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|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
--------------------------------------------------------------------------------
「シンタローさん、お客さんっすよー」
食材採りから戻ってきたリキッドが家の中にいるシンタローに呼びかける。
「ああん?俺に客?誰だ?」
家の中でくつろいでいたシンタローは客の心当たりがなく、不審な顔をする。が、
リキッドの穏やかと言っても良いくらいの口調からして、変なナマモノではないだろう。
シンタローはエグチくんかナカムラくんあたりかな、と判断し家の中に招くようリキッドに指示する。
「リキッド、入ってもらえ」
「はい、わかりました。どうぞー」
扉の横に立っているだろうものを手招きする。
「お、おじゃましますえ」
その人物は妙におどおどしながら、そろそろと入ってきた。
見たこともない少年だった。しかも美少年。
紫色のどこか中国を連想させるようなデザインの洋服を着ている。
だがシンタローはその言葉使いは聞き覚えがあった。
服装もどこかの誰かさんとよく似ていた。本人は覚えていたくもないのだが。
「『しますえ?』」
思わず眉をひそめ反復する。
「まあ、その辺に座ってください。今お茶用意しますから」
すっかり主夫が板についたリキッドが背中に背負っていた重そうな竹かごを下ろしながらその少年に
声を掛ける。少年はびっくりしたようにリキッドを見たが、こくんと頷くととことこと歩いていき
シンタローの横に少しはなれて座る。
「シンタローさんのお知り合いっすか?」
「あのなぁ。俺は昔のパプワ島の皆とは友達だけどこの島にははじめて来たんだよ。
お前が知らないヤツなのに俺が知っていると思うか?」
「えー、でも最近は変な人たちが頻繁に来るじゃないっすか。次元移動もしてますし」
「…そう言われたらそうかもな。この間のヒロシくんの様なこともあるかもしれないな」
シンタローはコタローの面影が少しある美少年のヒロシくんを思い出し、少し顔がゆるむ。
そのちょっと微笑んだままの表情で少年に質問をする。
「で、君は誰?どこから来たのかな?」
「わ、わて。わてどすえ。シンタローはん」
顔自体はシンタローに向けているが、視線は泳いでいる。
「……アラシヤマ?」
「アラシヤマ?!」
リキッドが吃驚して大声を出す。台所でお茶の準備をしていたが、シンタローたちの元へと駆け寄る。
「アラシヤマってあのアラシヤマさんっすか?!」
「……そーなんじゃねーの?言葉遣い同じだし、服装は似ているし。面影も残ってるしなー」
「シンタローさん。何でそんなに冷静なんすか?
おかしいじゃないっすか!いきなり子供になっちゃってるんすよ!」
「このくらいのことで取り乱していたらガンマ団総帥と一族ん中ではやっていけねーからな。
自分で言うのもなんだが、ウチの一族は変だ。団員も変なやつばかりだ」
「……」
リキッドはどう返事をしてよいやら解らず黙り込む。
下手に『そうっすよねー』と相槌を打とうものなら一撃必殺をくらいそうだ。
「リキッド、茶。茶菓子もな」
「ああ、すんません。今持ってきます」
もう一度台所へと戻り
「シンタローさん、妙に優しくないっすか?」
ちゃぶ台の上に客用の湯飲みとお茶菓子を並べながらそう訊ねる。
「ったりめーだろうが。アラシヤマと言えどもこんなちみっこ相手に乱暴な態度とれっか!」
「……美少年だから、なだけじゃないっすか…」
コタローに再会した時やヒロシ君に会った時を思い出してぼそっと呟く。
「あ~~ん?何か言ったかな、リキッドくん?」
「い、いえ!俺、何にも言ってないっすよ!?」
「おめーも座っとけ」
「…はい」
悲しきかな、お嫁さんはお姑さんに逆らう事は出来なかった。
「アラシヤマ」
「なんどすか?」
「もう一度確認するが、本当にアラシヤマなんだな?」
「それ以外にありまっしゃろか。姿が変ったらわての事誰だかわからないなんて酷いどす、
シンタローはんそれでも友達ですのん?」
アラシヤマは目をうるませ、シンタローを見上げる。
「……」
シンタローは何も答えず、そっと手で鼻を押さえる。ついでに顔も反対へとそむける。
アラシヤマがいつものアラシヤマだったらシンタローは容赦なく、友達じゃねーよ、と
突っ込みを入れていただろう。だが、不幸な事にアラシヤマは美青年だった。幼くなったら当然美少年だ。
シンタローは美少年にとことん弱かった。
「シンタローさん、あんた、美少年なら誰でもいいんすか?」
「うっせーよ」
「だって、アラシヤマですよ、アラシヤマ!」
「解ってるよ!俺だってヤだよ!なんでこいつ相手に、と思うけどしかたねーだろ!
