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パパお見合いする!?

「シンちゃんただいま~」
遠征から戻ると、仕事もそこそこに、マシ゛ックはシンタローのいる家へと向かう。

母親がいなくとも、すくすくと育つ一人息子のシンタローの成長のみが、マシ゛ックの生きがいだ。目に入れても痛くないくらい、むしろもうちょっと育ったら食べちゃおうかなぁっと計画しているぐらいに、可愛くて仕方がない。

予定よりも、早く遠征先から戻ってきた。仕事は多忙を極めるが、あの子が待っていると思うと、頑張れる。
もう、親子の感情からはとうに離れていると、自身も自覚している。
「シンちゃん?ハ゜ハ゜だよ」
部屋に入るといつも、抱きついて迎えてくれるはずのシンタローが今回は反応がない。
あれ?…あ!今回は1週間と長かったから拗ねちゃったのかな?

もう本当に可愛いんだからっvとテ゛レテ゛レと顔を緩ませながら、シンタローを探すとソファーに膝をかかえてうずくまる息子の姿あった。
「シンちゃん??どうしたの?どこか痛いの?」
オロオロと息子に近づくと、下から覗きこむように床に膝をつく。よく見ると、かすり傷らしきものが、シンタローの顔や手足に見える。
もしや悪いお兄さんにいたずらされちゃったとか!!誰にいじめられたとか?
何かされちゃったんじゃ!?なんて想像するだけで怒りがこみあげ八つ裂きにしてくれるっと、殺気をだつ。が…、冷静に考えると服は破けてるわけでもないので、それは違う。
そうすると…考えられるのは…。
「ケンカしたの?」
そっと、頭に手を置くとヒ゛クッと体が反応を返した。その反応にやはり、誰かに…!?
と悪い思いもかすめるが…。

「…だって…だって…」
叱られると思ったのだろう、涙ぐみながらようやく顔をあげた。久しぶりに見る我が子の姿に愛おしさがこみ上げてくる。
おもっきりスリスリしたいが、が!!ここは我慢、我慢。
エク゛エク゛とえづくシンタローの身体を抱えると自分の膝に座らせる。頭を撫でながらなだめると、たどたどしくだが、ケンカの理由を話しだした。

事のいきさつはこうだ。


「シンタローのハ゜ハ゜ってかっこいいよなぁ。」
学校の帰り道、友達数人と歩いていると、そんな事を言われた。
(だって、ぼくのハ゜ハ゜だもん。かっこいいに決まってるよ。)
えっへん。とはにかみながらも、アタリ前じゃんと答えるシンタロー。

もう小学2年生にもなる男の子が、父親を自慢しすぎるのも、ちょっと可笑しな話しがあるかもと思うかもしれないが、早くに母親を亡くして、父と子の2人で暮らしていればそうなるのは自然なことかもしれない。

「うちのママがシンタローのハ゜ハ゜なら再婚したいっていってたよ」
「…再婚?」
きょっとんっとした顔で、シンタローが首を傾げると、友達はシンタローが再婚という言葉を知らないと思ったのだろう。事細かに、親とテレヒ゛で知った情報を話し出す。
(ハ゜ハ゜がもう一度結婚する??)
「絶対!!無い!ありえないよ」
シンタローはムーっと頬を膨らませた。
「なんで??」
「なんでって、ハ゜ハ゜いつも、シンタローがいればいいって言ってるもん」
自信満々に答えるシンタローに友達の一人が、
「でも、おまえ子供じゃん。シンタローのハ゜ハ゜まだ若いし恋人ぐらいいるんじゃない」
一人がそういうと、口々にそうだ、そうだ。と同意の声やあまつさえ、遊んでそう!などの言葉も飛び交った。
その言葉に我慢できなかったシンタローが、キレて手を出した結果、ケンカになったということだ。

「なるほどねぇ~」
事情を聞き終えたマシ゛ックが、膝の上のシンタローをぎゅっと抱きしめる。
「起こらないの??」
漆黒の瞳を涙で濡らしながら、小首を傾けるとマシ゛ックの方へ顔だけ向ける。

「ケンカはよくないことだよ。でも、ハ゜ハ゜の為に怒ってくれたんでしょ」
「…だって、ハ゜ハ゜が再婚するなんて言うから…」
思い出したのか、ぐすぐすと鼻をすすり、マシ゛ックに抱き着いた。
「シンちゃんは、新しいママが来るのは反対?」
「…わかんない」
確かに、ママがいたらいいな。って思うことはある。一人の夜は寂しくて、寂しくて…。ママがいたらいいのにって思うけど…。
でも、ハ゜ハ゜がぼくだけのハ゜ハ゜じゃなくなるのは…。考えると涙が止まらない…。
それを見られなくて、顔をきつくマシ゛ックに摺り寄せた。

そんなしぐさをマシ゛ックはどう受け取ったのか、複雑そうに顔を歪めるとシンタローをきつく抱きしめる。
…シンちゃん…ママ欲しいのかな。

背中を撫でてやると、しばらくして泣き付かれたのか、クークーと寝息をたてシンタローは眠りについてしまった。
「……ママ…か…」
やっぱり必要かな? 寂しいか…当たり前だな。まだシンタローは幼いんだから。最近のシンタローは母親のいる親子連れを見るとどこか、寂しそうなまぶしそうな顔をする。父親だけじゃ無理なのか…。仕事も忙しさを増している、だんだんと昔ほど一
緒にいられる時間が減ってきた。
それを察してか最近はあまりわがままを言わなくなった。
シンタローの為に再婚を考える時期が来たのかもしれないな…シンタローを強く抱きしめながら、しみじみと母親の存在を考えた。

********************

「ん、なんだこれ?」
遠征の報告の為にマシ゛ックの元を訪れていたハーレムは、机の上に書類とは違う、厚い封筒のようなものが大量に積み重ねられているのに気付いた。
「ああ、それか…」
ハーレムの視線に気付いたのか、大きなため息をつくと、一つをハーレムに投げ渡す。
「なんだ~ぁ!兄貴見合いでもすんのか」
他のを手にとってみても、全部いかにもな、お見合い写真ばかり…。
シンタローへの溺愛ぶりを見ていると、どうにも信じられず何かの冗談だと言わんばかりにニヤニヤと笑みをこぼす。
何も返さないマシ゛ックの様子に驚き手元の写真と兄貴を交互に見比べた。
「マシ゛かよ…。シンタローは知ってんのかよ?」
ハーレムの言葉にぴたっと仕事の手を止めると、顔はあげずに苦々しくため息をついた。
「まだ…言ってない」
「言ってないって…いつ会うんだよ」
どうみても手がつかずの見合い写真を睨みながら、ハーレムが問いかけた。
「今週らしいな…子供好きらしいぞ」
「らしいって…いいのかよ、シンタローはどうすんだよ」
見合いなどありえないと、のんきに構えていたが、シンタローが知っていないとすると、傷つくのは目に見えている。
普段泣かせたりしているが、可愛い甥っ子だ。悲しむ顔は見たくない。
兄貴にべったりのシンタローが知れば、傷つくのは目に見えている。
兄貴だって分かってるハス゛じゃないのかよ…。
どこか人事の様に振舞う態度に我慢ができず声を荒げた。
「兄貴っっ!!」
マシ゛ックに詰め寄ると、手に持っていた書類を奪い、肩を荒々しく掴んだ。

「シンタローの為だよ…」
そうされても、顔色を変えずに淡々と声をだした。やんわりとハーレムの腕を外すと立ち上がった。
「私はシンタローの為なら…シンタローが寂しい思いをしないですむなら…したくない再婚だってするよ」

真意なマシ゛ックの言葉に、ハーレムは言葉をなくすが、声を震わせながら絞り出した。
「シンタローが言ったのか…」悲痛な面持ちで首よ左右にふるマシ゛ックをみると、ハーレムはそれ以上言葉を続けることができなかった。
ハーレムが出て行くとマシ゛ックはイスに深く座りなおし、卓上に置いてあるシンタローの写真を手に取った。
今ならまだ戻れるかもしれない…。自分のシンタローへの思いは父親の持つ感情なんかじゃない。
いつかその思いがシンタローを傷つけることになる。
それなら、早いうちに手を打ったほういい。
再婚相手に愛情なんか沸くわけが無い。
相手には可哀想だが、シンタローの為ならそれぐらいなんともない。
これは、シンタローの為でもあるが自分の為でもある。
シンタローを自分の欲望で彼を傷つけて拒絶されたら…生きていけない。
それこそシンタローに何をしてしまうか分からないし、凶暴な感情を押さえられるとは思ってない。
今ならまだ家族ごっこだって演じられる。深く息を吸い込むとゆっくりと目を閉じた。

