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あんさんのこと、ほんまに好きなんや。
それが「友情」やなくて「恋情」であるってことが、あんさんにとってはえろう重大問題みたいどすなぁ…。
せやけど一般常識に囚われるなんて、シンタローはんらしくないと思いまへんか?
あぁそない困った顔せんといて。
かいらしい顔が歪むんは、見とぉないんどす。
それに…あんさんにそない顔させとんのが、わてや思うと切ないんどす。
あんさんが良く言うような男同士とか、上司や部下だとか?
そないな些細なこと、わてにはなんの障害にもなりまへんのや。
大昔の聖書にあるやろ?
「女を愛すように男を愛すな」と。
あれって、逆ですわ。
そない大昔の神さんの時代にかて、同性を愛する輩がおったってことでっしゃろ?
禁止せなあかん位に。
ちゅーことは、同性同士の恋愛かて人間の遺伝子に書き込まれているってことになりまへんか?
ならわてらにはなんの障害もありませんわ。
遺伝子に刻まれた「あんさんを愛する」という指令に素直に従えばいいだけどすから。
そろそろ…顔、あげてくれまへんか?
わろて欲しいんどす。
いつもの太陽みたいに。
怒ってくれてもええどす。
殴ってくれても。
何してくれてもええんどす。
わてのこと、あんさんの好きにしてほしいんどす。

せやから、わてのこと信じてください。
ほんまに…ほんまに好きなんどす。
答えてください。
わてのこと好きでっしゃろ?
シンタローはんが、わてのこといくら邪険にしたかて、認められない心の奥の奥の奥には、わてへの気持ちが隠されているって知っています。
でもそれを素直に出すことが出来ないのも分かっています。
せやからわては笑います。
シンタローはんがわてにわろてくれるように。
優しゅう笑います。
臆病な子ぉが、初めて一人で歩き出すのを見守るおかあはんのような気持ちで。
なんや、いつもと立場が逆どすなぁ…。
シンタローはん、眉間に皺よってますわ。
へぇ、臆病なのはわての専売特許なのは知ってます。
せやけど、恋っていうのはすごいものなんどすえ?
臆病者をえらい自信家にしてくれるんですわ。
待つのには慣れとりますさかい、ゆっくり考えておくれやす。
せやけど…あんまり待たせすぎると、わてかて不安になってまうてこと覚えてておくれやす。
臆病になってるあんさんの手ぇ引っ張って、わての腕ん中閉じ込めてまうかもしんまへんなぁ。
小鳥のように震えるあんさんを、きゅう…って抱きしめて、あんさんがなぁんにも考えられないように、むつかしいことばっかり考えてまうオツムん中、からっぽになるまで抱っこしてまうかもしれませんで?
そないしたら、あんさんはわてのことだけ考えてくれますやろ?
覚えててください。
わての腕んなかだけや、あんさんがゼロになれんのは。
わてだけが、ゼロんなって赤さんのようになったシンタローはんを守ってあげられるんや。
だから、あぁ…だから、はよ来てください。

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悪夢(青の一族+α)


