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|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
--------------------------------------------------------------------------------
人は誰しも二面性がある。心は自分でも思うようには制御できない。
だからだろうか、どうしても不安を覚える。
たとえ今では誰よりも近く隣に立っていようとも、だ。
「いいじゃないか、それで。」
「え?」
「人の心を読み取れる人間などいない。お前の中に居るうちは出たくてどうしようもなかったが、
実際こうして確固たる自分として存在していると心が全て感じる事が出来たあの頃を懐かしく思う。」
不思議なものだなとキンタローはひとりごちる。
思わず眉を寄せ、呟く。
「懐かしく思う?」
キンタローが耳ざとく聞き止める。
「ああ、そうだが?」
ごく当たり前のようにサラリと答える。
「・・・いや、何だか安心したんだ。」
本当に何の他意も感じなかった。思わず安堵が漏れる。
24年間も意識がありながら誰にも気づかれない。行動もおこせない。
己でないものからしか、外からの情報を一方的に受ける。
しかもそれが自分を閉じ込めている張本人だ。
想像も出来ない苦しみだ。
「誰のせいでもない。親を選べないように、自分の力ではどうにも出来ない事がある。
好きでマジックの息子になったわけではないだろう?」
あんな息子の顔を見るたびに抱きついてこようとする親に、と。
キンタローは微かに眉間に皺を寄せる。
ポンっと頭の中に、年がいも無く自分を模った人形に頬を摺り寄せているマジックが思い浮かぶ。
思わず苦笑してしまう。
「そうか・・・・」
ひょっとしてこの頼りになる片割れは励ましてくれようとしているのだろうか。
「何を考えているかは大体わかる。
心配するな。例えお前が頼んでも、俺はお前から離れる気は毛頭ない。」
俺の目をひたっと見据え常と変らぬ口調で断言する。
「お前のそういう一面を見れるのが俺だけだと思うと嬉しい。」
「そういう一面?」
「ああ。普段は何事にも迷いが無いように見えて、時々弱気になる所だ。」
「別に弱気になんてなってねーよ。」
思わず否定してしまう。
「そうか?まあお前が言うならそういうことにするが。」
でも、と言葉を続ける。
「そういう表情は他のヤツの前ではするなよ。」
「は?」
キンタローが何を言っているか理解できない。
「だから、その妙に子供っぽい顔や無防備な顔だ。」
「・・・アホか。」
照れ隠しにそういうとあまり感情を表に出さないキンタローが微かに笑ったような気がした。
たとえ心の中に俺には見せられない表情を持っていたとしても、キンタローのこの言葉と顔は本物だ。
5.29
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人は誰しも二面性がある。心は自分でも思うようには制御できない。
だからだろうか、どうしても不安を覚える。
たとえ今では誰よりも近く隣に立っていようとも、だ。
「いいじゃないか、それで。」
「え?」
「人の心を読み取れる人間などいない。お前の中に居るうちは出たくてどうしようもなかったが、
実際こうして確固たる自分として存在していると心が全て感じる事が出来たあの頃を懐かしく思う。」
不思議なものだなとキンタローはひとりごちる。
思わず眉を寄せ、呟く。
「懐かしく思う?」
キンタローが耳ざとく聞き止める。
「ああ、そうだが?」
ごく当たり前のようにサラリと答える。
「・・・いや、何だか安心したんだ。」
本当に何の他意も感じなかった。思わず安堵が漏れる。
24年間も意識がありながら誰にも気づかれない。行動もおこせない。
己でないものからしか、外からの情報を一方的に受ける。
しかもそれが自分を閉じ込めている張本人だ。
想像も出来ない苦しみだ。
「誰のせいでもない。親を選べないように、自分の力ではどうにも出来ない事がある。
好きでマジックの息子になったわけではないだろう?」
あんな息子の顔を見るたびに抱きついてこようとする親に、と。
キンタローは微かに眉間に皺を寄せる。
ポンっと頭の中に、年がいも無く自分を模った人形に頬を摺り寄せているマジックが思い浮かぶ。
思わず苦笑してしまう。
「そうか・・・・」
ひょっとしてこの頼りになる片割れは励ましてくれようとしているのだろうか。
「何を考えているかは大体わかる。
心配するな。例えお前が頼んでも、俺はお前から離れる気は毛頭ない。」
俺の目をひたっと見据え常と変らぬ口調で断言する。
「お前のそういう一面を見れるのが俺だけだと思うと嬉しい。」
「そういう一面?」
「ああ。普段は何事にも迷いが無いように見えて、時々弱気になる所だ。」
「別に弱気になんてなってねーよ。」
思わず否定してしまう。
「そうか?まあお前が言うならそういうことにするが。」
でも、と言葉を続ける。
「そういう表情は他のヤツの前ではするなよ。」
「は?」
キンタローが何を言っているか理解できない。
「だから、その妙に子供っぽい顔や無防備な顔だ。」
「・・・アホか。」
照れ隠しにそういうとあまり感情を表に出さないキンタローが微かに笑ったような気がした。
たとえ心の中に俺には見せられない表情を持っていたとしても、キンタローのこの言葉と顔は本物だ。
5.29
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マジックは日本好きだ。それはガンマ団を見ても分かるだろう。
支部の一つでしかなかった日本がいつのまにか本部になってしまっている。
日本にあるのだから建物は日本仕様になっている部分が多い。和室の応接間もあるのだ。
ガンマ団員でもごく一部、つまり青の一族しか出入りできない事実上住宅の一部と化しているフロアがある。
勿論このフロアも日本風が多い。その最たるものは風呂ではないだろうか。
マジックの跡を継ぎ、最近はようやく余裕が出てきて湯船につかりながらのんびりとするのがシンタローの
