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 ある程度身体が落ち着き、さっさとシャワーを浴びてしまおうと半身を起こしたとたん、横から伸びてきた手に脇腹を撫で回された。さっきまでの執拗な愛撫にいい加減嫌気が差していた俺は、しつこく触れてくる相手を睨みつけるが、当人はそれに気づく素振りすらなく、異常とも思える熱心さで脇腹の傷を検分している。
 ──それは、あの南の島で、赤の番人に付けられた傷だ。
 そのことがよほど気に食わないのか、行為の度毎に、ハーレムは幾度となくそこに歯を、あるいは爪を立てていた。度重なる跡が縦横に走って、今や元の傷跡がどんなだったのか、思い出すことすら難しい。だが、そもそも今のこの俺の身体だって、元はあの赤の番人のものだ。気に食わないと言うのなら、この身体全てがそうなのだとも言える。そのくせ、ハーレムは俺の身体を隈なく愛撫し、目に付くところ全てに痕を残した。まるで、この身体を赤の番人から取り戻そうとしているかのように──この身体が俺のものに違いないと、自ら確認するかのように。
「──もう、いい加減にしろよ」
 俺はいささか乱暴にハーレムの手を払った。ハーレムは少し眉をひそめると、今度はいきなり腰にしがみついて、その傷跡にかじりついた。
「ハーレム……!」
 しがみつかれた勢いで再び寝台に沈んだ俺を、好都合とばかりに押さえ込み、ハーレムは脇腹に舌を這わせ、歯を立てては痕を残した。まだ完全に熱が引いたわけではない俺の身体には、愛撫と言うにはいささか乱暴すぎるその刺激は、少し辛い。傷跡に血がにじむようになってようやく、ハーレムは脇腹から顔を離した。その唇の端に血がついているのを、俺はかすんだ視界で半ば呆れて見つめた。
「……なに考えてんだよ、あんた」
 呼吸の合間に、非難がましい口調で言う。ハーレムは、不機嫌さを隠そうともしなかった。
「なんでこの傷だけ残ってんだ」
「……だってしょうがねえだろ、それは」
 この新しく作り直された身体に、初めてついた傷だったんだから。
 だがハーレムは俺の言葉など聞かなかったかのように、次は首筋に噛み付いてきた。
「ハーレム!」
「他の傷は全部消えた。また最初っからやり直しだ」
 そうしてハーレムは、かつての『記憶』を取り戻そうとするかのように──あるいは新たな『記憶』を刻もうとするかのように、俺の身体に再び赤い痕を散らせた。

