忍者ブログ
* admin *
[65]  [66]  [67]  [68]  [69]  [70]  [71]  [72]  [73]  [74]  [75
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

mm


新生編
アオザワシンたろー




  『それでねっ、おとーさま!シンちゃんったら昨日もほとんど寝てないんだよ !? いっくらシンちゃんでもそんなのいけないよね』
 壁掛け型の特大モニターに映る青年の、真面目そうな表情を裏切る髪リボン。
 握りこぶしをふたつ作って訴えるのは、天才と謳われていないこともない、グンマ博士である。
『造反対策だかなんだか知らないけど、忙しすぎるよ!ちっとも研究室にも来てくれないし』
 彼のホンネはどうやら最後のひとことにあるようだった。
「シンちゃんは頑張り屋さんだからねぇ。早く結果を出したいのかもしれないねぇ」
 答えるのは、言わずと知れたガンマ団元総帥、マジックである。
 だがその出で立ちは、総帥としての象徴だった赤い制服ではなく、目に優しいパステルピンクのソフトスーツだ。上着を脱いで、代わりにエプロンを身につけている。
 右手に泡立て器、左手にボール。
 モニターが匂いをも伝達するのならば、グンマのところにまでバニラエッセンスの甘い香りが届いたに違いなかった。私室に備えられた彼専用のシステムキッチンである。
「心配ないよグンちゃん。シンちゃんはセルフコントロールも出来ないような子じゃないから」
『でもっ』
「大丈夫。本当にまずいことになったら、そのときは任せなさい。それよりグンマ。キンタローはどうしてる」
『えっ、キンちゃん?キンちゃんなら…』
 生クリームをあわ立てる実の父にグンマは、ひょんなことからいきなり成人男性の人生を送ることになった従兄弟のリハビリ状況を説明した。しながら、父が作っているのはシンタローのための菓子なんだなと、無条件に思った。
 作っているということは、これを口実にシンタローを休ませる計略があるのだろう。
「そうか。キンタローはもう大学過程まで履修したか。早いな」
『高松もびっくりしてるよ!昨日なんか自立式黒板早消しロボットを作っちゃったんだよ』
「それは…将来が楽しみだね…」
 どう楽しみなのかはさておき、マジックはオーブンの様子をみた。
「そうだグンちゃん。今さっき飛空艦が戻ったね。今度は誰だった?」
『え?さっき?』
「午前中はミヤギが戻って来ただろう?次にトットリ。今さっきもまた一艦戻ってきた。振動でわかったよ。今度はアラシヤマかな」
 オーブンを開ければ湯気を立てたパイ生地が現われた。平たく伸ばされていて良い色をしている。
 焼き上がりに満足したマジックは笑顔だ。
『僕、気づかなかったな~。あ、じゃあアメリカ担当のミヤギとアジアのトットリ、欧州のアラシヤマ、これで豪州のコージまで揃ったら壮観だね』
「シンちゃんは忙しくなるけどね」
 彼らが戻ってきたということは、世界各国の新体制が次の局面を迎えたということだった。
 部下は何人もいるが、総帥は一人きりだ。
 軌道修正をかけている現状では、常にシンタローが旗手でなければならない。
『アメリカは根強いおとーさまのファンがいる地区でしょ。いったい何が財源なんだかわからないけど、新体制に抵抗し続けてるんだよね。あそこは東北ミヤギの管轄でしょ。制圧できたのかな』
 グンマの耳にも入るほど、苦戦しているのは確かだった。
 マジックは少し考えるようにしてから呟く。
 反乱地区なんて根絶やしにしちゃえばカンタンだけど、シンちゃんはそーゆーこと、したくないみたいだからねぇ…と。
 彼の息子が、特戦部隊と戦闘について衝突しているのはあまり表沙汰にはできない事情だ。こんなに身近なところにも、抵抗勢力はある。
 それほど、マジックの旧体制とシンタローの新体制の方針には差があった。
『おとーさま、今作ってるのはミルフィーユ?』
「そうだよ。出来あがる頃においで」
 政治的な話題からの急転直下に、ついてゆけぬマジックではない。だがグンマは、嬉しそうにしながらもそれを辞退した。
『高松がバイオハマナス二十三号の実の試食会を開くんだって。ぼくもそれに参加するんだ。シンちゃんも誘いたかったけど…忙しそうだし』
 シンタローが食べたいのは父手製のお菓子のほうだし、というのが正しい台詞だが、グンマはあえて言わなかった。
『じゃあおとーさま。シンちゃんのこと、お願いね』
「はっはっは。任せなさい。疲れたときには甘い物がいいんだよ。それは、シンちゃんもよーく知ってることだけどね」
 クッキングパパの、白い歯がキラリ。
 パイ生地と生クリームとイチゴを重ねたミルフィーユがまもなく完成する。