==マジックの場合==
「シンちゃん?何処へ行くんだい?パパのところに帰っておいで」

「何言ってるんだよ?アンタはおれの親父なんかじゃないだろ?
 アンタの息子はグンマとコタローじゃないか。」

「待って!シンちゃん!戻っておいで!シンちゃんもパパの息子だよ!」

「シンタロー!!」・・・・夢か・・・嫌な夢をみたものだ。


==ハーレムの場合==
「おい!くそ餓鬼!何処へ行こうってんだ?」

「ハーレムの目の届かないところだよ。
 アンタはこの顔が気に入らないんだよな?だから消えてやるよ。」

「おい!てめぇ~!!ふざけたこと言ってんじゃねぇっ!!
 さっさと戻って来い!!おら!!そっちに行くんじゃねぇ!!」

「シンタロー!!」・・・・チッ!くだらねー夢をみたもんだぜ。


==サービスの場合==
「シンタロー?何処へ行こうとしてるんだい?」

「叔父さんには、もうジャンの代わりは必要ないだろ?」

「何を言っているんだい?シンタローをジャンの代わりだなんて
 一度も思ったことはないよ?だからこっちにおいで」

「シンタロー!!」・・・・フッ。つまらない夢をみてしまったな。


==グンマの場合==
「シンちゃん?何処へいっちゃうの?」

「本来のオマエの居場所に居座ったままじゃダメだろ?だから返すよ」

「何言ってるの?待ってよ!!シンちゃん!!」

「シンちゃん!!」・・・・はぁ~。嫌な夢をみちゃった。


==キンタローの場合==
「シンタロー。何処へ行こうというのだ?」

「本当のシンタローはオマエじゃないか。ニセモノは消えてやるよ。」

「何を言っている!俺はキンタローでシンタローはお前だ!!」

「シンタロー!!」・・・・夢か。夢だな。嫌な夢だ。


==コタローの場合==
「お兄ちゃん!何処へいくの?」

「コタロー、オマエのお兄ちゃんはグンマだけだよ。」

「シンタローお兄ちゃんも僕のお兄ちゃんだよ!!
 待ってよ!!そっちに行かないで!!」

「お兄ちゃん!!」・・・・すっごく嫌な夢みちゃったよ。


==シンタローの場合==
「なあ!皆どこへ行くんだよ?」

「私は君のパパじゃないからね。本当の家族のところさ。」
「クソ餓鬼!てめぇ~のツラなんざぁ~見たくねぇ~んだよ!!」
「ジャンが戻ってきたからね。代わりはもういらないんだよ。」
「僕のお父さまとコタローちゃんを返してもらうよ!」
「ニセモノめ!よくも24年間も閉じ込めてくれたな!」
「僕のお兄ちゃんはグンマお兄ちゃんだけだよ!」

「「「「「「ここにはシンタローの居場所はないんだよ」」」」」」

『お前の居場所はここだ。だから戻って来―――――・・・・・・・。』


「「「「「「シン(タロー)(お兄)ちゃん」」」」」」

バタバタと、寝室になだれこんできた青の一族達の呼び声に覚醒し、
さっきまでのあれは夢だったのだと気付いた。それも嫌な夢。

だが、覚醒する瞬間に誰かの声を聞いたような気がする・・・。
あの声は・・・遠くのほうで何を言っていたのだろうか・・・。
必死に思い出そうとしているうちに眉間にシワがよっていたらしく
そこにいた全員が心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。

そしてその全員の顔も心なしか沈んでいるように感じる。
「よし!さっさとメシにしようぜ!」
そう言って起き上がると皆がホッとしたように笑顔になった。
その笑顔をみて、俺もなぜかホッとした。


==醒めない悪夢==
「皆に変な夢をみせたのはお前だろ?アス。」

「・・・・・ジャン。」

「くだらね~ことしてんじゃね~よ。おかげでサービス達も落ち込んでたぞ。」

「たしかにくだらないな。どうせならもっと苦むようにすれば良かった。
 あれくらいでは私の気持ちは収まらん。」

「また皆に何かしたら、今度は俺も黙っちゃいないぜ?・・・じゃ~な。」



青の一族など、苦しめても苦しめても私の気持ちが収まることはない。
あの一族が憎くて憎くてたまらない。

あの一族のせいで私は番人を解雇されたのだから。
・・・・などというのは、ただの建前にすぎない。

あの一族は私から「半身」を奪ったのだ。それも二度も。
それに比べれば番人を解雇されたことなど「くだらないこと」になるだろう。

半身の1つは私の対なる番人たる「ジャン」。
もう1つの半身は私の影たる「シンタロー」。
どちらも青の一族に奪われたまま。私のもとに戻ることはない。

これを悪夢と言わずして、いったい何を悪夢というのだろうか。

6.リキッドとシンタロー



 心臓が、飛び出してしまうのではないかと思うほど、動悸が激しい。そのためにいきは絶え絶えなのだが、整うのもまたずにリキッドは目の前の扉を叩く。

 ここまで来るのも大変だった。そもそも一族の住居区は敷地の奥深くであり、厳重なセキュリティシステムに管理されている。本来ならば一学生には入れない区域なのだが、よく報告を部下任せにする上司(仮)により、それらを潜り抜けられるパスを彼は与えられていた。本来の住人よりも時間はかかるが、これで中に入ることはできる。

