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 この状況は、何と形容すればいいのか……。
 一人は、いつものごとくナマモノニ匹から逃げてきた侍。
 一人は、洗濯物を干し終わって、帰ってきた元特戦部隊、現番人。
 一人は、掃除も終盤に差し掛かり、後一息というところを、その二人に邪魔されて機嫌の悪い新総帥。
 それぞれが一ヶ所に集まると、なんと居心地の悪い空間なのか。
 先程から沈黙は破られない。
 音があるとすれば、シンタローが台所を磨く音くらいだろう。
 (な、何だ? この空気の重さは……。あ、でも二人は一応、敵対組織の幹部とトップだもんな……ってダメじゃん! 一触即発?!)
 (こんなとこにいる気はねぇが……、今出て行ったら、あのクソナマモノ共に見つかるのがオチだからな……、タバコでも……くそっ、火ィ忘れちまった)
 (そーいや、コタローがこいつら無二の親友とか言ってたな……。ったく、心戦組と義兄弟たぁ、いい度胸してんな。ヤンキーが)
 沈黙をものともしない人間が一名。
 さすが俺様。我が道を行っている。
 だが、このまま奇妙な三すくみ(と称していいのだろうか)に黙っているはずがない。
 (俺を罵倒するか、トシさんにケンカ売るか、どっちが早いかなー)
 段々と分かってきた彼の俺様行動を、リキッドは頭の中でシュミレートしてみる。
 1.自分を罵倒。トシゾーが色々つっかかっていって戦闘開始。
 2.トシゾーにケンカ売る。結局早々と刀が抜かれ戦闘開始。
 (……戦闘は避けられんのかい!)
 自分の出した結果にツッコミを入れ、シンタローのほうを見る。
 どうやら掃除は終わったらしい。
 二人のいるちゃぶ台まで歩いて……。
 (あー、来る……かな)
 罵倒くらいですめばいいほうだと思いながら、気持ちを構える。
 俺様vs鬼の副長。
 元特戦部隊な家政夫に止めきれる自信は……ない。
「おい、リキッド」
 しかし、彼から発せられたのは意外な言葉だった。
「俺、外出るわ」
「……え?」
「ちゃんと昼飯支度しとけよ」と付け足しつつ、ドアまで歩き出そうとするシンタローの服の裾を、リキッドは無意識上に掴んだ。
「っ!! っ危ねぇだろーが!」
「何でっスか?!」
 よろけて転びそうになったシンタローのセリフを無視し、彼を見上げる。
 折角の彼と共にいられる時間が、減ってしまう、と。
 何だってそう乙女な考え方なのか。
「何でって……」
 それを聞かれるとは思っていなかったのだろう。
 ここでシンタローも、面倒だからだ、と言ってしまえばいいのだが、逃げているようで格好が悪いと思ったのか、トシゾーを一瞥し、またリキッドに視線を戻す。
 必死に目で訴えるその姿に、見なきゃ良かったと後悔することになったのだが……。
「……散歩だ散歩」
 いかにも「今考えました」と言うような答え。
 そんなものでリキッドが納得出来るはずもなく、それならばと言い返してくる。
「じゃあ……俺も行きます!」
「ああ? 何でてめぇがついてくんだよ。客の相手でもしてろ。そこの侍!」
「あ?」
 傍観していた身に、いきなり話題を振られて、トシゾーはとっさに反応できず、ただ聞き返す。
「てめぇの『親友』だろ。これは」
 ……彼の後ろで『これ』扱いに涙を流す家政夫一名。
「何とかしろ」
「命令調かよ、おめぇ……」
 青の一族の俺様気質に免疫のない人間としては、呆れるほどのセリフだ。
「だって、行きたいんですっ」
「てめぇなぁ……」
 文句を言いかけて、シンタローは言葉をため息に変えた。
 このまま続けても、どうせ平行線で意味がない。
 意外と頑固なのだ、このヤンキーは。
 そこまで強く断る理由も見当たらなかった。
「……勝手にしろ」
「……はいっ!」
 投げられた言葉を了承と受け取って、嬉しそうに返事をする様は、すっかり懐いた犬のようで、思わずシンタローの口元に笑みがこぼれそうになる。
 ……もちろん、リキッドにもトシゾーにも見えないように、だが。
「あの、トシさん」
「ああ。俺もナマモノの気配が消えたら出てく」
 リキッドの言葉を見越し、先に答えて、行って来いとばかりに右手を上げた。
 存在を忘れられていたかのような扱いだったが、そんな懐き振りを見せられて、一体他にどうしろというのだ。
「それじゃあ、行ってきます」
「おう」
 扉が閉じたのを見送って、トシゾーは重い空気に張りつめていた首をならす。
「結局、邪魔者は俺だった……ってことか?」
 誰もいない室内で、火のついていないタバコをくわえながら、彼は小さく呟いた。