 父の部屋の扉を開けて、シンタローは固まった。
 何故なら、まるで約束でもしてあったかのように、室内は、温かで美味しそうな香りに満ちている。
「やあシンちゃん!そろそろ来ることだと思って、パパ張りきっちゃったよ!」
 中で振り返ったのは部屋の主、マジックだ。
 年中無休に等しい笑顔で、エプロンを外しているところだった。
「な…」
「何をいつまでつったっているんだい!ほら早く」
 半ば呆然とした息子の手を取るようにして、マジックはシンタローをテーブルへ誘導した。
 彼の私室は、栄華を極めた男に相応しく豪奢で、かつ庶民的なものだった。大理石のテーブルにたんぽぽ。彫像には造花。骨董物の額に収まっているのはシンタローの写真で、皮張りのソファにはまたシンタローの人形が鎮座している。
「お腹すいてないかい?」
 シンタローは、そう尋ねてくる父の瞳に困惑し、視線を逸らした。
 だが見破られていたらしい。
 マジックが椅子の背を引いてくれた。
 彼は仏頂面をほんのり赤く染めて席についた。
 すぐさま供される温められたパンや、良い香りのソースに絡めたオードブル。
「何でこう、用意がいいんだよ」
 文句を言うようにすると、マジックは『愛の力さ!』と歌い上げるように答えた。その両手を空に掲げる仕草にシンタローは辟易し、ため息をついた。
「どっかに盗聴機しかけやがったな」
 この父はそのくらいする。
 もしかすると総帥だったころから仕掛けておいたのかもしれない。
「はっはっは、いやだなぁ盗聴だなんて。そんなことするわけないじゃないかぁ!」
 ゼッテーしてる!
 シンタローはスプーンを手に取りながら、戻ったら早速探させようと心に誓った。
 そして。
「ちくしょー。相変わらず美味ぇな…」
 シンタロー自身、料理の腕にはそれなりの自信がある。だがマジックのそれはシンタローが知る中でも一番だった。
 そこには、世界の料理人たちとは異なって、シンタローの好みに合わせて作られているというからくりがあるのだが、それにしたって、と彼は思う。
「ほんと !? まだいっぱいあるからたくさん食べてね!」
「だからどーしてそうガキみてぇに喜ぶんだか」
 これじゃどっちがガキだかわかんねぇと零しながらも、手は止まらない。
 ここ数日、必要最低限な栄養は錠剤とゼリー飲料などで摂取していたが、山積みの問題に嫌気がさし、一息いれるつもりで休めそうなところを探して訪れた部屋で、少々気が抜けた。
 変わらぬ笑顔と一さじのスープのせいだ。
 マジックはシンタローにメインを用意し、最後に紅茶と菓子を並べた。
 たくさん食べろと言いつつも、どれも量をややセーブしてあるのは、疲れた胃を慮ってのことだろう。
 どれも丁度よい分量だった。そして久しぶりの温かな食事だった。ましてや美味だった。デザートまで出たのだ。
 文句のあるはずもない。
 シンタローは口元が緩むのを必死に押さえた。
「紅茶をもう一杯どうだい」
「うん」
 カップを渡しながら、『うん、はないだろうが、うん、は』と慌てて自分を叱咤しても仕方がない。
人生の大半で総帥業をやってきた男の前では虚勢は無意味だ。きっと、こんな浮ついた気持ちさえ見抜かれているのかもしれない。
 ポットから注がれるダージリンの香りが漂う時間は、総帥室の殺伐としたものとは雲泥の差だった。
 シンタローは満たされたカップを受け取りながら、改めて最近の自分の生活を振り返った。
 父が総帥だったときとは比べ物にならないほどの多忙ぶりだ。経験の差もあるだろうが、もうすこし上手くやりたいと思う。もう少し器用になれたらと思う。
「どうしたの、ため息なんてついて」
 マジックに言われて、シンタローはいつのまにかうつむいていた顔を上げた。
「…別に…」
 まだ、弱音は吐けない。だが。
「そう言えば、今日はアラシヤマとトットリたちが戻ってきたんだってねぇ」
 マジックの誘導に、あえてシンタローは乗った。
「…まあな。ミヤギも来たぜ」
 それを知ってか知らずが、マジックは話を続けた。
「ミヤギといえばアメリカ担当だったね。根強い抵抗勢力があったようだけど…せめて連中の資金源を断てればねぇ」
 マジックが言うことは、まさにシンタローが狙っていることでもあった。
 先窄まりな抵抗など、扱うに容易い。ミヤギが持ち返った報告は、その資金源を解明したというものだった。これで連中を叩くことが出来る。
 しかし。
「…ミヤギの成果はまるっきり無駄になっちまったよ」
 マジックが先を促がすように見つめる。
「連中の資金源ってのはシチリアマフィアのルートだったんだけど、今朝、壊滅しちゃって」
「…壊滅?」
 シンタローは壊滅と繰り返した。
「アラシヤマの奴が、マフィア根こそぎ」
「…したのか」
「したんだ…。その足で本部に戻ってきたってわけ」
 蓋を開けてみれば簡単なことだ。資金源はどのみち叩かねばならない。
 アラシヤマは自分の担当エリアでアメリカ抵抗勢力の資金源を発見し、排斥した。
「発見の段階で報告しなきゃならなかったのに、勝手しやがって」
「根こそぎ…ということは、報復勢力も根絶やしにしてある、と見ていいね」
 シンタローは答えない。
 だが、それは異を唱える沈黙ではなかった。
「彼は特戦の基礎教育を受けてるからねぇ、先走ちゃったねぇ」
 無用な破壊活動はシンタローの方針とはそぐわない。アラシヤマは、攻撃前に指示を仰ぐべきだった。
「俺は、そういうやり方は、しねぇんだ」
 伊達衆とシンタローの間に溝があることが世界に知れれば、新生ガンマ団の未来は暗い。
 だが、その程度のことがわからぬアラシヤマであるはずがなかった。ましてや働きはすべて新体制のため。
「で、シンちゃんはどうするの?」
「減給三ヶ月。…甘い?」
「いいんじゃない?パパなら命令違反は銃殺だけどね」
「じゃ六ヶ月にしとく」
 当座の方針がきまり、最後のエネルギー充填のためにシンタローは紅茶に口をつけた。
 本日の戦いはまだ終わっていないのだ。
 
 
 シンタローの去った部屋で、マジックは皿を片付ける。
 メニューはどれも息子には好評だったようで、ちらちらと嬉しそうな顔を見せてもらった。
「まったく可愛いなぁシンちゃんは!」
 あれで、自分は可愛くなんかないと思っているのだから世話が焼ける。
 ここのところの疲れにとどめを差すようなアラシヤマの先行。
 きっと激しく詰問したのだろう。その様が目に浮かぶようだ。裏切られたような気持ちになっていたのかもしれない。
 アラシヤマの気持ちは、永遠にシンタローには届かない。
「哀れだねぇ」
 マジックはテーブルを拭き終え、ソファで待っていたシンタロー人形を抱き上げた。
 アラシヤマがシンタローを思う気持ちなど、先刻見通している。
 あの島へ刺客としてやったときから、アラシヤマの中で何かが変わってしまったのだ。かつては確かに敵対心だけだったはずなのに、彼の中にシンタローへ従属する心が生まれた。
 当時にしてみれば予想外の変化だったが、今のシンタローにとってマイナスであるはずが無い。
 裏切りは、無い。
 裏切りと感じるだけで、それは決して、無いのだ。
「本当に哀れだ。でもねぇ、シンちゃん」
 マジックはソファに座り、抱き上げた人形を自分の方へ向けた。
「大きい組織にはね」
 教え諭すように、黒いボタンで出来た瞳を見つめる。
「汚れ役は必要なんだよ。だから、やらせておけばいいのさ」
 買って出るなら、放っておけばいいのだ。
「あえて、パパは教えてあげないけどね」

 犠牲になる者に、シンタローからの配慮など一片も必要ない。
 総帥として長い間君臨してきた男は、そう言って小さな人形の額に祈りのようなキスをした。


終。





--------------------------------------------------------------------------------
2003/8/15発行のコピー誌収録の同名漫画を小説にしてみました。漫画はアラシンだっただろ!とかこんなシーンは無かっただろ!とかそもそも漫画と全然違うじゃねぇか!とかゆーことは気づかなかったということでよろしく。


