が大人になってやらないと。
だから。

「親父の………入れて。」

そう言った瞬間、前のめりに体を倒された。
腰を高く掲げられ、一気に………貫かれた。
「あああああっ!」
指の比ではない圧倒的な質量と、熱い塊がシンタローを襲う。
フローリングの床にシンタローは爪をたてた。
待ち焦がれていた最奥の場所は、やっと来た快感に食らいついて、うねうねと奥へ誘い込む。
「シンちゃんの中…凄いキツくて、熱いよ…」
貫いた直後マジックが言う。
でも、シンタローの耳には声が届いても理解ができない。
限界まで引き抜かれ、また最奥へ貫かれ、シンタローの一番欲しい所へピンポイントで狙われる。
「ひぁ…あ、あ、と、とぉさん、ンンン…!」
ゆらゆらと無意識に快感を求め揺れる腰。
閉じられない唇から垂れ流される唾液。
溢れる涙。
「シンちゃん、シンちゃん」
睦言のように繰り返し繰り返し名前を呼ばれ、手を前にかけられ虐められる。
頭がくらくらしてどうにかなってしまいそう。
理性なんて引きちぎられて、ただ快感を追う事に必死で。
ぐるりと中に入れたまま体を回転させられ、顔がお互い見れるようにしてから、足をM字に広げられて貫かれる。
「あ!あ!あ!」
意味のない母音を並べ立て、マジックに必死にしがみつく。
息が苦しいが、快楽を追う方が優先されて、マジックの腰に己の足を絡ませ、催促する。
一際大きく貫かれ、マジックの熱い唇で塞がれた時、シンタローは前身を痙攣させ、絶頂を迎えた。
「――っさん…ッッ!」
ドクドクと流れる精と、きゅうっと締まる蕾。

その刺激にマジック自身も締め付けられ、シンタローの中で一際大きくなったかと思うと、熱い精をシンタローの中に流しこんだ。
「ひッッ…あ、あつ…」
涙で霞んだ瞳でマジックを見れば、滴る汗と共に笑顔で笑っていて、そんなマジックを見てシンタローも釣られて笑う。
安心したのか、シンタローはそのまま意識を手放したのだった。











ぱか、と瞳を開けると、マジックの顔があって、自分がマジックにひざ枕をしてもらっていたのだと気付いた。
「あ、シンちゃん起きた?」
気配に気付いたのか、優しい笑顔でシンタローの髪を撫でる。
「…ん。」
起き上がろうとしたら、腰に激しい鈍痛を感じ、ぱたりとマジックの膝に逆戻り。
マジックは困ったように笑ってから、ごめんね、と呟いた。
謝る事じゃないと思いつつ、空腹とけだるさから何も喋りたくなく、ぼぅっとマジックを捕らえる。
ぐうう…
「あ、ごめんねシンちゃん。お腹空いてるよね。今ご飯持って来るから。」
そう言って、近くにあったクッションをシンタローの頭の下に置き、立ち上がる。
その仕種をまた、ぼぅっと見送る。
キッチンに行くマジックだったが、ふと、止まり、シンタローを見た。
目と目がかちあう。
「さっきは昔は良かったなんて言ってゴメンネ。パパは今の方がやっぱりいいよ。」
そう言われ、シンタローは目をぱちくりさせた。
心がほんわか暖かくなるのを感じる。
「だって、シンちゃんとこうやってえっちもできるしね☆」
「………。」
バチン☆とウインクしていうマジックに、シンタローはさっきの胸のときめきを撤回し、殺意を覚えた。
頭の下に敷いてあったクッションを掴みマジックの顔面に投げ付ける。
「あ、アンタなんかサイテーだっ!!」
「アハハ☆シンちゃんたら照れちゃって。」
「照れてねーーーッッ!!」









終わり


.







