忍者ブログ
* admin *
[57]  [58]  [59]  [60]  [61]  [62]  [63]  [64]  [65]  [66]  [67
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。




コタローがおやすみなさいをしに来た。
この天使の笑顔(パジャマ姿で更に良し!)で「おやすみなさい」と言われる夜はぐっすり安眠出来るってもんだぜ。
何時もはその後直ぐに親父やグンマやキンタローのトコにも寝る前の挨拶をして回るんだが、
「絵本を一冊読んでやるよ」と誘ったら喜んで好きな絵本を抱えてオレの膝に飛び乗った。
その為絵本一冊分、他の連中に「おやすみなさい」をするのが遅れたが…。
コタローがふと質問をしてきたのは、絵本を読み終わって直ぐだった。
「ねえお兄ちゃん」
「なんだい?」
「グンマお兄ちゃんって、お酒いっぱい飲む人だっけ?」
「は?………あ、いや、アイツは酒に強くない筈だし好んで呑んだりするヤツじゃないぞ?……それがどうかしたのか?」
「うーん…」
オレの膝の上で足をぱたぱたさせながら子首を捻る。
「さっきね、ここに来る前にグンマお兄ちゃんと会ったの」
「どこで?」
「廊下で。お買い物しにお外に行ってたんだって」
へー、この時間に珍しい。
「いっぱい色んなお酒を持ってたよ。ビニール2袋に窮屈なくらい」
グンマが、酒を沢山……?
「他には何か買ってなかったか…?」
う~ん、と唸りながらコタローが数十分前の記憶を手繰り寄せると首を横に振った。
「お酒だけじゃなかったかなァ。お菓子とか無かったと思う。珍しいよね~、グンマお兄ちゃんがお酒あんなに買い込むなんてさ」



コタローを部屋まで送ったその足でグンマの部屋に走った。
嫌な予感が心臓を揺さぶる。
途中で多分自室に戻るところだろうキンタローと角で衝突しかけた。
短く謝って走り去ろうとしたが、手首を掴まれた。
「待て。どうしたんだ。何かあったのか?」
「離せってッ。グンマの様子がおかしいみてぇだから様子見に行くんだよッ」
「グンマが?」
どう変なのか問い詰められる。
説明するまでこの手は離してもらえそうに無いな。
仕方なくコタローから聞いた話をそのまま聞かせる。
伝え終わってまた走り出そうとするオレを、再びキンタローが引き止めた。
「オレも行こう」
「え、何で」
「オレも何かが引っ掛かる」



グンマの部屋に着くのに1分も掛からずに着くが、戸はビクともしない。
「鍵が掛かってやがる…ッツ!!!」
「夜は皆そうしてるだろう」
キンタローの言葉を無視して戸を乱暴に叩くが、中から反応はない。
ドンドンドン!!!!!
「グンマ開けろ!」
「中に居ないのか…?」
キンタローが不信がるが、グンマは絶対中に居る。
グンマがこの時間に行くとすれば自室か開発室くらいだが、コタローが見た大量の酒を開発室に持っていくとは考え難い。
酒を呑む誰かの使いってのも考えたが、グンマに酒を、しかも大量に頼むヤツはいないだろ。
ハーレムでも使いなら特戦部隊の誰かにやらせるだろうし、親父は酒の種類にかなり拘っていやがるから、
呑むのは特注ばかりでどこかの店で買ってくることはない。
まさかあの過保護ドクターがグンマに大量の酒を買わせるってのは間違いなく無い。
グンマは、この部屋に居るッ。
「ちっ…!面倒くせェ……………眼魔砲ッッツ!!!!!!」
至近距離から放ち、扉を吹き飛ばした。
目的は扉の破壊だけだから威力は微小だ。
キンタローの呆れたような溜息を無視して入るが、部屋には明かりが点いていない。
グンマは居た。
寝ていない起きている。