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kkk

14000HIT記念SS


聖夜の天使


「うわーん!!!!シンタローッッツ!!!」
「なんだ!どうした!!」
執務室に詰めていたシンタローは、突然の訪問者に慌てた。

「ミヤギくんを怒らせてしまったっちゃ!!!」
闖入者は部下のトットリだった。
警備の者は驚いたらしいが、シンタローが信頼する部下の1人であるトットリの一大事らしい様子に慌て、連絡を入れるヒマも無かったらしい。
士官学校時代からの仲間で、旧パプワ島でも行動を共にしたトットリは顔パスで執務室に通れるが、それでも普段は警備が事前に連絡を入れることにしている。
「おいおい、どうしたんだよ」
20代後半の男にあるまじき童顔のトットリは、今にも泣きそうな顔で訴える。
「だって・・・クリスマスイヴから遊びに行こうっていってたんっちゃが、一緒に休みがとれなかったんっちゃ。去年もだめだったから・・・」
「へ?だってお前のとこだと、今だと結構休みは申請通りになるんじゃね?」
シンタローはとりあえずトットリをソファに座らせる。
「それが・・・部下たちも休みたいって言うから・・・。そっちを優先して休ませたんっちゃ・・・。少し前か後にずらして欲しいって言ったら、ミヤギくんはだめだって」
それを聞いて、シンタローは目を細める。
全くこの男は優しすぎる。
「そっか・・・。お前は優しいよな。去年は部下に譲ったんだろ?だったら今年はお前がとればいいのに」
「でも・・・部下もいっぱいできたし・・・。去年出てもらった部下には休みをあげたいっちゃ」
シンタローはトットリの頭をよしよしと撫でた。
「全く。優しい上司を持ってお前の部下は幸せだよ」
「そう・・・?」
「ああ。でもミヤギは納得しねーよなー・・・」
「それが問題っちゃ」
トットリはため息をつき、シンタローは思案顔になる。
「よし、じゃあ仕事の後部屋でなんかやればいいじゃん。料理作ってさ。ダメかな」
その提案にトットリは慌てた。
「え?でもクリスマス用の料理なんて作れないっちゃ・・・」
「まかせておけって、オレが教えてやるよ!ちょっと部屋も改造しようぜ!」
「ホント!?」
トットリは感激でシンタローの手をとった。
「もちろん」
シンタローは笑顔で頷いた。
その後料理を教える日程を打ち合わせすると、トットリは上機嫌で帰っていった。
シンタローも優しい友人のために何かできると思うと嬉しい。
料理は得意中の得意である。
まずは材料を買いに行くところから始めよう。
で、部屋の演出も考えなければ。
他人のことなのに、なぜこううきうきしてしまうのだろうか。
シンタローはふと思いついて、キンタローに連絡を入れた。
キンタローにこのことを話すと驚いていたようだが、協力してくれるとのことだった。
クリスマスまで後2週間。

