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ずっとこのまま
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教えろ?
教えろって何を。
……シンタローさん?
そんなん聞いてどうすんの。
ああ、そりゃいやだよ。
どこで誰が聞きつけて、なにするかわかんねぇもん。
は?
何?
いや、そうだけどさ……。
というか、本人に聞かれるのが一番怖ぇ。
だってあの人何かっつーと、あれが悪いとか、これが駄目だとかさー……。
どれだけ駄目出しすりゃいいんだよ。
特に自分のこと言われるの嫌みたいだし。
あ? うん。そう。惚気で。
いや、可愛いとこもあるんだけど……って!
何メモってんだよ!!
報告……? 誰に?
いや、いやいや、止めてくださいマジで。
俺の命消えかけてるから!! むしろ消えちゃうから!!
…………。
……うん。わかったから。
言うからそのメモ貸しなさい。
あと他言無用! 特に青方面に!!
……全く、昨今のちみっこの怖いこと……ああ、はい。分かってるよ。
で、何が聞きたいの。
…………。
うん。それで?
…………。
そうだよ。
…………。
ああ。
…………。
…………。
…………。
…………それは。
……違う、だろうな。たぶん。
なんっつーかさ。
いや、そうじゃねぇよ。
……あのな。
そういうんじゃ、ないんだ。
俺は――――。
な?
もう、いいだろ。
早いとこ戻ってオヤツ作らねぇとな。
何がいい?
ああ、久しぶりだからな。
好きなもん作ってやるぜ?
…………うん。
……いや。
分かるよ。きっとお前にも。
*
うん?
どうしたんだ?
大丈夫だよ。お前のためなら時間なんて惜しくないんだから。
そんなとこ立ってないで座ろう、な?
ん? 聞きたいことでもあるのか?
うん。
…………リキッド?
……何でアイツのことなんか――――。
あ、違う違う! 別に嫌なわけじゃないって。
ちゃんと答えるから。
丁度良く本人もいないしな。
まあ、実力から言うと全然甘ちゃんだよな。
家事もろくすっぽできてやしねぇ。
大体、あいつの料理は味が濃い! 人を高血圧にする気かっての。
掃除やらせりゃ隅に埃は残すわ、洗濯やらせりゃ色物分けねぇし、
洗いもん……あ、ごめんな。
こういうことじゃないんだよな。
……そうだな。
心構えは、悪くないと思う。
結構、認めてはいるんだ。
あ! 間違っても本人に言うんじゃないぞ?!
態々調子に乗らせることないんだからな!
……何か、おかしいこと言ったか? お兄ちゃん。
ああ、いや、謝ることじゃないさ。
お前の笑う顔見てるのは、大好きだから――――。
……うん? 何?
…………。
……ああ。
…………。
そう、なんだろうな。
…………。
うん。
…………。
…………。
…………。
…………それは。
……どうかな。
いや、分からない……というかたぶん――――。
違うんだよ。
……なぁ。
本当は、どうなんだろうな。
俺は――――。
――――ああ、帰ってきたな。
そろそろ夕飯の準備始めなきゃな。
待ってろよ。
とびきりのを作ってやるから。
だから――――。
そんな顔しないでくれ。
な?
*
金髪の少年は、兄やその隣にいる青年に気付かれないよう、ゆっくりと息をついた。
卓袱台の前に座る少年と、流し台に立つ彼らの距離は大分離れているのだが、部屋が区切られているわけでもない室内では聞こえてしまってもおかしくない。
だからこそ、息一つつくにも注意が必要なのだ。
外は夕日が沈んでから随分経つ。
それでも月と星で明るい外は、日差しの強い昼と違って、散歩するのにも気持ちがいいかもしれない。
が、食事が終わってから彼の膝の上では茶色い犬が気持ち良さそうに眠っている。
それを無下に起こすわけにもいかず、少年は毛皮の心地よいその頭を撫でながら、やはり流し台の方に聞こえないように、隣に座った友人に話し掛けた。
「ねぇ、パプワくん」
「なんだ?」
目線は膝の上に固定したまま、それでも答えが返ってきたことを確認して続ける。
「僕はね。お兄ちゃんもリキッドも好きなんだ」
「僕も二人が好きだぞ」
当たり前だと言わんばかりに即答する友人に、もちろんパプワくんもチャッピーも、と付け足し、少年は少しだけ笑った。
友人は黙って続きを聞いてくれるようだ。
「だから、困らせたくなかったんだけどね」
ちらりと流し台の方を盗み見ると、また何かやらかしたらしい青年が、兄に怒鳴られていた。
珍しくもないその光景に、ちくりと胸が痛むのはなぜなのか。
「僕、二人に訊いたんだ」
今度は息を吸い込んで、決意をしたように、震えた声でそれを自分の外へと出した。
「『ずっとこのままじゃいられないのか』って」
二人は共にいられないのかと。
彼らは『無理だ』とも『できない』とも言わなかった。
ただ、『違う』と言った。
「違うんだって」
こんなに心地よい空気を、彼らは違うと言う。
「何が違うんだろう」
二人とも、大きな手で自分の頭を撫でながら、寂しそうな顔をするのに。
「コタローは、『ずっとこのまま』がいいのか?」
今まで無言で聞いていた友人から、ポツリとそう聞かれて考える。
いや、自分は確かに子供だけれど、それが分からない程子供じゃない。
「……ううん。本当は分かってるんだよ」
想いは同じはず。
「二人も。僕も」
分かっていて、それでも訊いたのだ。
「そうか」
「うん」
二人とも、相手の前では口にはしないけれど。
「ちょっと家政夫! お兄ちゃんも! いつまでもお皿洗いしてないで遊ぼう?」
だから今、この時間が愛しいのだ。
たまらなく。
「手がかかるったらないよね。ホント」
独り言のように呟いて、少年は精一杯に笑った。
END
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大好きな場所。大好きな人たち。
微妙な感じになってしまったです…。
書き上げたのは早かったのですが。
なんでコタちゃんがいるねん!という声は聞こえません。