リラックスするする方法の一つとなっている。だが、その安らぎの時をぶちやぶる例のアレが湧いて出る。
一つの気配が近づいてくる。はぁーと深いため息を一つ付くとざっと湯をならし立ち上がり湯船をひょいと跨ぐと
風呂と脱衣所とを仕切る扉を勢いよく開けた。
「毎日毎日、こぉんの馬鹿がっ!」
シンタローが馬鹿呼ばわりした相手は、真顔でシャンプーハットをつけていた。
大の男、しかも端正な顔の持ち主が腰にタオルを巻き真顔でシャンプーハットを装着し
右手に幼児がよくプールやお風呂で浮かべている黄色いアヒルの玩具を持っている姿はなんとも言いがたい。
「……キンタロー、お前、何してるんだ?」
マジックだと思い込んでいたシンタローは拍子抜けしたのかそれともそのキンタローの姿に毒気が抜かれたのか
それとも脱力したのか、たぶん全部であろうが、妙に力の無い声で問いかける。
「おまえと一緒に風呂に入ろうと思ってきたんだ」
「それはいいけどよ。それは?」
それ、とシャンプーハットには取り敢えず眼を瞑り、この場には明らかにおかしい黄色いアヒルにひょいっと指を向ける。
「アヒルだ」
とても簡潔に誰が見ても分かる事を答えた。
キンタローは自分のポーカーフェイスに誰ともなしに心から感謝した。
聞かれたことをそのまま答えただけで嘘は全くついていない。
この時、シンタローの目をまっすぐ見つめて言うのが特に効果的ということまで既に把握していた。
「いや、そうじゃなくってよ」
キンタローの考えなど全く読めないシンタローはどうも調子が狂う、と濡れた頭をガシガシと掻く。
キンタローと過ごすようになりまだ日が浅い。
ずっと自分の精神内に閉じ込められていた為、キンタローは日常のコミュニケーションが取りづらい。
閉じ込められていた中から見ていたから基本的なことは全て理解してはいるようだ。
だた、どうも会話がし辛い。言葉の意味そのままを捉え返してくる。
会話から容易に憶測できる、尋ねた側が省略した言葉が解らない。
ただとても優秀だったといわれているルーザーの才を引き継いだのか飲み込みはとても早い。
最近はグンマの補佐などしつつガンマ団内で過ごしているのだが、グンマ曰く、『キンちゃんは凄い』そうだ。
グンマが言うのだからまぁ『凄い』のだろう。
俺の周りの頭の良いヤツってのはみんな変だ、高松・グンマの顔を思い浮かべ、そして目の前のキンタローを見ながらそう思う。
「その、どうしてアヒルを持ってきたんだ?そもそもどこにあったんだそんなの」
「風呂に入る時、これは必ず携帯するものだとグンマが言っていた。グンマがくれたのだ」
正確に言えば、対シンタロー仕様の為にグンマが特別にあつらえた物だがそんな事はキンタローは黙っている。
「そうか」
シンタローはまたグンマか、とため息をつく。
きっとシンタローはグンマに何か文句を言いに行くだろう。
許せグンマ、と心の中で謝る。その代わり、必ず戦果はあげるぞ、とも。
「いいか?普通それは風呂に入れない。幼児なら風呂場やプールで遊ぶかもしれないけどな。
いい加減グンマの言う事鵜呑みにするのは止めてくれ」
まるで保父さんになったかのようにゆっくりと説明をする。
肩をおとしすまなかったとキンタローは殊勝に謝る。
「あ、いやお前が謝る必要なんてないんだよ。俺の責任でもあるし」
唯我独尊を地でいくシンタローだが『キンタローには優しい』というのがシンタローの周辺の人々の談である。
引け目が無意識のうちにそうさせているのだろう。
キンタロー自身は既にシンタローに対するそういう思いは無い。
シンタローが自分にだけ見せるどことなく弱気な態度を見せた時に何度かそう言ったのだが効果は無いようだ。
だか、今はそれをありがたく思う。シンタローは自分に対しては警戒しない。
いつものように微妙な沈黙がおちてしまったので、取り敢えずキンタローはくしゃみをした。
これで中に入れるだろう。
「すまん、すっかり体が冷えちまったな。取り敢えず来い」
大の男二人が入ってもなお余裕のある湯船の中で喧騒が始まる。
喧騒といってもシンタロー一人が騒いでいる。
「おまえとは風呂に入らん!」
横に並んでいたキンタローから距離をとり、湯船の端まで身を寄せる。
「なぜだ?」
ぱちっと瞬き一つ。後は常と同じように無表情の様に見えた。が。
一瞬ごく僅かに口の端が持ち上がった。
「言わなくてもわかるだろうが!」
コイツ、ワザとなのか?シンタローはそんな疑念が湧く。
「何か問題があったか?風呂は男のコミュニケーションでは重要だと言っていた。俺はそれを試みただけだ」
シンタローの目にはキンタローはあくまでも大真面目、のように映った。
「はんっ、誰だよそんな事言ったのは!」
だいたいあんなのがコミュニケーションになるかよとぶちぶちと悪態をつく。
機嫌が奈落の底まで落ちたシンタローに対し、底なしに変わるような人物の名を出した。
「マジックだ」
「……おまえさ、ひょっとしてマジックとも入ったのか?」
「ああ」
「同じ事した、いや、されたのか?」
もしそうならあの馬鹿親父殺してやる、そうシンタローの目に書いてあった。
それが読めたわけではないがキンタローは首を横に振って否定した。
「…………誰かに……教わったのか……?」
まさに恐る恐ると言った様子でキンタローに再度問う。
「いいや」
「……………………。」
シンタローはキンタローからそっと目を逸らし、手で湯を掬い顔を洗った。
そして何事も無かったかのように無言で湯船に浸かり続けた。
キンタローはシンタローに気づかれない様にひっそりと笑った。
満足そうにつぶらな瞳のアヒルを撫でた。
H17.8.14
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マジックは日本好きだ。それはガンマ団を見ても分かるだろう。
支部の一つでしかなかった日本がいつのまにか本部になってしまっている。
日本にあるのだから建物は日本仕様になっている部分が多い。和室の応接間もあるのだ。
ガンマ団員でもごく一部、つまり青の一族しか出入りできない事実上住宅の一部と化しているフロアがある。
勿論このフロアも日本風が多い。その最たるものは風呂ではないだろうか。
マジックの跡を継ぎ、最近はようやく余裕が出てきて湯船につかりながらのんびりとするのがシンタローの