********************

「ハ゜ハ゜…出かけるの?」
シンタローはもそもそと起き上がると、顔を洗いマシ゛ックのいる部屋へ向かった。
日曜だというのに、スーツを着込む父親に話しかけた。いつもの赤いスーツじゃないから、仕事ではない気がする。
それに自分の顔を見て一瞬なんとも気まずいような顔をした。
それは一瞬だったから、気のせいだと思ったけど…どこか普段のハ゜ハ゜とは違うような気がする。
「シンちゃんおはよー。今日は早いね~。ハ゜ハ゜ちょっと…出かけてくるから、待っててね」
「…何時に帰ってくるの?」
日曜だけがハ゜ハ゜を独り占めできる日だ、どんなに忙しくても日曜だけは一日中一緒にいてくれたのに…。
たまに無理な日があっても前の日に言ってくれたし、戻りの時間を伝えてくれたのに、今日のことは何も聞かせれていない。
「午後には戻るから、そしたら一緒にでかけよう」
どこかいつものハ゜ハ゜とは違う気がする…どこかとは言えないが違和感を感じた。
なんだかむしょうに寂しくて、マシ゛ックに抱きついた。
「シンちゃん?」
抱き上げえるとよしよし、背中を撫でる。
「僕も行っちゃだめなの?」
「…今日は…」
シンタローには結局言えずに今日がきた。行ってから言うべきか迷っていたが、何かを感じたのだろうか…。
いつまでも逃げれるものだとは思わない。

「シンタローいいかい?」
「なに?」
不思議そうに首を傾げるしぐさに、どうにも言い出すことができない。
それでも…大きく息を吸うとシンタローの目をまっすぐに見つめる。
「シンちゃんのママになるかもしれない人と会うんだよ」
「え……」
何を言われたから理解できないのだろう、大きな漆黒の瞳を見開いた。
「今日、連れてくるから一緒にご飯食べよ、。午後には帰って来るから、それまでに準備しておくんだよ」
着ておくものは出しておくからを付け加えると、シンタローを下ろし、部屋から出て行った。
シンタローは、なんと言っていいか分からずに、ただそ佇んでいた。
じゃあね、と強く自分を抱きしめると、そのままハ゜ハ゜は行ってしまった。
どうにもうまく考えれなくて、それでも落ち着こうと水飲みにいくと、台所には朝食の支度が整っていた。
テーフ゛ルにつくとマシ゛ックの作ってくれたハ゜ンケーキとオレンシ゛シ゛ュース、果物…ぼんやりと見つめていた。
「おいしい…」
一口食べるとぽつりと呟いた。
それはいつもの味なのに、おいしいとは思うのに進まない。やっとの思いで飲み込むとフォークをおいた。
なんで?なんで?僕のママになる人?それって、急に何日か前に友達言われた”再婚”という言葉を思い出した。
そんな、僕だけがいればいいって言ったのに…。
なんで、なんで?
…疑問しか浮かばない。
僕が我侭ばっかりいうから?もう嫌になっちゃのかなぁ。
ママが欲しいって思ったから。ママがいれば寂しくないって思ったから。
「ハ゜ハ゜…戻ってきてよ」
どうすることもできずにただ、冷め切ってしまったハ゜ンケーキを見つめるしかなかった。
「お~くそカ゛キなにしてんだ」
どこから入ったのか、ハーレムがシンタローの横にたっていた。
「おじさん…」
このハーレムには泣き顔を見られたくなくて、ぐいっと袖で涙を拭くと、気丈に睨みつけた。
「いつ入ってきたんよっ」
勝手にはいってくんなとばかりに、イスから降りるとハーレムの身体をク゛イク゛イと押し返す。
そんなシンタローの姿に苦笑する。甘ったれの根性なしのくせに、無理しやがって。
兄貴は今日話したのか、殆ど手がついていない食事と泣きはらしたようなシンタローの様子でそう思った。
「マシ゛ック兄貴は?」
どこに言ったか知っていながら、とぼけて問いかけた。ヒ゛クっとシンタローの身体が強張り、震えているのがのが分かる。
ハ゛カ兄貴…。
こんな思いさせて、何がシンタローの為だよ。
マシ゛ックのシンタローへの溺愛ぶりは、親子のものを通り越していた。
どんな感情を抱いているかもウスウスは感じていた。
この見合いはシンタローの為でもあるかもしれないが、自分の感情を止めるためにした事なのだと感じることができた。
奥歯を噛み締めると、シンタローと同じ目線になるように腰を下ろした。

「場所しってるから、連れて行ってやろうか?」
潤んだ瞳が動揺に揺れる。追いかけたいが、迷惑をかけるのではと訴えている。
シンタローがここで追いかければ、兄貴は二度とシンタローを手放すような真似はしないだろう。
シンタローのことを思えば自分の発言が誤りなのかもしれない。
が…こんなシンタローの姿をみるならそうしたほうがいい。
「お前納得いかねぇんだろ?」
こくりとシンタローが頷いた。
「だから、オレ様が兄貴のとこまで連れていってやろうって言ってるだよ」
「でも…」
おどおどと視線を泳がせた。そんなことをして嫌われたら…自分を邪魔にしたらと思うと、素直に行きたいとは言えなかった。

「ったく。相変わらず、情けねえな。いいか、お前のハ゜ハ゜に会いたいか、会いたくないかのどちらかだ」
ここで、自分がシンタローに兄貴の思いを言うことが簡単だ。だがそれでは、今後兄貴の思いにシンタローが潰されるのは見えている。
シンタローに選択させなければ、兄貴のしたことは水の泡だ。
「いいのか、このまま再婚しても?兄貴のことだ今日連れてくるぜ」
「いやだ!!」
とっさに言葉がでた。そういえば、さっきハ゜ハ゜はなんと言った?
『今日、連れてくるから一緒にご飯食べよ、。午後には帰って来るから、それまでに準備しておくんだよ』って言ってなかっただろうか…。
嫌だ、誰にも渡したくない。ハ゜ハ゜が自分よりその人を選んだとしても、このまま待っているのは嫌だ。
「行く、僕ハ゜ハ゜のところに行きたい」
「いいのか?帰れって言われるかもしれないぜ」
しっかりとハーレムの目を見ながら、覚悟を決めたように強く頷いた。

********************

まいったな…。マシ゛ックはにこやかに笑いながら相手をみた。悪くはない、美人そうだし性格もよさそうだ。だか…まったくなんの感情も沸かない。ぼんやりと霧がかったように、相手の顔が入らない。
だから写真を思い出した。たしか美人そうだったな…と。
今浮かぶのはシンタローの姿だ。今朝はびっくりしたように目を見開いて、必死に訴えかけていた。
抱きしめて冗談だよ。っと安心させてやればよかった、今頃泣いてるに違いない。
シンタローを思い出すたびに胸が締め付けられたように痛くなる。
テーフ゛ルの向こうの女性は必死に会話をつなげようと話しかけてくるが、ただなんとなく相槌をうつばかりで、右から左へと声が素通りする。
思うのは愛しいシンちゃんの事だけだ。シンタローと自分のためにと思ったが、ここへきて自分の思い違いにようやく気付いた。
再婚なんかしても、自分のシンタローへの思いを止めることはできない。いつかシンタローを泣かせて傷つけてしまうかもしれない。
それでもいい。私がシンタローを愛している。手放すことなんかできない。手放すものか。
そう思えば後はそうそうに切り上げて、シンちゃんの元に帰るだけ。
心配させちゃったから、思いっきり抱きしめて、すりすりして。今日はシンちゃんの好きなカレーを作って、いや…どこか好きなところに連れて行ってあげよう。
決まれば長いは無用とばかりに、マシ゛ックは断るために口を開いたが、
………!?
今、シンちゃんの声が…まさかね。場所は伝えていない。それにシンタローが追いかけてくるとは、思えない。
とうとう脳までシンちゃんに侵されたかな?クスっと苦笑いした。
「ハ゜ハ゜!!」
シンタローは連れてきてもらったホテルで、最上階へのお店へと急いだ。
店員が不思議そうに自分を見るが、そんなの気になんかならない。逸る気持ちを抑えながら、見回すとカ゛ラス張りのような個室の中にいるマシ゛ックの姿がみえた。
向かいの相手の人は、すごくキレイで清楚な感じの人だった。
ハ゜ハ゜とお似合いだと思った。そう認識した途端、なんともいえない苦い気持ちがして、苦しくて…気付いたら叫んでいた。
叫んでも自分に気付かないのか、シンタローは走りながらまた叫んだ。
「………シンタロー……」
個室の扉を開ける音に、視線を向けるとそこにいる、わが子に驚きを隠せなかった。
イスから立ち上がると、シンタローの元に急いだ。
「シンちゃんどうしたの?」
佇むシンタローの両肩を掴むと目線を同じ高さ下ろした。
「………」
ぐっと唇を噛み締めると決意したように口を開いた。
「もう、ママが欲しいって思わない。我侭も言わない。ハ゜ハ゜が仕事で忙しいのも我慢
するから、…最後に一個だけ我侭きいて」
目を潤ませながら、マシ゛ックの顔を見られずに下を向いた。
「お願い。お見合いしないで!!」
マシ゛ックの袖を掴むと抱きついた。
「ハ゜ハ゜の言うことなんでも聞く。ヒ゜ーマンも食べるし好き嫌いしないから、僕だけの
ハ゜ハ゜でいて。僕がママの代わりになるから」
お願い再婚しないでと、泣きながらマシ゛ックにしがみついた。
「シンちゃん………」
顔をのぞきこもうと、シンタローの腕に手を外そうとすると、離れることを嫌がるよ
うにイヤイヤと首を振る。
振るたびに涙の粒がこぼれて…その姿があまりにも健気で、愛しさに胸が締め付けられる。
「シンちゃんごめんね。ハ゜ハ゜が悪かったよ」
ぎゅうっとシンタローの身体を抱き寄せた。
「…っ…さ…再婚しない?」
上目遣いに見つめてくるシンタローの姿に頭がクラクラとした。
場所がどこかも忘れてスリスリしてしまいそうな、可愛さだ。
…シンちゃんそれは、反則だよ。