(一体どの時間軸での話なんだ)
コタちゃんは結構ブラコンだったり、でもリキッドも大切だったり。
2005(August)
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後ろから十二ページ、上から三行にメッセージ(キンタロー+シンタロー)
『口の端にケチャップがついている』
「…言えよ!」
だいたいひとりぼっち たまにふたりぼっち(シンタロー→マジック)
肌と肌が触れ合うほど近くにいても、アンタはたまに遠くにいるよね。
その両目は俺の手の届かない過去ばかり見ているんだ。
その背を追い続けていた(シンタロー→マジック)
追いつけると思っていた
だけど今は追いつくのが恐い
このままずっと、アンタを追いかけさせて
胸に穿たれた楔を引き抜く(マジック→シンタロー)
そうしたらお前は私の傷を癒してくれるかい
the beginning of the end 結末のきざし,不幸を予見するきざし
(シンタロー→キンタロー)
いつの頃からだろう、同じ夢を繰り返し見るようになった。
闇の底で泣いている子供の夢だ。
「どうして泣いているの?」
金髪の子供は涙に濡れた顔をごしごしと手の甲で拭う。
「ひとりぼっちで寂しいんだ」
その子供はどこかで見覚えのある顔だった。
綺麗な瞳に涙の膜が張り、後から後から途切れなく雫が落ちて。
可哀相、と思って手を伸ばすと目が覚めている。そんなことの繰り返し。
1年に数回、その少年の夢を見る。
年を経るごとに少年は成長していった。まるで実際に存在しているかのように。
「どうしてここから出てこないんだ?」
少年は既に青年になり、うずくまって泣くのではなく力強い瞳でこちらを見ていた。
「お前のせいだ」
静かな怒りと共に青年は告げた。
「お前がいるから俺はここにいるしかないんだ!」
何かを言いかけて目を覚ます。何も変わりない朝だった。
ただしその日以降は青年の夢は見られなくなってしまったが。
握り締めた体温(マジック)
父は獅子のように力強く、彼の腕に抱き締められると酷く安心した。
幼い日々に何度も感じた父の体温。
もう忘れてしまったけれど。
ずっとあの温かさを探している、今も。
たった一度の我が儘だから(マジック)
『お願いだから目を開けて』
願いは届かず父は二度と目を覚ますことは無かった。
囚われ人(シンタロー→マジック)
望めば世界も手に入れられる。
望めば世界すら破壊できる。
万能なように見えるアンタに出来ないことが、たったひとつだけある。
どう足掻いてもその力からは逃れられない。
たとえ叔父のように目を抉りとっても、アンタの強大な力は残るんだろう。
両目の力と青の呪縛に捕まって、縛られたままだ。
I am here in body, but I am with you in spirit.
体はここにあっても、心はあなたの所へ飛んで行っています(マジックとシンタロー)
「いつだってお前のことばかり考えてる」
それだけじゃいけないんだ。もうひとりの子供のことを忘れたわけじゃないだろう。
「私には、お前だけだよ」
そう繰り返すたびに、俺はアンタに絶望するんだ。
青が悲しむから僕は行かない(マジック)
あの子達が何処へ行っても、私だけは、此処に残らなければ。
あの子達の帰る場所がなくなってしまうからね。
地獄に落ちるというならば、それでも構わない(マジック)
「地獄も私のものにするだけさ」
all or nothing 全か無か(マジック)
「両方だ」
覇王の生み出す青い力が全ての命を無に返す。
『口の端にケチャップがついている』
「…言えよ!」
だいたいひとりぼっち たまにふたりぼっち(シンタロー→マジック)
肌と肌が触れ合うほど近くにいても、アンタはたまに遠くにいるよね。
その両目は俺の手の届かない過去ばかり見ているんだ。
その背を追い続けていた(シンタロー→マジック)
追いつけると思っていた
だけど今は追いつくのが恐い
このままずっと、アンタを追いかけさせて
胸に穿たれた楔を引き抜く(マジック→シンタロー)
そうしたらお前は私の傷を癒してくれるかい
the beginning of the end 結末のきざし,不幸を予見するきざし
(シンタロー→キンタロー)
いつの頃からだろう、同じ夢を繰り返し見るようになった。
闇の底で泣いている子供の夢だ。
「どうして泣いているの?」
金髪の子供は涙に濡れた顔をごしごしと手の甲で拭う。
「ひとりぼっちで寂しいんだ」
その子供はどこかで見覚えのある顔だった。
綺麗な瞳に涙の膜が張り、後から後から途切れなく雫が落ちて。
可哀相、と思って手を伸ばすと目が覚めている。そんなことの繰り返し。
1年に数回、その少年の夢を見る。
年を経るごとに少年は成長していった。まるで実際に存在しているかのように。
「どうしてここから出てこないんだ?」
少年は既に青年になり、うずくまって泣くのではなく力強い瞳でこちらを見ていた。
「お前のせいだ」
静かな怒りと共に青年は告げた。
「お前がいるから俺はここにいるしかないんだ!」
何かを言いかけて目を覚ます。何も変わりない朝だった。
ただしその日以降は青年の夢は見られなくなってしまったが。
握り締めた体温(マジック)
父は獅子のように力強く、彼の腕に抱き締められると酷く安心した。
幼い日々に何度も感じた父の体温。
もう忘れてしまったけれど。
ずっとあの温かさを探している、今も。
たった一度の我が儘だから(マジック)
『お願いだから目を開けて』
願いは届かず父は二度と目を覚ますことは無かった。
囚われ人(シンタロー→マジック)
望めば世界も手に入れられる。
望めば世界すら破壊できる。
万能なように見えるアンタに出来ないことが、たったひとつだけある。
どう足掻いてもその力からは逃れられない。
たとえ叔父のように目を抉りとっても、アンタの強大な力は残るんだろう。
両目の力と青の呪縛に捕まって、縛られたままだ。
I am here in body, but I am with you in spirit.