リラックスするする方法の一つとなっている。だが、その安らぎの時をぶちやぶる例のアレが湧いて出る。
一つの気配が近づいてくる。はぁーと深いため息を一つ付くとざっと湯をならし立ち上がり湯船をひょいと跨ぐと
風呂と脱衣所とを仕切る扉を勢いよく開けた。
「毎日毎日、こぉんの馬鹿がっ!」
シンタローが馬鹿呼ばわりした相手は、真顔でシャンプーハットをつけていた。
大の男、しかも端正な顔の持ち主が腰にタオルを巻き真顔でシャンプーハットを装着し
右手に幼児がよくプールやお風呂で浮かべている黄色いアヒルの玩具を持っている姿はなんとも言いがたい。
「……キンタロー、お前、何してるんだ?」
マジックだと思い込んでいたシンタローは拍子抜けしたのかそれともそのキンタローの姿に毒気が抜かれたのか
それとも脱力したのか、たぶん全部であろうが、妙に力の無い声で問いかける。
「おまえと一緒に風呂に入ろうと思ってきたんだ」
「それはいいけどよ。それは?」
それ、とシャンプーハットには取り敢えず眼を瞑り、この場には明らかにおかしい黄色いアヒルにひょいっと指を向ける。
「アヒルだ」
とても簡潔に誰が見ても分かる事を答えた。
キンタローは自分のポーカーフェイスに誰ともなしに心から感謝した。
聞かれたことをそのまま答えただけで嘘は全くついていない。
この時、シンタローの目をまっすぐ見つめて言うのが特に効果的ということまで既に把握していた。
「いや、そうじゃなくってよ」
キンタローの考えなど全く読めないシンタローはどうも調子が狂う、と濡れた頭をガシガシと掻く。
キンタローと過ごすようになりまだ日が浅い。
ずっと自分の精神内に閉じ込められていた為、キンタローは日常のコミュニケーションが取りづらい。
閉じ込められていた中から見ていたから基本的なことは全て理解してはいるようだ。
だた、どうも会話がし辛い。言葉の意味そのままを捉え返してくる。
会話から容易に憶測できる、尋ねた側が省略した言葉が解らない。
ただとても優秀だったといわれているルーザーの才を引き継いだのか飲み込みはとても早い。
最近はグンマの補佐などしつつガンマ団内で過ごしているのだが、グンマ曰く、『キンちゃんは凄い』そうだ。
グンマが言うのだからまぁ『凄い』のだろう。
俺の周りの頭の良いヤツってのはみんな変だ、高松・グンマの顔を思い浮かべ、そして目の前のキンタローを見ながらそう思う。
「その、どうしてアヒルを持ってきたんだ?そもそもどこにあったんだそんなの」
「風呂に入る時、これは必ず携帯するものだとグンマが言っていた。グンマがくれたのだ」
正確に言えば、対シンタロー仕様の為にグンマが特別にあつらえた物だがそんな事はキンタローは黙っている。
「そうか」
シンタローはまたグンマか、とため息をつく。
きっとシンタローはグンマに何か文句を言いに行くだろう。
許せグンマ、と心の中で謝る。その代わり、必ず戦果はあげるぞ、とも。
「いいか?普通それは風呂に入れない。幼児なら風呂場やプールで遊ぶかもしれないけどな。
いい加減グンマの言う事鵜呑みにするのは止めてくれ」
まるで保父さんになったかのようにゆっくりと説明をする。
肩をおとしすまなかったとキンタローは殊勝に謝る。
「あ、いやお前が謝る必要なんてないんだよ。俺の責任でもあるし」
唯我独尊を地でいくシンタローだが『キンタローには優しい』というのがシンタローの周辺の人々の談である。
引け目が無意識のうちにそうさせているのだろう。
キンタロー自身は既にシンタローに対するそういう思いは無い。
シンタローが自分にだけ見せるどことなく弱気な態度を見せた時に何度かそう言ったのだが効果は無いようだ。
だか、今はそれをありがたく思う。シンタローは自分に対しては警戒しない。
いつものように微妙な沈黙がおちてしまったので、取り敢えずキンタローはくしゃみをした。
これで中に入れるだろう。
「すまん、すっかり体が冷えちまったな。取り敢えず来い」
大の男二人が入ってもなお余裕のある湯船の中で喧騒が始まる。
喧騒といってもシンタロー一人が騒いでいる。
「おまえとは風呂に入らん!」
横に並んでいたキンタローから距離をとり、湯船の端まで身を寄せる。
「なぜだ?」
ぱちっと瞬き一つ。後は常と同じように無表情の様に見えた。が。
一瞬ごく僅かに口の端が持ち上がった。
「言わなくてもわかるだろうが!」
コイツ、ワザとなのか?シンタローはそんな疑念が湧く。
「何か問題があったか?風呂は男のコミュニケーションでは重要だと言っていた。俺はそれを試みただけだ」
シンタローの目にはキンタローはあくまでも大真面目、のように映った。
「はんっ、誰だよそんな事言ったのは!」
だいたいあんなのがコミュニケーションになるかよとぶちぶちと悪態をつく。
機嫌が奈落の底まで落ちたシンタローに対し、底なしに変わるような人物の名を出した。
「マジックだ」
「……おまえさ、ひょっとしてマジックとも入ったのか?」
「ああ」
「同じ事した、いや、されたのか?」
もしそうならあの馬鹿親父殺してやる、そうシンタローの目に書いてあった。
それが読めたわけではないがキンタローは首を横に振って否定した。
「…………誰かに……教わったのか……?」
まさに恐る恐ると言った様子でキンタローに再度問う。
「いいや」
「……………………。」
シンタローはキンタローからそっと目を逸らし、手で湯を掬い顔を洗った。
そして何事も無かったかのように無言で湯船に浸かり続けた。
キンタローはシンタローに気づかれない様にひっそりと笑った。
満足そうにつぶらな瞳のアヒルを撫でた。
H17.8.14
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|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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「 『楽園』 というのはここの事をいうのだろうな。」
砂浜を歩きながら隣を歩くキンタローが呟く。
まるで人工砂のように綺麗だ。砂を踏む感触が心地よく体に伝わる。
視線を上げれば視界は見事なまでの紺青に塗りつぶされる。船など一切見えない。