 パスの認証のとき以外はずっと全力疾走だったため、それほどの時間はかからずにこの場に到着することができたが、その姿は思わずあっけにとられてしまうほどのものだった。

「・・・・・・お前・・・・・・・」

 ノックに反応して扉を開けたシンタローは、彼がここにきたことを訝しく思うより前にまず、形相に面食らったようだった。

「・・・・・・とりあえず、入れよ。今、水持ってくるから」

 面倒見のいい彼女はそう言い残し、急ぎ足で奥へ去る。それに続いて入った室内の、小さな対面机に腰掛けながら、リキッドは呼吸を整えた。後ろ姿はすぐに戻ってきて、彼の前にコップを差し出す。

「ほれ、ゆっくり飲めよ。むせるから」

 受け取ったものをいわれたとおりゆっくり口に運ぶものの、不足していた水分を口にすると、やはりむせてしまった。こぼさないようにバランスをとりながら、口を押さえて咳き込んでいると、部屋の主は慌てたように体に手を添えてきた。

「大丈夫かよ? 落ち着けって」

 暖かい手が背中を巡る。ゆっくりと手からコップが取り上げられた。咳が収まってくるとその柔らかな感触に反応し、先ほどとは別の鼓動が胸を打ち始めた。

「・・・・・・シンタロー、さん」

 もう大丈夫、という思いをこめて添えられていた手をつかむ。大きさは自分と大差ないが、思ったより細くてしなやかな指だということに、こんなときながら気付く。

(壊れちまいそー)

 存在を確かめるかのように強く握ると、つかんだ手が震えたのが伝わる。顔を上げると、怒りの中にかすかなとまどいをにじませた黒い瞳とぶつかった。

「・・・・・・いったい、何・・・・・・・!?」

「あなたが、好きです」

 かの人の表情が止まる。改めて見ると、とてもきれいだった。どうして今まで何も思わずにいられたのだろう。これまで何度も真近かでその姿を見てきたというのに。

 いまさらながら、過去の自分の愚鈍さを悔やむ。

「今日は、それを言いに来ました。この間の、お返事です」

 手をとったまま、瞳をそらさずに言葉をつむぐ。新総帥就任のことなど、いろいろと聞きたい話題はあるのだが、うまく言葉が出てこない。再び上がってきた呼吸をついで、これだけはどうしても、とどうにか声を絞り出す。

「俺のあげたセーター、着てほしいっす」

 シンタローは、目を見開きしばらく呆然としていたが、やがてこちらの瞳を見つめながら、ゆっくりとうなずいた。その頬は明らかに赤く染まっている。

「・・・・・・遅ぇよ、バーカ」

 けれど間に合わなかったわけではない。いまだ染まったままの顔を上げ、シンタローはリキッドを見上げ、微笑んだ。

「お待たせして、申し訳ありませんでした」

 まだ熱の収まらないリキッドの腕が、彼女の背中に回る。力の抜けた黒髪の頭が、そっと彼の胸に投げ出されてきた。

 互いの感触を感じながら、二人は同時に安堵のようなため息をついたのだった。








 なんか微妙ーに中途半端な気がしますが、これにて幕引きです。
 ついでに言うと、このシリーズもひとまずこれで区切りです。
 ここまでしか考えてないよっていう、意思表明。
 まあ、外伝というか、他の話を考えていないわけではないのですが。それはまあそのうちということで。

 相も変わらずマイ設定、かつ長い話をお読みいただき、ありがとうございました。
 ご感想などいただけたら幸いです。




5.コタロー



(気に入らない・・・よりにもよって何で家政夫なわけ!?)