もっと育ってからと思っていたが、これでは押さえられそうもない。
自分はこんなにも愛しいシンちゃんを手放そうとしていたかと思うと、恐ろしさと愚かさに身震いする。
「しないよ。ハ゜ハ゜のママは一人だけ。もう二度としないよ。ハ゜ハ゜だけのシンちゃんだよ」
もう一度強くシンタローをマシ゛ックは抱きしめた。


「シンちゃん何食べたい?今日はなんでも我侭きいてあげるよ」
手をつなぎながら、ホテルを後にした帰り道
「なんでもいいの?」
くるくると表情を変えながら、う~んっと考え込む姿が可愛くてしょうがない。
「じゃあ……」
何か思い付いたのか立ち止まると、ちょいちょいと手で招く。どうやら、顔を近づけ
ろということらしい。
体を曲げるとシンタローの口元に耳を寄せた。
「ぼくね、ハ゜ハ゜だーいすきvだからハ゜ハ゜がいれば何にもいらないよ」
エヘなんて、首を傾げてはにかむなんて可愛くて、可愛くて…
「シンちゃん……」
感激に涙が滲むが、鼻血も垂れる…。
カ゛ハ゛ッっと抱きつこうとすると、体をかわされするりと抱きそこねた。
「あとね、今日は甘口のカレーがいいな。テ゛サ゛ートはフ゜リンねvV」
体を半回転させると、ね。っとタ゛メ押しのように満面の笑顔をみせた。

●おしまい●
穂積ホズミさまからのキリリクです。
子供時代のシンちゃんとハ゜ハ゜の甘甘っということでした。なんだか、爪が甘いという感じですが…。
初のショタ??なので、すごく新鮮でした。素直なシンちゃんは扱いやすいな~なんて思ったりして。
ハ゜ハ゜のシンちゃんに対する思いっぷりが伝わればいいなと思います。ハーレムは今回いい男ですね~。
実は人情に熱いいい男だと思ってます。
というか…まだコタローちゃん生まれてませんから、実はママ生きているんです。
ま、まあ…そこは目をつぶって下さい。

うっかりしてました…。

↓おまけ

epilogue。・。現在.・。

********************

「な~んて事があったよねぇ~」
「覚えてねぇ」
乱れたヘ゛ットの上に一糸纏わぬ姿で隣にいる男をシンタローは睨みつけた。
「離れろっ暑い」
「や~だ。離れないもん」
無理矢理まわした腕枕の空いてる腕で、シンタローに覆い被さるような形に巻きつく。
「おいっ!!……」
やめた。ここは大人しく納得するまで、ほっとくに限る。
「シンちゃん…ハ゜ハ゜話があるんだけど」

それが、人に話す時の態度か…。無視だ、無視。
「ハ゜ハ゜ね…再婚するんだ」

「はっ∑!???」
……このオヤシ゛、今なんといったιさ、再婚だと。
驚愕に開かれた目が、徐々に下がり凶悪な目に変わった。
「いいんじゃね~の。関係ない」
肘で押し返そうと、多いっきり押す、難なく腕ごと捕まえられた。
「妬いちゃったんだ~vかわゆいね~相変わらずv」
ふいと顔を背けると、離れろと言わんばかりに、殺気だったオーラーがでている。
「自分に焼餅やいちゃうなんて、まだまだ子供だね~」
……あ”!!!!
鈍器で叩かれたような衝撃とはこの事だ。
言った言葉が理解できずに、目をしばたかせた。
「今なんて言った?」
「まだまだ子供だね~かい?」
「その前だよっ」
「自分に焼餅?」
そうだよっと言わんばかりに、、マシ゛ックを押しのけると上半身のみ起き上がり、真意が分かりかねると、マシ゛ックの顔を凝視する。
「分からない?ハ゜ハ゜昔も言ったじゃないか。ハ゜ハ゜とシンちゃんのママは一人だけって」
「それが、なんで…!??」
ま、まさか…∑∑!?
いやぁ~な予感がする。汗が背中を伝うのがわかる。
「シンちゃん、ママの変わりになるって言ってくれたでしょうvそろそろいい頃かとおもって。再婚しようね、ね。シンちゃん」
「……死ね」
目の前の男を蹴っ飛ばすと、タオルケットを引っつかみ、くるまった。
ハ゛カ…エロシ゛シ゛イ…!!
びっくりさせやがって…。なんだよ…。一瞬本気にしちまったじゃねぇか。
なんだよ…。
口元が自然と緩むのが分かる。
正直ほっとした。でも、図に載せるのは癪なのでこの気持ちは絶対言わない。
「シンちゃん~。ハネムーンはどこにするぅ」
「離せ、うっとしぃ~!!」
ヘ゛タヘ゛タとタオルケットごと抱きしめてくるのを、肘でつっぱねると。と駄々をこねるように、唇を尖らせた親父の顔がちらりと見えた。

ざまーみろ。っとシンタローはタオルケットの中で舌をだした。

●おわり●

唐突に書きたくなって、書きなぐる様に書いてしまいました。


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-酔って・酔わされ・乱されて-
-----------------------------------------------------

 日中の蒸すような暑さから解放されはじめ、青々とした木々が紅く色づき始めた頃、一台のリムジンが赴きある門の前に止まる。
「・・・たまには、休息も必要。ってな」
一人誰ともなく呟くと、リムジンからは赤い軍服に身を包んだシンタローが、門の前で悪戯に笑み浮かべた。

(たまには、ズル休みもありだろう)
面倒だった仕事もひと段落。さして急ぎの用などない、優秀な秘書たちなら大丈夫だろう。
とはいえ、今頃血相かいてるに違いはないか・・・。
眉をひそめて苦言を呈する従兄弟の顔がふと浮び、それを頭の隅に追いやるように手元のパンフレットをクルリと丸めると、黒いコートのポケットに押し込んだ。
「・・・せっかくの、紅葉を満喫しない手はないってね」

門の敷居を跨くと、目の前に見える純和風の木造二階建ての建物をに向かって歩を進める。
紅葉を見ながらの温泉を思うだけで心が浮き立ち、定着しつつある眉間のシワもなりを潜めた。

上機嫌に石畳を歩くと、旅館の戸に手をかけた。
「いらっしゃいませ」
従業員の声に、ペコリと軽く頭を下げて顔を上げると、広々とした玄関の向こにある囲炉裏端で旅館に似つかわしくない金髪が目に入った。
「・・・ん?・・・んん?」
何度か目を瞬かせると、シンタローに背を向けて囲炉裏端に座る、ピンクスーツ姿の男性の姿を凝視する。
ピンクスーツで、金髪・・・。
思い当たる奴が一人いる。が、認めたくない!
何より、奴が知っている筈が無い。ズル休みの計画は前々から立ててはいたが、この旅行を決めたのは昨日で、旅館を決めたのは今日の今日。
奴がわかるはずがない・・・。奴な筈がない。
「まさか、・・・まさか、な」
自分を納得させるように、一人腕を組んで頷くと頭を軽くふって、男のすかした顔を追い払った。
玄関を上がり、帳場で名前を確認してもらいながらも、その男が気になって仕方がない。
男の後ろを食い入るように見つめていると、帳場の従業員が口を開いた。
「お連れ様は先にいらっしゃってますよ」
その言葉にぎょっと目を見開いて従業員へと顔を向けると、同じタイミングで囲炉裏端から声がする。
(ま、まさか・・・・・・・・)
微かな望みを胸に、声のするほうに顔を向けると、
「シーンちゃん!遅かったね」
(・・・・・・っ!?)
予感が的中しつつも、予想だにしない人物の登場に、シンタローはこれ以上無いというほど目を見開いた。
「お、親父ぃっっっ!!!」
シンタローの声が帳場に響き渡った。

「なんで、親父がここに・・・」
「もう、水臭いなー旅行にいくならパパも誘ってくれればよかったのに。さては、後で私を呼び出してビックリさせる気だったんだね。いくつになっても可愛いんだから」
囲炉裏端から、帳場にいるシンタローの隣へと移動すると、唖然とするシンタローの顔を覗きこむ。
「なんで、あんたがここいるんだよっ!あ、盗聴器か!盗聴器だなっ」
そういうとバタバタとコートやらジャケットを調べる息子の姿に笑みを浮かべると、緩慢に首を左右に振る。
「違うよ・・・。シンちゃん口には出さないけど、今週に入ってカレンダーを見ては瞳を楽しそうに輝かせてたじゃない。自覚ない?」
あんな、あからさまにカレンダーみてれば何かある。って思うのが普通でしょ。
「じゃ、あいつらも・・・・・・」
その言葉に顔を一瞬にして紅くすると、口元に手をやった。
「ん、ああ・・・ティラミスたちかい?どうだろうね、ここにいるのは知らないだろうね」
マジックの説明を聞き終えると、シンタローは真っ赤に顔を染めていた顔を戻すとジャケットを羽織り、コートを脇に抱えてマジックに背を向けた。
「どこいくの?お部屋はあっちだよ」
玄関で靴を履こうをするシンタローの背中に向かって声をかけると、
「場所変える・・・」
不機嫌な声でシンタローがボソリと呟いた。
「ふーん、じゃあチョコレートロマンスに電話しちゃおうかな」
「卑怯だぞっ!!」
胸元から携帯電話を取り出すと、シンタローに見せ付けるように発信ボタンに手をやる。
それを言われると、出るに出て行くことの出来ないシンタローは無言でマジックを睨みつけた。
それを了承と得たのかシンタローとは対照的に、マジックは青い瞳を楽しそうに濡らすと余裕の笑みを浮かべて
「秘密なんだろう?いいじゃない、一人よりも二人の方が楽しみも二倍。料理も美味しいよ」
そういってシンタローの腕から、コートと鞄を抜き取ると、脇に抱えて離れへと向かう廊下を鼻歌まじりで歩きだした。

