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捕われたまま


「シンタロー」

名前を呼ばれるだけで。
彼の声を認識するだけで。
彼という存在を認識するだけで、泣きたくなってしまう。

「何?」
「少し背が伸びたな…髪も、伸びた」

穏やかに微笑む綺麗な貴方。
でも、時折とてつもなく冷たく見える隻眼の笑み。
貴方に嫌われたくないから、ただ笑顔を振りまく。
上辺っ面だけの、汚い笑顔。

「うん。髪伸ばしてるんだ。短いと余計ガキに見えるから」
「そうか…よく似合う」
「ありがとう、叔父さん」

貴方は俺によく似た人を知っていて。
俺は俺によく似たその人を知らない。
俺がそいつに似てるのか。
そいつが俺に似すぎていたのか。

「又すぐにどこかへ行くの?」
「いや、今回は少し滞在するつもりだ」
「そっか。又いろいろ話聞かせてよ」
「あぁ」

いつまでこんな腫れ物にでも触るかのような態度で接するんだろう。
いつまで俺は貴方のご機嫌伺いすれば良いんだろう。

「叔父さん」

それでも。

「好きだよ」

俺はあなたから離れられない。

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息も出来ないくらい


重ねた唇を放した途端、物凄い力で頬を抓られた。

「何しやがる、このアーパー親父」

真っ赤になった頬、潤んだ瞳。
こんな状態で怒ったって、余計こっちの欲を煽るだけなのにね。

「シンちゃん、もうちょっとムードってものを…」
「誰が出すか」
「パパを喜ばせてくれないの?」

当然といった表情を向けてくるシンタロー。
本当にこの子はどこまでも意地っ張りなんだから。
そんな所が可愛らしいけれどね。

「パパ、こんなにシンちゃんの事好きなんだけどなぁ」
「それがどうした」
「シンちゃんの呼吸を止めるくらいキスしてたいのに」

てっきり眼魔砲が来ると思ってたのに、シンタローは顔を赤くするばかり。
こんな反応を示す子だから愛しくて、胸が詰まっちゃうんだよ。
好きだという気持ちがどんどん膨らんで、この体を壊してしまう。

「何ニヤニヤしてんだよ」
「可愛いな、と思って」

いずれ来る終わりが、この気持ちによってもたらされればいいのに。
私の呼吸を止めるのはシンタローだけで良い。






君と出会うために


「宜しいのですか?」

かけられた声に、マジックは口端を上げた。
どうやら彼ら自身も追いかけたいらしい。
僅かに揺らいだ声がどことなく可笑しくて、マジックは目を閉じる。
有能な秘書達は自分の命令一つで逃げた息子を連れ戻そうと躍起になるだろう。
でも、それではダメだ。
きっと、これは良い機会。

「良いんだ。アレはあの島に留まるべきだろう。だが…」

余りにも長い滞在は許さない。

マジックがゆっくりと窓際に移動する様子を眺めていた秘書達は、彼が今どのような表情をしているのかなんとなく想像出来た。
彼の、否。
彼の一族の独占欲は一介の者には理解できない範疇にある。
振り返ったマジックは笑みを浮かべながら、秘書を返した。
残された空間は普段以上にどことなく冷たさを覚える。

「どれだけ成長するのかな、君は」

きっと、彼は変わってしまうだろう。
この場所では親である前に総帥としての立場が強くなる。
彼さえ望めば、いつでもそれは覆せるのだが、彼のプライドがそれを許さないだろう。
出来れば自分の手の届く範囲で成長して欲しかったが、どうやらそれは今のところ実現しそうに無い。

「でも、それじゃパパ悔しいだけだねぇ」

一つ一つ殻を破る君と出会うために、今はとりあえず我慢をしよう。







「シンタロー!」

目の前の男の蒼白な顔を目にとめた瞬間、失われていく意識とは別に笑いがこみ上げてきた。


生きていく


「マジック様。少し休まれてはどうですか」

このままではあなたが倒れてしまいますよ。
静かな声だが脳に響く声に、マジックは顔を上げた。
双子の弟達と同じ年の医者は、困ったような表情を浮かべている。
生気のない顔でも見せていただろうかと思うと、マジックも困ったように表情を崩した。

「シンタローは…」
「大丈夫です。今は薬が効いて眠っておられますが、命に別状はありません」

握り締めていたせいで熱が籠もってしまったらしく、額にあてた手が、驚くほど熱かった。

「らしくなくて、笑ってしまったと」

謎の言葉に、マジックは視線だけで問いかける。
高松は少し目を伏せていた。

「シンタロー様が、仰っていました」
「…そうか」

視線を戻したマジックに高松はそれ以上何も言わず、出来る限り静かに去った。
視界に映る全てがぼやけていて、思わず壁にもたれかかってしまったマジックは大きく息を吐く。

「シンちゃん」

目の前で崩れていく息子の映像が脳裏に焼きついて離れない。
助かったと知った今でも、出来の悪いビデオのようにスローモーションで流れていた。

「君に、置いていかれるのだけは嫌なんだ」

もう、君なしでは生きていけないから。
君がいないと、生きている実感なんてしない。

「きっと、君は怒るだろうね」

そんな情けない父親なんて知らないと、今はその言葉だけでもいいからすぐに聞きたい。
生きていくためには、君が必要不可欠なんだ。




m
「私はね、シンタローが好きなんだよ」

細められた目は、愛しいものをこれ以上無いというほどに慈しむ光を称えていた。


Father, I love you too.