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 突然現れた不良中年に「太腿貸せ」と言われて、早数時間。足の痺れはそろそろ限界を超えようとしている。
 そろそろこいつの頭を落としてもいいだろうかと思いながらも、気持ち良さそうに寝こけるオッサンという珍しくも面白いものに良心の呵責を覚え、シンタローはなかなかそれを実行に移せずにいた。
 見下ろせば、すぐ真下に綺麗に整った顔立ちがある。こうして見ていると、普段双子の弟である美貌の叔父様との血縁をあまり意識しないのは、その性格とそれに付随した表情のせいなのだと嫌でもわかってしまう。眼下の顔立ちは、いかにも青の一族らしく、美貌の叔父様の双子の兄らしく、年齢不詳に整然として美しかった。
 同じ青の一族、兄弟であっても、シンタローの父親のように威厳や貫禄といったものが身につかないのは、立場の違いか、それとも生来の気質のせいであろうか。この叔父とて、人の上に立つに足るだけのものを持ってはいるのだが、その統率力や人望は、叔父の性格同様虚々実々としていて、実際のところを見極めるのはひどく難しかった。
 ──例えば、こうして、ことさら親しいわけでもないシンタローの元にいきなり転がり込んでくるように。
 遠征帰りだという叔父からは、知らず、キナ臭いものが漂ってくるかのようだった。
 なぜ、帰ってきたその足でシンタローの元へとやってくるのか──戻って当然の自室ではなく、慣れ親しんだ仲間の居場所でも、行きつけの酒場でも、馴染みの女のところでもなく──なぜここに?
 そうして、その叔父を受け入れ、あまつさえ膝枕までしてやっている自分が一番不可思議だとシンタローは思った。そんな甘ったるい関係だと、互いに思っているわけもないのに。
 ふと、額の髪を除けてやろうかと、シンタローは手を上げた。起きているときならば、触ってみようなどとは欠片も考えないのだが、無防備とも言える寝顔を見ているうち、なんだか奇妙に穏やかな気分になっていた。膝枕ついでに、もう少し優しく振舞ってみてもいいのではないかと、おかしなことまで考えてしまう。
 だが、シンタローの目論みは、気配の変化を敏感に察知したらしい叔父が不意に目を開けたことで、実行されずに終わった。
 青い双眸に射竦められて鼓動が跳ね上がる。咄嗟にシンタローは上げていた手で叔父の目元を覆った。まるで悪戯の現場を目撃されてしまったような、居心地の悪い気分だった。
「……おい」
「な、なんだよ」
「なにしてやがる」
「……なにもしてねえよ」
 とは言え、手で目元を覆っておいて、「なにも」もへったくれもあったものではない。当然のように叔父に呆れたように鼻で笑われ、シンタローは半ば八つ当たり気味にむっとした。
「どうでもいいから、さっさとどけよ!」
 照れ隠しに怒鳴って、こっちはもういい加減、足痺れてんだよ、と無理して太腿を揺らせば、とうてい寝ていられる状況などではないのに叔父は強情に「イヤダ」と言い張る。
「仕事帰りの叔父様をもっと労らんか、この糞餓鬼が」
「あんたを労る気なんて、これっぽっちもないね」
 お互いに刺々しい口調で言い合うと、叔父はわざとらしくため息をついた。
「……まったく、素直じゃない子供には苦労させられるぜ」
「どういう意味だ!」
 言い返す間もあらばこそ、不意に起き上がった叔父にあっさり押し倒され、長椅子に図体のでかい男が二人、無理矢理並んで寝そべるという実に不本意な体勢にさせられてしまった。
「まだまだ甘いな、甥っ子」
 不敵に笑う叔父の顔はいかにも憎々しい。先程の美貌は錯覚だったのかと思えるほどだ。
「なにすんだ、オッサン! 放しやがれッ」
 抵抗しても、シンタローより重い叔父の身体と馬鹿力はびくともしない。下手に暴れても狭い長椅子から転げ落ちそうで、シンタローは忌々しげに舌打ちした。
「さっさとどけよ、オッサン! 重いだろ!」
「これでただの枕から抱き枕に昇格だぜ。良かったな、シンタロー」
「全然良くねえッ!!」
 しかしシンタローの身体をがっちりとつかまえた叔父は、さっさと眠りにつこうとしている。もがいても拘束がきつくなるだけで、ほとんど意味がない。悔し紛れに髪を引っ張れば、逆に首筋を噛まれた。
 シンタローがとうとう諦めて力を抜くと、叔父の腕の力も緩んだ。そこから再び抵抗しようとする気にはなれなかった。叔父の拘束から抜け出せるにしろ抜け出せないにしろ、なんだかこのやりとりがひどく馬鹿馬鹿しいことのように思われたのだ。
 叔父からはさっそく、心地良さげな寝息がもれている。その整った横顔を見つめながら、なんで結局最後にはこの叔父の我儘を許してしまうのだろうかと、シンタローは自嘲気味に思うしかなかった。