総合TOPへ  目次へ  掲示板へ  



PR
sma
邂逅
アオザワシンたろー




「詳しい報告だぁ !? 殲滅完了っつっただろ!殺すな?知らないねェ」
『ハーレム様!それでは私がシンタロー総帥に叱られますッ』
 その飛空艦は、ほんの数人で制御可能なガンマ団最速の船だった。ブリッジにはわずか4人の人影しかない。
 その4人とは、ハーレム率いる特戦部隊だった。今もまた一つ戦場を後にしてきたばかりだ。
 高度を上げ、自動航行に切りかえる頃に、それは起こった。隊長ハーレムが通信機に向かって怒鳴りつけたのだ。
「あーあ、隊長ったらまた本部からお小言食らってるみたいじゃん?」
「新総帥とは相当ウマが合わんようだ」
「…」
 新体制との軋轢など気にもせぬ特戦部隊にあって、隊長のハーレムだけが総帥と同族だ。
 前総帥への義理だとか対面だとかもあって、下っ端三人のように気楽に構えているわけにもいかない。かといってこれまでの部隊の方針をそうそう変えられるはずもない。
 かくしてハーレムは本部と度々衝突するはめになるのだった。
「あー、キレちゃったよ」
 イタリア人が楽しそうに眺める先、ついに彼らの隊長がヘッドセットを床に叩きつけた。そのまま振り返りもせず、フロアを踏みつけながら出てゆく。
「隊長ー、戦利品、全部飲まないでくださいよ~」
 返事はなく、自動扉が無常にも閉まった。
 休憩室に積み込んである酒樽は年代物の高級品だ。
 彼らにしてみればたった一晩の糧にすぎない。不機嫌な隊長に掛かっては、一晩だってもたないかもしれない。
「計器オールグリーン。自動に切りかえる」
 マーカーとGが淡々と作業を進め、ロッドも慌てて持ち場の切り替えスイッチを押した。もたもたしていては本当に自分の分がなくなってしまう。
「おっしゃ、隊長のご機嫌うかがいがてら、酒盛りとしゃれこもうぜ!」
 真っ先にイタリア人が、続いてGが席を立つ。
 マーカーも部屋を後にしようとしてふと、フロアに転がっているヘッドセットを拾い上げた。ハーレムが叩きつけたそれは、驚いたことに、まだ通信が切れていなかった。
 スピーカー部から音声が漏れている。
 一方的に話を終わらせたハーレムに対し怒りを爆発させているような様子だった。
 マーカーは何気なくそれを耳に当てた。
『ふざけんなこの借金野郎ーッ!』
 一介のオペレーターにしては見事なキレっぷりである。
 実際こんなセルフをハーレムが耳にしようものならとんでもないことになってしまう。
 マーカーはため息をついた。
「…隊長は部屋へ戻られた。総帥への報告は、今聞いた通りを伝えればいい」
 電源を切ろうと指をコンソールに伸ばしながらそう言ったマーカーは、だが切ることは出来なかった。
『なんだとコラ、もっぺん言ってみやがれ一兵卒ッ』
 一兵卒。
 さぁっと気分が冷めてゆくのが自分でもわかった。
 マーカーは耳に当てたヘッドセットをひびが入るほど握り締める。
「この私を雑兵と同列に論じるとは…」
『ハーレムの手下に特戦も雑兵もあるかッ。おい、お前!奴をそこに引きずって来い!今日という今日は逃がさねぇぞ』
 マーカーはスイッチを切る為に伸ばしていた手で、握りこぶしを作る。
「マーカー、どうした?」
 背後からGに声をかけられ、はっとして手の力を緩めた。
 無表情な同僚は、通信を切らないマーカーを不審に思っていたようだ。
「…先に行け。私はこの辺を片付けてから上がる」
 こんなとき、余計な詮索をしない寡黙さはGの美徳だろう。
 マーカーは仲間の去ったブリッジで、再びマイクを手にすると、改めてシートへ腰を下ろした。
「…ハーレム隊長や我ら特戦部隊にそんなぞんざいな口が聞けるとは…。今、通信機を握っている貴様は何者だ」
『つべこべ言わずにあいつを出せッ』
 マーカーは簡単な消去法を試みる。
 ハーレムを目下呼ばわりできる者は、ガンマ団においては非常に数が限られている。
 その中でも、若い青年の声とくれば、相手は。
「…シンタロー総帥…」
 若くして就任した総帥の姿が頭に浮かんだ。
 ハーレム隊長の甥にして、前総帥の後継者だった若者だ。そして、弟子だったアラシヤマの同僚でもある。
 何がどう転んだのか、弟子はすっかりこの新総帥に心酔してしまっていた。持っていたはずの刺客としての素養も、骨の髄まで叩き込んだ信念も、あっさりとこの男に塗りかえられてしまっていた。
 オペレーターではハーレム相手に埒があかないと思ったのだろう。どうやら担当からマイクをぶんどったというところか。
「これは…新総帥閣下。ご機嫌麗しゅう」
『どっからそういうおべっかが出てくんだか』
 マイクの向こうからは、呆れたような反応。
 台詞から、マーカーの推測は正しいことが証明された。
『大体、なんでモニターに出さねぇんだよ。その辺からいいかげんだぞ、オメェら』
 正論である。顔が映っていれば通信機を放り出すなどということはできまい。
 だが、こちらは特戦部隊だ。
 ハーレムの行動が隊のルールである。
『俺の命令はオメェらにまでちゃんと届いてんのかよ』
 マーカーは記憶を探ってみたが、今回の戦闘についてそもそもの命令など思い出せなかった。面倒な連中がいるから掃除しようと、確か隊長が言っていたのはそんな台詞だった。
 教えてやれば案の定、若い総帥の血圧が上がったようだった。
 若い。
 本当にまだ、団を背負って立つには青すぎる。
 彼はアラシヤマと同年代だったから、二十五になるかならないかだ。
 今のガンマ団から殺傷能力を削いで、この新総帥は何を目指そうというのか。
「隊長は先ほど以上の報告をするつもりはないようです」
 とりあえず、それだけ繰り返せば、向こう側からは諦めの混じったため息がもれた。
『…やりすぎだ。ちったぁ、手ぇ抜きやがれ』
 敵国崩壊。
 それは、この若者にとっては望まない結果だったのだろう。
 しかし、とマーカーは思う。
「中途半端に叩けば、報復を招きます」
 暴力で構成される世界にあっては、それは基本的なルール。まさか知らないわけではあるまい。それでも、つい口に出た。
 相手がシンタローだったからだと、後からマーカーは思った。
 手を離れたとはいえ、弟子を簡単に手中に収めてしまった男。
 自分の何がこの男に劣っていたのかわからない。
『誰もそのままにするなんて言ってねぇだろ。弱ってるとこに駄目押しする手は考えてあったんだよ。それをオメェらときたら…』
 彼の言い分を聞いていると、まるで自分たちが聞き分けのない子供のように思われている気がした。実際、ハーレムに対する口調はまさにそれなのだが、新総帥にとっては隊員も隊長とひとからげなのかもしれない。
『もういい。わかった。次の命令まで待機しとけ』
 ハーレムがどうあってももうマイクに出るつもりが無いとわかったか、シンタローが話を切り上げた。
 そもそも、相手がハーレムだと思っていたから通信に出たのだ。
「待っ…」
 マイクの向こうから、何か通信士と話す音が聞こえ、そして静かになった。
 マーカーは、何故だかもう少し…話をしていたかったような、そんな気持ちに襲われた。
 シンタローと直接話すのはこれが初めてだったせいかもしれない。彼についてはハーレムからの又聞きばかりだし、アラシヤマにいたっては言うことに要領を得ない。
 マーカーはため息をついて、シートにもたれかかるようにした。
 結局、自分は名乗りさえしなかったな、と思った。
 そして。
『…んだよ。用があるんじゃねぇのかよ』
 ぎょっとして、身を乗り出した。
「シ…シンタロー総帥 !? 」
『マイク口で怒鳴るな、馬鹿』
 てっきり切れたと思っていた回線は、まだ生きていた。
「な…」
 思わず、何も映し出していないモニターを凝視してしまう。それから手元の通信状態パネルを見下ろすと、確かに回線接続ランプが点灯したままだった。
「…切れたとばかり…」
『ぁあー?何言ってんだよ。オメェが待てって言うから、待ってやったんだろうが!』
 声は不機嫌一直線だ。
 更に話を催促する。
 マーカーは眼をしばたたかせ、それからシートにどっと腰を落とした。
「なんという…」
『何か言ったか?よく聞こえねーぞ!』
 腹の底から笑いがこみ上げてくる。
 どう言えばいいのか。
 どう感じ取ればいいのか。
 マーカーは眼を覆うように額に手をあて、記憶の中の若者を思い浮かべた。
『用は無ぇのか !? んじゃあ切るからな!』
 更に一方的に念押しして、今度こそ通信ランプは切れた。
 マーカーは、静かなモニター画面に向かって手を伸ばす。
 自然と口元が歪む。シンタローがそこにいれば、炎撃を放っていたかもしれない。
 アラシヤマと同じ轍を踏むつもりはない。
 だが。