けど……

小さくパチンと音がして照明が点く。
キンタローが明かりを点けたのは振り返らなくても分かる。
明るくなった部屋。
ベットサイドのにグンマは座り込んでいた。
……………………………………大量の酒ビンに囲まれて。
「きゃはははははははは☆☆☆♪♪♪」
「ゲッ!?」
「グンマ…!?」
「シンちゃんキンちゃん今晩はぁ~!もー駄目だよぅ☆扉壊しちゃ!」
顔だけじゃなく体も真っ赤になって、グンマが壊れたようにケラケラ笑い続けていた。
空になっている酒ビンが数本。
オレやキンタローならともかく、グンマが飲みきれる量じゃない筈。けどここにはグンマしか居なかったなら……。
「グンマ…、まさかここに転がっている酒、全部オマエ1人で呑んだのか…!?」
「そうだよう!他に居ないでしょ?うふふふvvだってシンちゃんもキンちゃんもぉ~、ボクを放ったらかしにして遊んでくれないしぃ!
 うぷぷ☆☆いーっぱい呑んで元気はつらつー!になろーっと思って!」
「あ…」
「…………」
キンタローと二人して声が詰まった。
そう言えばキンタローと恋人になってから、仕事でもプライベートでもグンマと距離が開いていたのに気付かなかった。
キンタローはオレの補佐になる前はグンマと高松の保護の下に科学の道を歩んでいたが、
俺のパートナーになってからは開発部に顔を出す機会は極減していた。
オレはキンタロー以上にグンマと話す機会が減っていた。
ガキの頃はよく一緒に遊んでいたのに…。
時々夜のお茶会にオレもキンタローも誘われるが、夜は恋人の時間を優先してしまい構ってやれなかった。
グンマはかなり寂しがり屋だ。
甘えん坊のように見えて、本当に寂しい時に寂しいと言わない。
「お酒呑んだらぁ!ぱーって楽しく可笑しくなれるってゆーから♪いーっぱい呑んでみましたぁ☆」
わーvと万歳してケラケラ笑い続ける。が、その身体が突然ぐらりと揺れる。
「おっと!!」
床に倒れる前に受け止めてやると、腕の中のグンマはもうさっきのようにケラケラ壊れたように笑ってはいなかった。
か細い声が声を紡ぐ。
「寂しかった……んだよぅ…」
迷子になった幼い子どものような声で、そのままズルズルと腕の中で崩れ落ちていく。
「シンちゃ……、キンちゃ……ん……。ボク、を……いてかな……………で……ぇっ」
そこまで言うとグンマは深い眠りについていた。
目元が赤いのは酒の所為だけじゃないのは、涙の跡を見れば分かる。
ふ、と息を吐き出す。
オレ自身への呆れ故に。
「…グンマに悪い事をしていたな」
キンタローも屈みこみ、グンマの寝顔を見つめながら頭を撫でた。
「ん…」
触れられた感覚でグンマの身体がぴくりと反応したが、それっきりで熟睡している。
まず起きはしないだろうが、起さないように慎重に身体をベッドに横たえて毛布を掛けてやる。
小さい電気だけを点けて、暫くグンマの傍に二人で居た。
「蔑ろにする気はなかったんだけどな…」
「だが、もしオレがグンマの立場だったなら……きっとオレも同じような事をしたかもしれない」
グンマとキンタローの立場が交換なんて普段なら有り得ないとおかしがるが、今はそんな気分になれない。
誘いを断る度に傷ついた目をしていたのを覚えている。
けど今までのオレは特に気にも留めなかった。
三時のおやつ時間にはコタローも交えて時々付き合ったが、それ程回数は無い。
今のオレにはキンタローというパートナーが居る。
けど、グンマには―――…。

「もっと、グンマの事もちゃんと見なくてはな」
キンタローがオレの肩を抱き寄せて呟くように言う。
「………そうだな。大切な家族だし、な」
キンタローの胸に頭を寄せる。
月が照らす部屋に大きな影が一つ。
オレとキンタローに包まれるようにグンマの影も重なっていた。





「………ん?アレ……?朝……?………~~~~~…ッッツ!!頭痛ぁ~…何でェ?ズキズキするよぉ~…ッツ」
聞き慣れた高い声に覚醒を迫られる。
目を閉じたままでも分かる白い光に、朝が来たのを理解した。
「…って、ええ!?何で!!!??何でシンちゃんとキンちゃんが一緒に寝てるの!?」
………左手が妙に温かいと思ったが、これはグンマの手か…。
「シンちゃんキンちゃん起きて起きて!!!」
「…………ん…」
オレの隣のグンマ……の更に隣から聞こえてくる小さな呻きは、グンマとは対照的な低い声音。
「………ああ、手を繋いで寝ていたのだったな…」
「だから何で!?――――――…!ってッ、頭痛いよぉ~!気持ち悪いよ~~~!!!」
ふえ~んと完全な二日酔いに泣き出すグンマを挟んで、オレもキンタローもやれやれと顔を見合わせて笑った。
賑やかな朝。
PR