見ての通り、ちみっこのおまけに美少年なんだし!」
「…やっぱり誰でもいいんじゃないっすか…」
こんなんがガンマ団総帥でいいのかとリキッドは遠い目になる。
「よっし、アラシヤマ。おまえもうそのままでいろ」
いつになく優しい態度のシンタローにアラシヤマは感激する。
「…シンタローはん、一番の友達にしてくれますか?」
「おまえがそのままならな」
とろけるような微笑を浮かべる。いつものどこか胡散臭い笑顔ではなく、本当に心からの笑みだ。
それがアラシヤマの脳天を直撃した。
「わて、このままでいますえ」
即答だった。少年に迷いは微塵も見当たらない。
「よし。んじゃ、暫くはここで寝泊りすればいい。一人じゃ不安だろ?」
「シンタローはん」
アラシヤマはぷっくりと柔らかそうな頬を赤くそめ、目を潤ませ、両手を胸の前に組み、
感極まったようにシンタローの名を呟く。
彼の人生は、今、花開いた。
そして凛々しいアニキとどこか影のある儚い美少年はみつめあう。
そこはかとなく妖しい雰囲気がパプワハウスを支配する。
そんな様子を見守っていた可愛い生き物にはめっぽう弱いが美少年には弱くない
リキッドがいい加減我慢できなくなったのか、それともその雰囲気に耐えられなくなったのか
ツッコミを入れる。
「ちっがーう!シンタローさん、まずこうなった原因を調べなきゃ駄目っすよ!
もし他の人たちもアラシヤマみたいになっちゃったらどーするんすか?」
「え?いいんじゃね?」
美少年が増えるんなら俺は構わねーよ。
シンタローの顔には間違いなくそう書いてあった、ようにリキッドには見えた。
ああ、駄目だこのショタコンアニキ。脳が汚染されている。
リキッドは深く、深くため息をついた。
「……じゃあ、取り敢えずは今日はもうそのまま泊まってもらうとして。
明日はちゃんと調べてくださいよ?
それと、シンタローさんからちゃんとパプワとチャッピーに説明してくださいね?」
「ああ。解った。パプワも新しい友達が出来ていいんじゃねー?」
「シンタローさん、それ、アラシヤマさんっすよ。パプワとは歳、離れまくってます」
「いちいち細かいヤツだなー。男ならもっと大きく構えとけ」
「シンタローさんはもっと気にしてください」
「リキッドはん、お世話になりますえ」
アラシヤマは律儀に頭を下げる。
リキッドはなんとも言えない微妙な表情を浮かべ、思った。
キモい変な人でもこうして姿が子供になったら無下に出来ないのは何故だろう、と。
そして、アラシヤマをむかい入れた奇妙な生活が始まる。
H17.2.22
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「ああん?俺に客?誰だ?」
家の中でくつろいでいたシンタローは客の心当たりがなく、不審な顔をする。が、
リキッドの穏やかと言っても良いくらいの口調からして、変なナマモノではないだろう。
シンタローはエグチくんかナカムラくんあたりかな、と判断し家の中に招くようリキッドに指示する。
「リキッド、入ってもらえ」
「はい、わかりました。どうぞー」
扉の横に立っているだろうものを手招きする。
「お、おじゃましますえ」
その人物は妙におどおどしながら、そろそろと入ってきた。
見たこともない少年だった。しかも美少年。
紫色のどこか中国を連想させるようなデザインの洋服を着ている。
だがシンタローはその言葉使いは聞き覚えがあった。
服装もどこかの誰かさんとよく似ていた。本人は覚えていたくもないのだが。