朝、太陽から音が出ているんじゃないかと思われる位の快晴。
サンサンと降り注ぐ日の光は流石南国といったところか。
そして、今日もパプワハウスは賑やかなのである。
「めーしめし!」
「わーうわう!」
パプワとチャッピーが箸を両手にトンテンカンと椀を叩く。
「こーらこらこら!お行儀悪いからやめなさい!」
黒い長い髪を一つに束ね、熱く煮えた味噌汁の鍋をぐるぐる掻き回していたシンタローがオタマを持ってパプワとチャッピーをたしなめる。
「チャッピー、今日はご飯どの位にするんだ?」
隣ではエプロンを見にまとったリキッドがしゃもじ片手にチャッピーに聞いている。
「わおーん!わんわん!」
「普通でいいらしいぞ。」
「わんわん!」
チャッピーの言葉はパプワにしか解らないので、パプワの解釈通りリキッドはチャッピーのお椀にご飯を持った。
白い飯から温かい湯気がほんのりうかぶ。
勿論パプワには大盛っていうかタワー盛り。
朝のパプワハウスは忙しい。
何たって大飯食らいがいるのだから。
作る量も数もハンパじゃない。
数についてはパプワハウスの主であるパプワいわく

「おかずの数は朝、昼、晩合わせて最低15品!」

という亭主関白宣言の名の元に。
「ほーら、出来たぞー。オイコラヤンキー!そんなにぎゅうぎゅう米を詰め込むんじゃねーヨ!うま味がくっついてせっかくの飯がまずくなるダローがッッ!」
「スイマセン、お姑さん…。」
シンタローに足で膝を蹴られ、目線を下にして諦めたように謝る。
きっと一生この人に頭上がらないんだろうな、とか考えたりして。
今日の朝食は、ご飯、味噌汁、焼き魚、海苔、キュウリと茄子の漬物、卵焼き。
デザートはブルーベリージャム入りのヨーグルトである。
「ホラ、できたぞ!ちゃんといただきますしてから喰うんだゾ!」
ででん!とちゃぶ台に和食を置かれて、パプワとチャッピーは、ワーイ!とバンザイをしてから手を合わせてきちんといただきますといってから箸を動かす。
作り終わったシンタローは腰を下ろし、早食いのパプワのご飯や味噌汁のお代わりを継ぎ足す。
一方のリキッドはお茶を入れていた。
そんな戦場のような和やかのような雰囲気のパプワハウスにノックの音。
「誰だろ。はーい!」
リキッドはお茶を接ぐのを止め、パタパタと玄関へ小走りで向かう。
ドアを開ければ見慣れたメンツ。
「トシさん!」
「よぉ、リキッド。」
片手を上げて加えタバコをして現れたのはお隣りさんのトシゾーこと土方トシゾー。
「どうしたんですか?」
「いや、な、裟婆斗の森近くにスゲェいっぱいココナッツがなっててよぉ。一緒に取りに行かねぇかな、と思ってよ。」
回りくでぇ奴。
シンタローは心の中でそう思った。
おそらくはリキッドをデートに誘いたいんだろう。
直球勝負で当たって砕けるより、リキッドの主婦根性をくすぐるやり方にしたんだろう。
目にみえているが、この馬鹿ヤンキーは鈍くさそうだからきっと理解していない。
おそらく頭ン中じゃ“やったー!今日の昼はココナッツのデザートができる!”としか考えてねーンだろーナ。
「本当ですか!?でも、そんなに沢山取れるんじゃ…あ!シンタローさん!シンタローさんも一緒に来て下さいよ!」
「「は?」」
余りの鈍くささにシンタローとトシゾーは口を揃える。
バッカ!オメーと一緒に居たいからあの褌侍はわざわざココナッツの報告をしに来たんじゃねーか!
俺が行ったら元も子もねーだろーが!
そう言おうとしたシンタローだが、まてよ、と、思い留まる。
散々今までガンマ団の邪魔をしてきた心戦組。
しかもこの俺様にいつもいつも特に喧嘩をふっかけてくるコイツ。
シンタローは作戦という名の妄想を開始した。
リキッドは多少なりとも自分に好意を持っている。
それはこのパプワハウスで共に生活をしていて知っていた。
そんでもってアイツはリキッドにめちゃめちゃ好意を抱いている。
ともなれば。
俺がリキッドにちょっかいを出す→リキッド照れる→ストーカー侍気に入らない→リキッドに話し掛ける→相手にされない→落ち込む

いい…!