人の手によって作り出されたものは拒絶される。
パプワ以外の人間は意図的に排除されているといっても過言ではない。
先の過ちの所為で尚更そうなったのかもしれない。
人がいなければ無意味な争いは生まれない。人のみが同じ過ちを何度でも繰り返す。
「そーだな。」
シンタローは相槌を打つ。
キンタローはシンタローの余計な力が抜けた、その様子に不安になる。
この島に来ると決まった時から懸念していた事だ。
万が一この島に捕らわれたまま戻ってこなかったら、と。
シンタローは時々仕事の合間、僅かな時間だがふっと姿を消す事がある。
探しに行くのはたいがい、屋上。シンタローはただ、何をするのでもなく、空を眺めている。
その空漠たる姿をみていると無理矢理にでもこちら側の世界に繋ぎ留めておきたくなる。
「俺はお前にとって、あちらの世界でのこの島になれるか?」
「・・・恥ずかしい事を真顔で言うな。」
この楽園を彩る海と同じ色の瞳が謹厳な色を帯びる。
シンタローは茶化して終わりにしようとしたが、どうにもそういうわけにはいかないようだ。
ふいっと顔を背けて小声で言う。
「俺が前だけを向いていられるのは、後ろを確認しなくてもいいからだ。
どんなに俺が無茶をしても必ず付いて来てくる。休みたくなった時は隣にいる。」
突然シンタローは、大声を張り上げる。
「こんなこっ恥ずかしい事言わすなっ!」
キンタロー以上に恥ずかしい事を言っていると気づいたのだろう。
その声に驚くでもなく、キンタローは満足そうに一人頷いている。
「やはりこの島はいいな。」
足を止め海を眺める。
「うん?」
つられてシンタローも歩みを止める。キンタローの意図が掴めなく聞き返す。
「まさかこんなに容易く本音が聞けるとは思わなかった。」
この島のお陰だ、と。
「なっ」
嵌めたのか、とシンタローが憤る。
「俺は別に嵌めたつもりなど無い。シンタローの本音が聞きたかっただけだ。
それに俺はいつでもシンタロー相手には正直なのに、不公平じゃないか。」
キンタローは妙に胸を張って、子供の様なことを言う。
「ああ、そうかよ。」
そりゃよかった、と投げやりに答える。
キンタローはもうこんな機会は無いと思ったのだろうか、また訊ねる。
この島にいる間なら、本音をききだせるはずだ。
元々が相手の中にいるという異常な状態だったが、いざその状態から開放されると
シンタローの声が全く聞えない。もう数年経過するが、不安なのだろう。
「今はお前が考えている事がはっきりとはわからない。言ってくれなければ通じない事もある。」
「・・・側にいてくれるだけで十分だ。」
「そうか。」
「ああ。」
暫くは無言で海を眺めていたが、またどちらともなく歩み始める。
砂浜には二人の足跡が転々と続いた。
7.29
|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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「 『楽園』 というのはここの事をいうのだろうな。」
砂浜を歩きながら隣を歩くキンタローが呟く。
まるで人工砂のように綺麗だ。砂を踏む感触が心地よく体に伝わる。
視線を上げれば視界は見事なまでの紺青に塗りつぶされる。船など一切見えない。
人の手によって作り出されたものは拒絶される。
パプワ以外の人間は意図的に排除されているといっても過言ではない。
先の過ちの所為で尚更そうなったのかもしれない。
人がいなければ無意味な争いは生まれない。人のみが同じ過ちを何度でも繰り返す。
「そーだな。」
シンタローは相槌を打つ。
キンタローはシンタローの余計な力が抜けた、その様子に不安になる。
この島に来ると決まった時から懸念していた事だ。
万が一この島に捕らわれたまま戻ってこなかったら、と。
シンタローは時々仕事の合間、僅かな時間だがふっと姿を消す事がある。
探しに行くのはたいがい、屋上。シンタローはただ、何をするのでもなく、空を眺めている。
その空漠たる姿をみていると無理矢理にでもこちら側の世界に繋ぎ留めておきたくなる。
「俺はお前にとって、あちらの世界でのこの島になれるか?」
「・・・恥ずかしい事を真顔で言うな。」
この楽園を彩る海と同じ色の瞳が謹厳な色を帯びる。
シンタローは茶化して終わりにしようとしたが、どうにもそういうわけにはいかないようだ。
ふいっと顔を背けて小声で言う。
「俺が前だけを向いていられるのは、後ろを確認しなくてもいいからだ。
どんなに俺が無茶をしても必ず付いて来てくる。休みたくなった時は隣にいる。」
突然シンタローは、大声を張り上げる。
「こんなこっ恥ずかしい事言わすなっ!」
キンタロー以上に恥ずかしい事を言っていると気づいたのだろう。
その声に驚くでもなく、キンタローは満足そうに一人頷いている。
「やはりこの島はいいな。」
足を止め海を眺める。
「うん?」
つられてシンタローも歩みを止める。キンタローの意図が掴めなく聞き返す。
「まさかこんなに容易く本音が聞けるとは思わなかった。」
この島のお陰だ、と。
「なっ」
嵌めたのか、とシンタローが憤る。
「俺は別に嵌めたつもりなど無い。シンタローの本音が聞きたかっただけだ。
それに俺はいつでもシンタロー相手には正直なのに、不公平じゃないか。」
キンタローは妙に胸を張って、子供の様なことを言う。
「ああ、そうかよ。」
そりゃよかった、と投げやりに答える。
キンタローはもうこんな機会は無いと思ったのだろうか、また訊ねる。
この島にいる間なら、本音をききだせるはずだ。
元々が相手の中にいるという異常な状態だったが、いざその状態から開放されると
シンタローの声が全く聞えない。もう数年経過するが、不安なのだろう。
「今はお前が考えている事がはっきりとはわからない。言ってくれなければ通じない事もある。」
「・・・側にいてくれるだけで十分だ。」
「そうか。」
「ああ。」
暫くは無言で海を眺めていたが、またどちらともなく歩み始める。
砂浜には二人の足跡が転々と続いた。
7.29
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シン受けお題、シンちゃん人形の続き?