「こぉのクソ親父!」

いつもならばこの後に盛大な爆発音が続くのだが、なぜか今日はその音が聞こえてこなかった。
不思議そうに首を傾げるマジックは、怒りを露にしている息子の頬にそっと触れてみる。
案の定、すぐに払われてしまったが。

「シンちゃん?そんなにカリカリしてると肌荒れるよ?」

普段ならば。
そう、普段ならば。
ここで又爆発音が響くはずなのだ。
それなのに今日は全然響かない。
マジックは困ってしまった。
かつては自分も着ていた真紅の総帥服を受け継いだ息子が珍しく怒りを抑えて、というよりもほぼ無視状態で唇を尖らせているだけなのだ。

「シーンちゃん」
「五月蝿い。俺は忙しいんだ、どっか行け。」
「パパ、泣くよ?」
「ここじゃないどこかで泣け」

一息吐いて書類を手に取ったシンタローの目にマジックはもう映らなかった。
わざとらしくハンカチを噛み締めて涙を流そうが無視だ。

「シンちゃんが冷たい…パパ、泣いてやるから!」
「もう、どっか行け」

そんな冷たい言葉と共に今日初めて響いた爆発音。
眼魔砲が躊躇なくマジックに向けて放たれた。
眼魔砲によって放り出される形になったマジックだが、彼は今日初めて向けられた息子の歪んだ愛情表現に満足気だったらしい。
マジックの姿が完全になくなってから、シンタローは眉を顰めてから書類を放り投げた。

「バッカじゃねーの、クソ親父」

あの男が挨拶代わりに好きだと言うのを止めない限り、好きだなんて、絶対に言ってやらない。
僅かにシンタローの口の端が持ち上げられた。

aa
世界を与えてくれたのは、この力の制御を教えてくれた人。
世界に色をくれたのは、いつでも前を見据えている力強い瞳を持った人だった。


闇裂く君


シーツに広がる艶やかな長い黒髪。
自分も同じ黒髪だというのに、どことなく違うと、そう思ったアラシヤマは惹かれるがままに手に取った。

「何やってんだよ」

少し掠れた声がアラシヤマの動きを暫し止める。

「起きてはったんどすか?」
「今起きた」

体を起こそうとするシンタローの上半身は何も身につけておらず、鍛え抜かれた筋肉が惜しげもなく晒されていた。
気だるげなその姿でも他を圧倒する空気を身にまとう人物。

「…アラシヤマ?」
「へぇ」
「それ、貸せ」
「知ってはったんどすなぁ」

惚けるには少々立場が弱かった。
シンタローが問答無用で奪った書類に目を通している間、アラシヤマは目を細めてシンタローを見つめる。

「やっぱ、好きどすわぁ」
「…何がだよ」
「あんさんが、どす」

この言葉に、シンタローは目線をあげてアラシヤマを一瞥する。
穏やかに微笑んでいる男がどんな意味でこの言葉を放ったのか知りたいような、それでいて知りたくないような気分に襲われた。
アラシヤマもそれが分かっているらしく、ただ微笑み続けるだけだ。

「…なんで」
「愛されたいから、でっしゃろうなぁ」

愛されたいから、愛したい。

「他をあたれ」
「そんな殺生な…もうちょっと考えてくれはってもええんとちゃいますのん」

また戻ってしまった視線をおいかけて、アラシヤマは溜息を吐く。
視線が逸らされても意識がこちらに向いている事を知っていての行為だった。

「わて、シンタローはんを愛してますんに」

あなたを愛したいがために、自分を愛して。
自分を愛するために、あなたを愛する。

「だから、他をあたれ」
「シンタローはん以上に輝いてる人なんかおりまへんわ」

深い闇の中ですら輝きを放つモノなど、稀有すぎてアラシヤマは他をあたる気にもなれなかった。

「迷惑なヤツ」
「そりゃ、わてやさかいに。せやけど、受け入れるシンタローはんも悪いんでっせ?」
「勝手に言ってろ」

未だ微笑み続けるアラシヤマに負けたような気がして、シンタローはわざと突き放すように悪態吐いた。
アラシヤマが見つめてくるその瞳が深すぎて、時折どう対処したらいいのか分からなくなる。
そんな時は決まって、眼魔砲などでは逃れられないのだ。

