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--------------------------------------------------------------------------------
地球は丸い。
誰もが確認することなく当たり前のように認識している。
そんな当たり前の事を言うかのようにマジックがシンタローに言う。
『シンちゃん、婚前旅行は何所に行こうか?』
食卓に並べられたお味噌汁からほこほこと白い湯気が立っている。
それを取ろうと伸ばそうとしていた手がぴたっと止まった。
「は?」
シンタローが何を言われたのか分からない、というようにマジックに訊き返す。
「もう、やだなぁシンちゃんったら。照れちゃって。パパも恥ずかしいんだから・・・」
器用に箸で焼き魚の身を突付いていたマジックが手を休めて、恥じらいなく言い切る。サックリと真顔で。
「婚前旅行。どこがいい?」
シンタローが誤って何か硬いものでも噛んでしまった様ななんともいえない表情をする。
右手に持っていた箸を丁寧に箸置きへと横たえる。
自由になった指先をこめかみに当てながら、つぶやく。
「ああ、最近忙しかったからなぁ。」
「何をいっているんだい、シンちゃん?」
ぶちっとどこかで何かが切れるような音がした。
そう言いたくなるほど、シンタローの表情が一変する。
「馬鹿かっ!」
怒声とともに、食卓にバンッと手をつく。食卓のものが跳ね上がる勢いだ。
「えー、パパはいたって正気だよ?」
怒鳴られようが、どこ吹く風。暖簾に腕押しとはこの男のためにある言葉かもしれない。
一休み、といわんばかりにお茶を一口含み、マイペースに続ける。
「愛する人とは、結婚してずっと一緒に居たいと思うのはあたりまえでしょ?」
トンと湯飲みを置く。
「だからその約束をするまえに、記念の旅行。」
シンタローの瞳をこの上なく真剣に見つめる。
本音をまっすぐにぶつけると、この照れ屋の息子は逃げてしまうだろう。
だから普段マジックは軽く言う。が、ふっと気持ちが零れてしまうことがある。
それがこういうときだ。
シンタローがそれを察したのか、ぐっと言葉に詰まる。
いつもなら怒鳴り返して、終わり。
それが今日は出来ない。
マジックはあんなに馬鹿なことを言っているのにだ。
ここで拒絶したら、もう振り返ってもらえないかもしれない。
常に俺様道を行くシンタローだが、マジック相手だと上手くいかない。
唐突にぶつけられると、気弱な心がもたげる。
心の奥まで、勝手にずかずかと踏み込まれる。
そんな思いが顔に出ていたのだろうか、マジックが
「シンちゃん。ごめんね。」
あっさりと身を引く。
「な、なんで謝るんだよ・・・」
「シンちゃんを困らせちゃったみたいだからね。」
「別に困ってなんかねーよ。」
「そう?ならいいんだけど。」
シンタローの下手な嘘に乗るマジック。
「じゃ、どこに行こうか?」
いつものマジックに戻りほっと息を吐き出す。いつの間にか強張ってしまっていた肩の力を抜く。
「・・・どこでもいいよ。アンタと一緒なら・・・」
それでも先ほどの雰囲気に呑まれたままだったのだろうか、
常には絶対に言わない言葉を吐いてしまう。
「そっか。」
マジックは心からの笑みを浮かべる。 とても優しげだ。
いつも笑っているように見えるが、この笑みはあまり見ることはかなわない。
「じゃあやっぱり出かけるのは止めて、今みたいにのんびりと家で一緒に過そうか?」
その方がシンちゃんとゆっくり過せそうだしね。とまた微笑む。
「そうだな。」
「またシンちゃんの手料理が食べたいなぁ。」
「いいぜ。アンタの好きなもの作ってやるよ。」
つい嬉しくなり、応じる。
「シンちゃんは、お料理も家事も得意だものね。」
また食事に箸を伸ばし、シミジミと呟く。
「直ぐにでもパパのお嫁さんになれるね。」
「チョーシに乗るなよ。」
シンタローも食事を再開する。
照れているのか、ご飯を口に運ぶ動きがせわしない。
そんなシンタローを、マジックが見つめる。
久しぶりに素直なシンタローが見られて嬉しいのかもしれない。
シンタローもマジックをチラッと伺う。
そして、思う。
たまにはこんな日もいいかもしれない。
6.11
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地球は丸い。
誰もが確認することなく当たり前のように認識している。
そんな当たり前の事を言うかのようにマジックがシンタローに言う。
『シンちゃん、婚前旅行は何所に行こうか?』
食卓に並べられたお味噌汁からほこほこと白い湯気が立っている。
それを取ろうと伸ばそうとしていた手がぴたっと止まった。
「は?」
シンタローが何を言われたのか分からない、というようにマジックに訊き返す。