(お、俺のせっかくの計画が・・・。休日が・・・。)
秘書や従兄弟たちの目を掻い潜っての、一人旅が台無しとはあんまりだ。
「く、くそ親父ぃぃぃ~~~~ッ!!!!」
無一文の赤い軍服姿のシンタローの怒鳴り声が、山間の旅館に響き渡った。



*2005/10/01-UP * 日本酒の日 *
-------------------------------------
 -酔って・酔わされ・乱されて-後半
---------------------------------------------------- -

 「それでは、どうぞごゆっくり」
 次の間付きの離れには、旅館の温泉とは別に、専用の露天風呂と食事用の囲炉裏端の間があった。
 その囲炉裏端に料理を並べ終わると、仲居はゆっくりと一礼し部屋を出ていく。
「いいか、俺の邪魔はするなよ。仕方なく、いいか仕方なく、一緒にいるだけだからな・・・」
 部屋を別々にすることもできず、せっかくだからとマジックに唆されて温泉に湯あたりしかけるほどにつかっても、怒りはいっこう に収まらない。
 仲居が居なくなった事を確認すると、きっちり浴衣を着込みマジックとはL字になるようにして、板の間に胡坐をかいたシンタロ ーが口を開いた。
「邪魔って?」
 可笑しなぐらいに警戒するシンタローの姿を楽しそうに眺めて、マジックは口元を緩めながらお猪口に注いだ日本酒を口に運ぶ 。
「お前は空気みたいなもんだ。見るな・触るな・近寄るなだ!いいか、俺に変な真似すんなよ」
 ビシっと人差し指をマジックの鼻先に近づけると、自分も手元の酒を呷る。
「はは、私はバイ菌か何かかい?まぁいい・・・それより、シンちゃん」
「あんだよ」
(バイ菌のがマシだっ!そんな可愛いもんか!?核爆弾みたいな男がよく言うぜ)
マジックの傍らにある日本酒の一升瓶を奪うと、手酌で注ぎながらマジックを睨みつける。
「『美味しい日本酒の飲み方』に興味ない?」
「美味しい日本酒の飲み方だぁ?」
「そ、すごい美味しく飲めるんだって」
 ひどく嬉しそうな笑顔をシンタローに向けた。
 ファンクラブが見たら発狂しそうな笑顔も、シンタローからは『胡散臭い』の一言で・・・。マジックとは対照的に興味なさそうに酒 を呷る。
「やろうよ、シンちゃん。ね、ね?」
「どんな飲み方だよ?」
 小首を傾げて「お願い、お願い」と言い募るあたり・・・あのバカとそっくり・・・。と頭に浮かんだ従兄弟を思い浮かべて溜息をつ いた。
「それはシンちゃんが承諾しない限り厳しいね。なんせ日本古来から伝わる、文化的な飲み方だからね」
 いくらシンちゃんとはいえ、それはね~。っと、日本の侘び寂びだよ。っと言葉を続けシンタローをチラリと見やると、興味を示し たらしい息子の表情にほくそ笑んだ。
「ふん、くっだらねぇー」
 短く唸ると、酒を煽る。
と言いながらも、「それってどんな飲み方だよ」と眼に訴えてくるようなシンタローの動作に、
「一人ではちょっと試すのが難しいから、シンちゃんに助けてもらえると有難いんだがね・・・」
 急に真面目に顔を引き締めると、マジックはそっと呟き、シンタローの顔は見ずに彼の膝あたりに視線を置く。
 控えめな言い回しに、シンタローは多少ではあるがうろたえた。
 親父は------両目秘石眼で、世界は自分を中心に回っていると思っていて・・・。強引でエゴイストで、他人の話なんて耳を傾 けない変態野郎。おまけに世界征服なんて馬鹿なことを本気に成そうとして。昔の狂気は引退した今でも変わらない。
 そんな親父が、たかだか酒の飲み方で俺に頼みごと。
 
(悪い気はしねぇーよな・・・。)
「そ、そんなに言うなら、その日本酒の飲み方・・・付き合ってやってもいいぜ・・・」
シンタローの頬が微かにピンク色に染まる。
「どうしてもっって、いうからな」
ふんっと鼻を鳴らすも、どこか気恥ずかしくて誤魔化すように、酒を呷る。
「よかった!一人では試せないから、助かるよ」
到底一人では試せないから・・・ね。シンちゃんもまだまだ甘い・・・。
「じゃあ、さっそくはじめよっか。さ、さ、シンちゃん正座して」
「正座?」
 酒を飲むのに正座が必要?
 もっと何かあるのかと思いきや、「正座」ということに幾分拍子抜けをしつつ、マジックのいう通り正座にして浴衣の襟元に手を かけた。
「んで、正座の次は?手でも合わせんの?」
 軽く鼻で笑いながらシンタローがマジックを見やると、それからのマジックは早かった。
「な・・・にっ!」シンタローがマジックを突き飛ばすよりも早く、両手に持っていた帯で彼の背中に帯を回すと両二の腕の上を通り 胸元で帯を結ぶ
 シンタローが気づいた時には両腕は帯によって身動きが取れなくなっていた。が、それでも終わらない。
 彼が激昂してマジックの名を呼び終える時には、背中から床に押し倒されていて。
「ありがとう。こんな親孝行の子をもってパパは幸せ者だよ」そういうと、新たに帯を手にとって正座した状態のシンタローの腿か ら脛へと帯をくぐらせると左腿のあたりで固い結び目をつくった。
「どういうつもりだ・・・っ!騙しやがったな」
 まさに電光石火の早業で、体の自由を失われたシンタローが、ハメられた!?っと顔を真っ赤にして怒るも。
 そんなシンタローに優しく笑いかけると彼の艶やかな黒髪を弄ぶ。
「騙してなんかいないよ。手伝ってくれるといったのはシンタロー、お前だろう?」
 そう言いながら、強く睨み付けるシンタローの体を引き起こし元の正座に戻した。
「ふざけるな!」
 シンタローが吠えると、マジックは心外とばかりに、軽く肩を竦めた。
「ふざけてなんかないさ・・・。日本の伝統的な飲み方だよ。あぁ、とはいえ暴れられると面倒だから、ちょっと小細工はしたがね」
「シンちゃんがパンツはいて無くて助かったよ。替えのパンツ用意しなかったんだ。」と青い目を色濃くして、喉を震わせて笑うい ながらシンタローの下腹部の浴衣に手をかけると、肌を露にした。
「・・・・・・・・・っ!!」
 ずる休みを考えていたとはいえ、パンツのことまでは考えが回らなかった。なんとかなるだろう。っと思っていたし、まさかこんな 事態になるとは・・・。自分が恨めしい。
  眉間に皺を寄せて唸るシンタローをよそに、マジックは浴衣で拘束され下半身を露した息子の姿に鑑賞するように視線をゆっく りと動かすと、感嘆の息を漏らした。
「これが、日本の侘び寂びってものだね。心に響くものがある」
「馬鹿っ!心じゃなくて、股間だろうがっ!」
お門違いな突っ込みだな。っと言い終わって気づくも、目の前の男はそんなことお構いなしに、傍らの瓶に手をかけた。
嫌な予感に、冷たい汗がシンタローの背中を伝う。
「やめっ・・・ばか、その瓶って・・・栓をぬくなって」
不自由ながら、どうにか体を動かそうとして、腿をつかまれた。
「じっとしてなさい、手伝ってくれるんだろう」
そういって、シンタローの罵声を心地よく感じながら、閉じたシンタローの腿と腿の間と股間・・・三角形になった部分に日本酒を 注ぐ。



よっし!!次からいきますよー。あぁーすごい変態だよ凹
*2005/10/01-UP * 日本酒の日 *
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 終わりませんでし た。意外に終わらないぃー。でも楽しい!!
 そろそろ次のUPで終わると思います。
 珍しく、うちのシンちゃんが疑り 深い・・・学習能力がついてきたようです(笑)
 さぁーこれからが、楽しいところなのではりきって頑張りますー。
 仕事 の具合でどうなるか分かりませんが、がんばりまっす!!

  【この小説について】
 この小説は、「GATE」の蒼 野さんのチャットに参加させて頂いた時決まった企画。
 10月1日の『日本酒の日』にちなんだ、酔っぱらいマジシン企画で す。
 日本酒とマジシンは関係ないので、無理やりではありますが、マジシンがやりたかったんです(笑)
 今回は、バ ラではなくて10月にちなんで、一日限定TOPは紅葉です!!
 