体はここにあっても、心はあなたの所へ飛んで行っています(マジックとシンタロー)
「いつだってお前のことばかり考えてる」
それだけじゃいけないんだ。もうひとりの子供のことを忘れたわけじゃないだろう。
「私には、お前だけだよ」
そう繰り返すたびに、俺はアンタに絶望するんだ。
青が悲しむから僕は行かない(マジック)
あの子達が何処へ行っても、私だけは、此処に残らなければ。
あの子達の帰る場所がなくなってしまうからね。
地獄に落ちるというならば、それでも構わない(マジック)
「地獄も私のものにするだけさ」
all or nothing 全か無か(マジック)
「両方だ」
覇王の生み出す青い力が全ての命を無に返す。
絶望の中の希望(マジック→シンタロー。マジシン)
絶望にまみれた私の人生の中で唯一の希望はお前だけ。
私はいろんなもので汚れているからお前だけは汚したくないのに、
綺麗なものに惹かれてしまう。
words empty of meaning 意味のない言葉(マジック)
死者に対して祈るのだ。
「どうかお守りください。あなたの息子達とその家族を」と。
亡き者に何かが出来るとは考えていない。
だけど今の私に縋れるものは唯ひとつ。
神ではなく亡き父に、私達家族のことを祈るのだ。
神を殺す(マジック)
「私の邪魔をするのなら、たとえ神であろうとも許さない」
出会わなきゃよかっただなんて、言わないでよ(シンタロー→マジック)
「アンタにまで否定されたら、俺はどこにも行けないのに」
やっぱり俺はあいつの影で、ただの人形に過ぎないのかな。
ここに生きていることを、アンタだけは認めてくれると思ってた。
仮初めの平和(サービス→マジック)
黒髪の甥が兄に与えた小さな平和。
いずれ暴かれる罪は大きな混乱と絶望を兄にもたらす。
僕と彼から貴方へ贈る、ささやかな報復。
どうやって抱き締めたらいいの(マジック)
今までほとんど触れたことのない子供を前に、
私の腕は躊躇いながらもゆっくりと彼に近づく。
弟たちの時はどうしていたっけ。あの子はどうやっていたかな。初めてのことじゃないのに。
難しいことではないはずなのに出来ないのは何故?
この子はこんなにも私を欲しているのにね。
どんなにくだらない世界でも(マジック→シンタロー)
君がいるなら、私はこの世界を壊さないでいられるよ。
I can’t do everything. I’m only human.
何でもかんでもできるわけじゃない。神ならぬ身なのだから(マジック)
無力だよ、私は。
悲しいことがあれば泣く。頭を撃ち抜かれれば絶命する。
最初から在ったものを無かったことには出来ないし、元々無いものを造りだすことなんて到底無理だ。
それでもお前には何でも出来るように見えるかい?
愛してるって言ってよハニー(マジック→シンタロー)
「生きてるうちに聞きたいよ」
赤い傘の男の子(マジックとシンタロー)
鬱陶しい雨の中、遠征から戻ってきてタラップを降りると、見覚えのある小さな傘が見えた。
大切な大切な、目の中にいれても痛くないシンタローだ。
「パパをおむかえにきたの!」
水色のレインコートと、同じ色の傘。片手に大人用の大きな傘を引きずって。
我が子のあまりの可愛さに、マジック総帥は部下の前にも関らず派手に鼻血を噴き、
シンタローのお気に入りの傘を汚したため、しばらく口をきいてもらえなかったという。
きみを殺すのは僕でありたい(マジック→シンタロー。マジシン)
お前を奪うのは私だけ。お前を傷つけていいのは私だけ。
光に透ける髪にキスをする(シンタローとコタロー)
なんて綺麗な色だろう。
空気に溶けてしまいそうな金髪にそっと唇を触れさせた。
幼子独特の甘い芳香にうっとりと目を閉じる。
焦がれた色はあの人の色。
I really do like you. Honest.