「もう、やだなぁシンちゃんったら。照れちゃって。パパも恥ずかしいんだから・・・」
器用に箸で焼き魚の身を突付いていたマジックが手を休めて、恥じらいなく言い切る。サックリと真顔で。
「婚前旅行。どこがいい?」
シンタローが誤って何か硬いものでも噛んでしまった様ななんともいえない表情をする。
右手に持っていた箸を丁寧に箸置きへと横たえる。
自由になった指先をこめかみに当てながら、つぶやく。
「ああ、最近忙しかったからなぁ。」
「何をいっているんだい、シンちゃん?」
ぶちっとどこかで何かが切れるような音がした。
そう言いたくなるほど、シンタローの表情が一変する。
「馬鹿かっ!」
怒声とともに、食卓にバンッと手をつく。食卓のものが跳ね上がる勢いだ。
「えー、パパはいたって正気だよ?」
怒鳴られようが、どこ吹く風。暖簾に腕押しとはこの男のためにある言葉かもしれない。
一休み、といわんばかりにお茶を一口含み、マイペースに続ける。
「愛する人とは、結婚してずっと一緒に居たいと思うのはあたりまえでしょ?」
トンと湯飲みを置く。
「だからその約束をするまえに、記念の旅行。」
シンタローの瞳をこの上なく真剣に見つめる。
本音をまっすぐにぶつけると、この照れ屋の息子は逃げてしまうだろう。
だから普段マジックは軽く言う。が、ふっと気持ちが零れてしまうことがある。
それがこういうときだ。
シンタローがそれを察したのか、ぐっと言葉に詰まる。
いつもなら怒鳴り返して、終わり。
それが今日は出来ない。
マジックはあんなに馬鹿なことを言っているのにだ。
ここで拒絶したら、もう振り返ってもらえないかもしれない。
常に俺様道を行くシンタローだが、マジック相手だと上手くいかない。
唐突にぶつけられると、気弱な心がもたげる。
心の奥まで、勝手にずかずかと踏み込まれる。
そんな思いが顔に出ていたのだろうか、マジックが
「シンちゃん。ごめんね。」
あっさりと身を引く。
「な、なんで謝るんだよ・・・」
「シンちゃんを困らせちゃったみたいだからね。」
「別に困ってなんかねーよ。」
「そう?ならいいんだけど。」
シンタローの下手な嘘に乗るマジック。
「じゃ、どこに行こうか?」
いつものマジックに戻りほっと息を吐き出す。いつの間にか強張ってしまっていた肩の力を抜く。
「・・・どこでもいいよ。アンタと一緒なら・・・」
それでも先ほどの雰囲気に呑まれたままだったのだろうか、
常には絶対に言わない言葉を吐いてしまう。
「そっか。」
マジックは心からの笑みを浮かべる。 とても優しげだ。
いつも笑っているように見えるが、この笑みはあまり見ることはかなわない。
「じゃあやっぱり出かけるのは止めて、今みたいにのんびりと家で一緒に過そうか?」
その方がシンちゃんとゆっくり過せそうだしね。とまた微笑む。
「そうだな。」
「またシンちゃんの手料理が食べたいなぁ。」
「いいぜ。アンタの好きなもの作ってやるよ。」
つい嬉しくなり、応じる。
「シンちゃんは、お料理も家事も得意だものね。」
また食事に箸を伸ばし、シミジミと呟く。
「直ぐにでもパパのお嫁さんになれるね。」
「チョーシに乗るなよ。」
シンタローも食事を再開する。
照れているのか、ご飯を口に運ぶ動きがせわしない。
そんなシンタローを、マジックが見つめる。
久しぶりに素直なシンタローが見られて嬉しいのかもしれない。
シンタローもマジックをチラッと伺う。
そして、思う。
たまにはこんな日もいいかもしれない。
6.11
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--------------------------------------------------------------------------------
崩れ落ちた家。
所々まだ煙が上がっている。
だが、残骸が残っているだけましなのかもしれない。
その瓦礫の中心にはただぽっかりと穴が開いていた。
土すら抉れている。
まるで最初から何も存在しなかったかのようだ。
焦土を前に男が一人佇んでいる。
金と赤のコントラストが鮮やかに目に残る。
その鮮やかさとは裏腹に彼を見るものは恐怖しか覚えないだろう。
そこでの生を奪い、望まぬ死を贈ったにも拘わらず顔には何の色も浮かんでいない。
彼は、この世界で知らないものは居ないだろう、ガンマ団総帥マジックだ。
マジックに近づく一人の青年。
彼の妻が亡き後、愛している数少ない人間、彼の二人の息子の内の一人だ。
まだ幼いもう一人の息子は青の一族の特徴を色濃く受け継いだが、
今マジックに近づいている青年はその特徴を一切持たないで生まれた。名をシンタローという。
マジックはこの場にそぐわぬとても綺麗な笑みを見せ近づくシンタロー手を広げ迎えた。