 モニターが何も映していなくて本当に良かったと、心の底からそう思った。



終。
       




--------------------------------------------------------------------------------
    4巻。「新総帥もその叔父も不器用な男達ですから」 だから何故シンタローさんのことをそんなにご存知なんで?(笑)


総合TOPへ  目次へ  掲示板へ  



ms
覇王の息子

アオザワシンたろー




 その日の夕刻、ガンマ団本部に総帥艦が帰還した。
 マジックを乗せたその船を、団が見送ったのはわずか三日前の話だ。予定より二日も早く帰還連絡をうけた本部側はにわかに慌しさをかもし出し、出迎えのための隊列を整えた。
 団内で唯一真紅を許された男が、タラップから足を踏み出す。長身で、威風堂々とした男だ。
 夕陽の中でもさんぜんと輝く黄金の髪は、周囲にある種の陶酔をもたらす。恐怖だけではなく、存在そのもので、団を率いてしまう男だった。
 そのすぐ後ろに、側近たちが続いた。
 隊列を組む者たちのほとんどは知らないことだったが、さすがに隊長クラスには推測が出来る。
 彼らの総帥は大変な子煩悩だ。
 プライベートエリアに隠し育てる息子と離れないためなら、総帥は戦地へ赴く回数を極端に減らしてしまう。当然に、そのしわ寄せは部下たちへゆく。
 側近たちの憔悴しきった顔を見てみろ。ぎりぎりまで短くしたやむを得ずの総帥出陣だっただろうに、さらに現地で期間短縮させられたに違いない。
 夕陽が彩る本部へとマジックは足を運ぶ。その道のりでふと、男は顔を上げた。
 センター塔と、そこから繋がる事務棟。そのオレンジ色の壁は、まるで黄金の城。
 マジックはそれらを眺め、足を止めた。
 無心にあとを追っていた側近らが、思わずぶつかりそうになって慌てて足を止める。
「そ…総帥?」
「いかがされましたか」
 マジックは微かに振り返った。
「…秘石を部屋へ運んでおけ。それから残りはお前たちで形にしろ。私は、今日はこれで下がる」
 総帥室へは明日行くと、こともなげにそう言った。
「そ…総帥ッ。それでは声明文が…」
「掃討計画はこのあと直ちにとりかかってくださるとおっしゃって…」
 思わず叫びそうになり、側近らは互いに言葉を飲み込んだ。
 マジックは彼らが意見するのを諦めたことを見届けると、再び歩き出した。
 その背を引き止める言葉など、始めから無い。ましてや本部には三日も顔を見ていない彼の最愛の息子がいる。それでも帰還後の緊急必要業務を終わらせることが先だと、マジックは承知してくれていたはずだった。
 それが突然、切り替わった。どうあっても、残務は総帥が満足するように自分たちで整えなければならないようだ。
 側近らは聞こえないようにため息をつき、マジックが見上げていたオレンジ色の壁を見上げた。窓の強化ガラスに夕陽が映えてまぶしいくらいだった。
「…総帥は…何を御覧になったのだ…?」
 ここからは総帥一族のプライベート居住区は見えない。そこに家族の顔が見えたなら、彼らはまだマジックの変化を納得しようものだが、あいにく彼らの目には、輝かしい城しか映らなかった。

「シンちゃん!」
 居住区へ足を踏み入れるなり、マジックは叫んだ。
「パパ帰ったよー!」
 廊下に嬉々とした声が響き渡った。団の大多数が想像も出来ないだろうとろけきった笑顔で、今年十三になる息子の名を呼んだ。
 息子は…廊下の角で、エレベーターの扉が開いたとたん叫ばれる自分の名にぎょっとして小さく跳ねた。
「パ…と…父さん…」
「シンタロー!」
 突撃してくる俊足におそれをなし、シンタローは咄嗟に角を曲がって身を隠す。だが隠し終えた直後にはもう、父親の姿は目の前にあって。
「ただいまー!」
 まるで猛獣のようにがっしりとシンタローの体を抱きしめた。
「わーッ」
「会いたかったよシンちゃんッ !! もうパパ毎日毎日気になって気になって。どうしてあんな通信もろくに出来ないとこに行かなきゃならないんだろうねッ」
「ぐわッ、やめ…やめろよッ。あ、足、足浮いてるッ!」
「ああ本物のシンちゃんだぁああ!」
 マジックはシンタローを抱き上げるような格好で、その顔に頬を擦りつけた。
「やめろってば!」
 シンタローはどうにか腕の輪から逃げ出そうとするが、大人と子供の差はいかんともしがたかった。しかも今のマジックは、三日分の情熱を溜め込んでいるのだ。
「し…仕事がまだあるんだろ !? こんなとこ来ていいのかよッ」
「平気!パパの部下なら四日ぐらい徹夜できちゃうからね!」
「???」
「それにシンちゃんがパパのことお出迎えしてくれたんだもの。お仕事なんかしてられないさ」
 まるで幼児を扱うように軽々と息子を片腕に抱きかかえてしまえば、抗議しながらもシンタローはマジックの首に掴まった。
 そして。
「…俺、お出迎えなんて、してねーぞ?」
「さっき飛行場を見てて、パパと目があっただろう?」
 眩しい夕陽に降り立つ金色の覇王。それがシンタローが自慢の父の姿だった。
 だが。
「見えて…」
「なんだって『見える』のさ。パパはね」
 首に掴まる我が子の黒い瞳に答えるように、マジックは微笑んだ。