グッと握りこぶしをして目を輝かせる。
シンタローの心理描写で、ざっぱーん!と波が険しい岩山に押し寄せ飛沫が舞った。
「まー、そうだナ。沢山採って来て島の皆におすそ分けでもすっか!」
ポン!と膝を叩いてリキッドとトシゾーの方を見る。
「げ」
明らかに癒そうな顔をするトシゾーにシンタローは軽くご満悦だ。
この鬼の副局長にあてこすりをするのが今のシンタローのひそかな楽しみでもある。
ひそかではないか。実に堂々としているから。
「じゃあ朝ご飯食べたらすぐに行きます!」
そう言ってにこやかに笑うリキッドにトシゾーは顔を赤らめた。
所詮は惚れた弱みというところか。
そもそもシンタローを誘ったのは大好きなリキッド。
リキッドに嫌われたくない為、ガンマ団総帥のシンタローと肩を並べて行かなくてはならない。
それでも我慢。
武士に色恋沙汰は邪魔等と言っていたあの頃の彼とはまるで別人だ。
「チャッピー散歩に行こう。」
いつのまにか食べ終わっていたパプワがチャッピーを連れて散歩に出掛けようとしている。
「パプワ!ちゃんとごちそうさまをしろ!後、遅くならねぇうちに帰って来るんだぞ!!」
「子供扱いするな!」
喧嘩ごしの口調ではあるがパプワは笑っていて、親友とも呼べるこの二人の隙間はもうない程に縮こまっていて。
何だか少し妬けると、リキッドは思う。
それは赤の番人としてでもあり、シンタローを想う一人の男としても。
お互いに妬けるのだ。
「リキッド行こうぜ。」
トシゾーがポンと軽く背中を叩く。
「ハイッ!」
笑顔で振り向いてからシンタローを見ると、朝飯を食べていたので、はたと気付く。

俺まだ食べてない!

「あ!シンタローさん!俺も食べますッッ!」
「さっさと食え!ココナッツ沢山取るには体力が要るんだぞ!!」
「はいッッ!」
二人でパプワとチャッピーの残飯処理のような朝食を食べる。
残飯処理といっても、おかずもご飯もちゃんと自分達の分はあるのだが、それに手を付けるパプワも居る訳で、パプワよりもおかずが数品欠落している程度。
味噌汁を喉に流し込み、朝食を平らげる。
そして、デザートのヨーグルトはパプワが友達を連れてくる事があるので余分に作ってある。
「トシさんもどうですか?ヨーグルト。嫌いじゃなかったら一緒に食べませんか?」
「リキッド…!」
誘って貰った事が嬉しくて、トシゾーはほのかに瞳を潤ませる。
やはりリキッドはいい子だな、なんて改めて思ったりして。
三人で仲良く(一部抜かす)ヨーグルトをつつきあったのち、さあ、いざココナッツ採りにレッツらゴー!









「ここだ。」
「「うわぁ~…。」」
トシゾーに案内された場所。
そこには所狭しとヤシが生い茂り、トロピカルなココナッツがたわわに実っていた。
が。
シンタローとリキッドは呆然と下から上へ視線を移す。
確かに多い。これだけあれば島の連中にココナッツゼリーでも作って皆に食べさせる事ができるだろう。
しかし。

