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現実味に欠けた、淡い夢を見た。

彼を、この腕に抱く夢だった。



想い人になんとも思われていないというか、むしろ嫌われていることなんて、自分でもわかっているし。

今さら自分を卑下するつもりもなければ、性格を変える努力をするつもりも、ないけど。

(コージはんみたいに、誰とも物怖じせず気安く喋れる性格だったら)

(ミヤギはんみたいに、なんだかんだ言って面倒見のいい好かれる性格だったら)

(トットリはんみたいに、素直で親しみやすい性格だったら)

そんなことをぼんやりと思う。

惜しむべきことに、夢が現実になるわけはない。

だけどせめて、少しでも彼に近い場所にいたい。

あの島にいた時にはなかった、重い疲労の表情を頻繁に見せる彼の、傍に。

完璧なまでの自己満足と、思い上がりと呼ばれようとも、力になりたいのだ。



決意しながら廊下を進んでいると、前方に赤い背中が見えて、幸先がいいな、と。

思わず頬を緩めて駆け寄ろうとした、直後、その背中ががくりと崩れた。

咄嗟に腕を伸ばす。

助けるまでもなく自力で体勢を直した彼は、それでも腕だけを、預けて。

「・・サンキュ、アラシヤマ」

浅い吐息が、胸に。

「・・あんさん、ちょお身体鈍っとりませんか?」

「まったくだよな」

「冗談どす。働きすぎでっしゃろ」

鋭い目元にうっすら浮かぶクマが、寝不足だということを証明している。

(わてやなくとも、もっと部下を使うたらええのに)

「で、アラシヤマ?もう離せよ」

言われて、はたと気付く。

好きな人を両腕の中に抱えた(とまではいかなくとも、わずかに体重はかけられている)おいしい状況。

「あ、ちょっとだけ正夢・・」

「は?」

「え、いや、なんでもないどす・・」

こんなことに幸せを感じてしまうなんて、まったく。

恋、なんて、馬鹿みたいなもので。
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この感情を愛とか恋とか呼ばないならば、なにを呼ぼう。



「シンタローはん」

大きく上下する背中に、じわりと汗が浮かぶ。

舌を突き出して舐め取れば、かすかに、皮膚が震えて。

「痛いどすか」

「・・っるせ・・ぇ」

深く、息を吐き出しながら紡いだ声は、ひどく色っぽい。

「痛い、言うてみなはれ。そしたら加減してあげますえ」

小さく呟いた途端に、増える眉間の皺。

瞬きすると、赤くなった目尻から涙がこぼれた。

苦痛を感じないはずはないのに、この人は絶対にそれを口にしない。

意地なのか、気遣い、なのか、判断するのは難しいけれど。

「言うて」

そのことが、苦しいと思う。

「シンタローはん・・・」

痛い、と。

もう嫌だ、と言ってくれれば、自分は素直に従うだろう。

愛しいのは本心で、大事にしたいのも気持ちよくさせたいのも本心。

そして、愛されたいのも縛りつけておきたいのも、無茶苦茶に壊してしまいたいのも、紛れもない本心。

身勝手な願いなのは承知の上で、この暴走する心を止めてほしい。

止められるのは、唯1人だけだから。

拒絶してほしいと強く願って、同時に、どうしようもなく怯えている。

傷付くのはやはり怖くて、想像しただけで指が震え、ひたすらの恐怖から逃れるように、暖かな身体を掻き抱いた。

ああ、頭が痛む。
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不覚、だった。

「あ、シンタローはん。肩にゴミが」

ふいに伸ばされた指が、首を掠めた瞬間。

つい、かなり思いっきり、それを振り払ってしまった。

しまった、と反射的に思いはしたのだから、驚いた表情のまま固まったアラシヤマは、追い討ちをかけて俺の胸をちくちく責める。

咳払いを、1つ。

「アラシヤマ」

反応、ナシ。

「オイ、・・アラシヤマ」

静かな空調の音だけが、空々しく廊下に響く。

とりあえずアラシヤマの向こう脛を蹴って、踵を返して。

すぐに聞こえる悲痛な叫びは無視して、総帥室にダッシュ。

「シ、シンタローはんっ!!わてが、わてがなにしたっていうんどすか~~~!?」

小さな返事は、部屋に逃げ込んで、情けなくも床に崩れてから。

「・・自覚がねーのが悪いんだっ」

あの、指の感触。

皮膚に残って、じんじんと痺れる。
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ひんやり冷たい口唇は好きかもしれない。