 廊下のすぐ先は、マジックの部屋だ。
 あちこちにシンタローのカップやシンタローのペンや、シンタローの物が置かれている。
「まずはお茶を入れようねぇ。教育係からの報告は暗号で送られてきてたけど、やっぱりどんなお勉強だったのかシンちゃんに直接聞きたいしね」
 うきうきと湯をポットに入れ、葉が開くのを待ってカップに注ぐ。
 部屋に芳しい香りが広がった。
 一方でシンタローは、ソファに浅く腰かけ、落ちつかない様子で視線をさまよわせていた。
「はい、どーぞ」
 マジックはソーサーをテーブルに置いた。シンタローの分には砂糖もふたつ、入れてある。甘くしてあるのは、シンタローの口を軽くするため。どうやらこの息子は、何か戸惑っているように見えたので。
「うーん、やっぱりシンちゃんと飲むお茶は格別だね」
 シンタローの顔が見えるようにと一人掛けのソファに座ったマジックは、ことさら楽しげにカップを手にし、ゆっくりと口をつけた。
 シンタローは、握り締めた拳を膝に置いたままうつむいている。
 静かに、時間だけが流れる。
 ことり、とマジックがカップを置くその音に、シンタローの肩が震えた。
「…」
「シンタロー」
 それが、彼の息子の名。
「こっちへおいで」
 シンタローが、はっとして顔を上げた。
 父はソファに深く腰を下ろし、シンタローを見つめている。その瞳は、海のように深いブルー。
 シンタローは視線を逸らすように足元を、それからティーカップを、そして部屋の隅を見遣った。
「…おいで」
 背中に聞こえる、父の声。
 シンタローは再び窺うようにマジックを振り返った。
 そして、ゆっくりと立ちあがる。
 テーブルとソファの隙間は、シンタローにとって狭いというほどのこともない。ほんの数歩で、父の元に辿りついた。
 シンタローはそのままラグの上に腰を落ろし、マジックの膝に手を添えて顔を埋めた。
「一体どうしたんだい?可愛いシンタロー」
 マジックの大きな手が、息子の黒髪をゆっくりと撫でる。成長期にさしかかっているとはいえ、変声もまだのシンタローは、彼にとって本当に幼い存在だった。
 幼くて儚くて、いとおしい存在だった。
「…父さん…」
 囁くような呼び声に、マジックは応える。
「俺、もうすぐ士官学校に入るんでしょう?」
 問いというよりも確認のような台詞だった。マジックは手を休めることは無しに、そうだねぇ、とだけ応えた。
「先生が言ってたよ。他の子たちもいっぱい、来るんだって」
 シンタローの言う先生とは、マジックがつけた教育係たちのことだ。学問と武道の両方とを、シンタローは習っている。マジックは通常の初等教育を与えるつもりなど、毛頭なかった。
 実際、総帥の後継者であるシンタローに、生半可な教育は反って酷だ。
 日々、その成果については報告が入る。遠征中も、暗号化された数値連絡が届いていた。暗号化せねばならなかったからこそ、普段なら報告されるべきシンタローの様子については省かれた。
 いつから、シンタローはうつむいていたのか。
 マジックは無言のまま、黒髪を梳る。
「ちゃんと勉強しないと、…抜かれるって…」
 マジックが瞳を閉じる。手が、止まる。
「強い子は一杯いるって…。だから…」
 シンタローの額がマジックに強く押しつけられた。ただ一人…、一族を除くとただ一人で育てられたシンタローにとって、未知なるものは希望ばかりではない。
 彼の父が、いかな立場を持つ人間であるかを、彼はとうに知っていた。
「…なーんにも、心配はいらないヨ?」
 マジックは、声の調子を上げて応えた。
「だってシンちゃんはパパの子だもの」
「でもッ」
 シンタローが顔を上げた。
 不安で不安でたまらない、といったその表情を、マジックは見下ろした。
「シンちゃんは自分で思ってる以上に強いよ?進学なんかまだ先だし、この調子だと入学式までには大人より強くなってるかもしれないね。…まったくどの先生だろう、そんな世間知らずなことを言うのは。あとで叱っておかないと」
 マジックが諭すようにゆっくりと言葉を紡ぐので、シンタローはそれが本当のことのように思えてきた。大きな手は、嘘なんかじゃないよと囁くように撫でてくれる。
「…うん…」
「わかったね?」
「…わかった」
 繰り返すのは、言葉の呪文。マジックの言葉は全て真実になる。マジックの言葉さえあれば、真実に変わる。
 男はシンタローの表情に笑顔が浮かんだのを見てとって、頷いた。
「良い子だね、シンタローは。じゃあパパに、ただいまのキスをさせてくれるかな」
 指を顎下に差し入れて掬い上げるようにしてやれば、シンタローは伸びあがるように引き寄せられる。
 そして閉じられたまぶたに、唇…。