だるい。
苦しい。
熱い。
気分最悪。。。

食欲も無く、口にするのは水だけだ。
ピピピピ…
体温計を脇から出し、くらくらする視界で確認する。
「40度越えするかもな…」
見たら余計具合悪くなった気がする…。
風邪なんて久し振りにひいた。
ここ数年風邪知らずだったが、遠征先で貰ってきたのかもしれない。
先日まで抱え込んでいた仕事が一段落して保っていた気力が崩れたのかな…。
折角今日はオフデーにしようかと思ってたってのに、オレ専用の病室に閉じ込められてお流れだ。
せめて明日には簡単な作業をこなすくらいには回復してればいいが…。
明日の事に更に頭を痛めていると、控えめなノックが戸から聞こえてきた。
「どーぞー…」
自分でも情けなくなるくらいひ弱な声で入室を許す。
カチャリと金属音がして、ドクターがカルテらしきものを抱えて入ってきた。
グンマやキンタローの傍に居る時は鼻血噴出して変態入ってるが、こうして見ると医者の風格が色濃くなる。
「具合はどうですか?シンタロー様」
「さっき熱測ったら40度近かった……」
「高くなってますね。そろそろ薬を飲む時間ですが……………昼食、一口も口にしませんでしたね?」
1時間前に運ばれたお粥やらお吸い物やらヨーグルトやら林檎やらをトレイ一つに乗せた昼食が、全くの手付かずで置かれている。
「全く…。少しくらい口にしなくては薬も飲ませられませんよ?」
「食欲ねえんだよ…。食べたら吐きそうだ」
「我慢して少しは食べなさい。風邪をこじらせたいんですか?」
「う~~……」
「仕方がありませんね…。なら林檎は擦ってきますから………、それならなんとか食べられませんか?」
「頑張りマス…」
「全く。いい年した大人が手の掛かる…。ついでにコレ全部持っていきますよ。どうせ食べないんでしょ?」
力無く頷くと、ドクターはヤレヤレと肩を竦めて昼食の乗ったトレイを持って、一旦部屋を出て行った。


擦り林檎を何とか喉に流し込んで薬を飲む。
「ふぁ……。眠っ…」
薬の副作用の所為か日頃の疲れか高熱を発し過ぎな所為なのか睡魔に包まれ、逆らう理由も無くこの身を委ねた。
心地良く夢の中へと潜っていく。
次に目覚めるまで瞼は閉じられて開けられないだろう。

コンコン…………カチャリ…

もう半分以上夢の中に浸かっている最中にノックと僅かの間に戸の開く音が聞こえたが、
もう殆ど眠りに入っているオレは瞼を開ける事も声を掛ける事も出来なかった。
「シンタロー…?」
あー…、キンタローの声だ、コレ。
「寝ているのか……」
返事を返してやりたいが、身体は完全に眠りに入ったらしく、瞼すら開けない。
頭の隅っこギリギリでキンタローの声を拾うのが精一杯で、それももう睡魔に負けそうだった。
キンタローが来た事すら夢を見ているその一部で現実のものじゃない気もしてきた。
何かが額に触れる。
例えコレが夢だったとしても分かる。
この温かさはキンタローの手の平だ。
「かなり熱いな…」
閉じられた瞼に阻まれて顔は見えないが、深く眉に皺を寄せているんだろう。
額に乗せられた手は直ぐに離れ、直ぐ近くで水音がしたと思ったら、キンタローの手の平の代わりに冷たいものが置かれた。
ひんやりとした濡れタオルだな………冷たくて気持ちいい……。
「高松には風邪がうつるから来てはいけないと言われているから、見つかる前に帰るか…。シンタローも寝ているしな」
何だよ。もう帰るのかよ。
後一歩で完全に夢へと落ちる所を堪えてキンタローの声と気配を拾う。
まだ居て欲しい気持ちはあるが、オレももう完全に寝そうだし今度はキンタローに風邪がうるかもしれないしな…。