が、シンタローは抱きしめられる一歩手前で止まる。
今シンタローの眼前に広がる光景。
それをもたらしたのは間違いなく父親。
自分を溺愛する普段の姿からは想像できない父親の顔。
それはシンタローにとって初めて見た総帥マジックの姿だった。
声を掛けようとしたが、喉から声がでない。ヒュっと空気を切る音が生まれただけだ。
そんなシンタローの様子に構わず距離を詰め抱きしめるマジック。
シンタローの耳のすぐ横に口を近づけ低く囁く。常と変わらない優しい声色で。
「どうしたんだい、シンタロー?」
『どうしたんだ』
シンタローは、なぜこんな事をしておきながらそんな台詞が出るのかと正気を疑う。
呪縛が解け、声が出る。
「『どうした』って何でそんな事言えるんだよ!」
両手でマジックの胸を押しやり抱擁から抜け出し、距離をとる。
「シンタロー、何時も言っていただろう?もう子供じゃないって。
だからパパのお仕事の様子を見てもらったんだけど、まだ早かったかな。」
「早いとかそういう問題じゃないだろ、これは!」
マジックはやれやれと幼い子供の我が儘にあきれたかのように首を横にふると
「困った子だなぁ。」
言うがなマジックの拳がシンタローの腹にめり込む。
「ぐっ」
シンタローの肺からいやな音をたて空気が漏れる。同時にぐったりと体から力が抜ける。
マジックは拳を抜き完全に力の抜けたシンタロー胸に寄りかからせ、背中に手を廻す。
シンタローは意識が遠のくなか、マジックの言葉が耳に残った。
「私はお前さえいればいいのだよ、シンタロー。」
完全に気を失ったシンタローの髪をいとしそうに梳きながらなおも言葉を紡ぐ。
「そう、お前さえ・・・」
暫らくそうしていたマジックに声が掛かる。
「総帥!出発の準備が整いました!」
「ああ分かった。」
「あの、シンタロー様は」
気を失っているシンタローを見、思わず口に出す団員。
「私が連れて行く。構うな。」
マジックは鋭く言い放つとシンタローを抱きかかえ、軍艦へと消えた。
5.4
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崩れ落ちた家。
所々まだ煙が上がっている。
だが、残骸が残っているだけましなのかもしれない。
その瓦礫の中心にはただぽっかりと穴が開いていた。
土すら抉れている。
まるで最初から何も存在しなかったかのようだ。
焦土を前に男が一人佇んでいる。
金と赤のコントラストが鮮やかに目に残る。
その鮮やかさとは裏腹に彼を見るものは恐怖しか覚えないだろう。
そこでの生を奪い、望まぬ死を贈ったにも拘わらず顔には何の色も浮かんでいない。
彼は、この世界で知らないものは居ないだろう、ガンマ団総帥マジックだ。
マジックに近づく一人の青年。
彼の妻が亡き後、愛している数少ない人間、彼の二人の息子の内の一人だ。
まだ幼いもう一人の息子は青の一族の特徴を色濃く受け継いだが、
今マジックに近づいている青年はその特徴を一切持たないで生まれた。名をシンタローという。
マジックはこの場にそぐわぬとても綺麗な笑みを見せ近づくシンタロー手を広げ迎えた。
が、シンタローは抱きしめられる一歩手前で止まる。
今シンタローの眼前に広がる光景。
それをもたらしたのは間違いなく父親。
自分を溺愛する普段の姿からは想像できない父親の顔。
それはシンタローにとって初めて見た総帥マジックの姿だった。
声を掛けようとしたが、喉から声がでない。ヒュっと空気を切る音が生まれただけだ。
そんなシンタローの様子に構わず距離を詰め抱きしめるマジック。
シンタローの耳のすぐ横に口を近づけ低く囁く。常と変わらない優しい声色で。
「どうしたんだい、シンタロー?」
『どうしたんだ』
シンタローは、なぜこんな事をしておきながらそんな台詞が出るのかと正気を疑う。
呪縛が解け、声が出る。
「『どうした』って何でそんな事言えるんだよ!」
両手でマジックの胸を押しやり抱擁から抜け出し、距離をとる。
「シンタロー、何時も言っていただろう?もう子供じゃないって。
だからパパのお仕事の様子を見てもらったんだけど、まだ早かったかな。」
「早いとかそういう問題じゃないだろ、これは!」
マジックはやれやれと幼い子供の我が儘にあきれたかのように首を横にふると
「困った子だなぁ。」
言うがなマジックの拳がシンタローの腹にめり込む。
「ぐっ」
シンタローの肺からいやな音をたて空気が漏れる。同時にぐったりと体から力が抜ける。
マジックは拳を抜き完全に力の抜けたシンタロー胸に寄りかからせ、背中に手を廻す。
シンタローは意識が遠のくなか、マジックの言葉が耳に残った。
「私はお前さえいればいいのだよ、シンタロー。」
完全に気を失ったシンタローの髪をいとしそうに梳きながらなおも言葉を紡ぐ。
「そう、お前さえ・・・」