END



総合TOPへ  目次へ  掲示板へ  



aaa
アラシヤマの無駄な抵抗
アオザワシンたろー




「やっと落ちついてきはったって、聞きましたえ?」
 報告書にざっと目を通すシンタローの、やや憔悴したような表情を窺がって、アラシヤマが切り出した。
 総帥室の机上には、端末機や書類以外に、布張りのケース入り上製本が一冊。
 それが最近のシンタローの頭痛の種なのだった。
「うるせぇよ。ったく、これもみんなあのあーぱー親父のせいだ」
 新生ガンマ団をゆるがす大事件の後、新総帥の人気は本人の予想に反し、うなぎ上りだった。
 種を蒔いた本人はこうなると予想していたと笑顔で答え、営業と称しサイン会へと繰り出している。
 その本とは、前総帥であるマジックが出版した半生記。
 父親の半生に息子が無関係であるはずがなく、そこには目を疑うような内容が赤裸々に語られていて、シンタローはすぐさま出版差しとめと禁書命令を出したのだが、その点はマジックの方が上手だった。
 マジックの狙い通り、相当数が世界に出回った。
 無論、そのうちの一冊はアラシヤマの蔵書である。
「でもこれで、団の財政は結構潤ったん、ちゃいますの?」
「んだとぉ?」
 シンタローの目が据わっている。
 そんな表情が凛々しいなんて口には出さず、アラシヤマは微笑んだ。
「マジックはんの手持ち部隊が価格操作をしてはって、正価販売は半数以下。団には印税なんて関係あらしませんし、純利益は相当なもんでっしゃろ」
 限りある財宝について、転売を重ねて値を吊り上げる。その程度のことを片手間にやってのける者がマジックの配下にはごろごろいるのだ。
 シンタローは息を呑むようにして、そしてぐったりと総皮張りの椅子に背を預けた。
「ったく…金の問題じゃねぇだろ?」
 ガンマ団の内情、ひいては一族の内情を暴露している本なのだ。
 シンタローが禁書指定したのは、内容ゆえである。
 現に発行当初から、地方支部には山のように盗聴機が仕掛けられ、末端団員は隠密取材合戦に翻弄された。シンタローにしても、初対面の国家元首に、幼い頃父親に働いた悪戯のことなどを話題にされたりした。真顔で相槌を打ちながら間にキンタローが入ってことなきをえたが、不快なことには違いない。
「せやけどシンタローはん。この内容やったら、金の問題でええんやないの」
「おま…人ごとだと思って」
 思わず身を乗り出すシンタローの、その拗ねたような言い分が可愛らし、なんて、やはり今度も口には出さず。
「人ごとどすさかいに、売れるんでっしゃろ」
 他人の不幸は密の味。
 世界の名だたるテロリストがこぞって欲しがるガンマ団総帥交代劇の真相。その裏の真実。
 一族以外でそれを知っているのは極わずかなメンバーだけだ。
 幸い、アラシヤマはその数少ないメンバーに入っていて、そのことがシンタローに壁を取り払わせている。
 遥か南国で見たものが蜃気楼ではなかったと、教えてくれる数少ない人物の一人。
 アラシヤマは総帥机に手を伸ばし、箱から本を取り出した。
 見返しには著者直筆のサインと、シンタローへの愛のメッセージが書き連ねてある。
 その台詞を口にする姿も容易に想像できるし、メッセージを見られて何の抵抗もないシンタローにも諦めに似た嫉妬にかられる。
 結局のところ、この親子には血の絆など関係が無いのだ。
 アラシヤマはそれ以上見返しを見ないようにして、頁をめくった。
 英語版でもそうだったが、この日本語版でもまるで創作のように世界の歴史が語られる。機知に富んだ文章は、こちらでも損なわれてはいなかった。
「わても清刷りで一度読まさして貰てましたけど、さすがはマジックはん、ようでけてはるわ。シンタローはん、これきちんと読まはったんどすか?」
 シンタローの目尻がみるみる上がる。
「清刷だと !? ちょっと待て。俺が見たのが刷りだしなのに、何でお前のほうが早いんだよ」
 シンタローの手に初めて渡ったのは完成見本だったというのだ。大量印刷に取りかかる前に小部数を製本してみる、書店に並べても遜色ない状態のもの。
 アラシヤマが見たのは印刷前の版の状態だから、時差があるというわけだ。
「あんさん、忙しい言わはってそれどころじゃおまへんでしたんやないか」
「そういう問題じゃねぇ!じゃ、じゃあオメェ、親父がンな本出すこと知ってやがったな!」
「そらまぁ、清刷段階で見してもろたし」
「なんで止めねぇんだよ!」
 机に両手を突いて立ちあがり、今にも噛みつきそうな勢いに、アラシヤマはシナをつくって体を震わせた。
「いややわぁやつあたり。あんさんが知ってはるかどうかなんて、どないしてわてがわかりますのん」
 言われてみればそのとおりだが、シンタローは釈然としない。
「おかげでこっちは、クソ元首どもにニヤニヤされて気味悪ぃぜ」
「ああ、あんさんのちみっこ時代の章を読まはったんどすな」
 他愛もない悪戯をいくつか列挙されてるのだが、当の本人の感じる羞恥は相当なのだろう。
「せやけど、どれもみんな害のない話ばかりどす。利用できそうな内容はこれっぽっちもありまへんどしたし」
 だから、とアラシヤマは言う。
 だから、この程度の内容ならば、金の問題と言ってしまって構わないではないか、と。
「俺が恥ずかしいんだよ!」
「誰でもやりそうな悪戯やおへんの。読者はそんなとこ見てへんわ」
 もともとシンタローを知っている者ならいざ知らず、マジックファンがその息子の人となりに関心を払うとも思えない。
「そ…そうか?」
「そうどす。キンタローが自慢気に話してるの聞こえましたわ。からかわれたシンタローはん、余裕の笑みで元首どもを躱しはったって。助け船、いらんかったって」
 そうかな?そうかも?とシンタローが頭の中で苦い思い出を反芻している。
 そんな無防備な姿で考えを巡らされて、アラシヤマとしては抱きつきたい衝動を押さえるのに大忙しだ。
 そして、惚れた弱みやわ、と付け加えた。
「この本には、あんさんのためにならんこと、何一つ書かれてまへんし」
 確かにひと騒動起こしたけれど、結果として、マジック政権は穏便にシンタローへ受け継がれたこと、マジックがいつでも復帰できる余力を残していることを世界へ知らしめた。新生ガンマ団にとって、旧制こそが強力な後ろ盾だと宣言してあるのだ。
 一族の秘密が隠れ蓑の強大なラブレター、とまではさすがに教える気にはなれないが。
 だから代わりに、嫌味をひとつ。
「そやなぁ、恥ずかし思うなら、『シンちゃん』呼ばれて返事するのやめはったらどうどす」
 言ってみて、存外その案が気にいった。
「…なんだって?」
 シンタローが眉を潜め、再び椅子に座りなおした。
 アラシヤマは本をケースに戻し、表面の著者名を指差しながら重ねた。
「ええ年して、父親にちゃん付けで呼ばれて平気な顔してはることの方がよっぽど恥ずかしいわ。やめたらどうどす」
 息子を模したぬいぐるみを携える父親が、己の方針を変えるとは思えず。だが肝心の息子が返事をしなくなったというのは、大きな抵抗になる。二人を仲たがいさせるには我ながらせこい作戦だとは思うものの、名案という気もした。
 そのくらい、シンタローにだってできるはず。
 だが当のシンタローは、胡乱気な目を向けるばかりだ。
 そして、アラシヤマにとって衝撃的なひとことを返すのだ。
「なんで…ちゃん付けだと恥ずかしいんだよ?」
 常識とか、成人男性としてのプライドとか、そういうものをシンタローに期待していたアラシヤマは、あらためてマジックルールとの溝を思い知った。
「親が子供をちゃん付けするのは普通だろ?いくつになっても子供は子…おいアラシヤマ、どうした、真っ青だぞ。うわ!いきなり倒れるな!そういやお前、作戦帰りじゃねぇか。ティラ、担架もって来い !! 」
 だくだくと流れる涙の意味を、シンタローが正確に理解できたかどうか。疲弊したのは体ではないのだ………。



終。
       




--------------------------------------------------------------------------------
  アラシン、になったでしょうか…。私の書くアラシンはベースにパパシンがあります。でもってアラシ、パパには負けてます。でも一生懸命スキを突こうと鋭意努力中~。



総合TOPへ  目次へ  掲示板へ  




 総帥室は全壊したので、その修繕には数日を要した。その間、シンタローは別の部屋で仕事をしていたがアラシヤマは相変わらず姿を見せなかった。
 シンタローが元通りとなった総帥室に戻ったその日、久々にアラシヤマが姿を現した。
 「オマエ、何でギリギリになってこんな書類持って来やがんだ!?」
 「・・・すみまへん」
 「ったく、面倒かけさせんなヨ!!」
 苛々としながらシンタローは書類をめくったが、
 「痛ッ!」
 どうやら鋭い紙で指が切れたようである。指先を見ていると、プツリ、と赤い血の玉が浮かんだ。いまいましく思いながら、シンタローは指を口に含んだが、
 「何だよ?見てんじゃねーヨ」
 アラシヤマの視線を感じ、顔を上げ睨みつけると、アラシヤマは我に返ったような顔をし、 
 「すみまへん」
 と謝った。そして何処か後悔しているような表情を浮かべた。アラシヤマが何も言わず立ったまま、中々その場から動こうとしないので、シンタローが、
 「まだ何か用事でもあんのか?無いなら、さっさと帰れよ」
 そう声をかけると、アラシヤマは帰るつもりは無いようであったが、躊躇っているようであり話し出しもしなかった。そして、しばらくしてやっと口を開き、
 「・・・あれからずっと考えてみたんどすが、やっぱりラブなんどす。わて、あんさんを抱きとうおます。いや、シンタローはんがわてを抱きたいいうんやったらそれでもええんどすが」
 と言った。
 シンタローは、予想もつかなかったことを告げられ一瞬頭が真っ白になった。少し落ち着くと、どうにかしてその発言を聞かなかったことにはできはしないかと考えをめぐらせたが、アラシヤマの真剣な様子を見て、それも止めた。溜め息をつき、
 「―――俺は、オマエの事、恋愛とかそういう意味で好きじゃねぇし」
 と、血の止まった指先を見つめながらシンタローがそう言うと、
 「それは、わかってます。でも、わてには、シンタローはんだけなんどす。・・・他は、何もいりまへん」
 気負う様子でもなく、むしろ苦しそうに、しかし真っすぐにシンタローを見据えながらアラシヤマは言葉を絞り出した。シンタローは、指先をぼんやりと見ているようで見ておらず、アラシヤマの言葉を聞いていたが、
 (なんでコイツはそんなに俺を欲しがるんだろう?わかんねぇ)
 そればかり、頭を廻っていた。ふとシンタローが気づくと、アラシヤマがすぐ傍まで来ていた。
 「シンタローはん」
 シンタローが顔を上げアラシヤマを見上げると、アラシヤマにキスされた。 
 (思ったよりも嫌じゃねーな。何でだ?やっぱり分かんねぇし、ああもう、ゴチャゴチャ面倒くせぇッツ!!)
 「怒りはらへんの?それは、承諾ととってもええんどすか?」
 「・・・抱きたけりゃ、抱けよ。そんかわし、2度目はねーからナ」
 「ほんまに、ええんどすか?」
 アラシヤマが片手を伸ばし、震える手でシンタローの頬に触れると、
 「しつこい!」
 シンタローは、手から逃れるように顔を背けた。