本当に君が好きだよ。うそじゃないよ。(マジックとコタロー)
「風邪をひくよ。こっちへおいで」
雨宿りに入ったのはパパのコートの中。くっついた体は意外と温かい。
バケツをひっくり返したように降る雨が地面で跳ねてしぶきをあげた。
ばちばちと何かを叩くような音がそこらじゅうに響いている。
「やまないねえ」
にごった空を見上げてぽつり。
「そうだね」
お迎えの車が着くまできっとこのままなんだろう。でも、嫌じゃない。
共有できるってことはひとりじゃないってことだから、
何だってパパと一緒に見たり聞いたりしてみたい。
だからこういう時間は嫌いじゃないよ。
嘘だらけのキス(マジジャンサビ前提マジシン)
このキスは誰のため? 少なくとも俺のためじゃないことは確実。
アンタの心に巣食うその人は今も現実に。
やさしくしてくれるかな、もうちょっとだけでいいから(マジックとシンタロー)
「ふう…シンちゃんの愛情表現っていろんなものが壊れるから困るんだよねえ。
ほら、マイセンのお皿も粉々だよ。ファンが贈ってくれたものなのに…」
「お前がセクハラとか控えて余計なこと言わなけりゃいいんだよ!」
seas of blood 血の海(シンタロー、マジック、ハーレム)
「パパぁ、鼻血汚いよう」
「世の中にいろんな性格の人がいるように、これはパパの個性なんだよ」
「それは許容範囲外だろ」
自分の背後で鼻血に怯える甥を庇い、兄にティッシュの箱を押し付けた。
あなたは上手にはぐらかして(グンマ、マジック、キンタロー、シンタロー)
「どーしておとーさまってそんなに変人なのー?」
「うーん、よくわからないけど……その変人の子供がグンちゃんであることは確実だよ!」
「あ~、そっかぁ!」
「……どのへんに納得したのか問い詰めてもいいだろうか」
「やめとけ。」
ほんとうはきみをあいしたかったんだ(マジック→コタロー)
「だけどあの時の私にはああする以外思いつかなかった」
ほら、早く行って。泣きそうな顔であの子が待っている。(シンタロー→マジック)
「もう、逃げるなよ」
絶望にまみれた私の人生の中で唯一の希望はお前だけ。
私はいろんなもので汚れているからお前だけは汚したくないのに、
綺麗なものに惹かれてしまう。
words empty of meaning 意味のない言葉(マジック)
死者に対して祈るのだ。
「どうかお守りください。あなたの息子達とその家族を」と。
亡き者に何かが出来るとは考えていない。
だけど今の私に縋れるものは唯ひとつ。
神ではなく亡き父に、私達家族のことを祈るのだ。
神を殺す(マジック)
「私の邪魔をするのなら、たとえ神であろうとも許さない」
出会わなきゃよかっただなんて、言わないでよ(シンタロー→マジック)
「アンタにまで否定されたら、俺はどこにも行けないのに」
やっぱり俺はあいつの影で、ただの人形に過ぎないのかな。
ここに生きていることを、アンタだけは認めてくれると思ってた。
仮初めの平和(サービス→マジック)
黒髪の甥が兄に与えた小さな平和。
いずれ暴かれる罪は大きな混乱と絶望を兄にもたらす。
僕と彼から貴方へ贈る、ささやかな報復。
どうやって抱き締めたらいいの(マジック)
今までほとんど触れたことのない子供を前に、
私の腕は躊躇いながらもゆっくりと彼に近づく。
弟たちの時はどうしていたっけ。あの子はどうやっていたかな。初めてのことじゃないのに。
難しいことではないはずなのに出来ないのは何故?
この子はこんなにも私を欲しているのにね。
どんなにくだらない世界でも(マジック→シンタロー)
君がいるなら、私はこの世界を壊さないでいられるよ。
I can’t do everything. I’m only human.
何でもかんでもできるわけじゃない。神ならぬ身なのだから(マジック)
無力だよ、私は。
悲しいことがあれば泣く。頭を撃ち抜かれれば絶命する。
最初から在ったものを無かったことには出来ないし、元々無いものを造りだすことなんて到底無理だ。
それでもお前には何でも出来るように見えるかい?
愛してるって言ってよハニー(マジック→シンタロー)
「生きてるうちに聞きたいよ」
赤い傘の男の子(マジックとシンタロー)
鬱陶しい雨の中、遠征から戻ってきてタラップを降りると、見覚えのある小さな傘が見えた。
大切な大切な、目の中にいれても痛くないシンタローだ。
「パパをおむかえにきたの!」
水色のレインコートと、同じ色の傘。片手に大人用の大きな傘を引きずって。
我が子のあまりの可愛さに、マジック総帥は部下の前にも関らず派手に鼻血を噴き、
シンタローのお気に入りの傘を汚したため、しばらく口をきいてもらえなかったという。
きみを殺すのは僕でありたい(マジック→シンタロー。マジシン)
お前を奪うのは私だけ。お前を傷つけていいのは私だけ。
光に透ける髪にキスをする(シンタローとコタロー)
なんて綺麗な色だろう。
空気に溶けてしまいそうな金髪にそっと唇を触れさせた。
幼子独特の甘い芳香にうっとりと目を閉じる。
焦がれた色はあの人の色。
I really do like you. Honest.