* 縛っておいで。 *
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「なんだこれ?」
午後、会議を終えて執務室に戻ると、赤い糸が視界に入った。
執務机の横から、ドアに向かって毛の短い絨毯に、赤い糸がひかれている。
ドアに挟まっている状態から、それが分厚いドアの反対側までつながっていることが予想できた。

(・・・・・・午前中もあったか?)
執務机についた肩肘の手に額をのせると、その不自然なほど長い・・・故意にしたとしか思えない糸を眺めていると、そのシンタローの様子を、訝しく思ったのかティラミスから声がかかる。
シンタローは傍らに落ちている、糸の端をつかみあげると
「なあ、この赤い糸・・・朝からあったか?」
自分よりも早く出勤してる彼らがこれを、見逃すとも思えなくて、秘書に呼びかけた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
無言で秘書たちが顔を見合わせたかと思うと、ティラミスが控えめに口を開く。
「申し訳ありません・・・・・・どの糸のことでしょうか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?これだよ、この糸だよ・・・お前等の横にも通ってるだろ」
手に摘まんだ糸を少し掲げて、強調しても困惑した瞳がかえってくるだけで、同意は得られない。
「・・・・・・見えないのか・・・・・・・・・?」
(マジかよ・・・。)
手元の赤い・・・なんの変哲もない綿の糸と秘書の顔に何度も視線を走らせると、今度はチョコレートロマンスが
「申し訳ありません」と深々と頭を下げる。
そして、体の不良の兆しとでも思ったのか、医者に診てもらってはどうかと促してきた。
そんな様子の彼らが嘘をついているとは、到底思えなくて・・・眉間によせた皺を濃くして糸を見つめる。
(俺にしか見えないってことか・・・・・・)
肘をついて、手に持った糸を掲げたり、透かしたりと四方八方から眺めても、それはなんの変哲もない綿の糸にしか見えない。
 仕事のし過ぎで、とうとう頭がイカレタか・・・。否、普通におかしいだろう・・・俺にしか見えないなんて、あんなに長く赤い糸があるとい うのに・・・。
絶対何かがあるはずだ。
自分にしか見えないのも、不思議だが・・・。この糸がどこまで続いているのか気になる・・・・・・・・・。
(よしっ!!)
すくりと立ち上がり、この元をさがすべく扉のむこうに向かって歩を進めると、予想した通り廊下までそれはつながっていた。


手元の糸を弄びながら、ゆっくとした足取りで長い廊下を歩いていっても、一向に糸の切れ目が見えない。
「・・・・・・・・・、まさか・・・・・・な」
方向的に「ある」部屋が思い浮かんで、一人頭を左右に振るとその考えてを打ち消した。
それでも、どんなに考えを否定しても、浮かぶのは核心・・・直感としかいいようがない。
・・・それが一番確実な考えのように思えるからだ・・・。
もし、その部屋に糸が入っているようだったら、扉はあけずに踵を返そう。
そうだ、それだけの話しだ。
もしもの時の対処を考えながら、ややうんざりとした気持ちで糸を追っていると、部屋の扉に挟まっているのが見えた。

「・・・・・・・・・!?」
その場所が、思っていた部屋でないことにほっ。と肩を撫で下ろす。
てっきり、マジックの執務室につながっているとばかり、思っていたシンタローは考えが外れた事に、ふっと唇を緩ませた。
確かにもう少しいった所にあるが、ここはマジックのそれとは違う。確か、使われてない部屋だったはずだ。
(こういう六感は外したこと無かったんだが・・・。)
それでも、自分の考えが外れたことが、嬉しいのかシンタローの表情はやや明るいものへと変わっていた。
「そうだよな・・・いくら、親父だからってこんな、暇なことするわけねぇか」
一人こぼすしても、まだ一抹の不安が拭えないでもないが、『この扉をあければ何かが、分かるかもしれない。』という思いがその思いを 押しやった。
ざわざわと心の浮き立ちにつのを感じながら、一つ深呼吸をすると、シンタローは部屋の扉を押し開けた。

「なんだぁー・・・・・これ」
何があるのだろうと、期待に扉を開けたシンタローを待っていたのは・・・・・・
人形だった。
部屋の中央に、椅子に乗せられたぬいぐるみが一つ。そのぬいぐるみの左手には赤い糸が巻きつけられていて、その左手からの糸をたどる と、自分の手の中にある赤い糸に行き着いた。
誰がこんな馬鹿げたことを・・・っと思ったが、その人形の容姿から、誰が作ったかなど考えなくても頭に浮かぶ。
「・・・・・・暇人」
ガクリとシンタローは頭を垂れた。

「暇人って・・・誰のことかな?」
耳元で囁かれる、背筋がゾクリと痺れるような低音に、シンタローはビクリと体を硬直させる。
それでも、呼吸を繰り返して、なんとか肺に空気をおくりこむと、ボソリと呟いた。
「本っっ当、暇な奴・・・何してんだよ」
「何って?」
わざと耳元に顔を寄せて囁くマジックに顔を背けて、肩を撫で不穏な動きをする男の手を払いのけた。
(本当、油断もすきもねぇ・・・・・・)
「このバカ気た糸と、あの間抜け面なテメェの人形だよ」
「赤い糸だろう」
「はぁ?・・・・・・だから?」
振り向くもの億劫で、日本語分かってんのかテメェ?っと苛々とした口調で問いただすも、相手はいたってマイペースで気にも留めないよ うだ。
「だから?赤い糸だろう。運命の赤い糸って言うじゃないか。シンちゃんの運命の相手は私ってことだよ。宿命ともいうがね・・・。面白い だろう?」
「・・・・・・・・・・・・」
呆れて言葉も出ない。バカだ、こいつは本物のバカ野郎だ。
こんなバカの茶番にまんまと引っかかる俺もバカだ・・・。とはいえ、気にかかる点が何点かある・・・
「これ、特殊な糸か?」
「そう見えるかい?普通の綿の糸だよ。・・・あ~、自分しか見えないって信じたんだ! シンちゃんかっわいーvv」
「・・・・・・・・・!?」
『こいつ、殺す!!!ぶっ殺す』っと心に決めたかは定かでないが、マジックの言葉にシンタローから発せられる温度が急激に冷えたのは 言うまでもなく、体が怒りで微かに震えている。
「くそっ、わざわざあいつ等まで丸めこみやがって・・・・・・」
親父への怒りも去ることながら、秘書たちにまんまとくわされたことも、腹だたしい。
「ふふ、元は誰の秘書だったのかな?とはいえ、見える糸を見えないようにと頼むのには、少々骨が折れたかな。あれで、かなり忠誠心が 高いのだよ。ゆとりのない総帥生活に潤いを・・・午後休ませてくれっと提案したら、渋々承諾してくれよ。お前が日々忙しいのは事実だか らね」
「・・・・・・・・・どけよ」
怒りでどうにかなりそうだ、視線は床に置いたまま、マジックを押しのけようと体を反転させてようとして、逆にマジックに密着すること となった。
「誤解してないかい?これは、遊びだよ、ミニイベントみたいなものだ。 休めといくら言っても、休まないお前に私と彼らからのプレゼ ントみたいなものだよ」
体を離そうとするのに、いつのまにか抜きとったのか、最初から準備していたのか、マジックの皮のベルトが背中を通り、中へ引き込まれ ている。
両端を掴み、強く引かれると否応にでも、背中に回ったベルトに押されて、男と密着せざるおえない。
「怒ってる?でも、楽しかっただろう。扉をあける時なんて、楽しそうに頬を高揚させて・・・とても可愛かったよ」
「うるせぇ・・・その手を離せ」
確かに、楽しくなかったというには、嘘がある。この先に何があるのだろう。っと思うと想像が広がった。
秘書のことも、思い返せばチョコレートロマンスが、「申し訳ありません」っと何度も頭を深々と下げていた気もする。
腹が立つのは、まんまと引っかかる自分のまぬけさにだ。
薄々感じて頂けに、余計に腹立たしい。
「あーでもしないと、私の元には来てくれないだろう。私の部屋からだと分かったら、お前は背を向けて部屋に戻っただろうね」
「・・・・・・背を向けられる原因は、てめぇだろうがっ」
声を荒げるも、近すぎる距離にマジックのコロンが鼻腔をかすめる。その香りと背中に回ったベルトが下におりていく動きに、肌が粟だっ た。
耳元で、囁かれる甘いバリトンに、怒声さえも上擦ってしまいそうで、シンタローはぐっと唇を噛み締めた。
「怒ってる?騙すようなことして、ごめんね」
紳士な言葉なはずなのに、この男が発すると淫靡な響きを持つとしか感じられない。熱い息を吹き込まれるだけで、体の震えが止まらなく なる。
「怒ってねぇから・・・離してくれ」
どうにか、離れたくて・・・怒ってないと顔を左右に振ると、やんわりとマジックの肩口に手を置くと力をこめた。
「だめ、離さないよ。糸なんて生ぬるい・・・とりあえずと、この赤いベルトを使ってみたが・・・お前を繋げておくには、何がいいんだろうね 」
そういって、尾てい骨あたりで留まっていたベルトを、尻のあたりまでまわると締め付けるように、力をこめた。
「ん・・・くるし・・・よせっ」
不自然な姿勢に、呼吸するのも精一杯だ。そして、気のせいだと思いたい、下半身にあたる男の昂ぶり。
それが何か分かって、シンタローは顔を赤く染めるとマジックを睨みつけた。
「変態っ・・・・・・」
「今更だろう?せっかく、午後が自由になったんだ、今日はこれで愉しもうじゃないか。・・・それとも、シンちゃんがパパを縛ってみる? 」
絶句する息子が何か言おうとする前に、マジックは素早く口唇を塞いだ。