キンタローの気配が近付く。
…………?帰るんじゃないのか…?
耳元にキンタローの吐息が触れた。

「    」

一言そう言うと、気配は遠退き扉の向こうへ消えた。
それにしても………あの一言は効くなー…。
すげえ眠くて仕方が無いのに顔が緩みそうだぜ。
取り合えずもう眠りに全て委ねるとしますか。
キンタローが最後に残した言葉を思い出す。
大丈夫だ。絶対明日には何が何でも回復してやる。
絶対出来る自信がある。

キンタローの言葉で、オレは無敵になれる。
kss



シンタローの髪に人工の…………けれどとても美しい花が咲いていた。
「シンタロー、それは何だ」
必須書類をオレの方で纏め、総帥であるシンタローに渡しに来て開けた総帥室の扉の向こうに、
日常的ではないものを見つけ、足が止まった。
見慣れた室内見慣れた男いつもの空気と……………………………………初見のオレンジ色の花。
それが花瓶に活けているのではなく、シンタローの髪に鎮座している。
振り絞った感のオレの問いに目線で気付いたのか、指でその花を軽く突っ突きながら話した。
「あー、これか。髪飾り。お袋の遺品だよ」

シンタローの話のよると、先日マジック叔父貴と一緒にコタローに母親の遺品を見せに行った時、見つけたものらしい。
他にも和装小物は多くあったがその中でマジックが一つ、シンタローに贈ったのが今コイツの頭に咲く人工の花。
白いファーに色彩抑え目のオレンジの花が二つ並べられ、花びらの中から真珠のような玉を並べた装飾がされている。
総帥服のシンちゃんに映えそうだから、とは叔父貴の談。
「それでオマエは叔父貴の言う通り付けている訳か…。意外だな」
意外と思うには二つある。
一つはマジックの趣味的な願いを嫌がりもせず引き受けた事。
もう一つは女物の飾りを嫌悪もせずつける事。
「一度は断ったさ。お袋の遺品だから大切に保管して置きてぇし、けど親父が煩くてさー。
 じゃあ一度ならつけてもいいぜって言ったんだよ。別に女装してるって訳じゃねえし」
身に付ける事に嫌悪はないらしい。
……しかし……逆に楽しそうなのは何故なのか。
「眉間に皺寄せて………んなに変かぁ?」
「いや、似合うと思うが……」
「思うが?何だよ……」
ニヤニヤ笑いながらオレの様子を伺っている。
一体何だ…。
「男に花の髪飾りなど似合うものではないと思っていたが………そうでもないな」
グンマや子どものコタローもきっと似合うだろう。
サービス叔父貴も見た目の問題は全く無く、映えるだろうと思う。
「は~…」
シンタローが脱力したような盛大な溜息をディスクの上に吐く。
「どうした」
「つまんね~…」
は…?
「オレが期待してたのはそんなんじゃねーの!!」
期待…?もしかして……
「似合っている、シンタロー。可愛いぞ」
とでも言って欲しかったのか?
実際似合ってはいたし、可愛いと思ったのも本音だ。
「男相手に可愛いっつーのもなァ…。この場合キザかキモイだけだぜその台詞」
余計機嫌を損ねたのか…?
怒っていると言うよりは、期待外れと言った様子だ。
何が不満だと言うんだ。
「書類受け取ったからさっさと行きやがれ。仕事ちゃっちゃと片してこい」
シッシと追い払うように書類をパタパタさせて完全にそっぽを向いてしまった。
勝手に呆れられてるか怒られてるか、理由がはっきりしないので納得がいかず、オレまでイライラが蓄積していく。
「だから何なんだ。何かオレの言葉に失言でもあったのか」
口から出た声は少々怒気混じりだった。
もう一度深く長い溜息を吐いてシンタローが口を開く。
「ただ、オレはさ、オマエの驚く反応が見たかったんだよ」
あまりに小規模の願い。
たったそれだけで怒っているのかコイツは。
第一、最初目にした時驚いたと思うが。
「何時もは見せないお前の顔がもっと見れたら……って思って、こんなものつけて今日一日仕事してたってのに、
 オマエは反応薄くてつけた意味なかった」
馬鹿馬鹿しかったと吐き捨てて髪飾りを外そうとするシンタローの腕を掴む。
「……なんだよ」
不機嫌さを隠さずにむっとした目を向けるシンタローの両手首を軽く掴んで、オレンジの花に口付けた。
「キンタロー…?」
「オレが常にオマエに対して強い興味を持つように、オマエもまたオレに対して同じなのだろう?」
ふっと微笑んで今度は瞼に口付けると、背中にシンタローの腕が回った。
「当然、ダロ?」
三度目のキスは熱情のキスへ……。