sts

 廊下でドクターとすれ違った。軽く片手を上げたのを挨拶の代わりに通り過ぎようとしたら、素早くその手をつかまれて、さっさと人気のない部屋へと連れ込まれてしまった。
「……ド、ドクター、な、なんか用?」
 入ったときの勢いのまま、壁際に追い詰められ、その状況もさることながら、「俺、なんか気に障ることでもしたか?」と反射的に考えてしまうのは、事の大小に関らずドクターの報復が壮絶を極めるからだろうか。──もっとも、俺の場合、他の皆とは大分内容は違うのだろうが。
 無言のまま、俺をじっと見つめてくるドクターの顔がとても近い。ひょっとしたらそのままキスでもされるんじゃなかろうかと思うくらいには。
 ……そう言えば、最近お互い忙しくて、ゆっくり向き合う暇もなかった。長期間放置による欲求不満の代償は、この場合、いったいどれくらいになるのだろう?
 そう考えるうち、ドクターの真剣そのものの顔がゆっくりと近づいてくる。やっぱりな、と思いながら、今さらどうする術もなく、また、下手に抵抗して状況を悪化させるほど馬鹿でもないので、俺は素直に目を閉じた。
 ──だが、予想していたものは唇には訪れなかった。ドクターの吐息が頬をかすめたかと思うと、始め柔らかな感触が、次いで濡れた感触が耳朶に触れる。想定外の感覚にうっかり硬直した俺を他所に、生暖かい舌が耳朶全体を包み、ゆっくりと愛撫するように動いた。時折当たる歯の感触に、俺は思わず息を詰める。
 ……まさか、このまま?(ドクターならやりかねない)──という俺の、期待と懸念の入り混じった感情はしかし、意外にもあっさりと離れていったドクターの前に、拍子抜けに終わった。
「……耳の付け根に、傷ができています。──栄養不足によるものですね。他にも、過労が原因と思われる気になる症状がいくつか」
 実際ぶっ倒れたらみっともないですから、あとで薬を取りに来てください。
 思わぬ展開に呆然としたままの俺とは対照的に、いかにも事務的な口調で告げると、ドクターはさっさと踵を返す。未だ治まらぬ動悸を抱えたまま、俺はその後姿を見送るしかなかった。
 扉の前で思わせぶりに立ち止まったドクターは、振り返って嫣然と微笑む。
「早く来ないと、後悔しますよ」
 なにが、と言い返す余裕すらなかった。静かに閉まる扉に向かって、俺はため息をつく。
 ──……そう、きっと後悔することだろう。行っても、行かなかったとしても。まんまと誘惑にはまってしまった今となっては。
 俺は悪態をつき、乱暴に髪を掻き混ぜながら、これからの仕事の予定を思い浮かべた。──もしくは、優秀な補佐官を出し抜く手立てを。
 ドクターが触れた耳朶は熱を持って、いつまでも冷めることがなかった。

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 事が終わって、シャワーも浴びて、さて寝よう、というときになってもまだ、従兄は悪戯をやめようとはしなかった。
 この従兄がスキンシップ過剰なのは昔からで、それは関係が微妙に変化した今もあまり変わらない。むしろこうなることで一層親密さを増すのだろうかと予想していた俺にしてみれば、あっけないくらいにいつも通りだとも言えた。従兄との親しさは、従兄弟同士の領域にとどまり、決して恋人同士のそれにはならない。かえって、身体を重ねることの方が、幼いころからの気安さの延長線上にあったのだろうかと思えてしまうくらいだった。
 とはいえ、二人ともいい歳をした大人で、恋人同士で、そうであるならば、過剰なスキンシップがいつもいつも健全なまま終わるはずもない。特に身体を重ねた後のそれは、もう一度濃厚なやりとりに移行することも多かった。
 普段ならば、そのときの気分や流れにまかせて従兄の悪戯を享受するところだが、今日ばかりは話が別だ。仕事がひどく立て込んでいて、本当なら従兄とこんなふうにすごす余裕すらない。しかし現状として、睡眠時間を削ってまで従兄とこうしているのは、要するに従兄の可愛らしさを装ったおねだりに負けたからで──そしてきっと、俺の方も欲求不満状態にあったからで。
 実際にしてしまったことを後悔するのは馬鹿らしいし、従兄のせいにするのは余計みっともない。この場合、少しでも明日に影響が残らないよう──もう一人の従弟に余計なことを勘付かれないよう努めることこそが最重要課題だと言えた。
 シーツの中にもぐりこんだ従兄は、背を向けて横になった俺の腰のあたりを、先程からしきりにまさぐっている。指でなぞってみたり、キスしてみたりと、それは未だ子供の悪戯程度のものだが、いつ具体的な行為へと変わるか知れたものではない。一方、俺自身がうっかりその気になってしまうというはなはだ不本意な可能性もある。従兄の行為が可愛らしいものであるうちにと、俺は軽く身を起こしてシーツをめくった。
「おい、いい加減にしろよ、グンマ。俺はもう寝るんだからな」
 従兄を軽く睨みつけると、不満そうな声が返ってくる。
「だって、ずるいよ、シンちゃん」
「……なにが」
 天才だと評判の従兄は、時々こちらが理解できないことを前置きなしに言う。今回のこの行為にも従兄にはそれなりの正当な理由があったらしいのだが、それがなんなのか全くわからず、俺は呆れて首を傾げた。
「だってさ、シンちゃんの、ここ」
 言いながら、従兄は俺の腰の一点に指で触れた。
「僕の知らないうちにヴィーナスのえくぼができてるんだもん。……前のときはなかったのに」
 そのいかにも拗ねたような口調がおかしくて、俺は思わず笑った。
「へえ、そいつは知らなかったな?」
 もう一人の従弟に身体を返し、新しい身体をもらってかなりになるが、これまで特別違和感を覚えたことはなかった。まして背中の些細なくぼみになど、気づくはずもない。
 だが、従兄にしてみれば、長年一緒に過ごしてきた俺の身体が、一朝一夕に変わってしまったことに、どうしても納得がいかないらしかった。
「シンちゃんは気にしなさすぎなんだよ。他にもいろいろ違うところがあるのに」
 無頓着でいられるなんて信じられない、と言う従兄に対し、なんでお前の方が俺の身体のこと知ってんだよ、と思ったが、薮蛇になりそうだったので口にはしなかった。
「ふうん。……てことは、キンタローにはそのナントカのえくぼってのが、ないのか」
 それがあるのとないのとではどう違うのか知らないが、我彼の差に敏感なもう一人の従弟が知ったなら、確実に二時間は薀蓄を聞かされそうな事実だ。
「さあ、それはどうかなあ……。キンちゃんの身体も、シンちゃんのころとはずいぶん違ってきているみたいだしね」
 ……だからどうしてそんなに観察眼が鋭いんだと思ったが、そこもあえて追及はしなかった。
「ま、どうでもいいけどな。……ただ、キンタローにはそういう余計なことは言うんじゃねえぞ」
「え? なにが? なんで?」
 心底不思議そうにする従兄に、俺は冗談めかして言う。
「キンタローがそのことを知ったら、絶対自分の目で確認しようとするだろ。このクソ忙しい最中に補佐官にまで襲われるなんざ、俺は御免だからな」
 俺の言葉に、従兄は朗らかに笑った。
「それは言えるかも。そしてさ、この赤い点々を見て、心配しちゃったりするんだよ。『シンタロー、これはなんだ? 病気か!?』そして急いで高松が呼ばれたりなんかして──」
「……もういい。それ以上言うな。なんか実際にありそうで嫌だ」
 まざまざとその状況を想像してしまい、げんなりとして俺は再びシーツの中に避難した。
 うっかりつまらないことで時間を潰してしまった。これで明日、もう一人の従弟の顔をまともに見れない──いろいろな意味で──なんてことになったら、それこそ笑えない。
 そんな俺の懸念を他所に、従兄は未だ笑いながら、背を向けた俺にぴったりと寄り添うようにして寝そべった。
「それなら、シンちゃんが万が一にも襲われないように、僕か保険かけといてあげるね」
 言うなり、普段の愚鈍さが嘘のように、従兄は素早く俺の腰に唇を寄せた。軽くつねられたような痛みが一瞬──痕にはきっと、鮮やかな紅い色が残っていることだろう。
 確かに、これはとんだ保険だ。
「──だからいい加減にしろっつってんだろうが! この馬鹿!!」
 照れ隠しに俺は従兄を蹴った。だがその足には、我ながら情けないくらい力が入っていなかった。