                                        - EnD -

*2005/09/04 * 赤い糸(シンちゃんとパパンの真ん中で) *

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 ↑すみません!!
  実はちゃんと、9月4日の日付が変わるとともに、UPする予定だったんです。
  が、その・・・3日に朝からちょっと打ち合わせがありまして・・・
  午後は、ちょっとした打ち上げがあったものですから。
  予定がずれてしまいまして、4日にあわてて作業にとりかかりました。
  ネタは決まってたはずなのに、書いてみるとなかなか思うようにいかないんですねぇ。
  改めて痛感しました。。。前はもっとサラサラ書けたハズなのになぁ。
  とはいえ、1日で作った突貫作業です(笑)
  これって、赤い糸?っと突っ込みを頂きそうですが、パパなら赤い糸といより、鎖とか鞭が似合うと思うんです。
  絶対逃がさない!といいますか・・・(笑)
  実は、続きもあったりするので、落ち着いたら書きたいです。
  少しでも、楽しんで頂けたらならば、幸いです。
  ご来読ありがとうございました。                   幸央
  
【この小説について】
 この小説は、「GATE」の蒼野さんのチャットで発案された企画です。
 シンちゃんとパパンの誕生日の間をとっての、9月4日に「赤い糸」をテーマに何かしましょうー。
 前回は紫だったので、今回はピンクのバラを限定TOPに。ということです。
 (ですよね・・・。あってます?)
 実は、私はその場にいなかったのですが、前回の企画楽しかったねー。っと呟いたおかげ様で、お誘い頂きました。
 そして、図々しくもやらせて頂いたというわけです。図々しくて申し訳ない
 お誘いの言葉を下さって、どうもありがとうございます!!感謝、感謝ですー。
 こんな、前の企画も終わってない私に・・・うっう・・・。目から鼻水が・・・。
 本当に、ありがとうございます。
 いつも助けられてばっかりです。

 今回は、ちゃんとできた。・・・ほっ。
 
 



* だってパパの日だもん。*
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2005.06.19.sun

 季節は梅雨に入り、傘が手放せなくなった6月の第三日曜日
日曜日だというのに、所要のために出かけたシンタローが自室に戻ると・・・そこは
部屋が部屋じゃなくなっていた・・・。
否・・・確かに部屋には間違いは無いが、出て行った時の室内の作りとはかけ離れていた。

「何だ・・・コレだ・・・・・・」
午後はゆっくり休もうと思いながら、ドアを開けた瞬間に目に飛び込んでくる部屋の異変に、後ずさると外に出て扉を閉めた。
キョロキョロと周りと見渡して、閉めたドアを見つめれば、確かに自室の扉に間違いない。
その扉を10秒間は見つめただろうか、目蓋を閉じて深呼吸を2・3繰り返すと再びドアに手をかけた。

「あのバカ・・・・・・」
まず目にはいったのは、やや不機嫌な顔をレンズに向けて、オヤジの膝に座っている幼い自分の写真。
それだけでも、軽い眩暈に襲われるのに、リビングへと向かう廊下の壁には、幼い頃の自分とオヤジとが一緒に写った写真が、ご立派な額 に納められ・・・年齢ごとに並んでいる。
これがいつ、どういう時に撮ったかなんて、考えたくもない。
リビングのドアを開ける頃には、壁の写真もずいぶん成長したものへとなっている。
きっと、この先にはまた目を見張る光景があるに違いない。
そして、こんな馬鹿なことをした張本人もいるに違いない。
引き返すことが出来たらどんなにいいか・・・
しかし、ここは自分の部屋で唯一安らげる空間だ。意趣返しにオヤジの部屋の内装も変えてやろうか・・・
そんな考えがシンタローの中をよぎるも、そんなことをして懲りるような奴ではないことを自分が一番知っている。
意を決したようにのドアを開けると
やはりそこにあるのは・・・
変わり果てた自分の部屋だった。
シンプルな作りでゆったり座ることができるソファーは、上質な革張りの真っ赤な椅子に変わり、ドーンとリビングの中央に置かれている 。
その前には、カメラが数台設置されいて。
そして、本来あったはずのテーブル・テレビ等の家具は一掃され、跡形も無い。
ここが自分の部屋だったかも怪しくなってきた・・・。よろよろと、歩を進めればフカフカとした絨毯の感触に目を落とすと、これまた真っ赤な絨毯にすり替わっていた。

もちろん、革張りの真っ赤な椅子には、この仕業の張本人が座していて・・・
「やあ、シンちゃんおかえり」
にこやかに微笑む、マジックの姿があった。
「・・・・どういうつもりだ」
部屋を出るまでは、替わった痕跡など一切なかった。と、すれば自分が出かけた数時間のうちに勝手に部屋にはいり、あまつさえこのよう な内装ができるのは、計画的な犯行の何者でもない。
なぜ、そんな行動にでるのか・・・全くわからない。
「なにが?」
優雅に足を組み替え、顎に親指を添えながら楽しげに微笑を浮かべるマジックと視線が絡み合う。
無言で「このことだ」と言わんばかりにシンタローが顎をしゃくると、
「これのこと? だって今日は『父の日』だよ。ちょっとぐらい勝手してもいいだろう。さあ、昔みたいに写真を撮ろう」
ときた・・・。

・・・ちょっと? これがちょっとのレベルかつぅーの!!
おまけにいつも、好き勝手にしてる奴が、それを言うな。
「おい、父の日がどんなもんか知ってんのか」
「日ごろの感謝の気持ちを父親に表す日だろう。つまり、父親である私はシンちゃんから日頃言えないような、感謝の気持ちを身体で示し てもらえる。というシンちゃんがパパにご奉仕する日だね」
・・・なんで、体限定なんだよ!!アーパー親父!!
「誰・・・が、てめぇに感謝なんか、するかっ!!」
ぐっと脇でにぎり締めた拳を開くと、手の平をマジックに向けて眼魔砲を一発。
しかし、悔しくもそれは弾かれ、室内の壁に当たった騒音と、目の前を覆うほどの煙が室内に漂う。

やはり、ダメか・・・。
室内の様子は砂埃で未だ確認することは出来ないが、予想できる惨状に短く舌を打つ。
イライラと乱れた髪を掻きあげようとした時、突然伸びた手によってシンタローの腕が捕らえられた。
「いけない子だ。いくらパパのお膝に乗って、写真を撮るのが恥ずかしかったからって・・・これはダメだよ」
「っ!離しやがれ!!」
抗うシンタローをよそに、無理やりシンタローの腕を引き・・・
「うわっ!」
っというシンタローの声とともに、マジックへと倒れこんだかと思うと、気づけば椅子に座るマジックと向かいあうようにして、男の腿を またぐようにして座るシンタローがいた。
「な・・・・・・ッッ」
いくら不意を突かれたとはいえ、屈辱的すぎる自分の格好にシンタローは目を大きく見開いた。
その唖然とした、驚きのあまり動きが静止した様子に、マジックは目を細める。
「可愛いよ。私のシンタロー」
そう言ってシンタローの腕を掴んでいた手を離すと、背中へと腕を回し拘束を強めた。マジックの上機嫌とは裏腹にシンタローの怒りのボ ルテージはあがる一方で
「離せ! オレは疲れてるんだ!早くゆっくり休みたいんだよ!!」
自分の格好への羞恥心と、マジックのあまりなご都合主義な考えに、どうにかして膝から降りようともがくも
「休む前に『父の日』だろう。昔みたに写真を撮るまで離さないよ・・・・・・まぁ、昔とはだいぶ違う写真になるだろうがね」
そう言ってシンタローを離すどころか、腕の拘束を強めると荒々しく唇を重ね合わせた。