コン、とドアを叩く音が静まり返った廊下へと響く。
もうこんな時間だから寝てしまっているだろうか。
起きている時も多々あったので、期待してきたのだが。
片手にぶら下げた酒のビンを目の前に持ち上げる。
一人で飲んでも良いのだが、今日は二人で飲みたい気分だった。
帰ろうと踵を返したが、ふと顔だけでも見ようと、そっと部屋へと通じるドアを開けた。
電気を消し忘れたのだろうか、部屋は人工的な光によって昼間同様に明るかった。
この部屋も研究室同様、殺風景な部屋だった。
物にたいする執着がないのだろう。彼の顔を思い浮かべながらそんなことを思う。
相変わらず大きな部屋には不似合いな小さなテーブルが目に付く。
以前のアレを思い出し、見たくは無いが目がついつい椅子へといく。
・・・そこには何も無かった。ほっと息をつく。
手に持っていた酒のビンをテーブルの上にそっと置く。
彼を起こさないように、そっと歩を進める。
ベッドの一部分が人一人分ぐらい膨らんでいる。金色の髪ものぞいている。
さらに近づく。・・・・ソレが目に入った。
思わずうっと唸る。
あそこに無かったから油断していた。すっかりもう部屋には置いていないものだと思ってしまった。
「オマエ、マジックじゃあるまいし、なんでそんなことしているんだよ・・・」
脱力しながら呟いた。
キンタローの枕元には、以前椅子に鎮座していたあの人形が居た。
突然パチっとキンタローの目が開く。
「・・・シンタロー?」
驚いたようにキンタローがやや擦れた声を出す。
俺の気配と、呟いた声で起こしてしまったようだ。悪いことをしてしまった。
「ああ、悪りぃ。起こしちまったか?」
「いや、本物が良いに決まっている。」
会話が噛み合っていない。
いつでもどこでも紳士なキンタローだが寝起きはわるいのだろう。
ベッドから半身だけ起こし、直ぐ脇に立っていたシンタローの手を掴む。
「え?うわっ」
短い悲鳴とともに、ベッドに引きずり込まれた。
キンタローを思いっきりつぶしそうになり、慌てて腕をつっぱる。なんとか回避する。
「おい、危ないじゃんか。思いっきり体重かけるところだったぞ。」
キンタローはシンタローを無視し、そのままモゾモゾとベッドの端へと移動する。
引きずり込んだシンタローをまたぐいっとひっぱり丁度いい位置まで誘導する。
「おいおい、オマエ聞いてんの?」
起こしてしまった手前強くも出られず、おとなしく従いながらも文句を口にする。
「よし。」
一言呟いたかとおもったら、手が伸びてきた。ぎゅうっと抱きつかれる。
小さな女の子が、お気に入りのぬいぐるみと一緒に寝ているようだ。
「ちょっ、キンタロー!」
さすがにハッキリと抗議する。
「何だ?」
確りした答えが返ってくる。起きているのか、寝ぼけているのか分からない。
「『何だ?』じゃねーよ。離せよ。」
「嫌だ。」
「い、嫌だってオマエ、子供じゃあるまいし・・・」
あんまりなキンタローの答えに、本日何度目だろうか、思いっきり脱力する。
更に言い募ろうとすると、その前にまた抱きついている腕に力が入る。
「・・・分かったよ。」
だから、力緩めろ、と声を掛ける。
その答えに満足そうにキンタローは腕から力を抜いた。相変わらず、シンタローからは離れていないが。
まぁ、知らない間に人形片手に寝られるよりはいいか、とそのまま目を閉じた。
なんだか知らないが、このまま眠れるような気がした。
完全に思考が落ちる前に、ちらっと思う。
やはりアレを処分しなくては。が、アレを取り上げたら俺、毎晩こんな目にあうのだろうか・・・?
7.4
|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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シン受けお題、シンちゃん人形の続き?