 足取りも荒く、コタローは歩を進めていた。向かうのは姉の部屋――小さい頃の家とも言えるような場所だ。

 彼は、姉であるシンタローが大好きだ。今でこそ父親とも仲がよく、友人もたくさんできたが、父に疎まれていた時代は小さかったせいもあるが、外部とは関わらず、姉とばかり遊んでいた。

 姉は、自分の母親代わりをしているつもりだったのだろう。惜しみない愛情を注いでくれたが、よく叱られもした。最も大抵泣いて謝れば、鼻血をたらしながら許してくれたが――。

 それはともかく。

 コタローにとってシンタローは、最愛の姉であり母でありあこがれの女性であり目標であり、幸せになるべき人でもあった。そんな人が、不釣合いな男に恋し(しかも本人は片思いだと思い込んでいる)思い悩んでいるとなれば、黙ってはいられない。一言口を挟むくらいはしないと、気はすみそうもない。

「もう! 悪い男がつかないと思ったら、見る目ないなんてさ! ホントもったいないよ、お姉ちゃんは。あんな優しくて美人でお金もあるんだから、もっとふさわしい人がいるはずなのに!」

 口に出しながら歩くコタローの言葉は、幸い誰にも聞かれていないようだった。誰にも会わないように、そう考えて道を選んでいたのだが、彼が曲がろうとする分かれ道の先に、人影を見つけてしまう。そしてその人物に言葉を聞かれてしまっていたようだった。

「ずいぶんでっけぇ独り言だな、コタロー」

「叔父さん・・・! と、その愉快な仲間達」

 現れた大柄な男を睨みあげるように言うと、大人達の大半は苦い顔を見せた。

「愉快・・・・・・ですか」

「まま、マーカー。不景気って言われるよりいいじゃなーい」

「・・・・・・・」

 叔父の部下であるマーカー、ロッド、Gはそんな反応を見せたが、ハーレムのほうは、いやらしいニヤニヤ笑いを浮かべていた。

「へ、アホみたいにシスコンぶりを発揮している奴に、何言われたって痛かないね」

 見下すような口調に(実際体格は見下されている)コタローはむっとしたが、残る三人は互いに同じ突っ込みを心中で上司に入れていたのだった。

(あんたはいつ、誰に何を言われても痛くないだろ!)

 そんな彼らの内心を知ってか知らずか、叔父と甥は話を続ける。

「シスコンなんかじゃないよ! 僕はただ、お姉ちゃんを心配して・・・・・・・!」

「心配、ねぇ。しちゃ悪いってことはねぇけど、時と場合によるぜ。どさくさにまぎれて一緒に風呂はいるってのは、いくらシンタローが気にせずとも、そろそろやめた方がいいんじゃねぇの?」

「あれは・・・! 事故だよ、入ってるって知らなくて・・・・・! それに、一回だけじゃないか!」

「へぇぇ~。真っ赤になっちゃってまぁ・・・」

「叔父さん!」

 怒るよ! とこぶしを振り上げたコタローに、大人げのない叔父はようやく攻撃の矛先を収めた。いまだに顔に笑みはあるものの、話を聞く態勢に放っている。

「うっせーなー・・・・・・・。へいへいわかったよ、お子様。ところでさっきから何叫んでたんだ? “ふさわしい人がいる”とか何とか言ってたけど」

「そう! そうだよ叔父さん、家政夫は!?」

 はっと気付いたように顔色を変え、ハーレムを見上げる。当初の彼は姉の部屋に行こうと思っていたのだが、ここに来て気を変えたのだ。

(お姉ちゃんに聞くより、こっちをはっきりさせないと! ――何かしてたら承知しないよ!)