5日後。
トットリは部下に定時であがることをあらかじめ宣言しておき、時間通りすぐに上がって着替えると待ち合わせの場所に向かった。
駐車場に行くと、シンタローとキンタローが寒い中車の外で待っていてくれた。
2人とも私服に着替えており、背の高い2人はまるでモデルのようだった。
シンタローとキンタローはトットリの都合のいい日を聞くと、その日の仕事を早めに終わらせ、定時であがったのだった。
「よし、行くぜ」
シンタローは車の後部席にトットリを乗せると、自分も隣に乗り込んだ。
キンタローが運転し、出発する。
事前にトットリに聞いていたミヤギの最近の好みなどから、今日行く店は決めてある。
まずはインテリアショップに向かった。
「うわー・・・。オシャレな店ッちゃ」
トットリは呆然と店の外観を見上げる。
「お前の部屋こぎれいなのはいいけど、飾り気がないだろ。少し飾ったほうがいいんじゃないかと思って」
店に入ると、色鮮やかなソファや、クッション、食器類、ランプなど美しくレイアウトされている。
「ボクこういうの全然わかんないっちゃ」
見てはみるものの、何を買えば良いのかわからないトットリ。
「そーだよなー。とりあえず予算からいって、考えたんだが、ソファでもどうだ?」
「そうっちゃねー」
トットリはとりあえず気に入った形の2人用ソファに座ってみる。
「わー、いい座り心地っちゃ」
「どれどれ」
シンタローが隣に座ってみたので、トットリは少しだけどきどきした。
「お、2人座ってちょうどいいんじゃねーの」
トットリは色や座り心地が気に入り、値段も予算内だったので、これを購入することにした。
次に間接照明や置物、クリスマス用の飾りなどを選ぶと、他にスタイリッシュな食器類を買うことにする。
食器についてはシンタローもトットリも模様のついたものと真っ白なもの2種類でかなり悩んだが、キンタローに聞くと白いほうがいいと言ったので、そちらにすることにする。
シンタローは自分でも気に入った別の食器があったらしく、キンタローに手にとって見せていた。
ちょっとだけ2人から離れたところでトットリは見ていたが、間接照明に照らされた2人の様子はますます美しく、そして仲睦まじく、お似合いとしか言いようがなかった。
いつかミヤギとそういう風に見られるようになりたいなあと思うトットリであった。
次に3人は食材を買いに行き、チーズや肉類、パスタの材料、サラダの材料を買い込む。
最近ミヤギはパスタが好きだとのことだったので、イタリアンを中心にコースを作ることにしていた。
そしてトットリの部屋に行くと、シンタローが指導して料理を作ることになった。
キンタローはトットリの部屋まで食材などを運ぶのを手伝うと、部屋に戻った。
「キンタローって結構いいヤツっちゃね」
トットリがつぶやくと、「知らなかったの?」とシンタローは笑った。
戻った時には9時を回っていたが、とりあえず前菜用のパスタ、仔牛のカツレツ、サラダ、スープなどを作ることにする。
トットリは元々料理はしていることはあって、シンタローが教えればすぐにできた。
シンタローは盛り付けのコツなどを教え、レシピを書き残した。
結局2人で作った夕食を食べ、シンタローは後片付けも手伝い、11時前に帰った。

クリスマスイヴの3日前、ソファ類が届いたというので、シンタローとキンタローは2人でトットリの部屋を訪ねてみる。
「お、いいじゃねーの!」
こぎれいだが殺風景だった部屋に、落ち着いた色のソファが配置され、間接照明がいい雰囲気を出している。
「ちゃんとお前の部屋にも合ってるし、いい感じじゃん」
飾りも丁寧に飾られ、大人のクリスマスを演出するにはいい感じだった。
「ミヤギは大丈夫だったか?」
「うん。とびっきりの料理を作るからって言っておいたっちゃ。ちょっとまだ怒ってたけど、来てくれるって言ってたっちゃ」
「良かったな」
シンタローの笑顔に、トットリは嬉しそうに頷いた。
「じゃ、これオレたちから」
シンタローが言うと、キンタローが手に持っていた細長い紙袋を差し出した。
「?」
開けてみると、高級そうなシャンパンのフルボトルが入っていた。
「えっ。こんな高そうなシャンパン、もらっていいっちゃ・・・?」
「クリスマスプレゼントということで。ちゃんと報告しろよ」
「楽しみにしている」
2人の温かい笑顔に、トットリは涙ぐみそうになった。
「2人はどうするっちゃ?クリスマス」
「コタローの誕生日もあるから、オレたちは明日2人でディナーに行く予定」
シンタローは少し照れくさそうに笑った。
「誰にもいうなよ」と言い、2人は笑顔で部屋を出て行った。
トットリはまるでシンタローとキンタローは天使のようだ、とガラにもないことを思っていた。

シンタローは部屋に戻る途中、ずっと笑顔だった。
キンタローはそんな従兄弟の様子を見て、自然と自分も笑顔がこぼれるのがわかった。
明日のディナーはきっとトットリとミヤギの話題でもちきりだろう。
しかしキンタローは、そんな優しい従兄弟だから好きなのだろうと思った。

end

***

ひろこ様、14000HIT申告ありがとうございました!
これまで来てくださった皆様も、本当にありがとうございました!
初めてキリリクを頂いて、とても嬉しかったです。
珍しくイベントネタをいれ、クリスマスネタにしてみました。
トットリの方言に関してはもう大目に見てね!ミヤギならある程度予想がつくんですが(笑)
このSSはひろこ様のみお持ち帰りOKです!