流石、というのだろうか。
裟婆斗の森が近いだけの事はあり、カラスがギャーギャーと鳴きながら飛び回っている。
しかし、いつまでも唖然としてはいられない。
二人の主婦根性は今、めらめらと燃え上がるのだ。
「おし!採るゾ!」
「はいっ!」
籠を担いで一気に走り出す。
その時、激しい地鳴りが。
バリバリバリバリ!
足元にひびがつき、自分の場所に来るまでに三人は咄嗟に後ろに跳びはねる。
「げ。」
「なんだ、ありゃ。」
地割れをした方向をみやると、女王カカオならぬ女王ヤシが自分達を威嚇している。
ゴクリ、生唾を飲む三人。
女王ヤシはブンブンと枝を手のように操りココナッツを投げ付ける。
三人共バラバラに避けた。
なんとしても今日のおやつはココナッツと決めている二人の主婦はかなり真剣そのもの。
しかし。
ただ単にリキッドと出歩きたいとだけ思っていたトシゾーだけはそこまで燃え上がってはいなかった。
だから、なのかもしれない。
油断していたわけではないのだが、女王ヤシの攻撃がトシゾーの腹にぶち当たる。
「ぐっ!」
「トシさんッッ!!」
「褌ッッ!!」
ガクンと膝をつきそうになった時、シンタローがトシゾーを支える。
ぐっと体重がシンタローの背中にのしかかる。
「リキッド!ここはテメーに任せる!ココナッツ死んでも取ってこい!」
「ええッ!?俺一人でっスか!?」
「ったりめーだ!絶対パプワ達に食わせるんだからナ!!」
そう言い走り去るシンタローを見送ってからリキッドは溜息をついた。
めの前にビュッ!と勢い良くココナッツが飛んでくる。
それを眺めてから、リキッドは戦闘体制に入った。
パリパリと電気がリキッドの体を覆うように流出する。
「元特戦隊の力見せてやるぜ。」










ひとしきり走った後で、危険なナマモノが居ないか確認した所でシンタローはトシゾーを降ろす。
腹を掴み苦しそうにしてはいるが、シンタローに睨みを効かせる事は忘れない。
「礼は言わねぇからな…。」
「ああ?別に欲しかねぇよ。」
そう言って、トシゾーの上着を掴み勢いよく広げる。
トシゾーが制止の言葉を言う前に。
腹を見遣れば少し鬱血していて、ココナッツの堅さからいって骨に異常がないか調べるが、流石鍛えてあるだけはあり別状はなかった。
ほぅ、とシンタローは安堵の溜息を漏らす。

そんなシンタローを見て、トシゾーの胸は高鳴った。
キュンキュンと胸が悲鳴を上げる。
そういえば、とトシゾーは思う。
シンタローの事を嫌いな理由は、勿論天敵ガンマ団の総帥だからという理由もあるが、ただ単にリキッドと必要以上に仲がいいから、というのが今のトシゾーの大半を閉めている。
ようはトシゾー自信にシンタローが何か危害を加えられたわけではない。
自分が露骨にシンタローを嫌うからシンタローだって露骨に自分を嫌う。
他人は自分の鏡だ、という言葉をふと思い出した。
この胸の高鳴りはリキッドに思ったそれと同じもの…いや、それ以上で。
この感情にトシゾーは焦りを感じていた。

山南の事馬鹿にできねぇぜ。

気付いてしまえばもうどうにもならない。
リキッドには思わなかった体への関係も持ちたいと、そこまで思ってしまう。
幸か不幸かシンタローはまだこの自分の気持ちに気付いてはいないだろう。
いきなりの人の心代わりなんて心が読めない限り解らないもの。
「オイ、ブラコン総帥。」
「あんだよ、褌侍。」
「俺の帯紐ん所に瓢箪があるだろ。そん中は酒が入ってる。それを口に含んで腹に吐いてくれ。…消毒だ。」
シンタローはそう言われてトシゾーの帯紐を手探りで確認する。
酒を吹き掛けるのが消毒になると言う事はシンタローも知っていた。
士官学校時代、手元に消毒がない時は代用出来るものは代用しろ、と教わった代用出来る物の一つに酒があったのだ。
「あった!」
止めてあった栓を口で開ければ、キュポン!と小気味よい音がする。
チャプリと中の酒が揺らめいた。
その酒を思いきり口の中に含んだのだが。
ブッ!
明後日の方向へ吹き出してしまった。
「どうした!」
「ゲホ、ゲホッ…」
口に手の甲を宛がい噎せるシンタロー。
実はシンタロー、こう見えても酒が余り強くない。
トシゾーが持っていた酒はアルコール度数が相当ありそうな日本酒。
焼け付くような口内の痺れに思わず吹き出したのだった。
「わ、悪ィ…」
しかし酒が弱いと思われたくないシンタローはなんでもない風を装ってトシゾーの腹に酒をかける。
ブゥッ!と水飛沫が舞い、それに伴うアルコールのむわんとした匂い。
クラクラと頭が回る。
何度かかけたシンタローだったが、既に酔っ払い状態。
瞳はウルウル潤んでいるし、顔も真っ赤に染まっている。