 ベッドの縁に腰掛けたシンタローの前にアラシヤマは立つと、躊躇いがちに、
 「怖かったら止めてもええんどすえ?」
 と言ったが、シンタローは、
 「誰が!俺の気が変わんねーうちに、さっさとすませろ」
 アラシヤマを睨み上げた。
 アラシヤマは、震える声で
 「シンタローはん」
 と呼ぶと、シンタローに歩み寄り、頭を引き寄せ深くキスした。
 (何で、俺、コイツとキスしてんだろう)
 シンタローがぼんやりとそう考えていると、アラシヤマはいったん身を離し、
 「シンタローはん、今はわてのことだけ考えて」
 耳元でそう囁き、シンタローをベッドの上に抱き上げた。
 総帥服のボタンを全て外され、一糸纏わぬ姿にされたシンタローであったが、アラシヤマは感嘆したように
 「あんさん、綺麗どすな」
 と言った。
 「傷だらけだし、綺麗なわけがねーダロ」
 「わてにとっては、綺麗なんどす。早く、抱きとうおます」
 掠れた声でアラシヤマはそう言うと服を脱ぎ、顔を背けていたシンタローの顎を捉え、性急にキスをした。
 不意に、シンタローは、自分に覆い被さっているアラシヤマから逃れようとした。が、アラシヤマはもちろんシンタローを逃さず、
 「別に、恥ずかしいことやあらしまへん。わては、あんさんに気持ちようなってもらいたいんどす」
 と言って、花芯から手を離さなかった。そして、もう片方の手でシンタローの片膝を割り開くと、緩く起ちあがった花芯を口に含んだ。
 シンタローは暖かくて柔らかい感触に、気持ちがいいとも悪いともわけが分からなくなり、思わず
 「ヤダ」
 と子どものように目に涙を溜めたが、それでもアラシヤマは止めなかった。シンタローの体が魚のように跳ね、力が抜けたようにクッタリとすると、身を起こしたアラシヤマは、
 「ご馳走様どした。美味しゅうおましたえ?」
 そう言って嬉しそうにしていたので、シンタローが息が整わないまま彼を睨みつけると、
 「そんな色っぽい目でみつめられたら、わて、鼻血が出そうどす」
 と真顔で言って軽く口付けた。
 力の入らないまま、アラシヤマが下肢へと伸ばす手を振り払えずにいたが、今度は胸の飾りを舐められ、それが赤く色づくと軽く歯を立てられた。シンタローが身を震わせると、アラシヤマは手の中に受けた蜜をシンタローの後口に塗りこめた。
 「ええんどすか?」
 余裕が無さそうにアラシヤマがそう聞くと、
 (そんなこと、一々聞いてんじゃねぇッツ!)
 と思いながら、シンタローは小さく顎を引いた。
 アラシヤマが自身の切っ先を入り口に押し当て、内に入り込んでくるとシンタローは痛みで気が遠くなりそうであった。生理的な涙の滲んだ目でアラシヤマの顔を見上げると、
 「シンタローはん、大丈夫どすか?」
 心配そうな顔をしていた。
 「まぁな」
 と返事をすると、アラシヤマは大切そうにシンタローの手を握り、
 「好きな人に受け入れてもらえることが、こんなに気持ちのええもんやて、わて、初めて知りましたわ」
 そうポツリと言うと、そっとシンタローの腹を撫でた。前髪で隠れて表情はよく見えなかったが、どうやら泣きそうになっていたらしい。
 シンタローは初めてアラシヤマの背に腕を回すと、彼を引き寄せ、自分から口付けた。
 アラシヤマが思わず目を丸くしてシンタローの顔を見ると、
 「ジロジロ見てんじゃねーヨ!」
 と顔を赤くしてそっぽを向いた。
 「・・・あんさん、おぼこすぎどす。もう我慢できそうもおまへんから、動いてもええどすか。堪忍してや」
 そう言うと大きくシンタローの両膝を割り開き、体を進めた。
 (痛ぇ・・・)
 勝手が違うのか、最初はゆっくりであったが、どうやら内部が切れて血が潤滑剤がわりとなったようである。アラシヤマに大きく揺さぶられながら、シンタローは意識を手放すまいと必死でアラシヤマの背に手を回していたが、その背に決して小さくはない傷があるのを手に感じると、何故かまた涙が出てきた。
 (別に、コイツをかわいそうとか思っちゃいねぇし。ただ苦しいだけだ)
 「シンタロー」
 そう呼びかけると、アラシヤマは指でシンタローの涙を拭った。
 「・・・わてを、拒まんでくれてありがとう」
 アラシヤマの言葉を聞きながら、シンタローの意識は闇に呑み込まれていった。