 もっとも問題の馬の骨とは、友人が同居しているので、めったのことはないと思う。思いつつも勢い込んだコタローは、叔父の返答を待つ。彼は目を瞬きつつも、困ったよう返してくる。

「リキッドか? 家にいるだろ、この時間は。つか俺の言ったことに答えろよ。あのアメリカ坊やが、その“ふさわしい人”なのか?」

「――っ、んなことあってたまるか!!」

 これまでにない激しい口調に、大の大人が4人、思わず飛び上がってしまった。激しい気性を持つ一族の血を、もっとも色濃く受け継いだものの一括だ。いくら子供とはいえ甘く見られない。以前も一度かんしゃくを起こしたこの子供に、ひどい目に合わされたことも、彼らにはあったのだ。

 もちろん今は落ち着いて、自分の感情をコントロールしようという気持ちはあるが・・・。

「な、何だよ。怒鳴らなくても・・・・・・・・」

「あいつが、家政夫が、お姉ちゃんにふさわしい男であるはずがない!」

「へ・・・・・・・」

 一瞬呆然としたハーレムだったが、荒い息をつく甥っ子の様子に、だんだんと納得がいってきたようだった。しばし間が置かれてから、小さな肩に手が添えられる。

「まあまあ、落ち着けって。気持ちは解らんでもないが、こればっかりは本人の問題なわけでなぁ・・・」

「解ってるよそんなこと! だけど、だけど、だけど・・・・・・・・」

 興奮に体を震わせながらどもるコタローは、それでもどうにか言葉をつむごうとする。唇を湿らせると、いつの間にかうつむけていた顔を、すっと上げた。

「だからって、納得できないよ。お姉ちゃん、総帥になるので大変なのに、あんなちゃらんぽらんな奴のどこが・・・、何だってあんな奴のために、あんなに悩まなきゃなんないのさ!」

「って、言われてもな――・・・・・・」

 ハーレムは困って泳がせた視線の先で、部下と顔を見合わせた。その様子を不満とともに見上げていた子供は、彼らのさらに向こうに見知った人影を見る。それは、彼の捜し求めていた男で――

「――リキッド!!」

 呼びかける、というには強い語調で言うと、彼は驚いたようにこちらを見返し、おびえたような動作で近付いてきた。

「な、何だよコタロー、いきなりそんな声出して――」

「何でお前なんだよ! しゃきっとしろよ! お前がそんなんじゃなければ・・・・・・もっとしっかりしてたら・・・・・・・!」

「まぁまぁ、落ち着いてください、コタロー様」

 訳がわからずあせるリキッドと憤るコタローの間に入り、二人をなだめる様子を見せたのは、マーカーだった。怒りの勢いのまま痩身の中国人を見上げると、彼はおかしそうな笑みを浮かべながら、コタローの頭を軽く叩く。

「その言い方ではまるで、このものがしっかりとさえしていれば、シンタロー様に沿わせてもいい、とおっしゃっているようですよ?」

「へ・・・!? え・・・?」

 目を瞬くリキッドには目もくれず、渋い表情でコタローはマーカーを見上げる。他の面々もニヤニヤ笑を浮かべているところを見ると、誰がどう見ても彼の言い分は、そういうように思えるものだったのだろう。

「・・・・・・しょうがないじゃないか。お姉ちゃんはこいつが好きなんだから。でも、納得いかない! こんなのと一緒になっても苦労するだけだもん!」

「ま、そりゃそうだろ。総帥になんなら、旦那はそれなりの男じゃねぇとな」

 コタローの言葉を受けた彼の叔父がちらりとリキッドに目をやると、男の方が少しだけびくりと揺れたのが目に留まる、同じくコタローもそれに気づくが、叔父の言葉はなおも続いた。

「就任すりゃあ、いつまでも独り身ってわけにゃいかねぇだろうし」

「けど、高い地位につくんなら、金目当てのやからなんかも寄ってくるっしょーね」

 わざとらしいまじめ顔(と、コタローには見えた)で、もっともらしい事をロッドが言う。それは彼自身も心配していることなのだ。人付き合いは多いが、人の好意には慣れていない姉である。経験豊富な者の手管にかかれば、あっという間に落ちていってしまうかもしれない。