「シンタローはんが、わての人生変えはったんやから」
「勝手に人のせいにするな。朝っぱらから鬱陶しい姿見せられるのも嫌だけどな、やけに勝気なお前を見るのも嫌だ」

ベッドから立ち上がったシンタローは、これで終わりだというようにアラシヤマに背を向けて洗面所へと向かった。
こうなったらもう、アラシヤマが引くしかない。
背に流れる黒髪を掴み取るかのように腕を伸ばし、触れる直前で動きを止める。

「あんさんが好きなだけなんどすけどなぁ」

色をくれた人に。
否定するだけではない事を教えてくれた人に。
少しでもこの気持ちが届けばいい。

「おら、アラシヤマ。さっさと来い」
「へぇへぇ」

向けられる笑顔を追って、アラシヤマはゆっくり歩き出した。

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「シンタローさん、本当に月に帰ってしまうんすか?」
「んだよ、俺が言ってることが嘘だって言いたいのかよッ?」
怒りだす、シンタロー。
「ち、違いますッ!!ただ、シンタローさんがいなくなったら、寂しくなるなって…その」
「ったく…正直に言えよ。俺に月に帰ってほしいのか、ほしくないのか、どっちだッ!」
少々、怒っているような態度でシンタローが聞いてくる。
リキッドはその気迫に負けた。
「居てほしいっすっ!」「よしッ!じゃ、親父に挨拶してこいッ!!」
「え”ッ!?」
思いもよらない一言。
(まさか、あの冷血男で有名の元総帥に挨拶に行けとッ!?)
「あーッ?何、おまえ俺に対して嘘付いたわけッ?」
ぐりぐり…。     「い、いいえッ!滅相もございませんッ!!」
「じゃ、さっさと…親父のところに挨拶しに行ってこいッ!!」
ドカッ!!
「ぎゃーッ!!」
キラーン +




「へぇ、寝返り君が私のシンタローを、一生面倒見ると…」
物凄い剣幕のマジックを前に、リキッドは小動物のように小刻みに震えていた。
「いい度胸だね…、この私に楯突くとは。貴様、いったい何様のつもりなんだ?」
冷たい青い目が光る。
「ひッ!!」
(やっぱ、ガンマ団の元総帥、こ、こえーッ!!)
涙を流しながら、シンタローに聞かれたとき、咄嗟とはいえ自分は居てほしいと、何故言ってしまったのか、かなーり後悔をしていた。
「シンタローはね、産まれた時から私のものなんだよ。…君みたいなふざけた弱い男に、私がシンタローを渡すわけがなかろうッ!!」
「し、シンタローさんはものじゃ無いですッ!!」
咄嗟の一言に、またまたリキッド、大後悔。
(いってもうたッ!!あかん、まじで、俺、殺されるッ!!)
「この私に、口答えする気か…」
怒りの為か、体が小刻みに震えるマジック。
リキッドはその瞬間見てはいけないものを見てしまった。
小刻みに震えるマジックが、自分の座っている超お気に入り、最高級イタリア製一枚革張り椅子の、とっても肌ざわりの良い肘置きに置いていた手で、その肘置き部分を粉々に握り潰していた。
(ひぇーッ!!)
「私に楯突くとはいい度胸だ…。もう一度、ミトコンドリアからやり直しておいで…」
背筋も凍るほど恐ろしく、唸るような低い声で言われたその言葉に、あの二人やっぱ親子だなぁと思ったのを最後に、頭の中が真っ白になった。




「親父、超特大眼魔砲ぶっぱなす時は、外でしろよな…」
溜め息混じりの、シンタローの声。
「だって、だって…シンちゃん。こいつシンちゃんに非生産的行為を強要してシンちゃんをぼろぼろにする気だよ!」
いい年扱いたおっさんの、涙声。
「あんたが言うなよ。その台詞、聞き飽きたし…」
「だって、シンちゃん。パパとするのはいいけど、こいつなんかとしたらシンちゃん確実に病気になって、下手なHのせいで快楽を求めて、薬物に走って中毒者の仲間入りになっちゃうんんだよッ!!」
「朝っぱらからそんなこというなぁッ!!」
そして、恒例の親子喧嘩。
瓦礫と砂埃の舞う中、マジックがいるかぎり結ばれることはないだろうと、安堵の息を洩らすリキッドだった。
(だって、結ばれちゃったあと、俺、海の底に沈められてそうだもん)




今日も、太陽は眩しかった。




終わり




リキッド編の反省。

ハーレムが途中から消えてしまいました。しかも、かぐや姫の設定は何処へ?
結局、マジシンになっちょった…し?。
もう、反省中!
しかも移動中に文章消えちゃうからショック。
今日の携帯調子が悪い。けど、なくても成り立つ文章だったから、まぁいいかな。
消えた文は、朝食のひとこまでした。
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