暫らくそうしていたマジックに声が掛かる。
「総帥!出発の準備が整いました!」
「ああ分かった。」
「あの、シンタロー様は」
気を失っているシンタローを見、思わず口に出す団員。
「私が連れて行く。構うな。」
マジックは鋭く言い放つとシンタローを抱きかかえ、軍艦へと消えた。
5.4
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「なぁ、お前これからどうするの?」
パプワが何処かへと去り、コタローが力を放出し過ぎ見渡す限りすっかり風景が変わってしまったパプワ島。
それを眺めながら何故か隣に立っている、本来今の自分の居場所にいる筈だった、人間へと問う。
「どうするか、とは?」
あまり感情の伺えない表情ながらも答えが返ってくる。少し安堵する。
「新しい生活。」
ああ、それよりもまず、とどこか自嘲気味に笑う。
「俺との決着をつける?」
「それもよかろう。」
その言葉を聞き、やはりね、と更にその色が濃くなる。
「が、もうそんなことはいい。」
は?と思わず声が漏れる。こいつが言うと本当にどうでもよさそうに聞こえる。
今までの歳月を思えばそんな一言では片付けられるはずはないのに。
「俺はお前に興味がある。」
同じようにパプワ島を眺めていた視線をついっとこちらに向ける。じっと、青の目が見つめてくる。
持っていて当然なのに、持っていなかったもの。
その理由が明らかになった。
ああ、やはりマジックの、いや青の一族でもなかったんだなぁと腑に落ちた。
青に捕らわれるように、思考が深みへと落ちていく。
「だから付いていく事にした。」
「そうか、付いてくるのか・・・」
相手の言葉を反復する。意味を飲み込むと意識が浮上した。
「あ?付いてくる!?」
ああ。とあっさりうなずく。やはり特に感情は感じない。
「何か問題でも?」
「無い・・・無いけどよ・・・・」
そんな閉じ込めていた人間と一緒に行動できるな、という言葉を発しようとしたが飲み込んでしまう。
「何だ?罵倒でもされたかったのか?」
元々は俺の中にいた相手だ。俺の考えることなど分かるのだろう。
「・・・・。」
「ふん。図星か?意外に小心者だな?
ああ、表には見せなかったがお前はコンプレックスが強いからな。意外でもないか。」
ぐっと言葉に詰まる。強く出ようにも、強く出られない。
会話すると非常に疲れる相手だ。
「・・・誰が小心者だよ。・・・せめて繊細と言え。」
「繊細・・・。そうか、繊細かもな。意外に。」
「なんだよ、その妙に含みをもった言葉は。」
「いや、特に含みなどない。」
「・・・さいですか・・・」
やっぱり、疲れる。がくっと膝にくる感じだ。さて、と無駄に気合をいれる。
このよく分からない相手に声を掛ける。
さぁ、行こうか。
6.19
|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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「なぁ、お前これからどうするの?」
パプワが何処かへと去り、コタローが力を放出し過ぎ見渡す限りすっかり風景が変わってしまったパプワ島。
それを眺めながら何故か隣に立っている、本来今の自分の居場所にいる筈だった、人間へと問う。
「どうするか、とは?」
あまり感情の伺えない表情ながらも答えが返ってくる。少し安堵する。
「新しい生活。」
ああ、それよりもまず、とどこか自嘲気味に笑う。
「俺との決着をつける?」
「それもよかろう。」
その言葉を聞き、やはりね、と更にその色が濃くなる。
「が、もうそんなことはいい。」
は?と思わず声が漏れる。こいつが言うと本当にどうでもよさそうに聞こえる。
今までの歳月を思えばそんな一言では片付けられるはずはないのに。
「俺はお前に興味がある。」
同じようにパプワ島を眺めていた視線をついっとこちらに向ける。じっと、青の目が見つめてくる。
持っていて当然なのに、持っていなかったもの。
その理由が明らかになった。
ああ、やはりマジックの、いや青の一族でもなかったんだなぁと腑に落ちた。
青に捕らわれるように、思考が深みへと落ちていく。
「だから付いていく事にした。」
「そうか、付いてくるのか・・・」
相手の言葉を反復する。意味を飲み込むと意識が浮上した。
「あ?付いてくる!?」
ああ。とあっさりうなずく。やはり特に感情は感じない。
「何か問題でも?」
「無い・・・無いけどよ・・・・」
そんな閉じ込めていた人間と一緒に行動できるな、という言葉を発しようとしたが飲み込んでしまう。
「何だ?罵倒でもされたかったのか?」
元々は俺の中にいた相手だ。俺の考えることなど分かるのだろう。
「・・・・。」
「ふん。図星か?意外に小心者だな?