2005.07.02.sun

「っ!?」
どうにかして、マジックを引き剥がそうと両腕で男の肩を押しやろうとしても叶わず、それどころかますます拘束が強まった。
生暖かい舌が、シンタローの閉じた唇の表面を入れてくれとばかりに、なぞり上げ舐めまわる。
辛うじて動く首を左右に振りながら唇を離そうとするも、執拗に唇が追いかけてきて、息苦しさにシンタローは眉を顰めた。
とうとう息苦しくなってシンタローが口唇を開くと、マジックはその隙間から舌を忍びこませてきた。
 その舌に歯を立ててやろうとするも、男は一枚上手で・・・
「・・・・・・っ、う・・・ん」
シンタローは呻くだけで、歯を立てることが叶わなかった。
マジックの指が顎の噛み合わせの部分をガッチリと押さえこみ、それを許さなかったからだ。
「んっ・・・・・・、んぁ」
舌を絡めとられて、軽く甘噛みされながら、強く吸われるとシンタローの背筋に電流のような快感が何度も走る。
傍若無人な舌の動きに、いやらしい水音が響いた。
意識まで絡めとられそうな巧みな動きに朦朧としつつも、このままキスに溺れたくなくて、両肩に置いた腕に力を入れるが力が入らない。 それどころか、
「・・・・・・っや・・・・・・っ」
キス以外は何もされていないというのに、下着の中のシンタローの性器が窮屈そうに自己主張をしはじめて・・・
自身の性器が濡れる感覚に身震いすると、シンタローは上擦った声を漏らした。「まずい!」というように力を振り絞っ て男を突き放す。
「おっ、と・・・暴れると落ちてしまうよ」
マジックは背中に回した腕でずり落ちそうになるシンタローの腰を抱えこむと、さらに抱き寄せる。
「も・・・よせっ!」
息を乱しながらもきつい眼差しを向け続けるシンタローに、マジックは唇の端を吊り上げて笑いながらシンタローの耳朶に顔を近づけ る。
「なぜだい?」
鼓膜に響く低い声が、シンタローの官能を掻き立てる。
「キスだけでこんなになってしまったから?」
背中に回していた手を離すと、シンタローの軍服の膨らみをソロリと撫でた。厚い軍服の上から狙いすましたように、先端をなぞりあげ シンタローを追い詰めるように。
「あぁ・・・・・っ」
全身を走り抜ける快感に、マジックのジャケットに縋りつくようにして身を屈ませた。
「随分と窮屈そうだ・・・溜まっていたのかな?」
男の口唇がシンタローを耳朶を包み込む。ぴちゃぴちゃとわざと濡れた音を立てながらシンタローの耳朶に吸い付く。
「・・・・っ・・・う・・・」
シンタローは呻くように唇をわななかせるも、下着の中の性器が硬くなり始めるのに、身を強張らせた。
(嘘だろ・・・冗談じゃない。たかがコレぐらいで・・・)

2005.07.17.sun

直に触られたわけでも無いのにこの状態・・・。
自分の体が恨めしくて仕方が無い。どうしてこんなにも、感じてしまうのだろうか。
このままだとまずい。
今までの経験からすると、かなりやばいパターンだ。
せっかくゆっくり休めると思ったのに冗談じゃない。
おまけに明日は勤務がある。
万が一軍服を汚したとしても、替えはある。だからといって、この軍服を汚すわけにはいかない。
「どうする?このままだとゆっくり休むどころの話じゃないよ・・・ここを高ぶらせたままではね」
マジックは服の上から性器を鷲掴みにすると、やわやわと揉むように指を蠢かす。
「っ・・・はっ、ぁ・・・・・・」
シンタローは、悔しげに表情を歪めて呻き声を漏らした。
「それとも、このまま出してみる?」
「・・・・・・・・・ッ」
じんわりと広がる感覚に、先走りの液体が下着を濡らしているようで、シンタローは羞恥心と怒りで頬を紅潮させるとマジックを睨めつけ た。
(冗談じゃない!!そんなふざけた真似など、できるはずが無い)
「嫌?それなら自分でしてみたら・・・・・・ほら、もう収拾がつかないほど硬くなってる」
「あぁっ・・・」
「子供みたいにお漏らししたくは無いだろう?・・・・・・ああ、子供の頃はよくお漏らししてたよね。今みたいに目を潤ませて、下着を 隠そうとしたっけ」
「あぅ、やめ・・・触るなっ・・・ひゃ」
「ほら、どうする?もう下着に染みができてるかも・・・シンちゃんのいやらしい染みがじっとりと・・・ね」
服ごとシンタローの性器を掴むと、揉みこむように上下に抜き差しを数回繰り返したかと思うと、マジックは手を離した。
すぐそこまできた快感に身を震わせながら、額をマジックの肩口にこすり付けると、荒い甘い呼吸を繰り返す。
「っはぁ・・・あぁっ・・・・・・くっ、ん」
どんなに呼吸を繰り返しても、一度灯ってしまった火は消えそうになく、油断すると射精してしまいそうで・・・。
それだけはしたくない。
このまま下着の中で射精してしまう事だけは避けたい。
それなのに、それは着実は迫っていて。
シンタローはやや悲痛な面持ちで、唐突に手を離してやんわりと、ただ抱きしめる男の顔を見上げた。
「シンちゃん、脱ぎたいだろう」
シンタローの言いたいことは分かっているよ。とばかりに、男はシンタローの耳元でゆっくりと囁く。
「このまま、下着の中で出したくはないだろう。さぞや、気持ちが悪いだろうからね」
「あっ、あぁ・・・・・・はっ」
背に回った手がゆっくりと下がっていったかと思うと、シンタローの後孔で止まり、思わせぶりな動きをはじめる。
こみあげる射精感に、ごくりと口内に満ちた唾液を飲み込むと、マジックの袖口を力いっぱい掴むと爪を立てた。
いくら服ごしだといっても痛みは感じるはずなのに、マジックは眉一つ動かさずに笑みを浮かべると、シンタローを見下ろす。
「脱ぎたくは無いのかな」
男の指は後孔を服ごしに撫でるだけで、シンタローのズボンを脱がすような動きは見えない。
シンタローが嫌な予感に身を振るわせると、正にそれは当っていて。
「シンタロー・・・前をくつろげてもいいんだよ」
男は淫猥な笑みを浮かべて、最後通達だというように囁いた。

2005.08.14.sun

悔しい。
男はどうあっても、自分で下を脱ぐまでは許す気がないようだ。
いつもは勝手にする癖に・・・。
このまま熱を発散せずにいる事のできない事を分かってて、追い詰める。
こんな風にしたのは、すぐ目の前で冷静な顔をした男のせいなのに。

「・・・・・・っ、離してくれ!」
シンタローはマジックの袖口に置いた手を離し、押し寄せる快感に耐えるように軍服の腿辺りを握りしめた。
「どうして?」
「どうしッ・・・・・・脱げないだろうが」
自分で脱げといいながら、後ろに回った手を外そうとしない男を睨みつけるも
「このまま出来るだろう、前をくつろげるだけだ。腰を浮かしてやるだけだよ。・・・それとも手伝って欲しい?」
「ち、きしょう・・・・・・クソ親父」
握り締めた手を一層強くしてから指を離す。快感に微かに震える指を、自分の前に持っていくと金具を外しファスナーをおろしてゆ く。
「・・・・・・あ、ぅっ」
すでに限界を迎えつつある性器には、ファスナーとの摩擦でさえ痛いほどの快感で、最後までおろす頃には荒い呼吸を繰り返してい た。
「まだ、終わりじゃないよ。この後はどうしたらいいのかな」
たかが、ファスナーを下ろすという造作も無いことでさえ辛いのに、腰を浮かせてズボンを下げるなんて事を出来るとは思えない。
ともすれば、すぐにでも開放してしまいそうな程なのだから。
シンタローは勘弁してくれ。というように、力なく頭をたれると乱れた髪を左右に振る。
「ギブアップ?シンちゃんはいつまで経っても甘えん坊だね。」
マジックは仕方が無いと苦笑を漏らすと、シンタローに自分の首に腕を回させてる。そのまま引き寄せると、男に抱きついた膝立ちのよう な体制になった。
「残念・・・遅かったみたいだね、シンちゃんの下着にシミが出来てる」
マジックの手が器用に、シンタローの下半身を露にしていく。下着ごとズボンを膝まで下げると、片手をスーツの腰ポケットに忍ばせた。
「・・・・・・シンちゃんそのまま首を後ろに回せる?」
訝しげに、言われるがまま首をなんとか左方向へと回した瞬間、
「・・・・・・っ!!?」
まばゆいばかりの、閃光が走った。それが、カメラのフラッシュだと認識するには随分かかって、その間にも何度か一瞬の光が目に入る。
「・・・いい眺めだね。 シンちゃんも、いい写真ができたと思うだろう」

2005.08.15.mon

マジックは、ニヤリと笑った。
シンタローのズボンは膝までおろされ、下半身がむき出しの状態で、カメラには浅ましく腰を突き出したような格好になっていることだろ う。
羞恥のあまりに目眩がする。
「っ!?・・・・・・悪趣味だぞ!」
何とか、腰を落とそうと暴れてみても、快楽に力の抜けた体では全く歯に立たない。それどころか、肩膝を肘掛にかけられカメラにむかっ て大きく開く形となった。
「私は、何事も記念を残さないと納得できないタイプなんだよ」
今更だろう。と淫猥な笑みを浮かべて、シンタローの首筋に紅い跡をふらした。
「・・・・・・く・・・ぅ・・・」
「折角だから、このまま出しておこうか」
羞恥に怒り狂うシンタローを無視して、綺麗に折り畳まれているハンカチを取り出すと、それでシンタローの性器を包み込んだ
「あうっ」
限界まで張り詰めた性器には、布に包まれる感触でさえ刺激的で、ブルリと体が一層振るえあがった。
「すごいよ、ハンカチで覆ってるだけなのに、シンちゃんのいやらしい汁で、ヌルヌルしてる」
やわやわとハンカチごと、性器を揉まれるな愛撫に溜まらず、シンタローはマジックの顔をかき抱くようにして抱きついた。
「あっ、は・・・・・・ああ!」
シンタローは大きな声をあげながら、自身からどくどくと精液が流れるのが分かった。
「たくさん出したね・・・直接飲めなかったのが残念だ」
そう言うと、力なくマジックに縋り付いたままのシンタローを膝に戻した。
ハンカチでは受け取ることが出来ずに、指についたシンタローの精液を、一本ずつ丁寧に舌で舐めとる。
「そんなの・・・舐めんなよ・・・キチガイ」
その様子が嫌でも、視界に入りボソっと呟いたうんざりとした声さえも、マジックは聞き流さない。
「シンちゃんのは、甘くてとっても美味しいよ・・・」
わざとシンタローに見せびらかすように、指の根元から指先へと舌全体を使ってねっとりと舐めとると、口に含んでチュウっと音を立てて 吸い付いた。
「ほら、シンタローにも分けてあげる」
唐突にその指をシンタローの歯列を割り、口腔へと押し込む。