 だからこそ、今の思い人であるリキッドがしっかりしていれば・・・・・・と、思ったわけなのだが。

「シンタロー様、けっこう純情ですからね。案外ころっとだまされちゃったりして」

「そうでなくとも」

 真剣さを保ちきれずに笑い出したロッドをたしなめ、打ち切るようにマーカーが割って入る。

「評判を落とそうと、スキャンダルをかぎまわりに来るやからなどもいるでしょうしね」

「・・・・・・」

 Gは無言だったが、同僚の言葉に一つ一つうなずくと、仕上げとばかりにリキッドの肩に手を置いた。大人達の意識は最年少の同僚に向けられているようだったが、話しかけるのはコタローにばかり。そんな彼らのささやかなたくらみに気付いた子供は、同じくリキッドに一言いいたいがために、あえて乗ってみることにした。

「そう、だから僕これからお姉ちゃんのところに行ってこようと思ってさ。望みがないなら早くいい人見つけた方がいいし」

 僕が言えば、真剣に考えてくれるだろうしねー。と何気なく見上げると、男の顔は歪んでいた。加えて、少し青ざめているのが意外に思える。

(へ・・・実は案外真剣だったのか・・・・・・それなら大丈夫かなぁ・・・・・・つーかここに来てそんな顔するぐらいだったら、とっととまとまってくれてればよかったのに)

 姉の伴侶は姉を愛し、守り、迷惑をかけず、頼れる男であってほしい。姉の苦労を、目にしているから。だからこそ姉の選んだ相手には、厳しく対応していたのだ。本当の苦労は、この程度ではないのだから。

 今のリキッドには、その苦労を受け取るほどの力量があるとは到底思えない。が、もともとまっすぐなたちの男だ。思いが真剣ならば、コタローの理想の婿となってくれるかもしれない。

(さあ、ここまで言われてどうする、家政夫?)

 好奇心と期待のこもった視線の中でリキッドは、しばらくうなだれていたが、やがてさっと顔を上げると、一言こういった。

「俺、用事出来たんで、これで失礼します!」

 一礼すると、風のようにその場を去ってゆく。それを見送ったコタローは、呆れたように叔父を見上げた。

「どうなると思う?」

「さあねぇ。なるようになるんじゃねぇ?」

 いい加減な・・・と、ますます強く見据えた先で、ハーレムは面白そうに口にくわえていたタバコに火をつけた。



6 リキッドとシンタロー へ







4.リキッド-2




 ぼうっと窓の外を見ている。ガラスは室内との温度差で、白く曇っていた。その向こうは冬の乾いた景色で、寒さよりも埃っぽさをかもし出している。学生達はともかくとして、私服の大学生や社員は、一様に暖かそうな冬服に身を包んでいた。

(ま、大半はコートで隠れちまうんだけどな)

 窓越しに見える風景にそんな感想を漏らしてから、リキッドはため息をついた。そうしてから自分の行動に驚く。

(な、何で俺、ため息なんかついてんだ・・・!?)

 学校が始まって確かにいろいろ忙しいが、それはいつものことである。友人とも楽しくやっているし、家庭内も円満だ。それのどこにため息をつく要因があるというのか?

 自問しながら再び窓の外を見ると、長い黒髪をなびかせた女性が、ゆっくりと目の前を通り過ぎてゆく。背が高く、背筋をまっすぐに伸ばして歩くその姿が、シンタローによく似ていると思う。

ふと、胸にちくりとした痛みのようなものが走った。

「え・・・・・・・?」

戸惑ったような声を出しながらも、内心で彼は納得していた。自分は先日のシンタローとのやり取りが引っかかっているのだ、と。

(あれって、あれってやっぱ、告白・・・なんだよな・・・・・・?)