コン、とドアを叩く音が静まり返った廊下へと響く。
もうこんな時間だから寝てしまっているだろうか。
起きている時も多々あったので、期待してきたのだが。
片手にぶら下げた酒のビンを目の前に持ち上げる。
一人で飲んでも良いのだが、今日は二人で飲みたい気分だった。
帰ろうと踵を返したが、ふと顔だけでも見ようと、そっと部屋へと通じるドアを開けた。
電気を消し忘れたのだろうか、部屋は人工的な光によって昼間同様に明るかった。
この部屋も研究室同様、殺風景な部屋だった。
物にたいする執着がないのだろう。彼の顔を思い浮かべながらそんなことを思う。
相変わらず大きな部屋には不似合いな小さなテーブルが目に付く。
以前のアレを思い出し、見たくは無いが目がついつい椅子へといく。
・・・そこには何も無かった。ほっと息をつく。
手に持っていた酒のビンをテーブルの上にそっと置く。
彼を起こさないように、そっと歩を進める。
ベッドの一部分が人一人分ぐらい膨らんでいる。金色の髪ものぞいている。
さらに近づく。・・・・ソレが目に入った。
思わずうっと唸る。
あそこに無かったから油断していた。すっかりもう部屋には置いていないものだと思ってしまった。
「オマエ、マジックじゃあるまいし、なんでそんなことしているんだよ・・・」
脱力しながら呟いた。
キンタローの枕元には、以前椅子に鎮座していたあの人形が居た。
突然パチっとキンタローの目が開く。
「・・・シンタロー?」
驚いたようにキンタローがやや擦れた声を出す。
俺の気配と、呟いた声で起こしてしまったようだ。悪いことをしてしまった。
「ああ、悪りぃ。起こしちまったか?」
「いや、本物が良いに決まっている。」
会話が噛み合っていない。
いつでもどこでも紳士なキンタローだが寝起きはわるいのだろう。
ベッドから半身だけ起こし、直ぐ脇に立っていたシンタローの手を掴む。
「え?うわっ」
短い悲鳴とともに、ベッドに引きずり込まれた。
キンタローを思いっきりつぶしそうになり、慌てて腕をつっぱる。なんとか回避する。
「おい、危ないじゃんか。思いっきり体重かけるところだったぞ。」
キンタローはシンタローを無視し、そのままモゾモゾとベッドの端へと移動する。
引きずり込んだシンタローをまたぐいっとひっぱり丁度いい位置まで誘導する。
「おいおい、オマエ聞いてんの?」
起こしてしまった手前強くも出られず、おとなしく従いながらも文句を口にする。
「よし。」
一言呟いたかとおもったら、手が伸びてきた。ぎゅうっと抱きつかれる。
小さな女の子が、お気に入りのぬいぐるみと一緒に寝ているようだ。
「ちょっ、キンタロー!」
さすがにハッキリと抗議する。
「何だ?」
確りした答えが返ってくる。起きているのか、寝ぼけているのか分からない。
「『何だ?』じゃねーよ。離せよ。」
「嫌だ。」
「い、嫌だってオマエ、子供じゃあるまいし・・・」
あんまりなキンタローの答えに、本日何度目だろうか、思いっきり脱力する。
更に言い募ろうとすると、その前にまた抱きついている腕に力が入る。
「・・・分かったよ。」
だから、力緩めろ、と声を掛ける。
その答えに満足そうにキンタローは腕から力を抜いた。相変わらず、シンタローからは離れていないが。
まぁ、知らない間に人形片手に寝られるよりはいいか、とそのまま目を閉じた。
なんだか知らないが、このまま眠れるような気がした。
完全に思考が落ちる前に、ちらっと思う。
やはりアレを処分しなくては。が、アレを取り上げたら俺、毎晩こんな目にあうのだろうか・・・?
7.4
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|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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浮上したパプワ島を後にした。
パプワ達とはもう二度と会えないだろう。
そう思うと、あの夢の様な時間をすごした島を少しでも長く見ていたくて
部屋の小さな窓からずっと外を見ていたが今はもう深い青色の海が見えるのみだ。
何時までもこんな窓際に立っていたら変に思われるだろう。
というか、先ほどから視線を背中に感じる。もう既に変に思われているのかもしれない。
何故かこの部屋はもう一人いる。
『従兄弟同士仲良くしなくちゃね』とかなんとか言ってグンマがヤツを連れて来た。
『キンちゃんって言うんだよ。宜しくね。』
隣に立っていたヤツにキンちゃんもお辞儀っと言うと素直にペコっと頭を下げる。
頭を下げた拍子に、硬そうなヤツの長い金髪も前に垂れる。
そのままグンマが部屋に備え付けてあるベッドにここに座ってと指差し、ヤツはでどんと座った。
グンマは『僕はおとーさまと親睦を深めてくるよ~』と呑気に告げてさっさと帰りやがった。
グンマがいりゃ少しは会話があるだろうに。
年中頭に花が咲いているよーなグンマだがああ見えて結構しっかりしている。
今度の事もショックだったろうにとっとと前向きに受け止め
傍目には抵抗無くマジックの事を『おとーさま』と呼んでいる。
俺のことはマジックの息子、従兄弟のままらしい。矛盾しているがそうと勝手に決めたみたいだ。
ため息一つついて振り返り、ヤツが座っているベッドと少し離れて並んでいるもう一つのベッドに
向かい合うように腰掛ける。
ぼすっとベッドがなる。そんな些細な音すらまるで大きく響くように聞える。
連れて来たコイツも従兄弟らしい。名前はキンタローになったそうだ。
二人になってから俺もヤツも何も言葉を発していない。
口をきかないのに、何故か俺の方ばかりを見ているような気がする。
「なぁ、何か言ってくんねー?見られてばっかじゃ気持ちわるいんだけどさ」
ひょいっと肩をすくめる。
「何か?」
と反応した。
暫くの間視線をやや下に、何か考えているようだった。
そしてふいっと俺を見る。
「好きだ」
「…………。」
自分の耳を疑った。
よもやこの相手からそんな言葉を聞こうとは。
「何?」
「好きだと言ったんだ」