見せて欲しい 君の全てを
届けて欲しい 君の全てを
許して欲しい 求める自分を―――……
ks



「シンちゃーんvv」
振り向くとグンマが廊下を全力疾走して突っ走ってくる。
『廊下は走らないでネ☆』と各廊下の壁に貼られた紙などお構い無しだ。
危ないから廊下は走らないようにと言われているがもう一つ。
「バタバタウルセーよ、グンマ」
溜息を大きく吐いて軽く咎めるが、彼の方は聞いちゃいない。
「昨日の写真出来たからあげるね☆はいコレ!」
「もう出来たのか?随分早ぇ~」
「うん。デジカメのデーターをPCに入れて簡単に出来ちゃうからね」
「………グンマがやったのか?」
疑わしい眼差しを向けるシンタローに全く気付かず、グンマは凄いでしょうエヘン!と胸を反らせた。
突っ込みたいところを抑えて、大人しく写真を受け取る。
「随分分厚いな…。これって昨日の分だけなんだろ?」
昨日―――5/5、日本の行事の一つ子どもの日の写真。
だけなのに、渡された写真を収めている袋は分厚くずっしりと重い。
「うん。お父様が頑張って撮ったからね!シンちゃんのだけでも結構な量だけど、
 お父様、今年はコタローちゃんやキンちゃんの写真も増やそうって張り切ってるもの」
コタローが目覚めて初めて家族で行った子どもの日は、
シンタローが幼少の頃してもらったものと同じくらいに大規模に行われた。
大きなこいのぼり5つを掲げ、
お茶にジュースにお菓子を沢山用意してコタロー中心に団に所属する者の子ども達も呼べるだけ呼ばれて盛大に祝われた。
シンタローとグンマ、マジック中心に新聞紙でかぶとの作り方を教えるミニコーナーも出来たり
大した盛り上がりようだったのを思い出される。
あまり記憶に残していなかったが、思い出してみればマジックがひたすらカメラやビデオをシンタロー、グンマ、
コタローそしてキンタローに向けていた。
確かにあの調子で撮ったんじゃ、これだけの枚数になるかと理解出来る。
寧ろ少ない気もしてくる。
「じゃあボクはキンちゃんとコタローちゃんにも渡してこなきゃいけないからまたね!」
くるりと足元を翻し、またぱたぱたと走り去っていった。
別に走らんでもいいだろうが……。


貰った写真をアルバムに収めていく。
前に親父から貰ったアルバムは、表紙が『パパとの思い出v』とでっかく書かれた文字とウインクしてる親父の顔、
裏面はぼかしとエナメルで加工されてやたらキラキラしている小さい頃のオレの立ち姿など、
そっち系統(しかもアルバム全て表紙裏表紙が違う。同じのは必ず親父が表紙を飾ってるって事くらい。)
のものばかりなので、闇に葬ってやった。
オレが使用してるのは極シンプルで特に装飾も無い、パステル系のアルバムだ。
貰った写真は一部の例外を抜かして、アルバムにちゃんと収めている。
もうアルバムの数は数え切れない。
親父なんかはアルバム保管庫とかいうトコを設立させてそこに大体保管してるくらいあるらしいから、
親父から見ればまだまだ俺のアルバム数は少なく見えるんだろうな。
昨日の写真を一枚ずつ見ながら、その時の事を思い出して、昨日の事なのに懐かしさを感じた。
始終笑顔全開のグンマ、笑顔と驚きが半々の顔が写されているコタロー、笑ったり何かを話してる最中のが多いオレ、
グンマと対照的に無表情が主なキンタロー。
けど数枚の写真の中にキンタローがうっすら笑っているのも見つけた。
キンタローにとって初めての子どもの日の思い出は、満喫出来たみたいだ。
無表情のようでも、飾りつけやかぶとの作り方、こいのぼりを真剣な眼差しで見つめていた。
かぶと作りに夢中になって、オレがそろそろ止めないか?と声をかけるまで作り続けて20個も作ってしまってた。
キンタローが写っている別の写真も見返してみる。
4年ほどのキンタローの思い出の写真も大分溜まってきた。
オレの写真量に比べたら微々たるものだが、キンタローの思い出がここにある。
思い出は何時かは記憶が薄れてしまうものだ。
けど、写真に撮っておけば残しておける。
それを見て、思い出す事も出来る。
だからもっとキンタローの写真を撮ろう。
オマエとの思い出一つ一つを色褪せないものにする為に。
今度お互いに休みが取れる日に、一緒にどこかへ出掛けよう。
思い出作りのデートだ。
デートの前にまずはデジカメ買わねえと。
グンマにPCで写真作るやり方も教わっておかなきゃな。
親父に負けないくらい、思い出作りを始めよう。