「『しますえ?』」
思わず眉をひそめ反復する。
「まあ、その辺に座ってください。今お茶用意しますから」
すっかり主夫が板についたリキッドが背中に背負っていた重そうな竹かごを下ろしながらその少年に
声を掛ける。少年はびっくりしたようにリキッドを見たが、こくんと頷くととことこと歩いていき
シンタローの横に少しはなれて座る。
「シンタローさんのお知り合いっすか?」
「あのなぁ。俺は昔のパプワ島の皆とは友達だけどこの島にははじめて来たんだよ。
お前が知らないヤツなのに俺が知っていると思うか?」
「えー、でも最近は変な人たちが頻繁に来るじゃないっすか。次元移動もしてますし」
「…そう言われたらそうかもな。この間のヒロシくんの様なこともあるかもしれないな」
シンタローはコタローの面影が少しある美少年のヒロシくんを思い出し、少し顔がゆるむ。
そのちょっと微笑んだままの表情で少年に質問をする。
「で、君は誰?どこから来たのかな?」
「わ、わて。わてどすえ。シンタローはん」
顔自体はシンタローに向けているが、視線は泳いでいる。
「……アラシヤマ?」
「アラシヤマ?!」
リキッドが吃驚して大声を出す。台所でお茶の準備をしていたが、シンタローたちの元へと駆け寄る。
「アラシヤマってあのアラシヤマさんっすか?!」
「……そーなんじゃねーの?言葉遣い同じだし、服装は似ているし。面影も残ってるしなー」
「シンタローさん。何でそんなに冷静なんすか?
おかしいじゃないっすか!いきなり子供になっちゃってるんすよ!」
「このくらいのことで取り乱していたらガンマ団総帥と一族ん中ではやっていけねーからな。
自分で言うのもなんだが、ウチの一族は変だ。団員も変なやつばかりだ」
「……」
リキッドはどう返事をしてよいやら解らず黙り込む。
下手に『そうっすよねー』と相槌を打とうものなら一撃必殺をくらいそうだ。
「リキッド、茶。茶菓子もな」
「ああ、すんません。今持ってきます」
もう一度台所へと戻り
「シンタローさん、妙に優しくないっすか?」
ちゃぶ台の上に客用の湯飲みとお茶菓子を並べながらそう訊ねる。
「ったりめーだろうが。アラシヤマと言えどもこんなちみっこ相手に乱暴な態度とれっか!」
「……美少年だから、なだけじゃないっすか…」
コタローに再会した時やヒロシ君に会った時を思い出してぼそっと呟く。
「あ~~ん?何か言ったかな、リキッドくん?」
「い、いえ!俺、何にも言ってないっすよ!?」
「おめーも座っとけ」
「…はい」
悲しきかな、お嫁さんはお姑さんに逆らう事は出来なかった。
「アラシヤマ」
「なんどすか?」
「もう一度確認するが、本当にアラシヤマなんだな?」
「それ以外にありまっしゃろか。姿が変ったらわての事誰だかわからないなんて酷いどす、
シンタローはんそれでも友達ですのん?」
アラシヤマは目をうるませ、シンタローを見上げる。
「……」
シンタローは何も答えず、そっと手で鼻を押さえる。ついでに顔も反対へとそむける。
アラシヤマがいつものアラシヤマだったらシンタローは容赦なく、友達じゃねーよ、と
突っ込みを入れていただろう。だが、不幸な事にアラシヤマは美青年だった。幼くなったら当然美少年だ。
シンタローは美少年にとことん弱かった。
「シンタローさん、あんた、美少年なら誰でもいいんすか?」
「うっせーよ」
「だって、アラシヤマですよ、アラシヤマ!」
「解ってるよ!俺だってヤだよ!なんでこいつ相手に、と思うけどしかたねーだろ!