聞えなかったのか、と言う感じでコイツはもう一度はっきり言う。
思わず青い目をまじまじと見つめてしまった。
俺の言葉を待っているようにじっと俺を見つめている。
「……それは、アレか?恋愛の情ではなく人としての俺が好きだと言う事だよな?」
と訊いてみる。
「俺はお前がどこにいるのかと常に気になる。姿が見えないと不安にもなる。
グンマにそう告げたら『それは好きということだ』と教えてくれた。
それはお前の言う、お前という人間が好き、という事になるのか?」
本当に真面目な顔で訊いてきた。
……。後でグンマを殴ろう。思わず拳を胸の前で固めた。
コレがマジックなら単に俺をからかっているのだとわかるから、眼魔砲をぶっ放して終わりだ。
だがコイツだとそうはいかない。大真面目に聞いているのだ。
コイツのこういう変な所は、理不尽な話だがそれは俺にも責任はある。
あるからにはどうにかしなくちゃならないだろう。
これもいわゆる刷り込み、と言うのだろうか。
どう答えれば良いのかと考えていると
「触ってみたくもなる」
すいっと音も無く立ち上がると、少しかかがんで抱きしめられた。
……頭痛がした。
コレは一体どーしたら良いのか。
目の前には黒のレザー。皮特有の匂いも、俺のむき出しの両腕に掛かる髪の感触も
伝わってくる体温も、この怪異な行動が夢じゃないと告げている。
出来ればこのまま気を失って、気づけば夢オチだったという事を願いたい。
コンコンっとノックの音と共に
「シンちゃーん。入るよー?」
グンマの間延びした声が、逃避しかかっていた俺の頭に響いた。
「わぁ、もう仲良しさんだね。僕、心配で見にきたんだけどぉ」
そんな必要なかったね、とほわほわとそんなことを言いやがった。
「おい、グンマ」
額に青筋がたっているだろう、きっと。
動けないので顔だけ向ける。
「なぁに?シンちゃん?」
「コレはお前の言う『仲良し』なのか?」
「え?どうみても仲良しじゃない」
そーか、大の男が男に抱きついているのは仲良しなのか。
「おい、今度はグンマに引っ付いてみろよ」
「わかった」
ヤツは俺が力ずくで剥がす前に、素直にスタスタとグンマの元へと行く。
グンマの目の前に立つと、そのまま腕を広げ軽く抱きしめる。
「キンちゃん、どぉお?」
グンマはなーんにも思っていないような、いつも通りに訊ねた。
「お前も落ち着くが、アイツのほうが落ち着くような気がする。
それにずっと触っていたい感じもする。」
グンマを解放する。
「でしょ?」
「それが『好き』って事だよ」
教師が生徒に教えるように言う。
「アイツは『恋愛の情か人柄を慕う情か』と聞いてきた。これはどっちだ?」
「うーん、愛情、恋愛の情なんじゃない?」
くりんと可愛らしく顔を上げてヤツに応じる。
「こぉら、グンマ! 適当なこと言うなっ!」
駄目だ、グンマ一人に任していたらきっとその内グンマを無愛想にしたような人間になってしまう。
「えー、適当じゃないよ。キンちゃんが自分で思っている感情を僕が教えているだけだよ?」
「なお困るわっ!」
声を荒げる。
そんな俺がおかしいかのような目で二人が俺を見る。
「なにか問題あるのか、グンマ? 知らない事を教えてもらうのはありがたいが」
「さあ? 僕も問題ないと思うよ」
グンマは何事にも大らかな分、どっかずれている。
今ならよーく分かる。間違いなく、マジックの血を引いている。
「シンちゃんが何を怒っているのか僕には分からないけど、キンちゃんのこと宜しくね」
キンちゃんもね?とグンマはにっこりと笑いかける。
「わかった」
コックリと素直に頷いている。
何を宜しくするんだ。何を。
そして何がわかったんだアイツは。
そう言いたいのを抑える。言ったら当たり前のようにサックリと変な事を言われそうだ。
それをヤツが鵜呑みにしたら更に事態は悪化する。
ここは抑えろ、俺。
自分に言い聞かせる。
そんな俺の葛藤に全く気づかずグンマは
「じゃあ、僕もう行くね。二人ともとっても仲いいみたいだから心配して損しちゃった」
そう言い残し再び軽やかな足取りで、部屋から出て行った。
またコイツと二人きりだ。
どーしろってんだよ、一体。
とりあえず、まだ突っ立ったままのアイツに声を掛ける。
「座ったらどーよ」
「そうだな」
何故か俺の真隣に腰を下ろす。
「……なぁ、なんで俺の、」
途中で言葉を飲み込む。ヤバイ。自ら墓穴を掘る所だった。
「なんだ?」
「いや、なんでもない。…………俺、なんだか疲れたから寝るわ」
腰を上げ隣のベッドへと移動する。
そして、相手の顔もみずにそのまま布団を頭まで被る。
きっとまたこっちを見ているんだろうなぁ。
重い、重すぎるため息が出た。
嫌われるのは覚悟していたが、こんな事態は全く想定していなかった。
どっちがマシなんだろうか。
島を後にした感傷はどっかにふっとんでしまった。
それはありがたかった。が、この先俺にどーしろと。
馬鹿グンマを呪いつつ寝たふりを決め込む事にした。
12.4
→お題28 「今」 がコレの続きっぽい。
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パプワ達とはもう二度と会えないだろう。
そう思うと、あの夢の様な時間をすごした島を少しでも長く見ていたくて
部屋の小さな窓からずっと外を見ていたが今はもう深い青色の海が見えるのみだ。
何時までもこんな窓際に立っていたら変に思われるだろう。
というか、先ほどから視線を背中に感じる。もう既に変に思われているのかもしれない。
何故かこの部屋はもう一人いる。
『従兄弟同士仲良くしなくちゃね』とかなんとか言ってグンマがヤツを連れて来た。
『キンちゃんって言うんだよ。宜しくね。』
隣に立っていたヤツにキンちゃんもお辞儀っと言うと素直にペコっと頭を下げる。
頭を下げた拍子に、硬そうなヤツの長い金髪も前に垂れる。
そのままグンマが部屋に備え付けてあるベッドにここに座ってと指差し、ヤツはでどんと座った。
グンマは『僕はおとーさまと親睦を深めてくるよ~』と呑気に告げてさっさと帰りやがった。
グンマがいりゃ少しは会話があるだろうに。