本当に君が好きだよ。うそじゃないよ。(マジックとコタロー)
「風邪をひくよ。こっちへおいで」
雨宿りに入ったのはパパのコートの中。くっついた体は意外と温かい。
バケツをひっくり返したように降る雨が地面で跳ねてしぶきをあげた。
ばちばちと何かを叩くような音がそこらじゅうに響いている。
「やまないねえ」
にごった空を見上げてぽつり。
「そうだね」
お迎えの車が着くまできっとこのままなんだろう。でも、嫌じゃない。
共有できるってことはひとりじゃないってことだから、
何だってパパと一緒に見たり聞いたりしてみたい。
だからこういう時間は嫌いじゃないよ。
嘘だらけのキス(マジジャンサビ前提マジシン)
このキスは誰のため? 少なくとも俺のためじゃないことは確実。
アンタの心に巣食うその人は今も現実に。
やさしくしてくれるかな、もうちょっとだけでいいから(マジックとシンタロー)
「ふう…シンちゃんの愛情表現っていろんなものが壊れるから困るんだよねえ。
ほら、マイセンのお皿も粉々だよ。ファンが贈ってくれたものなのに…」
「お前がセクハラとか控えて余計なこと言わなけりゃいいんだよ!」
seas of blood 血の海(シンタロー、マジック、ハーレム)
「パパぁ、鼻血汚いよう」
「世の中にいろんな性格の人がいるように、これはパパの個性なんだよ」
「それは許容範囲外だろ」
自分の背後で鼻血に怯える甥を庇い、兄にティッシュの箱を押し付けた。
あなたは上手にはぐらかして(グンマ、マジック、キンタロー、シンタロー)
「どーしておとーさまってそんなに変人なのー?」
「うーん、よくわからないけど……その変人の子供がグンちゃんであることは確実だよ!」
「あ~、そっかぁ!」
「……どのへんに納得したのか問い詰めてもいいだろうか」
「やめとけ。」
ほんとうはきみをあいしたかったんだ(マジック→コタロー)
「だけどあの時の私にはああする以外思いつかなかった」
ほら、早く行って。泣きそうな顔であの子が待っている。(シンタロー→マジック)
「もう、逃げるなよ」
目の色を変える(シンタローとマジック)
光を宿す青い両眼。
ひと睨みで切り裂かれる体。
手加減されたのか絶命には至らないものの、負傷したことに変わりはなく。
「秘石眼も持たぬお前が私に勝てると思うか!!!」
そんなこと知ってるさ。昔から力の差は歴然としていた。勝率なんてゼロに近い。
それでもアンタを止めなきゃならないから、護りたいものがあるから、
たとえ死んだって戦い続けてやる。
僕を恐れないで(マジック→シンタロー)
「その目が何より私を傷つける」
お前になら何だってあげるよ。私のものはすべてお前のもの。私はお前のもの。
だからそんな目で見ないで。お前まで離れていかないで。
お前の望みなら何でも叶えてあげる。だからこの手を放さないで。
もう一度言って、好きって言って(マジシン)
「聞こえなかったからもう一回」
「お前が死んだら墓掃除のついでに言ってやるよ」
あんな奴、理想でもなんでもないよ(シンタロー)
「あいつは俺のコンプレックスの象徴だ」
wish for the moon 不可能なことを求める,無い物ねだりをする
(ハーレム、シンタロー、キンタロー)
「はい、どうぞ」
受け取った黄色い風船が、目線よりもだいぶ高いところで浮かんでいる。
「手え離すんじゃねーぞ」
「うん! ありがとう、獅子舞!」
「ハーレム叔父様だろ!」
喜びの感情がこちらにまで伝わってくる。
羨ましくなって声を発した。
「ハーレム叔父さん、お腹がすいた」
意に反して飛び出た声に慣れた絶望感。
自分の思いとは違う言葉が流れていく。
「あー、なんか食うか」
金色のたてがみのような髪を揺らし、彼は自分の手を取った。
こんなに近くにいるのに。
左手に持っている赤い風船。自分のものであるはずなのに、そうではない。
『僕もほしい』
思いはやはり音にはならず、変わりに二人分の声が聞こえただけだった。
ふたりで歩きましょ(マジックとコタロー)
「買い物に行きたいんだけど、一緒に来てくれない?」
「えー。ひとりで行って来なよー」
「おやつにショコラ・グリオティーヌとガトー・オペラを作ろうと思ったら卵が足りなくてね。
おひとり様1パック90円って広告があったから、そこに買いに行こうと思ってたんだけど…
コタローが着いて来てくれないのなら、どっちかひとつだけしか食べられなくなるよ」
「…一緒に行ってあげる」
嫌いじゃない嫌いじゃないでも好きでもない(キンハレ)
嫌いでもない。好きでもない。答えはなんだ?