見ての通り、ちみっこのおまけに美少年なんだし!」
「…やっぱり誰でもいいんじゃないっすか…」
こんなんがガンマ団総帥でいいのかとリキッドは遠い目になる。
「よっし、アラシヤマ。おまえもうそのままでいろ」
いつになく優しい態度のシンタローにアラシヤマは感激する。
「…シンタローはん、一番の友達にしてくれますか?」
「おまえがそのままならな」
とろけるような微笑を浮かべる。いつものどこか胡散臭い笑顔ではなく、本当に心からの笑みだ。
それがアラシヤマの脳天を直撃した。
「わて、このままでいますえ」
即答だった。少年に迷いは微塵も見当たらない。
「よし。んじゃ、暫くはここで寝泊りすればいい。一人じゃ不安だろ?」
「シンタローはん」
アラシヤマはぷっくりと柔らかそうな頬を赤くそめ、目を潤ませ、両手を胸の前に組み、
感極まったようにシンタローの名を呟く。
彼の人生は、今、花開いた。
そして凛々しいアニキとどこか影のある儚い美少年はみつめあう。
そこはかとなく妖しい雰囲気がパプワハウスを支配する。
そんな様子を見守っていた可愛い生き物にはめっぽう弱いが美少年には弱くない
リキッドがいい加減我慢できなくなったのか、それともその雰囲気に耐えられなくなったのか
ツッコミを入れる。
「ちっがーう!シンタローさん、まずこうなった原因を調べなきゃ駄目っすよ!
もし他の人たちもアラシヤマみたいになっちゃったらどーするんすか?」
「え?いいんじゃね?」
美少年が増えるんなら俺は構わねーよ。
シンタローの顔には間違いなくそう書いてあった、ようにリキッドには見えた。
ああ、駄目だこのショタコンアニキ。脳が汚染されている。
リキッドは深く、深くため息をついた。
「……じゃあ、取り敢えずは今日はもうそのまま泊まってもらうとして。
明日はちゃんと調べてくださいよ?
それと、シンタローさんからちゃんとパプワとチャッピーに説明してくださいね?」
「ああ。解った。パプワも新しい友達が出来ていいんじゃねー?」
「シンタローさん、それ、アラシヤマさんっすよ。パプワとは歳、離れまくってます」
「いちいち細かいヤツだなー。男ならもっと大きく構えとけ」
「シンタローさんはもっと気にしてください」
「リキッドはん、お世話になりますえ」
アラシヤマは律儀に頭を下げる。
リキッドはなんとも言えない微妙な表情を浮かべ、思った。
キモい変な人でもこうして姿が子供になったら無下に出来ないのは何故だろう、と。
そして、アラシヤマをむかい入れた奇妙な生活が始まる。
H17.2.22
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「シンちゃーん、ぼくー」
オマエはどこの子供だと思わず怒鳴りたくなるような間抜けな声が総帥室の扉の向こうから聞こえた。
大人しくデスクワークに励んでいたシンタローは、ふぅと大きなため息を漏らすと手元のパネルでロック解除を押す。
「おまえなら施設ん中どこでも入れるだろーが。ここだって。いちいち俺に開けさせんなよ」
ペンを放り出し、応接用の椅子にどっかりと腰を下ろす。グンマも当然のようにシンタローの向かいに座った。
「まぁまぁいいじゃない。はい、これ」
すっとノートを差し出した。シンタローは訝しがりながらも受け取る。
シンタローは何か恨み言でも綴っているのかと思ったのだがそれは新品特有の手触りだった。
念のためぱらぱらと捲って確認してみたがどのページも真っ白だ。
ノートから目をあげ、片手に軽く持ち上げ「で、何だ?」
「いやだなぁ、シンちゃんもう忘れちゃったの?」
最近忙しすぎてもうボケ始めちゃったんじゃないのぉ~と青い目に何の邪気もなく、さり気無くひどい事を言いながら説明し始めた。
「こないだキンちゃんと一緒に言ったじゃない。僕らはお互いのことを知らな過ぎるでしょ?
だから親交を深めるために交換日記をしようよって僕が提案したら皆乗り気になってくれたじゃない」
「……こうかんにっき?」
なんだそれは、小学生か俺らは、とシンタローは頭を抱えた。いつ自分がそんな約束を交わしたのだろうか?