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悪夢




何度も、夢に見る。
腕や脚に全くと言って良いほど力が入らなくて、相手のなすがままにされている。
これだけ鍛えた肉体を持っているのに。
ガンマ団No.1と言われた戦闘力。
青の証である眼魔砲だってある。
それなのに、薬か何かを嗅がされたように動けないのだ。


相手の顔はよく見えない。
都合よく頭部に暗くもやがかかっていて、きっと顔なんか見たくないという願望がそうさせるんだな、と思う。
男の舌が体中を這う。
それは気持ちが悪いようでいて、まるで舌と肌を何か薄皮一枚隔てて触れられているような不思議な感触があった。
まるで自分の体ではないかのようだった。
愛撫されるって、こんな感じなのか?
わからない。
止めてくれ。
止めてくれ。
手足に力が入らないのならせめて、体をひねって逃げようとするが、男はいとも簡単に余裕でそれを制する。
にらむと、相手の口元がオレをなだめるように、そして安心させるように、柔らかく微笑んだ。
無理して、笑うなよ。
そんな目をして。


男はオレの両の膝裏に腕を入れると、体を近づけてきた。
止めろ。
それだけは。
他のものは何だってやるから。
せめて目で睨み付けるが、男は意に介していない。
畜生。
オレに片方だけでも目で人を殺せる力があったら。
オレ以外の青の一族みたいに。


ずん、と体の中心を貫かれて、息が詰まった。
「・・・!」
敏感な部分を無理矢理押し広げられ、引きつる。
思わず、抵抗して力を入れようとするが、やはりどうしても弛緩して力は入らなかった。
しかし、不思議だった。
痛くは、無かった。
ただ、先ほど舌を這わされていたときと違って、擦られる感覚だけが妙に生々しかった。
しかし、始めはゆるゆると動かされ、そして徐々に激しくなってくると、徐々に感覚が麻痺していく。
ただ男の動きに合わせて、ゆらゆらと抱えられた腰が動くのみだった。
浮遊感。
でも確かに自分の内部に何かが入ってきて、中を蹂躙しているのだけは何故かわかった。


いやだ。
痛いとか、痛くないとか、そんなんじゃない。
あんたにそんなことされるのがいやなんだ。
目を瞑って頭を振る。
誰か、目を覚まさせて。
誰か、誰か。





「・・・大丈夫か・・・?」
ほんの近くで、ささやかれた言葉に、オレはゆっくりと瞳を開けた。
光のわずかしか入っていない薄暗い視界に、ぼんやりと青が浮いている。
夢の続きかと思って一瞬すくんだ。
でも、すぐ声が違うのがわかって、体から力が抜けた。


瞼が異常に重かったが、それでも、暗い夢の世界から浮上を試みるように懸命に瞼を開ける努力をした。
目が慣れると、そこには2つの青い瞳がこちらを伺うように心配そうに覗いていることがわかった。
「キン・・・タロー・・・?」
やっとのことで声を出すと、その瞳が細められた。
「ああ。うなされていたぞ。悪い夢でも見たのか・・・」
夕べ一緒にベッドに入ったキンタローが、どうやらオレが夢にうなされていたから起きてしまったらしい。
カーテンからわずかに朝日が差し込んでいるが、まだずいぶん早い時間だろう。
横になりながら片肘をついて、髪を撫でてくれるその手が、気持ちいい。
オレはその手を感じながらもう一度だけ目を閉じて、唾を飲み込んだ。
気がついてみると、体中に汗が噴出していて、熱い。
特に、夢で誰かと繋がっていたあの部分が、疼いている。