 自分の渡したプレゼントを手に、困ったような微笑を浮かべながら、好きだと言った彼女。あまりにもあっさりとした口調で、特に返礼を催促する様子もなかった。そのためか、顔を合わせなかった休みの間はずっと忘れていたのだが、先日たまたま顔を合わせたときに、どうして関心を持たずにいられたのかと思うほどに、鮮烈に思い出したのだ。

(やっぱ、ちょっと変だったよな、あれは・・・・・・)

 目が合い、思い出したとたんに真っ赤になって、すぐにあさってを見てしまったリキッドに対し、シンタローはとがめるでも声をかけるでもなく去っていってしまったのだ。それだけのことなら、気付かなかったのかと納得できもしたのだが、それから何度かあった邂逅の際も、彼女は決してこちらに注意を向けようとはしなかった。

 避けられている、というわけではなさそうなのだが、話す機会はめっきり減ってしまっている。告白を受けた身としては、この意味を考えずにはいられない。

(答えなくてもいいんかなぁ・・・。いやいや、そんなはずはない。告白して、返事がいらないなんてあるもんか。答えなくていいんなら、そう言うはずだあの人なら! ・・・・・・でもだとしたら何なんだ? ひょっとして、からかわれてる?)

 そうだとしたら、何も言ってこないことにも説明がつく。少ない情報で混乱するこちらを見て楽しんでいるのだとしたら・・・・・・・。

 ありえないことではない。リキッドはとにかく人から遊ばれやすいたちで、さまざまな手でこれまで翻弄されてきたのだ。シンタローとて普段は彼をバカにすることが多い。そのランクをあげたと思えば全てに説明がつく。

「・・・・・・」

 だが、そう考えると今までよりもさらに落ち込みがひどくなる。彼女は今、周りにいる人々の中では、比較的信頼できる方だったからだ。確かにバカにされ見下されパシリにされてはいるが、最後には必ず助けてくれる。決してリキッドを無為に見捨てたりはしない。

 そんな人が、こんなことをするか?

「・・・・・・いいや」

 無意識につぶやいて、うつむけていた顔を上げる。

(あの人はしない。だますにしたってこういうやり方はしないはずだ。こんな、人の心をもてあそぶようなことは。それに・・・・・・)

 顔を合わせた数回を、頭に思い浮かべてみる。いつも場面は室内で、かなりの頻度だった。けれどその中のシンタローは、一度としてリキッドの贈ったセーターを着ていたことはない。

(あれは、どういう意味なんだろう?)

 よく考えれば、贈られた服がすぐに着られなくとも不思議なことではない。あわせるものがないとか、気候に合わないとか、洗っているなどだ。しかし今のリキッドはそれを思いつかず、何かの意味があると思えてしまって、仕方がなかった。

「うーん・・・・・・」

 頭を抱えて考え込んだ。こんなことは聞きに行くわけにも誰かに相談するわけにもいかない。第一、彼はシンタローの気持に対する返答を、まだ用意してはいないのだ。そんな状態では本人はおろか、他人に言いふらすわけにも行かない。

 からかわれているにしろ、真剣な告白にしろ、その一点だけははっきりさせておかなければ何も始まらない。終わりもしない。

「俺は、シンタローさんを・・・・・・」

「シンタローが、どうしたって?」

「うわぁ!」

 物思いにふけっていた背後から突然かけられた声に、驚いて飛び上がる。今まで部屋には誰もいなかったはずだ。

「な・・・・・・なんだパプワか・・・びっくりさせんなよ・・・・・・」

「それはこっちのセリフだ。僕はさっきからここにいたぞ。気付いてなかったのか?」

「え?」

 そういわれてみれば、入り口の戸が開いている。きちんと閉めたはずのものだ。立て付けが悪く、空けばきしむその戸の音に、全く気付かなかった。ばつが悪くて無意識に赤面する。