  シンタローは、ふと、誰かに優しく髪を撫でられる感触に気づいた。
 (?、・・・あぁ、ここは俺の部屋か)
 まだはっきりとは覚醒してはいなかったが、薄く目を開けるとベッドサイドには既に着替えたらしく制服を着たアラシヤマが居た。シンタローは、アラシヤマの顔を見たくなかったので、ギュッと目を閉じ手から逃れるように背を向けた。自分を見つめるアラシヤマが、優しい顔をしていたら、嫌だと思った。
 「シンタローはん、起きました?」
 アラシヤマの言い方がいつもと変わらなかったので、シンタローが、アラシヤマの方に向き直ると、アラシヤマは、
 「大丈夫どすか?」
 と一言聞いた。
 「―――腰が痛ぇ。オマエのせいだからな!」
 シンタローが不機嫌にそう答えると、アラシヤマは赤面し、
 「そ、そんなシンタローはんッツ!あんさん、はしたのうおますえっ!?」
 何やら慌てていた。その様子を見たシンタローは呆れ、
 (今更コイツ、何言ってやがんだ?)
 と思った。なんとなくアラシヤマがうっとうしく思えたシンタローは、シーツに包まると、
 「今日は、仕事しねーからナ!そう言っとけ」
 と言って向こうを向いた。
 「シンタローはーん!そう、すねてへんとこっち向いておくんなはれ。あっ、もう一回一緒にお風呂に入ります??意識のないあんさんもおぼこうおましたが、やっぱりわて、意識のあるシンタローはんとも一緒にお風呂に入ってみたいんどすー!!」
 「・・・調子乗んなッ!死ねッツ!!」
 至近距離からの眼魔砲に倒れたアラシヤマをシンタローは見遣って、
 「―――特に、何もかわんねーナ。別にオマエのこと好きになったわけでもねぇし。オマエ、ヘタだし」
 と確認するように呟いた。アラシヤマは床に倒れたまま、
 「シンタローはーん、非道うおますえ・・・。あれはわてが下手なわけやのうて、あんさんがバージ」
 「うるせぇッツ!・・・てめぇそれ以上何か言ったら殺ス!!!」
 床から立ち上がったアラシヤマは、顔を赤くして怒っているシンタローを見て、(やっぱりこの人、おぼこうおますなvvv)と嬉しく思った。
 「シンタローはん。わて、あんさんに好きや言うてもらえるよう色々頑張りますさかい、覚悟しといておくれやすvvv」
 アラシヤマがニヤニヤしながら言うのを見て、
 (やっぱり、こんな奴に抱かれてやるなんて失敗だったか?ムカツク!!) 
 少々どころではなくかなり本気で殺意を覚えながらも、シンタローはアラシヤマがそうしたのかきれいに畳まれて置いてあった服を手に取った。
 「さっさと出てけヨ!」
 そう言って、アラシヤマに背を向けボタンを嵌めていると、
 「ほな、シンタローはん、わては今から遠征に行って来ますさかいに」
 真面目な声でそう言い、アラシヤマは部屋から出て行こうとした。ドアノブに手を掛ける音がした時、シンタローが
 「―――オマエ、死んだらただの馬鹿だからナ」
 と、ポツリと言うと、一瞬間が空き、
 「あんさん、優しゅうおますナ」
 嬉しそうに低く笑うのが聞こえた。そして、アラシヤマは引き返すと憮然としているシンタローを背後から抱きしめ、
 「わては、還ってきます。約束どす」
 と言った。



 ドアが閉まり、アラシヤマの気配が完全に無くなると、
 「心配なんて誰がするかヨ!それに、不確かな約束なんかいらねぇッ!!」
 シンタローは、ベッドの縁に座ったまま、手近に会った枕をドア目がけて投げつけた。
 「・・・馬鹿アラシヤマ。別に俺は優しくなんかねぇし」
 シンタローは手で顔を覆い、しばらくそうしていたが、
 「今までどおり、だ。何も変わんねぇはずだ」
 顔を上げると、一言一言、自分に言い聞かせるようにように言った。


 数週間後、なんとかガンマ団に帰還したアラシヤマは、
 (気がすすみまへんが・・・)
 そう思いつつ、ある部屋のドアをノックすると、
 「お入り」
 中から声が聞こえ、ドアが開いた。マジックはいきなり、
 「お前がここに来たということは、シンタローを抱いたんだね?」
 とアラシヤマに尋ねた。穏やかな口調ではあったが、威圧感があった。
 「そうどす。あんたはん、シンタローを今まで抱いてへんかったんどすな」
 一瞬、底冷えのするような殺気が自分に向けられたのをアラシヤマは感じたが、何事もなかったかのようにマジックの口調は変わらなかった。
 「シンちゃんは、世界中で一番可愛いけどネ。でも何よりもまず、シンちゃんは私の息子で大切な家族だからだよ。お前との事に関しては、シンタローが決めたことならば、私は口出しをしない」
 そう、マジックはキッパリと言った。アラシヤマは拍子抜けしたような思いと同時に、マジックのシンタローに対する家族という想いに少し敗北感に似たものも感じた。
 考え込んでいる様子のアラシヤマをマジックは眺めながら、(モチロン、これからたーっくさん、邪魔はするけどネ☆)と心中では思っていたが、アラシヤマはそんなことは知るよしもなかった。(―――さて、)とマジックは気持ちを切り替え、口を開いた。
 「―――アラシヤマ。お前、厄介なものに手を出したね。もしお前がシンタローを裏切ったら、シンタローの意志がどうであれ、私はお前を消すよ?」
 アラシヤマを見据え、今までとは一転して、淡々とした冷たい口調で告げた。
 「・・・あぁ、そしたら、今までのガンマ団内での刺客は前総帥が差し向けたものやなかったんどすか」
 少し間を置き、アラシヤマもただ事実を述べるようにそう言った。
 「私じゃないよ。ただ、お前を始末したがっている連中には好きにしろと言ったがね。お前が殺されるのならそれでもいいと思ったが、お前は相手を返り討ちにし、そうはならなかった。別に殺されないなら、お前にはまだ利用価値があるからそれはそれでよかったしね。まぁ、今は私が殺してやりたい気分だけど」
 「―――わては、シンタローはんのため以外には、何があろうと命を無駄遣いするわけにはいかへんのどす」
 アラシヤマは静かにそう言うと、
 「ほな、失礼します」
 と一礼をして部屋から出ていった。閉まったドアを見て、
 「何で、よりにもよってあんな厄介なのを受け入れちゃったんだい、シンちゃん?一切の情を廃して徹底的に利用するだけにしておかないとダメだヨ」
 とマジックは呟き、
 (結局、あの子は裏切られても、いずれ許しちゃうんだろうねぇ・・・)
 深い、溜め息を吐いた。


 ドンドン、と総帥室のドアをノックする音が聞こえ、(来やがったか・・・)とシンタローは溜め息を吐いた。
 「シンタローはーん!帰ってきましたえ~vvv」
 「ああ」
 アラシヤマの方を見もせずに、書類に目を通しながらそう返事をすると、
 「ええっ?久々に会ったのにそれだけどすかぁ??“ちょっと照れながら、恥ずかしそうにお帰りのキス”とかはッツ!?」
 そっけないシンタローの反応に、思わず自分の妄想を口にしたアラシヤマであったが、
 「眼魔砲!」
 即、眼魔砲を撃たれた。そして、どうにかダメージから回復すると、吹き飛ばされた部屋の隅っこで
 「ええんどす、ええんどす。どーせわてなんて・・・」
 体育座りをしていじけていた。
 「ウゼェ!用がねーなら今すぐ帰れッツ!!!」
 放っておくとキノコが生えそうな程鬱陶しい様子であったので、シンタローがそう怒鳴ると、
 「あ、用ならありますわ」
 立ち上がったアラシヤマは、シンタローの傍まで歩み寄り、
 「ただいま、シンタローはん。わて、約束守りましたやろ?」
 そう、真剣な顔で言った。
 シンタローは溜め息を吐き、
 「オマエ、ただの馬鹿じゃなくて大馬鹿に格下げだナ」
 と言うと、
 「嬉しおますv」
 アラシヤマはシンタローを抱き寄せ、キスをした。シンタローは、渋々といった様子でアラシヤマの背に手を回した。







 





 




 




.







BACK NEXT
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
as
(06/27)
p
(02/26)
pp
(02/26)
mm
(02/26)
s2
(02/26)
ブログ内検索
忍者ブログ // [PR]

template ゆきぱんだ  //  Copyright: ふらいんぐ All Rights Reserved