「顔が赤いな・・・熱でもあるのか?」
キンタローはオレの前髪をかきあげて、額に手を当てて確かめようとした。
「いや・・・。熱はないと思う。疲れてて、ヤな夢を見ただけだ・・・」
ため息をつくと、代わりにキンタローは頬を撫でてくれた。
「どんな夢だ・・・?」
キンタローが心配そうに聞くが、オレは首をゆるく振って答えを言うのをやんわりと拒否した。
それに対してもちろん責めることはなく、キンタローは起き上がって洗面所からタオルをとってきてくれた。
「それとももう一度シャワーを浴びるか?」
と尋ねてくれるが、今はだるくて動きたくなかった。
自分で拭く、と言ってタオルを受け取ると、濡れたパジャマを脱いで全身を拭いた。
空調を切った室内はひんやりとして、ほてった体を徐々に冷やしていく。
一緒にミネラルウオーターを持ってきてくれたので、乾いた唇を濡らしながら一気に飲み干した。


ベッドに腰掛けてボーっとしていると、キンタローも水を飲みながら、隣に座った。
「まだ早いが、寝直すか?」
時計を見ると、まだ5時前。
いつも起床する7時までにはまだ2時間もある。
「起こしちまって悪い・・・でも、もう目が覚めちまった」
そうだな、とキンタローも言い、新しいTシャツや下着など着替えを持ってきてくれた。
「サンキュ」
礼を言って受け取るが、夢の後のだるさに指を動かすのもつらい。
まるで情事の後のように・・・。
そこまで考えて、オレは顔を覆ってうめいた。


それに体は冷えてきたのに、まだあの部分だけが夢以上にむずむずと疼いてオレは自分の卑猥さを恥じた。
何度も、何度も、夢に見た。
オレは、あいつに抱かれたかったのか?
まさか。
オレが着替えもせずうつむいているのを見て、キンタローが再び心配そうに肩を抱いた。
「大丈夫か。こういう時は、どうする?体を動かしにでも行くか?・・・それとも、やはり寝直すか?気分が悪いなら、今日くらい遅れてもいいだろう」
肩を引き寄せられ、オレは、思い余ってキンタローに抱きついた。
「シンタロー・・・?」
キンタローは驚いたようだったが、すぐに冷えた体を温めるように抱きしめ返してくれた。
オレの髪に顔をうずめて、まるでオレを全身で感じているようだった。
オレは顔を上げて、キンタローの形のいい顎や頬にキスをした。
「キンタロー、・・・抱いて・・・」
オレは耳に口付けると、恥じらいにためらいながら、搾り出すように囁いた。
キンタローが息を飲むのがわかった。
体を強張らせたキンタローが、ゆっくりとオレの方を向いた。
「どうした、シンタロー・・・」
初めて許しを出したんだから、ちょっとは喜ぶかな、と思ったけど、キンタローは眉を寄せて幾分訝しげな顔をした。
何だよ、失礼だな、と思ったけど、よく考えたらオレがキンタローでも、突然弱ってる恋人にそんなことを懇願されたらどうしたのかと心配したくなるだろう。


「・・・ごめん、やっぱ、こんな時じゃヤだよな・・・。忘れてくれ」
力なく笑ってキンタローから手を離すと、羞恥に赤くなった顔を背けてTシャツを手に取った。
プールでも行ってこようか、と思う。
きっと欲求不満なんだ。
キンタローの言う通り無心に体を動かしたら何もかも昇華されるかもしれない。
そう思って立ち上がろうとすると、キンタローが突然オレの腕を引いた。
そのまますごい力で引っ張られ、ベッドに押し戻された。
仰向けに倒れたオレに、キンタローが覆いかぶさってきた。
目を丸くしていると荒々しく唇をふさがれ、オレはうめいた。


「ん・・・!」
驚いて抵抗しようとするが、両腕をすっかり押さえられて、全身で体重もかけられて動けない。
一瞬夢の再現のような恐怖に、再び身がすくんだ。
しかし、それは最初だけで、その重みや痛み、息苦しさこそがいつもの夢ではなく現実であることをオレに告げた。
自然と力を抜くと、キンタローの動きも徐々に優しく、官能をかきたてるような動きに変わった。
同時に、オレが抵抗しないとわかると、キンタローは抑えていた手を緩め両の指をオレの指に絡ませた。
下唇を吸われ、舌を侵入させ歯列をなぞられる。
ためらいがあったが、舌を受け入れて自分のを絡める。
長いキスをされながら、剥き出しだった胸を弄られた。
思わず鼻にかかったような甘い声が漏れた。
その声を聞いたキンタローは顔を上げ、オレの目を見つめた。
その視線は熱く、明らかに欲情していた。
「イヤなんて言ってない」
掠れているが、いたって真剣な声で、キンタローは言った。
そしてシーツを手繰り寄せると、2人の姿を覆い隠した。
そのまま濡れた唇をオレの胸に落とす。