「何ぶつぶつ言ってたんだ? シンタローのことなんだな?」

「・・・・・・あ、まあな」

 リキッドは同居しているこの子供に嘘をついたことはない。両親を早くになくしながらも、よい養育者にめぐり合い、のびのびと素直に育ったパプワは、嘘にとても聡かった。しかしそれと同じくらい、人の気持ちにも聡かったので、言いたくないと思ったことに、深く追求してくることもない。

 彼はそんな自分の被保護者を、誇らしく思い好いている。偉そうだとか人使いが荒いだとか欠点はさまざまにあるが、この子供と暮らすのは楽しかった。

 そして、パプワとシンタローは親友でもある。子供は年上の友をとても大事に思っているのだ。少なくともリキッドよりは、彼女のことを知っている。

「何かさ、クリスマスからだろうな、たぶん。避けられてる気がするんだよ・・・」

「・・・・・・シンタローに、か?」

「ああ。あ、俺はただプレゼントを渡しただけで、変なことはしてないぜ!」

 妙な誤解をされないように先に釘を刺すと、なぜか不機嫌そうな顔をされた。

「本当だって!」

「解ってる。何かしてたらお前が無事なはずはない」

 切って捨てるような、そんなことはありえないといわんばかりの断定に、リキッドは複雑な表情で黙り込む。

 確かにその通りはその通りなのだが、女性相手に素直に認めてしまうのは、やぶさかではない事実だ。

「・・・・・・“俺は”?」

「え?」

 話し相手の気分にはかまわず続けたパプワの言葉の意味が解らず、これは素直に聞き返した。

「“俺は”何もしてないって言ったよな? じゃ、シンタローは何かしたのか?」

「・・・・・・えっと・・・・・・」

 まっすぐな瞳で見つめられ、返答に困ってしまう。子供相手には微妙な内容の話ではあるし、シンタローが真剣だとすると、人づてに親友に知られて嬉しいはずもない。

 困って黙り込んだりキッドに、何を思ったのかパプワが口を開く。

「まあ、言いたくないならいい。たぶんシンタローが総帥になるって話だろ?」

「そう・・・・・・。・・・・・・って、ええ!? し、シンタローさんが、そ、そ、総帥!?」

「何だ、違ったのか」

 驚きのあまり口を空いたままになってしまったリキッドに対し、パプワは平然としたものだった。先日、ハーレムとコタローからこの話を聞かされたときも、同じ反応を示した。

「ハーレムから聞いた。あいつが4月から新しい総帥になるって。・・・何をそんなに驚いている?」

「だ、だってよ・・・・・・。シンタローさんが、だぜ? ちょっと前まで学生だったのに・・・」

「学生だろうが総帥だろうが、シンタローには変わりないだろう」

 混乱していたリキッドは、ふとこの言葉で我に返る。パプワにとってシンタローは、初めて会ったときからずっと、同じシンタローのままなのだ。その肩書きが学生であろうと総帥であろうと――人にあらざる者だとしても――変わりはしない。何があっても態度は同じなのだ、シンタローはシンタローだと。

 その思いを感じ取り、リキッドの心から迷いが溶けていく気がした。

「シンタローさんは・・・俺のことが好きなんだな・・・・・・」

 あの告白に偽りはない、と確信した。
 
 唐突な言葉だったが、それを受けたパプワの瞳は一瞬疑問に揺れたのみで、何をいまさら、と物語る。

「だったら俺、答えないと・・・総帥になったら・・・・・・・」

 シンタローのさまざまな表情が浮かぶ。何気ない会話、叱ってくる表情、こちらをバカにするが満々の意地悪な顔、必死に相手を気遣う様子――思えばあのクリスマスの日も、彼女はこんな表情をしていた気がする。

 会えなくなる、という言葉は胸のうちでつむいだ。子供に余計な不安を与えたくなかった。

「そうだぞ、さっさとしろ。爺さんになる前にな」

 ハーレムの言葉をそのまま使った励ましだったが、彼にそんなことは解らない。ただ、どことも知れない場所を見る真剣な目で、深く頷いたのだった。



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