辛うじて保っているであろう意識も飛びそうだ。
そんなシンタローを見て、またもや胸がキュンと高鳴る。
気付いたらシンタローを押し倒していた。
シンタローは目をパチクリさせてトシゾーを見遣るのだが、トシゾーは何の前触れもなくシンタローの唇にキスを落とす。
酔った頭では到底理解できない行動にシンタローは驚きを隠せない?
なんだったのか聞こうとしたのだが、口の中を犯す舌に、鼻にかかる甘ったるい声を出すだけ。
「ン、ンンッッ…んむ、」
舌を吸われれば、ゾクン!と肌が粟立つ。
ヒクヒクとわななく体。
ぼぅ、とした頭の中見えたのは余裕のなさそうなトシゾー。
何でコイツが目の前に?確かコイツが怪我したから俺が治療してやって。
そんで、そんで、
………そんで?
スルリと剣ダコのついたゴツゴツとした指がシンタローのシャツを託し上げる。
少しだけ日に焼けていない肌が見えた。
胸の突起物をざらつく舌で舐めてやれば、女のような声を出す。
酔いのせいか羞恥心が殆どないらしく、素直な反応にトシゾーは気を良くした。
形のいい胸、無駄のない筋肉。
腹筋を舌でつつ、と舐めて下半身へ移動する。
「いて…ッッ」
シンタローが眉を潜めた。
何故ならトシゾーがズボンの上から男性自信を掴んだから。
シンタローのソコは服の上からでも解る位熱くて太くなっていて、天を仰ぐようにそそり立っていた。
「辛いか?」
そう聞けば、シンタローはコクコクと頷く。
なのでソレを開放するべくトシゾーは丁寧に下半身を脱がせていく。
ベルト代わりの紐、ズボン、そしてパンツ。
パンツを下ろせば可愛いピンクの精器が精一杯天に向かって立ち上がっていた。
それを掴んで上下に擦り上げる。
同じ男同士、どうすればキモチイイか、とか、感じる、だとかは解っている。
「あ、あ、あ、あ…」
涙を流しながら快感の渦に飲み込まれていく。
自然とシンタローは自分の指をトシゾーの腕に絡ませる。
止めて欲しい訳ではなく、縋るものがないから。
「――ッッ!」
トシゾーの手の動きが早くなり、シンタローは呆気なく己の精を吐き出した。
びくり、びくり、と鼓動するかのような精器と、飛び散った精子。
息を張り詰め欲望をソコから吐き出す。
「ッは、は…ッ」
肩で息をして、ぼやけた目でトシゾーを見る。
泣いていた為、頬には涙の後。
それを舐めとると、まだ呼吸の荒い唇にキスを落とす。
「悪ぃな…」
「へ?」
いきなり謝られてシンタローは素っ頓狂な声をあげた。
「ああああっ!!」
しかし、直ぐに謝られた意味を知る。
ゴツゴツしたトシゾーの指がシンタローの蕾に侵入してきたのだ。
酒と、イッた余韻で多少緩くなっているのだが、やはり慣らさないときつい。
ソコは男を受け入れるようには作られていないのだ。異物を吐き出すようにトシゾーの指を拒絶するシンタローの蕾。
ぬめりとした精子を指で掬い取り、ゆるゆると中へ入れてゆけば、次第にシンタローの腰も上に上がる。
「や、やだ、やめ…」
ゆらゆらと腰を揺らすのだった。
苦しいのか、熱い吐息と共に言葉を発する。
途切れ途切れの言葉がまるで哀願するように聞こえて、トシゾーの中心を熱くさせた。