不審物・危険物チェックをくぐり抜けて総帥室に運び込まれた、大量の郵便物。

圧倒的に地味な色合いの強い山の中で、異彩を放つものが1つ。

「・・なんだ、こりゃ」

ベビーピンクの包み紙とゴールドのリボンで飾り付けられた小ぶりな箱は、手に取れば一層、場の雰囲気から浮いて見える。

重量は、片手で簡単に持ち上げられる程度。

振ってみれば、わずかに軽い音。

差出人の名前は見当たらない。

「おい、キンタロー、これは?」

「カードが添えてあるだろう」

言われて箱を一回転させてみると確かに、メッセージカードらしきものがリボンに挟まっていた。

箱のサイズに合った、これまた小さなカードを、慎重に広げる。

「・・・チェック漏れだな」

「箱の中身なら、俺が開発した・・いいか、俺が開発した超高性能センサーでチェックを」

「差出人が不審で危険なんだっつーの!・・ていうか、あいつ最前線で戦闘中なはずだよな?なんでこんなの送ってこれんだ?」

「本人に聞いてくれ」

「聞けるか。・・ああ、くそ、受け取っちまった・・・」

「受け取る?」

「今日って14日だろ」

「ああ、そうだな」

ぶちぶち文句を言いながらもとりあえずはラッピングを解いて、恐る恐る箱の中身を覗いてみれば、・・概ね、予想通り。

色とりどりのキャンディが詰まった瓶が、登場した。

ため息をついて、再度、カードに視線を戻して。

「・・馬鹿なやつ」

几帳面な文字で記された愛の言葉を、指で弾く。
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