「愛してるってことだろう? ハーレムが俺を憎むはずがない。
肯定も否定もしないのは俺の言ったことが正しいからじゃないのか」
無表情に近い笑顔が愛しい。
proud as Lucifer 魔王のように傲慢な(マジック)
私は神など信じない。
目に見えるものだけを信じるわけではないのだが、私にとって神という存在は
極めて不明確であり、無情であり、非科学的なものだからだ。
子供たちが喜ぶ顔が見たいからクリスマスやイースターを祝うことはあれど
率直に言って神の子供の誕生などどうでもいいし、
全人類のために犠牲となったらしいがそんなことに興味はない。
忠誠たる者だけを救うのならばそれもいい。私はそんなものに救われたいとも思わない。
しかしあの子たちは別だ。
血を分けた子供もそうでない子供も、四人とも私の大切な息子たち。
神よ。前述したとおり、私はお前を信じない。
だがもしもお前が現実に存在しているというのなら。
こどもたちだけには、祝福を。
光を宿す青い両眼。
ひと睨みで切り裂かれる体。
手加減されたのか絶命には至らないものの、負傷したことに変わりはなく。
「秘石眼も持たぬお前が私に勝てると思うか!!!」
そんなこと知ってるさ。昔から力の差は歴然としていた。勝率なんてゼロに近い。
それでもアンタを止めなきゃならないから、護りたいものがあるから、
たとえ死んだって戦い続けてやる。
僕を恐れないで(マジック→シンタロー)
「その目が何より私を傷つける」
お前になら何だってあげるよ。私のものはすべてお前のもの。私はお前のもの。
だからそんな目で見ないで。お前まで離れていかないで。
お前の望みなら何でも叶えてあげる。だからこの手を放さないで。
もう一度言って、好きって言って(マジシン)
「聞こえなかったからもう一回」
「お前が死んだら墓掃除のついでに言ってやるよ」
あんな奴、理想でもなんでもないよ(シンタロー)
「あいつは俺のコンプレックスの象徴だ」
wish for the moon 不可能なことを求める,無い物ねだりをする
(ハーレム、シンタロー、キンタロー)
「はい、どうぞ」
受け取った黄色い風船が、目線よりもだいぶ高いところで浮かんでいる。
「手え離すんじゃねーぞ」
「うん! ありがとう、獅子舞!」
「ハーレム叔父様だろ!」
喜びの感情がこちらにまで伝わってくる。
羨ましくなって声を発した。
「ハーレム叔父さん、お腹がすいた」
意に反して飛び出た声に慣れた絶望感。
自分の思いとは違う言葉が流れていく。
「あー、なんか食うか」
金色のたてがみのような髪を揺らし、彼は自分の手を取った。
こんなに近くにいるのに。
左手に持っている赤い風船。自分のものであるはずなのに、そうではない。
『僕もほしい』
思いはやはり音にはならず、変わりに二人分の声が聞こえただけだった。
ふたりで歩きましょ(マジックとコタロー)
「買い物に行きたいんだけど、一緒に来てくれない?」
「えー。ひとりで行って来なよー」
「おやつにショコラ・グリオティーヌとガトー・オペラを作ろうと思ったら卵が足りなくてね。
おひとり様1パック90円って広告があったから、そこに買いに行こうと思ってたんだけど…
コタローが着いて来てくれないのなら、どっちかひとつだけしか食べられなくなるよ」
「…一緒に行ってあげる」
嫌いじゃない嫌いじゃないでも好きでもない(キンハレ)
嫌いでもない。好きでもない。答えはなんだ?
「愛してるってことだろう? ハーレムが俺を憎むはずがない。
肯定も否定もしないのは俺の言ったことが正しいからじゃないのか」
無表情に近い笑顔が愛しい。
proud as Lucifer 魔王のように傲慢な(マジック)
私は神など信じない。
目に見えるものだけを信じるわけではないのだが、私にとって神という存在は
極めて不明確であり、無情であり、非科学的なものだからだ。
子供たちが喜ぶ顔が見たいからクリスマスやイースターを祝うことはあれど
率直に言って神の子供の誕生などどうでもいいし、
全人類のために犠牲となったらしいがそんなことに興味はない。
忠誠たる者だけを救うのならばそれもいい。私はそんなものに救われたいとも思わない。
しかしあの子たちは別だ。
血を分けた子供もそうでない子供も、四人とも私の大切な息子たち。
神よ。前述したとおり、私はお前を信じない。
だがもしもお前が現実に存在しているというのなら。
こどもたちだけには、祝福を。
途切れた糸を今またここで繋いで手繰り寄せる(シンタロー)
名前を叫んでこちらへ手を伸ばすけれど、届かないことは互いにわかっていたはずだった。
父は左腕に弟を抱え、弟は父の腕から離れることはない。
永遠に続くような一瞬の中で、しっかりと二人の手が繋がれているのが見えた。
―――もう二度とその手を離すな。
遠くに見える二人に、場違いなほど安堵した。
紙切れ一つで天国へ(シンタロー)
目の前に置かれている司令書。
これに認証印を押すだけで、いくつもの命が失われる。
わかっていながら、いや、わかっているからこそ手が震えた。
自分の一声であっという間に消えていくものがある。それを知っていたはずなのに。
………俺はこんなにも弱い。
真紅の総帥服がじっとりと重さを増した気がした。
赤い惨劇(シンタローとマジック)
「パパの絵を描くとすぐになくなっちゃうんだよ」
息子が手に持つ赤いクレヨンと言葉に、
この身に浴びた血のことを言われているのかとゾッとした。
博士の憂鬱な水曜日(グンマ、シンタロー、マジック)
カレンダーをチェックしながらげんなり。
「学会めんどくさーい。行きたくなーい」
「でも行かなきゃなんねーんだろ」
「そうだけどぉ…」
マジックが駄々をこねるグンマの頭を撫でた。
「水曜日のおやつはミルフィーユにしようか。
学会のご褒美に、グンちゃんの好きないちごをいっぱい入れてあげるからね」
「わーい! 僕、頑張って行ってくるよ!」
大喜びで学会へ行く準備をするグンマに呆れながら、マジックを見た。
「…子供心を掴んでるな」
「伊達に親はやってないよ」
……会いたかったから(マジシン)
遠征帰りで疲れているはずのシンタローが部屋に来た。
珍しいことにコタローの部屋にも寄っていないらしい。
戦場独特の匂いを立ち上らせて、ぼんやりと扉の傍に立っている。
私の視線から何かを悟ったのか、ぽつりと呟いた。
「………来ちゃ、いけなかったのかよ」
「…そんなことないよ。おいで」
両手を広げてやれば素直に腕の中に来た。
「おかえり、シンちゃん」
「……ん」
シンタローは体の力を抜いて寄りかかり、頭を私の肩に乗せて目を閉じた。
「私に会いにきてくれたんだよね?」
「……………」
「お風呂に入って、一緒に寝よう?」
「……うん」
誰の前でも弱みを見せない君が、私の前でだけは子供に返る。
私だけの、特権。
とりあえず結婚しようよ(マジシン)
「そうすれば万事丸く収まるよ」
「…なあ、いつ俺の指のサイズ測った? 最後にお前と会ったのって3ヶ月前だっけ?