「皆でお酒飲んだときだよ」
長い付き合いだ、シンタローの考えていることなど分かるのだろうグンマが記憶を引っ張り出す欠片投げた。
「…………。」
酒、とシンタローは考え込む。
最近はすっかりご無沙汰だった為かちょっとたしなむ程度に舐めただけなのだが翌日ひどい目にあったあの時か。
「俺、お前の考えそうな事なら分かるし、お前だって俺の考えること分かるだろ?」
嫌なのだが分かるものは仕方がない、そんな表情を浮かべながらシンタローは続けた。
「現にさっきだって俺がいつのことだったかと考え始めたらお前が助言しただろ?
なのに今更?男三人でか?しかもこの歳になって?」
恋に恋する年頃の乙女じゃあるまいし、と吐き捨てた。
「シンちゃん、あの時はそんなこと言わなかったじゃない」
グンマはぷーとほっぺたを膨らまして拗ね始めた。
「そりゃ、酔ってたからだろうが!久しぶりに体内にアルコール入れたから肝臓が弱ってたんだよっ。
頭の判断機能も麻痺ってたんだよ!酒の席での約束なんか本気にするなっ!」
「でも、『いいぜ』って言ったじゃないのっ。それってちょこっとはいいかもって思ってくれてないと
いくら酔っていてもOKはしてくれないんじゃないの?シンちゃんは自分の嫌なことはハッキリ言うじゃない。
それに僕たちはキンちゃんの事殆ど知らないんだし!」
「あいつは俺の中にいたんだ」
苦虫を噛んだような渋い顔で反論を始めたシンタローをグンマがそこが違う、と指を左右にふり遮った。
「だから、キンちゃんは僕らのことを一方的に知っているだけでしょ?しかも単に情報として。
キンちゃんが実際に体験したわけじゃないし、それは映画を見ているようなものなんだよ。
ううん、違う。映画は見せることを前提に作っているけどキンちゃんは違うんだよ?第三者、客観的にキンちゃんが思うのと、実際にキンちゃんが手にモノを取って感じたこととは別のことでしょ?
僕は、キンちゃんが『今』をどう思っているのか知りたいし、今まで体験できなかったどんな小さいことも
一緒に感じたいんだよ。シンちゃんだって同じ気持ちでしょ?」
確かにグンマの言う通りなのだろう。
キンタローはその精神が生まれたときからシンタローの中に閉じ込められていたのだから。
いつ、どの用にキンタローが自分という存在を意識し始めたのだろうか。
人は他者が存在して初めて『自分』という自我が生まれるものではないのだろうか。
そしてそのキンタローのあり方がいつ『異常』だと思うようになり、
24年間をどのように感じ、どのように過してきたのだろうか。
シンタローはキンタローの存在を知ったのは『殺す』と言って戦いを挑んできたその時だ。
それ以前の事は全く知らない。異常な状況にいたのに何故今、普通に一族やガンマ団と接することが出来るのだろうか。
シンタローはそう常々疑問に思っていた。だから交換日記などと言うものにも肯定してしまったのだろう。
そしてグンマは純粋にキンタローの心配をしている。
きっとそれは常に己を案じてくれる人物がいたからなのだろうかと思い、
「まるで高松みたいだな……」
シンタローはキンタローの親の様なグンマの口ぶりに諦めたようにポツリと漏らした。
グンマはそれをシンタローなりの了承として受け取り、満足そうに微笑みながら
「僕がおとうさんでシンちゃんがおかあさんだね」
「ばーか。同じ歳ぐらいの息子なんていらねぇよ。それを言うなら俺が兄貴でオマエはキンタローの歳の離れた弟だろ?」
にやりと意地の悪そうな笑みを浮かべグンマをからかう。
「なんで僕が弟になるの?!しかも『歳の離れた』って何!?僕、キンちゃんよりオトナだよ!」
「いいのかなぁ、そんな事いって?あいつ、頭よさそうだぜ?そんな風にいつまでもボケボケでいるとあっという間に抜かれちまうぜ?」
「あ、そーゆーシンちゃんはいいの?」
「いいの。俺は頭脳労働派じゃないからな。拳で語るから。あいつより強いしねー」
まだ、だけど。とは心の中だけに付け加える。
シンタローのその茶化した様子にグンマはシンタローも何だかんだ言っても結局はキンタローの事を
心配しているんだと嬉しく思う。
「僕ら、キンちゃんのいいおにいちゃんでいようね?そしてコタローちゃんが目を覚ましたら
3人でコタローちゃんの自慢のおにいちゃんになれるといいよね~。
おにいちゃんが3人もいたらコタローちゃん、今度こそ絶対に寂しい思いをさせないで済むから」
家族が増えるっていいよね、とグンマは童顔が更に幼くなるような笑みを浮かべる。
「ああ。そうだな」
シンタローはコタローが目を覚ました時を思い浮かべグンマに負けず劣らずの笑顔を浮かべる。
グンマは天邪鬼なシンタローを知っているだけに『コタロー』の事になると思ったことが直ぐ顔に出る
ブラコンな従兄弟にちょっと呆れたように呟く。
「もう、シンちゃんはコタローちゃんの事になると本当に素直だね」
「ほっとけ。俺は世界一の『コタコン』になるって前に誓ったんだ!