ああ、表には見せなかったがお前はコンプレックスが強いからな。意外でもないか。」
ぐっと言葉に詰まる。強く出ようにも、強く出られない。
会話すると非常に疲れる相手だ。
「・・・誰が小心者だよ。・・・せめて繊細と言え。」
「繊細・・・。そうか、繊細かもな。意外に。」
「なんだよ、その妙に含みをもった言葉は。」
「いや、特に含みなどない。」
「・・・さいですか・・・」
やっぱり、疲れる。がくっと膝にくる感じだ。さて、と無駄に気合をいれる。
このよく分からない相手に声を掛ける。
さぁ、行こうか。
6.19
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カップを持ち、コーヒーを口へと運ぶ。その仕草がとても板についている。
トンっとカップをテーブルに置き傍らに置いてあった新聞に手をのばす。
「あのなぁ、キンタロー。」
ダイニングに行くと既にキンタローは身支度を終え、食卓についていた。
シンタローが少し怒ったような声をあげる。母親が子供を叱る様な口調だ。
「なんだ?」
部屋の入り口に立っているシンタローにくりっと目を向ける。
とても端正な顔立ち。表情が薄い分近寄りがたさを醸し出している。
が、またその何も感じさせない雰囲気がまるで無邪気な子供の様でもある。
素直にシンタローの言葉を待つ。
「コーヒー以外にもなんか摂れ。胃に悪い。それに朝食うのは基本だ!」
一日の始まりに、動力源を摂らずにどうするんだ、と。
「ああ。ついな。」
キンタローは悪びれずにシレっと応じる。
「いや、どうもな。朝は食事を摂る気になれん。」
「いいの!食べる気無くても食べる!今から直ぐに何か作るから。そのまま新聞でも読んで待ってろ。」
そういい残すと、そのままキンタローに背を向け台所に向かおうとする。
「しかし・・・」
とキンタローのつぶやく声が耳に届く。
そのまま視線だけキンタローに向ける。
「何?それとも俺の作ったものなんか食えないってか?」
キラっとシンタローの目が輝く。
「そんなことはない。お前の作る食事はとてもおいしい。」
キンタローはシンタローに嘘がつけるほど器用ではない。
思っていたことを素直に口に出す。
それに実際シンタローが作るものに不味いものなどなかった。
彼は家庭で食べるようなものなら何でも作れる。
「なら、食え!」
ああ、でもと呟く。食材の買い置きがもう無かったかもしれない。
「コーヒーとは合うモン作れないかも。ごめんな。」
キンタローが僅かに眉をひそめる。
「シンタロー。」
ちょいちょいっと手招く。
「ん?なんだ?」
「いいから。」
「なんだよ。」
キンタローは自分では動こうとしないので、仕方無しにシンタローがキンタローの所へと行く。
目の前に立つ。キンタローも何故か椅子から立ち上がる。
二人の体格はほぼ同じだ。当然といえば当然なのかもしれない。
キンタローが少し、踵を上げる。そのまま顔を近づけると唇を額へと当てた。
直ぐに離れ、シンタローの目を見て言う。
「ありがとう。」
「な、なにすんだよ!いきなり!」
顔が僅かに赤くなっている。
「日ごろの感謝を伝えただけだが?」
天然ジゴロは手に負えない。
以前勢いのままに押し付けたもの。
|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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カップを持ち、コーヒーを口へと運ぶ。その仕草がとても板についている。
トンっとカップをテーブルに置き傍らに置いてあった新聞に手をのばす。
「あのなぁ、キンタロー。」
ダイニングに行くと既にキンタローは身支度を終え、食卓についていた。
シンタローが少し怒ったような声をあげる。母親が子供を叱る様な口調だ。
「なんだ?」
部屋の入り口に立っているシンタローにくりっと目を向ける。
とても端正な顔立ち。表情が薄い分近寄りがたさを醸し出している。
が、またその何も感じさせない雰囲気がまるで無邪気な子供の様でもある。
素直にシンタローの言葉を待つ。
「コーヒー以外にもなんか摂れ。胃に悪い。それに朝食うのは基本だ!」
一日の始まりに、動力源を摂らずにどうするんだ、と。
「ああ。ついな。」
キンタローは悪びれずにシレっと応じる。
「いや、どうもな。朝は食事を摂る気になれん。」