俺はさっきまで恋敵だと思っていた奴を抱いている。
リキッドの事は好きだ。
それは今も変わらない。
ただ、リキッドに対する思いとシンタローに対する思いが少し違っただけ。
それは恋と愛の違いのようなニュアンスで。
微妙の違いのような完全に違うというようなそんな狭間の思い。
「あ、は、はぅ…」
焦点の定まらない瞳でうろうろと辺りを見回すシンタロー。
汗で額に張り付いた黒い髪を上に上げてやる。
もう良い頃だろうと、トシゾーは思った。
それに、自分自信これ以上理性を留めておけるほど我慢強い方ではない。
しゅるり。
布の擦れる音と共にトシゾーの袴が落ちた。
褌の紐を緩ませ全裸になる。
鍛えられた男の体がそこにあって。
一瞬息を潜めてから思い切り中を…貫いた。
「ひああああッッ!!」
ビクン!と体を海老そりに曲げる。
黒い髪がそれに伴いアーチを描いた。
ズブズブと中に侵入していくトシゾー自信を、熱い体の中でシンタローも感じ取る。
目の前がチカチカして、ゾクゾクと鳥肌が立った。
最奥まで到達すると、シンタローは快感の涙をポロポロ零した。
透明な水滴がシンタローの瞳から溢れては流れる。
トシゾーはシンタローの腰を掴み小刻みにシンタローの腰を揺らす。
「あ、あぅ…」
揺らしながらふと左肩にシンタローの指が捕まるのを見た。
無意識の行動なのだろうが、その行為がトシゾーの心をぽんわり春色にさせる。
「畜生…」
言葉とは裏腹にトシゾーの口角は斜め上に持ち上げられる。
シンタローの腰をがっちり掴むと、緩やかな動きから激しいものへと移し替えた。

「――ひッッ!」
閉じかかっていた瞳がカッ!と見開かれる。
いきなりの激しい行為にシンタローの体がついていかないようで。
中をグチグチと掻き回されているのをシンタローはただひたすらに堪えた。
トシゾーの汗がキラキラと生まれてはぱたりと落ちる。
その繰り返し。
「も、や、や…やめ…」
トシゾーの首に自分の腕を回し耳元で熱い吐息と共に掠れ切った声で哀願する。
そんなカワイイ事をされてはトシゾーが止まるはずがない。
ラストスパートと言わんばかりに激しく腰を揺らした。
「―――――ぁ!」
声にならない甲高い声を上げてシンタローは達した。
ビュクビュクととめどなくシンタロー自信からは精子が飛び出しシンタローの腹を汚す。
それとほぼ同時期にトシゾーもシンタローの中へ注入したのであった。
「あ…ふ…」
中で感じるトシゾーの熱い液体。
ドキドキと心臓が破裂してしまいそう。
けだるい体とまどろみを二人で噛み締め、ややあってシンタローが口を開いた。
「……この事はアイツにゃ黙っててやるヨ。」
「アイツ…?」
誰の事かと言いかけて、それがリキッドなんだとピンときた。

「別に黙ってなくてもいいぜ。」

よっ、と掛け声をかけてから服を着だすトシゾーに、シンタローは目を丸くした。

アイツあんなにリキッドリキッドって煩かったのにどォいう風のふきまわしだぁ?

呆然とトシゾーを見つめていると、トシゾーはいくらか顔を赤くしながらシンタローを見た。
「チッ!だから責任取るって言ってんだ!」




「はぁぁああ?!」
素っ頓狂なシンタローの疑問の声が辺り一面に響き渡る。
これから恋に発展するのかしないのか。
それは当の本人達しか知らない。














終わり。
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