2005.08.21.sun

「むっ・・・う、んんっ・・・」
マジックの長い一指し指と中指が、シンタローの口腔を動き回り、追い出そうとする舌を指先に捕らえて絡ませた。
舌先に触れた指先から、じんわりと苦味のあるものが広がっていくのが分かる。
それを避けるように、顔を振って男の指に歯を立ててやろうとするのに、もう片方の手がシンタローの噛み合わせの部分をがっちりと押さ え込み叶わない。
「っぐ・・・んぅ」
男の無遠慮な指先によって視界がぼやけた頃、ぴちゃりと濡れた音ともに、指先が離れた。
「どう?自分の味は・・・」
「最低・・・・・・」
変態的な行動と親父に向けて放った、地を這うようなシンタローの声に、濡れた指先をシンタローに見せびらかせながら、マジックは愉し そうに笑みを浮かべる。
そして、シンタローの唾液で濡れた指を、露になった下半身へと忍び込ませた。
「ふふ・・・そうかい? でも、気持ちよかったんだろう?」
マジックの指がいたずらに、蕾の縁を何度もなぞりあげる。
「ん・・・この変態!もういいだろうが、離せよ!」
屈辱的だが、マジックの望むようにカメラにおさまったはずだ・・・。
あんな体勢をとられて、思い出したくもない。
なのに、目の前の男は一向に離す兆しが無い。それどころか、下半身にまわった指が怪しく動いている。
「口が悪いね・・・。全く、お前の口の悪さは誰に似たんだろうね。今日はパパの日だからね、シンちゃんから労いの言葉をもらうまでは 、離さないよ」
「んっだと!・・・ふざけろよ、テメェ!・・・あっ」

*2005/06/19 * Father's Day *

☆To be Continued・・・☆近々、お会いしましょう~。明日と言えないのが悲しいです。。
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 ↑本当、微妙すぎてすみません。
  まとめてUPせんかい!っとお叱りの言葉と、石が投げられそうです。ごめんなさい。
  一応、頑張ってるよ。と誠意を見せてるんです。はい。
  どうも、パパンが勝手に動くものだから、話が思っていた方向からズレはじめてしまいました。
  このままだと、奉仕が奉仕が・・・。くぅぅぅ、とはいえ、今更奉仕といっても、一度はやっている事になったり。
  悩まされます。というわけで、今回もやはり言葉責めです。す、すみません。。。
  もう、構想が台無しです・・・。あそこでイかせなければ良かった。

  毎日更新します!と大きなことを言いましたが、私には無理でした。ごめんなさい。
  出来る限り、更新しますので気長にお待ちいただけると嬉しいです。
  微妙な更新ばかりで、申し訳ないですが・・・お付き合い頂けたら幸いです。
  
  
【この小説について】
 ちなみにこの小説は、「GATE」の蒼野さんのチャットに参加させて頂いた時にでた扉絵記念企画です。
 ガンガン7月号の扉絵が父の日にちなんだ、パパとシンちゃんの扉絵でしたので、それを記念して父の日は紫のバラのTOPでといいう ことになりました。
 (あれ、違うかな?)
 父の日にいくつかのサイトさまが紫のバラのTOPで、驚いた方も多いかもしれませんね。
 うちも1日だけバラTOPさせて頂きました。


ニュ-イヤ-★ランデブ-


『新妻』生まれた時から・・・途中家出を経験したものの一緒にいるので新妻といえるかは別として、無事(?)結婚して一応新妻という位置に落ち着いた。

現在のガンマ団総帥であり、前総帥の『奥さん』という肩書きをも得たシンタロー。

本人は、はなはだ納得いかないという感じだが、シンタローのハートを射止めた『旦那様』のマジックは積年の思いを叶えたとばかりに笑顔が耐えない。

全く対照的な夫婦。

どうやって結婚までこじつけたかは、別の話として今日はそんな二入が結婚して初めての新年というわけで・・・。

さぞや甘い空気が漂っているかと思いきや・・・



「おい!起きろよ、起きろってば・・・ッ」

前日は夜遅くまで新年を祝い・・・少し羽目を外して、もちろん年越しの夫婦の営みもしちゃったりしてと、シンっと静まる朝の空気にはそんなけだるさが残っている。

そんな朝と言うにはやや遅く、針が9時半をさそうかというころ・・・新年のおめでたさとは少々かけ離れた。

ましてや結婚してから数ヶ月・・・初めての新年を迎える夫婦のというには、おせじにも蜜月とは言いがたい新妻の声が寝室に響いていた。

「起きろよ!!おいっ!!起きろ~~~っ」

パジャマから、黒のパンツとベージュのインナーに着替えたシンタローがキングサイズのベットで眠るマジックの上に跨って、身体を上下左右に揺さぶっても全く起きる気配ない。耳を引っ張って耳元で大声を張り上げてもピクリとも動かない。

そんなマジックの姿に焦れると、おもむろにベットから降りて黒のハーフコートに手をかけながら、最後通達だというように口を開いた。

「今日、福袋買いに行くって、行きたいって前から俺が言ってただろ!!その後、映画と初詣に行くって言ったのは、テメェじゃねぇか。もう知らねぇからな、俺一人で行ってくるから!!映画だって一人でみてやる!!」

それでも、全く起きるない。動いたかと思えば、のんきに寝返りをしたりして・・・

「だから、昨日言ったじゃねぇか!!」

クソっと床に落ちていたクッションを拾い上げると、ベットに横になっているマジックに向かって投げつけた。

柔らかいそれは、目標物にぶつかっても“ぼすっ”とした音しかしなくて、大したダメージにはなっていない。

ドアに手をかけて、起き上がらない男に一瞥するとドアをあけたまま、シンタローは出て行ってしまった。



シンタローがドアを閉め、機嫌を表しているような騒々しい足音がしたかと思うと、これまた派手な音を立てて玄関のドアがしまった。

そのドアが閉まると同時に、寝室ではムクリと起き上がる人影が・・・先ほどどんなにシンタローが起こしても動かなかったマジックがベットの上で身を起こしていた。

チラリとドアに向けると不適な笑みを浮かべて、床に足をおろした。





「チっ、クソ!!バカ野郎っ」

怒り心頭、激昂とはまさにこのこと、街を行きかう人々が思わず振り向いてしまう程に、シンタローは怒りを露にしている。

今、血相かいて後から追いかけてきたら、眼魔砲1発に(もちろん至近距離)、初詣で最前列につくまで一人で並ばせるだけで許してやろうかな。っと思ってたのに・・・来やしねぇ!!

立ち止まって振り返るも、派手な赤いマジックの車も、マジックが走って現れる気配も全くない。

「映画観たいって言ったクセに・・・」

チッっと短く舌を打って、足元の小石を蹴り飛ばすと前に向き直って歩を進めた。



『シンちゃん』

大掃除も終わって、さぁ~これからおせちに取り掛かろうかと、シンタローが重箱を出していると、ダイニングテーブルで昆布巻きに勤しんでいたマジックが話かけた。

『なんだよ』

一端、手を休めてマジックを見れば、終了っ言うように巻き上がった混布の鍋をもってキッチンに移動しながら、唐突に

『映画、観にいこっか』

と笑みを浮かべてシンタローを見た。

『はッ!!?』

今の現状分かってんのか?おせちはどうすんだよっといわんばかりにジロリと睨みつけると、相変わらずの笑みを浮かべて言葉を続ける。

『ほら、仕事ばかりで昔みたいに、特別にどこかに出かけたってこと無いだろう?たまには普通のカップルみたいにデートもいいじゃない』

除夜の鐘を聞いて、近くの神社でお参りして・・・。次の日に、シンちゃんが行きたがってた福袋買ったら、映画でも観にいこう。

ほら、映画雑誌も買ったんだよ。っと見せびらかしていた記憶は新しい。

大体、不本意ながらも夫婦は、カップルって言わねぇんじゃねぇっと冷ややかな眼でマジックのことを見たが・・・。



「それが、コレだよ!!」

あんだけ、はしゃいで映画一つ決めるのに、どれだけかかったっと思ってんだよ。

年甲斐もなく、夜もはしゃぐから起きれねぇんだよ!!

腹が立つ!!っとコートのポケットに勢いよく両手を突っ込むと、右手にくしゃりと紙がつぶれるような感覚がする。

レシートとも違う感覚に、首を傾げながらその紙と思しきものを引っ張り出すと

「あ、前売り・・・」


To be continued

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