年中頭に花が咲いているよーなグンマだがああ見えて結構しっかりしている。
今度の事もショックだったろうにとっとと前向きに受け止め
傍目には抵抗無くマジックの事を『おとーさま』と呼んでいる。
俺のことはマジックの息子、従兄弟のままらしい。矛盾しているがそうと勝手に決めたみたいだ。
ため息一つついて振り返り、ヤツが座っているベッドと少し離れて並んでいるもう一つのベッドに
向かい合うように腰掛ける。
ぼすっとベッドがなる。そんな些細な音すらまるで大きく響くように聞える。
連れて来たコイツも従兄弟らしい。名前はキンタローになったそうだ。
二人になってから俺もヤツも何も言葉を発していない。
口をきかないのに、何故か俺の方ばかりを見ているような気がする。
「なぁ、何か言ってくんねー?見られてばっかじゃ気持ちわるいんだけどさ」
ひょいっと肩をすくめる。
「何か?」
と反応した。
暫くの間視線をやや下に、何か考えているようだった。
そしてふいっと俺を見る。
「好きだ」
「…………。」
自分の耳を疑った。
よもやこの相手からそんな言葉を聞こうとは。
「何?」
「好きだと言ったんだ」
聞えなかったのか、と言う感じでコイツはもう一度はっきり言う。
思わず青い目をまじまじと見つめてしまった。
俺の言葉を待っているようにじっと俺を見つめている。
「……それは、アレか?恋愛の情ではなく人としての俺が好きだと言う事だよな?」
と訊いてみる。
「俺はお前がどこにいるのかと常に気になる。姿が見えないと不安にもなる。
グンマにそう告げたら『それは好きということだ』と教えてくれた。
それはお前の言う、お前という人間が好き、という事になるのか?」
本当に真面目な顔で訊いてきた。
……。後でグンマを殴ろう。思わず拳を胸の前で固めた。
コレがマジックなら単に俺をからかっているのだとわかるから、眼魔砲をぶっ放して終わりだ。
だがコイツだとそうはいかない。大真面目に聞いているのだ。
コイツのこういう変な所は、理不尽な話だがそれは俺にも責任はある。
あるからにはどうにかしなくちゃならないだろう。
これもいわゆる刷り込み、と言うのだろうか。
どう答えれば良いのかと考えていると
「触ってみたくもなる」
すいっと音も無く立ち上がると、少しかかがんで抱きしめられた。
……頭痛がした。
コレは一体どーしたら良いのか。
目の前には黒のレザー。皮特有の匂いも、俺のむき出しの両腕に掛かる髪の感触も
伝わってくる体温も、この怪異な行動が夢じゃないと告げている。
出来ればこのまま気を失って、気づけば夢オチだったという事を願いたい。
コンコンっとノックの音と共に
「シンちゃーん。入るよー?」
グンマの間延びした声が、逃避しかかっていた俺の頭に響いた。
「わぁ、もう仲良しさんだね。僕、心配で見にきたんだけどぉ」
そんな必要なかったね、とほわほわとそんなことを言いやがった。
「おい、グンマ」
額に青筋がたっているだろう、きっと。
動けないので顔だけ向ける。
「なぁに?シンちゃん?」
「コレはお前の言う『仲良し』なのか?」
「え?どうみても仲良しじゃない」
そーか、大の男が男に抱きついているのは仲良しなのか。
「おい、今度はグンマに引っ付いてみろよ」
「わかった」
ヤツは俺が力ずくで剥がす前に、素直にスタスタとグンマの元へと行く。
グンマの目の前に立つと、そのまま腕を広げ軽く抱きしめる。
「キンちゃん、どぉお?」
グンマはなーんにも思っていないような、いつも通りに訊ねた。
「お前も落ち着くが、アイツのほうが落ち着くような気がする。
それにずっと触っていたい感じもする。」
グンマを解放する。
「でしょ?」
「それが『好き』って事だよ」
教師が生徒に教えるように言う。
「アイツは『恋愛の情か人柄を慕う情か』と聞いてきた。これはどっちだ?」
「うーん、愛情、恋愛の情なんじゃない?」
くりんと可愛らしく顔を上げてヤツに応じる。
「こぉら、グンマ! 適当なこと言うなっ!」
駄目だ、グンマ一人に任していたらきっとその内グンマを無愛想にしたような人間になってしまう。
「えー、適当じゃないよ。キンちゃんが自分で思っている感情を僕が教えているだけだよ?」
「なお困るわっ!」
声を荒げる。
そんな俺がおかしいかのような目で二人が俺を見る。
「なにか問題あるのか、グンマ? 知らない事を教えてもらうのはありがたいが」
「さあ? 僕も問題ないと思うよ」
グンマは何事にも大らかな分、どっかずれている。
今ならよーく分かる。間違いなく、マジックの血を引いている。
「シンちゃんが何を怒っているのか僕には分からないけど、キンちゃんのこと宜しくね」
キンちゃんもね?とグンマはにっこりと笑いかける。
「わかった」
コックリと素直に頷いている。
何を宜しくするんだ。何を。
そして何がわかったんだアイツは。
そう言いたいのを抑える。言ったら当たり前のようにサックリと変な事を言われそうだ。
それをヤツが鵜呑みにしたら更に事態は悪化する。
ここは抑えろ、俺。
自分に言い聞かせる。
そんな俺の葛藤に全く気づかずグンマは
「じゃあ、僕もう行くね。二人ともとっても仲いいみたいだから心配して損しちゃった」
そう言い残し再び軽やかな足取りで、部屋から出て行った。
またコイツと二人きりだ。
どーしろってんだよ、一体。
とりあえず、まだ突っ立ったままのアイツに声を掛ける。
「座ったらどーよ」
「そうだな」
何故か俺の真隣に腰を下ろす。
「……なぁ、なんで俺の、」
途中で言葉を飲み込む。ヤバイ。自ら墓穴を掘る所だった。
「なんだ?」
「いや、なんでもない。…………俺、なんだか疲れたから寝るわ」
腰を上げ隣のベッドへと移動する。
そして、相手の顔もみずにそのまま布団を頭まで被る。
きっとまたこっちを見ているんだろうなぁ。
重い、重すぎるため息が出た。
嫌われるのは覚悟していたが、こんな事態は全く想定していなかった。
どっちがマシなんだろうか。
島を後にした感傷はどっかにふっとんでしまった。
それはありがたかった。が、この先俺にどーしろと。
馬鹿グンマを呪いつつ寝たふりを決め込む事にした。
12.4
→お題28 「今」 がコレの続きっぽい。