「いいの!食べる気無くても食べる!今から直ぐに何か作るから。そのまま新聞でも読んで待ってろ。」
そういい残すと、そのままキンタローに背を向け台所に向かおうとする。
「しかし・・・」
とキンタローのつぶやく声が耳に届く。
そのまま視線だけキンタローに向ける。
「何?それとも俺の作ったものなんか食えないってか?」
キラっとシンタローの目が輝く。
「そんなことはない。お前の作る食事はとてもおいしい。」
キンタローはシンタローに嘘がつけるほど器用ではない。
思っていたことを素直に口に出す。
それに実際シンタローが作るものに不味いものなどなかった。
彼は家庭で食べるようなものなら何でも作れる。
「なら、食え!」
ああ、でもと呟く。食材の買い置きがもう無かったかもしれない。
「コーヒーとは合うモン作れないかも。ごめんな。」
キンタローが僅かに眉をひそめる。
「シンタロー。」
ちょいちょいっと手招く。
「ん?なんだ?」
「いいから。」
「なんだよ。」
キンタローは自分では動こうとしないので、仕方無しにシンタローがキンタローの所へと行く。
目の前に立つ。キンタローも何故か椅子から立ち上がる。
二人の体格はほぼ同じだ。当然といえば当然なのかもしれない。
キンタローが少し、踵を上げる。そのまま顔を近づけると唇を額へと当てた。
直ぐに離れ、シンタローの目を見て言う。
「ありがとう。」
「な、なにすんだよ!いきなり!」
顔が僅かに赤くなっている。
「日ごろの感謝を伝えただけだが?」
天然ジゴロは手に負えない。
以前勢いのままに押し付けたもの。
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→キンシンお題11「ひとこと」の続きかもしれない。
ガンマ団本部の各施設をざっと見て回った。
実際に見た方が良いと思ったからだ。
それが一段落つき、俺の部屋で休憩しながら今後の事に付いて話し合う。
まだコイツには何をしたいか、という事を見つけてもらうつもりだった。
「父さんは偉大な研究者だったと高松が言っていた」
向って座っている相手はこちらに来てからはよくスーツを着ている。
ひょっとしたらグンマの影響なのかもしれない。
特戦部隊の隊服では近寄りがたい雰囲気を醸し出していたが、この格好はそれが和らいでいる。
長かった髪も何故かバッサリ切った。外見はそこら辺にいそうな堅気の人間にしか見えない。
「そうらしいな」
そう相槌を打つ。
高松は頭のネジを二、三本道端に落としてきたようなヤツだか、ウデと頭脳には問題は無い。
ガンマ団の顧問医師兼科学者だけあって能力面だけを見ればとても秀でている。
その高松が、『偉大だった』と言うのだ。
俺も会った事はないがその言葉に嘘はないのだろう。
「ただおまえの後を付いてあるくのも能がない。まずは俺も父さんがどんなことをやっていたのか。
それを高松の元で学んでみたい。」
「遣りたい事をするといい。その為の環境は俺が必ず用意しよう。
施設を見ていて他にも興味を持った事があれば教えてくれ。
お前が自由に見学出来るように手配しておく。勿論俺も時間が許す限り行動を共にする」
お前が嫌じゃなかったらな、と一言付け加える。
俺に出来る事といったらコレくらいしかない。
それにコイツを一人で野放しにするのは不安だ。頭は良いがどこかずれているのだ。
やはり従兄弟なのか、グンマとよく似ている。
まぁコイツの場合は仕方が無い事といえば仕方が無いのだが。
だからできる限り、コイツがこちらの生活に馴染むまでは共に居ようと心に決めていた。
グンマに頼んでもいいのだが、よほどの事が無い限りは任せたくはない。
天然に任せたらきっとろくでもない事になるのが目に見える。
「宜しく頼む」
律儀に礼を言う。
「他にも何か俺に出来る事はあるか?」
「ふん。親切だな?」
「まぁ、そらな……。一応従兄弟ってことになるしな」
「そうか」
そういうと視線を下に暫く考え込む。そしてふっと顔をあげた。
「……お前が欲しい」
「はぁ?」
何を言っているんだ、コイツは。
そう言えば島にいるとき俺の命が、と言っていた。きっとそれの事だろう。
「ああ、そういうことか。悪りぃけどよ。俺、お前に命くれてやる気はないんだわ。
俺はあの島に行って、俺の道を見つけた。これは譲る事は出来ない」
「いや、そうではない」
軽く頭を振って否定する。
そうじゃない?