俺、その頃すげえ忙しかったよな? 話す時間もなかったはずだよな?」
「はっはっはっは」
「笑って済ませようとすんじゃねえ! いつ測ったのか吐け! 吐けええぇぇぇぇ!」
薬指にぴったりと嵌ったリングに青くなったり赤くなったり。
赤い赤い赤い!(マジック→シンタロー)
君を殴った右手が汚れた。
今日は君に初めて手を上げた日。
微かに残った血液に舌を這わせて舐め取る。
「ごめんね、お前には話せない」
私はお前に嫌われたくない。だから秘密。言えないよ、この両目に関しては。
もう大切なものを諦めたりはしない(シンタロー)
泣いてる暇はない。島を揺るがす弟の力は父を遥かに凌いでいる。
暴走した力を制御するには力が足りない。叔父は来るなと言った。
だけどこのままではいられない。
「誰も死なせない。みんなで生きて家へ帰るんだ」
従兄弟も叔父も弟も父も、全員であの場所へ帰りたい。
どんなに嫌っていた家であっても、思い出の詰まった場所だから。
It’s nothing to laugh at.それは、笑い事ではないんだ
(ハーレム、シンタロー、コタロー)
「マジでタマネギは食えねえんだって」
「おっさんいくつだよ。いい年して好き嫌い言うんじゃねえ」
「食えんもんは食えん! コタローも叔父さんと同じ意見だよなァ?」
「お兄ちゃん、僕もタマネギ嫌い」
「くっ……結託する気かよ! コタロー、何でも食べないと大きくなれないんだぞ!?」
「ハーレム叔父さんはタマネギ食べないけどお兄ちゃんより大きいよ?」
2対1でシンタローの負けだった。
さて、ここであいつを落とすにはどうしたらいいかについて話し合ってみたいと思う
(マジシン)
『どうしたらシンちゃんはパパのことを好きになってくれるのか、
本人に直談判しに来ましたッ!』
ふざけた奴はふざけた人形を抱え、ふざけた発言をして秘書たちに連れ出されていた。
本当にふざけてる。ていうかうざい。なんでそんなこと訊きに来るんだ。
落とすも何もとっくの昔にアンタに落ちてるよ、バカ。
いいからとにかくキスをちょうだい。(マジシン)
心も体もただひたすらにアンタを求めてる。飢えた空洞をその熱で早く満たして。
僕はずっと一人で生きてきたから(マジック→シンタロー。マジシン)
「どうしてお前は私の傍にいてくれるの? それが理解できない」
私が君に世界をあげよう(マジック→シンタロー)
父と弟を奪った小さな世界。その小さな世界の支配者となってどうするかだって?