こんな時ばかり真直ぐに合わせてくる目は、嫌いだ。

なにを考えているのか、と尋ねられて素直にそう言ってやったら、アラシヤマはひどく情けなく、顔を崩した。

そしてまた、キス。

凭れるようにかかる体重も腰に回された腕の力も、十分にセーブされていて、苦痛はまったくない。

あっさりしすぎて、拍子抜けするほどに。

「シンタローはん」

何度も何度も、俺という存在を確かめるかのように耳に注がれる、低い囁き。

「シンタローはん、好きどす」

伝えたところで俺がなにも言わないのはわかっているくせに、いや、だからこそなのか、アラシヤマはただ繰り返す。

ふわりふわりと、柔らかく笑いながら。

「ほんまに、好きどすえ」

答えを待たない言い種になんだか苛ついて、少し、驚かせてやろうと思った。

「ん」

「え?」

軽く頷いてみせただけで、アラシヤマはぴたりと動きを止めた。

「シンタローはん、・・今、もしかして返事してくれはりました?」

信じられない、と言いたげな口調に無言で手をかざすと、ホールドアップの体勢で、アラシヤマは後ずさる。

それでも、さっき以上に蕩けた、馬鹿みたいな笑顔で。
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朝まで共に過ごしたことはなかった。

お互いの立場上、というか、単に眠りから覚めた瞬間に顔を合わせるのが恥ずかしいとどこかで思っていたのかもしれないが、ことが終れば、何事もなかったような顔で宿舎に戻る。

打ち合わせたわけでもないのに、それが平素。

だから。

今朝は本当に、心から驚いたのだった。



指に触れる細い糸のような感触、に、ふと意識が浮上する。

寝起きはいいほうだと自負している。

それでも連日の重労働に瞼は重く、ゆるやかにではあるが覚醒した今でも、身体を動かすことは困難だ。

なんとか指先を動かして、布団をどかそう、と。

試みた瞬間肘にぶつかる、体温。

もちろん、経験から言っても記憶から言っても、ベッドに自分以外の人間などいるわけはない。

訝しんで、やっと、うっすら瞼を持ち上げて。

今度こそ、はっきり覚醒した。

思わず飛び起きて、壁にへばりついてしまう。

「シ、シンタローはん・・?」

肌の触れあう距離でシーツに顔を埋めて眠る、ガンマ団総帥。

指に絡んでいたのは、彼の艶やかに長い黒髪で、もちろんお互いに着衣は乱れまくっている。

というか、むしろ裸。

はっと思い当たる。

確かに昨夜、彼と同衾はしたけれど、・・自分の部屋に戻った記憶は、ない。

慌てて見渡せば、確かにここは、夜にしか訪れたことのない総帥のプライベートルームであった。

壁にかかった時計が正しければ、現在時刻は午前6時。

そう、2人ともしばらく休みさえ取れなかった職務で疲れていたし、そのうえ激しい運動までしたもんだから、すっかり寝入ってしまったらしい。

「・・朝から眼魔砲はキビしいですわ・・」

恐る恐る、視線を下ろす。

規則的な寝息は、とりあえずしばらくは止みそうにない、けれど。

「かと言って、このままなにも言わずに立ち去るのも・・」

小さな独り言は、建て前かもしれない。

本心では、初めて拝んだ寝顔から目を離したくない、というのが強くて。

「しかし、・・かわええどすなあ・・」

つい口に出した途端、いきなり腕を掴まれて引き寄せられ、シーツにしたたかに顔面をぶつける。

柔らかなシーツだから、そんなに痛くはない、けれど。

「・・アラシ、ヤマ?」

(お・・っ、起こして・・!?)

寝起き特有のぼんやりした声は、それでも低い。

眉間に皺を寄せて睨まれて、とりあえず謝ってしまおうと口を開く。

でも、謝罪は許されなかった。

「寒い」

する、と。

抱き込んだ腕に、顔がすり寄せられる。

「・・も、もしかして、寝ぼけてはるんでっしゃろか」

お咎めなし、への安堵のため息と同時に、馴染む体温に自分の顔が一気に高潮する音を、聞いた。
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