暗い夜。
広い部屋。
熱い息。
放たれる欲望。

「――――っ!あ、あッツ!!!!!」
「…………ッ!!」
身体の奧から頭の中が真っ白になってく―――…。


ぬるま湯に浸かっているような感覚が徐々に霧を晴らしていく。
背中に小さなくすぐったさを感じた。
「………ん、…あ…?」
「起きたか」
意識を飛ばす前まで聞いていた声が、頭の上から聞こえた。
背中のくすぐったさはキンタローがあやすように撫でていたからだった。
抱き締められる体温が気持ちイイ。
「……起きた」
ふぁ、と欠伸が漏れる。
「まだ大分眠そうだな。まだ起きるには早い。寝ておけ」
眠りを促すようにキンタローの手に頭の後ろを撫でられる。
あー、確かに眠い。すっごく眠ぃ…。
「つーか、オレが気絶するのって久し振りー…。オマエ相当溜まってただろ。超手加減無かったな」
ま、誘ったのはオレだけど。
「今回の遠征先はとても出来る環境ではなかったからな。自分では気付かなかったが、確かに些かタガを外し過ぎたか」
すまないなと謝られてぷっと笑った。
オレが寝てる間にきっちり身体は綺麗にされている。
途中でオレが起きないように慎重にしてくれたんだろう。
昔のコイツからはちょっと想像つかねえ………てか、流石にこんな関係になるとは予想つかなかったな。
当たり前だろーけど。
「何だか楽しそうに見えるな」
「あー?そう見えるか?」
「さっきからずっとニヤニヤしてるからな」
……ニヤニヤってオマエな…。間違えじゃねぇけど言い方がな~…。確かに楽しいけどさ。
「まァナ。逆にオマエは楽しそうな顔ってしないよな」
「そうか?」
「それが地顔だからしょうがねぇだろうけど、笑顔っていうのは見た事ないぜ?微笑止まりで」
「そうか、なら改善するか」
「いらねえだろ。“大輪のような笑顔”のキンタローってのも想像するだけ似合わねえ」
それに、知っているから。
表情のレパートリーが乏しいようだが、そのちょっとしたところでキンタローが見せるさりげない言葉や仕草の気遣い、
優しさをオレだけは知っているから。
愛してると前触れも無く言ってきたり、常に周囲に害をなす者がいないか気配を伺っていたり、
二人で談話して会話が静かになると肩を近付けてオレの髪を弄ってみたり、キスの仕方、キンタローは無自覚天然。
オレに向けられるさりげないそれらは、キンタローも知らない。
オレだけが知っている。
お気遣いの紳士の他者には見せない姿を独占出来ている心地良さを改めて感じて、また笑みが漏れた。
「どうした、さっきから」
変なヤツだと呆れたような溜息の割には、キンタローの口の端が上がっている。
「楽しいから……ナァ?」

キンタローと居る全てがキラキラと楽しい。
BACK NEXT
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
as
(06/27)
p
(02/26)
pp
(02/26)
mm
(02/26)
s2
(02/26)
ブログ内検索
忍者ブログ // [PR]

template ゆきぱんだ  //  Copyright: ふらいんぐ All Rights Reserved