手に入れたものに興味はないからお前にあげるよ。
私はただ、父と弟を奪ったこの世界を壊したいだけなんだもの。
最近あいつ見ないよね、(グンマ、キンタロー、シンタロー)
「近頃ドクター見かけねえんだけど、学会にでも行ってんの?」
「高松のこと? 2日くらい前に泣きながら出て行ったけど……」
「腹が空けば戻ってくるだろう、放っておけ」
犬か何かと勘違いしてないか? シンタローは呆れて何も言えなかった。
名前を叫んでこちらへ手を伸ばすけれど、届かないことは互いにわかっていたはずだった。
父は左腕に弟を抱え、弟は父の腕から離れることはない。
永遠に続くような一瞬の中で、しっかりと二人の手が繋がれているのが見えた。
―――もう二度とその手を離すな。
遠くに見える二人に、場違いなほど安堵した。
紙切れ一つで天国へ(シンタロー)
目の前に置かれている司令書。
これに認証印を押すだけで、いくつもの命が失われる。
わかっていながら、いや、わかっているからこそ手が震えた。
自分の一声であっという間に消えていくものがある。それを知っていたはずなのに。
………俺はこんなにも弱い。
真紅の総帥服がじっとりと重さを増した気がした。
赤い惨劇(シンタローとマジック)
「パパの絵を描くとすぐになくなっちゃうんだよ」
息子が手に持つ赤いクレヨンと言葉に、
この身に浴びた血のことを言われているのかとゾッとした。
博士の憂鬱な水曜日(グンマ、シンタロー、マジック)
カレンダーをチェックしながらげんなり。
「学会めんどくさーい。行きたくなーい」
「でも行かなきゃなんねーんだろ」
「そうだけどぉ…」
マジックが駄々をこねるグンマの頭を撫でた。
「水曜日のおやつはミルフィーユにしようか。
学会のご褒美に、グンちゃんの好きないちごをいっぱい入れてあげるからね」
「わーい! 僕、頑張って行ってくるよ!」
大喜びで学会へ行く準備をするグンマに呆れながら、マジックを見た。
「…子供心を掴んでるな」
「伊達に親はやってないよ」
……会いたかったから(マジシン)
遠征帰りで疲れているはずのシンタローが部屋に来た。
珍しいことにコタローの部屋にも寄っていないらしい。
戦場独特の匂いを立ち上らせて、ぼんやりと扉の傍に立っている。
私の視線から何かを悟ったのか、ぽつりと呟いた。
「………来ちゃ、いけなかったのかよ」
「…そんなことないよ。おいで」
両手を広げてやれば素直に腕の中に来た。
「おかえり、シンちゃん」
「……ん」
シンタローは体の力を抜いて寄りかかり、頭を私の肩に乗せて目を閉じた。
「私に会いにきてくれたんだよね?」
「……………」
「お風呂に入って、一緒に寝よう?」
「……うん」
誰の前でも弱みを見せない君が、私の前でだけは子供に返る。
私だけの、特権。
とりあえず結婚しようよ(マジシン)
「そうすれば万事丸く収まるよ」
「…なあ、いつ俺の指のサイズ測った? 最後にお前と会ったのって3ヶ月前だっけ?
俺、その頃すげえ忙しかったよな? 話す時間もなかったはずだよな?」
「はっはっはっは」
「笑って済ませようとすんじゃねえ! いつ測ったのか吐け! 吐けええぇぇぇぇ!」
薬指にぴったりと嵌ったリングに青くなったり赤くなったり。
赤い赤い赤い!(マジック→シンタロー)
君を殴った右手が汚れた。
今日は君に初めて手を上げた日。
微かに残った血液に舌を這わせて舐め取る。
「ごめんね、お前には話せない」
私はお前に嫌われたくない。だから秘密。言えないよ、この両目に関しては。
もう大切なものを諦めたりはしない(シンタロー)
泣いてる暇はない。島を揺るがす弟の力は父を遥かに凌いでいる。
暴走した力を制御するには力が足りない。叔父は来るなと言った。
だけどこのままではいられない。
「誰も死なせない。みんなで生きて家へ帰るんだ」
従兄弟も叔父も弟も父も、全員であの場所へ帰りたい。
どんなに嫌っていた家であっても、思い出の詰まった場所だから。
It’s nothing to laugh at.それは、笑い事ではないんだ
(ハーレム、シンタロー、コタロー)
「マジでタマネギは食えねえんだって」
「おっさんいくつだよ。いい年して好き嫌い言うんじゃねえ」
「食えんもんは食えん! コタローも叔父さんと同じ意見だよなァ?」
「お兄ちゃん、僕もタマネギ嫌い」
「くっ……結託する気かよ! コタロー、何でも食べないと大きくなれないんだぞ!?」
「ハーレム叔父さんはタマネギ食べないけどお兄ちゃんより大きいよ?」
2対1でシンタローの負けだった。
さて、ここであいつを落とすにはどうしたらいいかについて話し合ってみたいと思う
(マジシン)
『どうしたらシンちゃんはパパのことを好きになってくれるのか、
本人に直談判しに来ましたッ!』
ふざけた奴はふざけた人形を抱え、ふざけた発言をして秘書たちに連れ出されていた。
本当にふざけてる。ていうかうざい。なんでそんなこと訊きに来るんだ。
落とすも何もとっくの昔にアンタに落ちてるよ、バカ。
いいからとにかくキスをちょうだい。(マジシン)
心も体もただひたすらにアンタを求めてる。飢えた空洞をその熱で早く満たして。
僕はずっと一人で生きてきたから(マジック→シンタロー。マジシン)
「どうしてお前は私の傍にいてくれるの? それが理解できない」
私が君に世界をあげよう(マジック→シンタロー)
父と弟を奪った小さな世界。その小さな世界の支配者となってどうするかだって?
手に入れたものに興味はないからお前にあげるよ。
私はただ、父と弟を奪ったこの世界を壊したいだけなんだもの。
最近あいつ見ないよね、(グンマ、キンタロー、シンタロー)
「近頃ドクター見かけねえんだけど、学会にでも行ってんの?」
「高松のこと? 2日くらい前に泣きながら出て行ったけど……」
「腹が空けば戻ってくるだろう、放っておけ」
犬か何かと勘違いしてないか? シンタローは呆れて何も言えなかった。