ふっとパプワ島から離れる時の出来事が頭をよぎる。せっかく脳の奥底に忘れ去っていたのに。
物凄く嫌な予感がする。聞いてはならない、と。こういう嫌な予感ほどよく当たるのだ。
「皆まで言うな」
言葉を発する前にさえぎる。
「何故だ?」
「いや、その、何となく……」
「何故だ?」
繰り返してなどいらないのに、もう一度繰り返す。
そう言えばそうだった。コイツは自分が納得するまで引き下がらない大人気ない所がある。
それは研究者には向いている素質の一つなのかもしれない。
じーっとこちらを見つめる。俺がちゃんと言うまでは引き下がらないぞ、とその目が語っていた。
「キンタロー」
仕方無しに、言い聞かせるように名前を呼ぶ。
そういうとコイツはニヤっと笑った。
笑った方が凶悪に見えるのは何故だろうか?
「やっと俺の名を言ったな」
「え?」
「何だ、無意識だったのか?お前はあの島を離れてから一度も俺の名を呼んだことが無い」
「…そうだったか?」
「ああ」
事も無く頷く。
ひょっとしたら俺が名を呼ばない事を気にしていたのだろうか?
特に意図していたわけではないが、やはりコイツへの俺の引け目がそうさせていたのかもしれない。
俺はコイツの全てを奪った事になるのだから。
「なぁ……お前はその名前で満足なのか?」
「初めて俺を気にかけてくれた奴が付けた名だしな。不満が全く無いわけではないが、概ね満足している」
「そうか」
「先ほどの続きだが。手の空いた時は手合わせを頼む」
「手合わせ?」
「ああ。いつまでもお前に勝てないのは面白くない」
「いいぜ。そんなことならお安い御用だ」
俺にとっても丁度いい。同じくらいの力の持ち主がいないのだ。
マジックは当てにならない。ハーレムはすぐフラフラと思うままに行動し、めったに本部には帰ってこない。
グンマはそういうことには向いていない。そうすると残りはキンタローしかいない。
体を動かさないと鈍ってしまう。力がモノ言う世界だからあるに越した事は無い。
しかしコイツも意地が悪い。そういう意味なら最初からそういえば言いのだ。
いくら名前を呼ばせたかったと言えど、冗談が過ぎる。
只でさえ一族にはヘンな奴が多いのだ。まともそうに見えるコイツまでヘンなのに毒されたら先が思いやられる。
「それと。最初に言ったのは名前を呼ばせる為に言った冗談じゃないぞ。考えておいてくれ」
コイツはこともなげにさらっと言う。そして俺に視線を投げる。
目は口ほどにモノを言う。
それをまさに体現していた。
そうか。毒されたんじゃなくてこいつも元からヘンだったのか。
さて。どうかわそうか。
難題が目の前に転がっていた。
H17.2.27
|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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→キンシンお題11「ひとこと」の続きかもしれない。
ガンマ団本部の各施設をざっと見て回った。
実際に見た方が良いと思ったからだ。
それが一段落つき、俺の部屋で休憩しながら今後の事に付いて話し合う。
まだコイツには何をしたいか、という事を見つけてもらうつもりだった。
「父さんは偉大な研究者だったと高松が言っていた」
向って座っている相手はこちらに来てからはよくスーツを着ている。
ひょっとしたらグンマの影響なのかもしれない。
特戦部隊の隊服では近寄りがたい雰囲気を醸し出していたが、この格好はそれが和らいでいる。
長かった髪も何故かバッサリ切った。外見はそこら辺にいそうな堅気の人間にしか見えない。
「そうらしいな」
そう相槌を打つ。
高松は頭のネジを二、三本道端に落としてきたようなヤツだか、ウデと頭脳には問題は無い。
ガンマ団の顧問医師兼科学者だけあって能力面だけを見ればとても秀でている。
その高松が、『偉大だった』と言うのだ。
俺も会った事はないがその言葉に嘘はないのだろう。
「ただおまえの後を付いてあるくのも能がない。まずは俺も父さんがどんなことをやっていたのか。
それを高松の元で学んでみたい。」