白い闇の中、金の頭がオレの上でうごめいている。
冷えていた体が再び熱を帯び、従兄弟に触れられることに歓喜して跳ねる。
時々、愛おしそうに顔中にキスを落として、そしてまたオレの全てを味わうように舌を這わせた。
それは生々しく、夢ではないことをオレに教える。
金の髪がオレの上を滑るのも、濡れた舌が腰をなぞる感触も。
愛しい従兄弟の匂い。
ベッドに感じる重力。
何よりも、キンタローの吐息の熱さ。
五感の全てで感じる。
あの男に余裕で上に乗られていた夢とは違う。


オレはキンタローを掻き抱き、もう一度キスをねだった。
忘れさせて。
悪夢を。
まだきっと見続けるだろう、悪夢を。
青の覇王の、悪夢を。
お前の熱で。



end

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kkk

キンシン好きに捧げる30の御題


1・シンクロ (20050927up)

「何を考えている・・・?」
肩を抱き寄せ、ささやくように従兄弟に問えば、「多分オマエと同じこと」と言う。
ならば、何も言うことはないな。
額にかかる髪をかきあげてやると、従兄弟はいたずらっぽく笑うが、その目は熱を帯び甘い期待に潤んでいた。





2・距離 (20050927up)

離れていると思うことってあるかって?
そりゃあるね。
だって、何も言わなくても肩揉んでくれたり、キスしてくれるヤツがいないんだから。





3・視線の先に (20051011up)

吹き抜けになった食堂を見下ろせる上階の廊下のガラス窓から、たくさんの研究員に紛れたキンタローが見えた。
研究棟から士官食堂に食事にやってきた白衣を着た研究員の連中が、キンタローを取り囲んでいる。
ああ、みんなで一緒に昼休みに来たんだな、と思って、また、オレ以外のヤツと交流することもすごく大事だよな、と思う。
オレは急いでたから早足だったけど、つい視線はキンタローに釘付けになっている。
あの角を曲がったら見えなくなるな、と思った時、ふと、キンタローが顔を上げた。
そしてオレに気づいて、ふわっと笑った。
オレは片手を上げてウィンクして見せて、立ち止まることなく角を曲がった。
キンタローの視線につられて研究員の連中が上を見ても、視線の先には誰もいなかっただろう。
キンタローが誰を見て笑ったか、気づくやつはいただろうか。





4・しぐさ (20051011up)

キンタローが長めの前髪をかきあげる。
研究でパソコン仕事が多いのだから、結構邪魔じゃないかな、と思うけど・・・。
似合うから、切れなんて言わない。





5・総帥服 (20051011up)

赤い服を脱ぎ捨てると、オレは乱暴に床に叩きつけた。
チッ。
服に着られてんじゃねーよ、オレ。




9・写真 (20051011up)

思い出すと赤くなる。
今日、偶然キンタローが携帯をいじっている所を見た。
あの待受画像・・・オレじゃねえか。
恥ずかしいから変えろって言ったけど、キンタローはなぜだって取り合ってくれない。


ks

そんな風に呼ばないで


「やったーvv」
カラカラカラ・・・という軽い音と共に、絶対に語尾にハートマークがついてそうな、嬉々とした声が響く。
「く…ッ!」
対するは悔しそうな低い男の声。
手にした長方形の木製のブロックが、ふるふると震えている。
見事にちらばったブロックたちを見て、見物していた黒髪の従兄弟が、鼻白んだ。
「おいおいキンタロー!よりによっててめーと罰ゲームなんてゴメンだぜ!」
「もう、往生際悪いよ、お兄ちゃん」
そうつぶやく、晴れやかな笑顔の少年、コタロー。
兄を黙らせるには、有効すぎる笑顔だった。
「じゃあこれで、シンちゃんとキンちゃんがバツゲーム決定ね」
そう微笑むのは、年長組の唯一の勝者、グンマ。
木製のブロックを積み上げ、そこからブロックを1つづつ順番に抜いては上に積み重ね、バランスを崩したものが負けという、原始的なゲームをしていた青の一族若手組は、今勝敗が決したところだった。
負けたものが抜けていきつつ、先に負けたもの2人が何か罰ゲームをするというルールでやっていたのだが、最も早くブロックを崩したシンタローは2回戦をはらはらしながら見物していた。
2回戦は、キンタロー、グンマ、コタローの見事な集中力で1回戦より長く続いていたが、最近グンマとコタロー2人でこのゲームをよくやっていたらしく、経験者に利があったようだった。
初めてにしてはよくやったキンタローだったが、元来負けず嫌いの彼は、明らかに落胆していた。
「キンタローお兄ちゃんは初めてだったなんて、信じられないよ」
コタローが微笑むと、キンタローは我に返ったように、ぎこちない笑いを返した。

「じゃあ罰ゲームは、ボクとコタローちゃんが1つづつ出すということで」
綺麗にブロックを箱に収めたグンマは、コタローに微笑む。
青い目をわくわくと煌かせた少年は、得意げに胸を張った
「もちろん、今日1日はボクが女王様ね!お兄ちゃんたちは何でもボクの言うことを聞くこと~」
それじゃあ普段とたいして変わらないじゃないかとキンタローは思ったが、口には出さずにいた。
「ええもちろん、何でも言うことを聞かせていただきますです!」
シンタローは涎を垂らさんばかりの勢いで頷いた。
天下のガンマ団総帥・・・。
極度のブラコンであるという事実だけは、なんとしても隠しておきたかったな・・・。
グンマは微笑みながら、内心でため息をついた。
「グンマお兄ちゃんは?」
「じゃあ、キンちゃんとシンちゃんは女王様の下僕をしながら、お互いを『ちゃん』づけで呼び合ってくださーい」
「ええ!?」
さっきまで弟の可愛さに頬の緩みっぱなしだったシンタローが、青ざめて振り返った。
「そんな気色の悪いことができるか!!!」
今にも掴みかからんばかりの勢いのシンタロー。
よりによって、好敵手と認めている大の男を、『ちゃん』呼ばわりだとう!?
キ、キンタローちゃん??
想像して鳥肌がたったシンタローは、ぶるっと襲い掛かった悪寒に耐えた。
「そんなことでいいのか?」
対する相方は、意外そうな表情。
「そんなことでよかったら、ラッキーだったな、『シンタローちゃん』」
「やめろぉおおおおお!!」
罰ゲーム通り呼ばれて、シンタローは壁際まで後退した。
2人への罰ゲームの効果の違いを予想していなかったグンマは、これはこれでおもしろいと思い始める。
「ダメだダメッ!俺はこのゲーム降りる!」
身勝手に言い放って、シンタローは悪寒に体を震わせながら、本当に部屋を出て行こうとした。
「降りるも何も、もう勝敗は決まってるじゃなーい。罰ゲームは罰ゲームだよう。それともシンちゃん」
セリフの途中から、グンマのトーンが変わる。
「逃げるの?」
微笑みながら言うその声音は、挑発というには優しすぎたが、直情的なシンタローを立ち止まらせるには十分だった。
キッと振り返ったシンタローは、「あぁ!?」とグンマを睨む。
一瞬頭に血が上りかけたらしいが、弟の手前ということもあって、思い直したようだった。
「ま、まさかだろ!俺が今まで敵前逃亡したことがあったか、なあ、『キンタローちゃん』」
ハッハッハと、乾いた笑いを上げるシンタローに、グンマは「OK、その調子~」とはやし立てた。
「まあ、あの島のナマモノ以外では、敵前逃亡はなかったな」
と真面目に答えるキンタロー。
「さ、コタロー様v何でもお申し付けくださいませ。私めと『キンタローちゃん』と、何でもさせていただきます」
ええい、ままよ。
「なんだかお兄ちゃんたち気色悪いなあ」
シンタローの内心の悪寒を知ってか知らずか、コタローが呆れ顔でつぶやいた。

end

**********************
従兄弟チャットで出たお題、「お互いを『ちゃん』づけで呼び合うシンタローとキンタロー」を書いてみました~。
わははは。
キモイね!
書いててとってもおもしろかったです!

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