「遣りたい事をするといい。その為の環境は俺が必ず用意しよう。
施設を見ていて他にも興味を持った事があれば教えてくれ。
お前が自由に見学出来るように手配しておく。勿論俺も時間が許す限り行動を共にする」
お前が嫌じゃなかったらな、と一言付け加える。
俺に出来る事といったらコレくらいしかない。
それにコイツを一人で野放しにするのは不安だ。頭は良いがどこかずれているのだ。
やはり従兄弟なのか、グンマとよく似ている。
まぁコイツの場合は仕方が無い事といえば仕方が無いのだが。
だからできる限り、コイツがこちらの生活に馴染むまでは共に居ようと心に決めていた。
グンマに頼んでもいいのだが、よほどの事が無い限りは任せたくはない。
天然に任せたらきっとろくでもない事になるのが目に見える。
「宜しく頼む」
律儀に礼を言う。
「他にも何か俺に出来る事はあるか?」
「ふん。親切だな?」
「まぁ、そらな……。一応従兄弟ってことになるしな」
「そうか」
そういうと視線を下に暫く考え込む。そしてふっと顔をあげた。
「……お前が欲しい」
「はぁ?」
何を言っているんだ、コイツは。
そう言えば島にいるとき俺の命が、と言っていた。きっとそれの事だろう。
「ああ、そういうことか。悪りぃけどよ。俺、お前に命くれてやる気はないんだわ。
俺はあの島に行って、俺の道を見つけた。これは譲る事は出来ない」
「いや、そうではない」
軽く頭を振って否定する。
そうじゃない?
ふっとパプワ島から離れる時の出来事が頭をよぎる。せっかく脳の奥底に忘れ去っていたのに。
物凄く嫌な予感がする。聞いてはならない、と。こういう嫌な予感ほどよく当たるのだ。
「皆まで言うな」
言葉を発する前にさえぎる。
「何故だ?」
「いや、その、何となく……」
「何故だ?」
繰り返してなどいらないのに、もう一度繰り返す。
そう言えばそうだった。コイツは自分が納得するまで引き下がらない大人気ない所がある。
それは研究者には向いている素質の一つなのかもしれない。
じーっとこちらを見つめる。俺がちゃんと言うまでは引き下がらないぞ、とその目が語っていた。
「キンタロー」
仕方無しに、言い聞かせるように名前を呼ぶ。
そういうとコイツはニヤっと笑った。
笑った方が凶悪に見えるのは何故だろうか?
「やっと俺の名を言ったな」
「え?」
「何だ、無意識だったのか?お前はあの島を離れてから一度も俺の名を呼んだことが無い」
「…そうだったか?」
「ああ」
事も無く頷く。
ひょっとしたら俺が名を呼ばない事を気にしていたのだろうか?
特に意図していたわけではないが、やはりコイツへの俺の引け目がそうさせていたのかもしれない。
俺はコイツの全てを奪った事になるのだから。
「なぁ……お前はその名前で満足なのか?」
「初めて俺を気にかけてくれた奴が付けた名だしな。不満が全く無いわけではないが、概ね満足している」
「そうか」
「先ほどの続きだが。手の空いた時は手合わせを頼む」
「手合わせ?」
「ああ。いつまでもお前に勝てないのは面白くない」
「いいぜ。そんなことならお安い御用だ」
俺にとっても丁度いい。同じくらいの力の持ち主がいないのだ。
マジックは当てにならない。ハーレムはすぐフラフラと思うままに行動し、めったに本部には帰ってこない。
グンマはそういうことには向いていない。そうすると残りはキンタローしかいない。
体を動かさないと鈍ってしまう。力がモノ言う世界だからあるに越した事は無い。
しかしコイツも意地が悪い。そういう意味なら最初からそういえば言いのだ。
いくら名前を呼ばせたかったと言えど、冗談が過ぎる。
只でさえ一族にはヘンな奴が多いのだ。まともそうに見えるコイツまでヘンなのに毒されたら先が思いやられる。
「それと。最初に言ったのは名前を呼ばせる為に言った冗談じゃないぞ。考えておいてくれ」
コイツはこともなげにさらっと言う。そして俺に視線を投げる。
目は口ほどにモノを言う。
それをまさに体現していた。
そうか。毒されたんじゃなくてこいつも元からヘンだったのか。
さて。どうかわそうか。
難題が目の前に転がっていた。
H17.2.27