ぐっと握りこぶしをつくりなんか文句でもあんのかよ、と目に書いてグンマを睨みつける。
「ううんー、頑張ってね、シンちゃん……」
コタローちゃん、目を覚ましたらシンちゃんに構い倒されて大変そう、とグンマはコタローの将来に同情した。
「でも交換日記って何を書けばいいんだよ?」
「その日あったこととそれに対してどう思ったかを簡単に書けばいいんじゃないの?
毎日一緒にいるわけじゃないから。ただしキンちゃんにもちゃんと分かるようにね。
僕はシンちゃんが何をしているか大雑把でも分かるけどキンちゃんは分からないと思うよ」
「でもさ、アイツも分かるんじゃないか?今までずっと見てたんだし」
「……じゃあ、何があってそれに対してどう思ったことが大切だよね。キンちゃんが何をどう思っているのか
を第一にしたいし。そっちの方をちゃんと書けば良いんじゃない?僕らがお手本にならなきゃね。
う~ん、……僕だったら今の実験がうまく言って嬉しいとか、高松が今日も出血多量になりすぎて心配したとか、
そんな感じになるけど。
あとはシンちゃんが今日もムリをして何だか顔色が悪いから心配、とかたまには弱音言ってくれもいいんじゃないかなぁとか」
グンマはそう言いながらちろっと上目遣いでシンタローの様子を伺うと
「後半のはいらん」
シンタローは思いっきり機嫌の悪そうな表情で切り捨てた。
「だいたいしょっぱなからそんな、なんつーかディープそうなの盛り込んだら絶対誤解するだろ。
前半の軽めの小学生のようなヤツでよくね?……でもそうすっと直接伝えればいいだろって気がするんだよなぁ、俺」
「う~ん。そうだよねぇ。でも僕、交換日記とか僕らが幼い頃にした事を同じようにしたいんだよねぇ」
「………そうだな。まずは俺らが子供の頃にした事、一つ一つしていくか」
「うん!皆で一つのことをするっていう事が楽しいからねっ!あとはキンちゃんがもっとこうしたいとか
ああしたいとか言ってくれたら、僕らはそれを全力でしようねっ!」
グンマは子供の純粋な気持ちがそのまま丸々残って大人になった、そんな笑顔を浮かべながら言う。
「そーだな」
二人で、キンタローの兄になるのもいいかもな、とシンタローは頷いた。
2007.8.14
|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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「シンちゃーん、ぼくー」
オマエはどこの子供だと思わず怒鳴りたくなるような間抜けな声が総帥室の扉の向こうから聞こえた。
大人しくデスクワークに励んでいたシンタローは、ふぅと大きなため息を漏らすと手元のパネルでロック解除を押す。
「おまえなら施設ん中どこでも入れるだろーが。ここだって。いちいち俺に開けさせんなよ」
ペンを放り出し、応接用の椅子にどっかりと腰を下ろす。グンマも当然のようにシンタローの向かいに座った。
「まぁまぁいいじゃない。はい、これ」
すっとノートを差し出した。シンタローは訝しがりながらも受け取る。
シンタローは何か恨み言でも綴っているのかと思ったのだがそれは新品特有の手触りだった。
念のためぱらぱらと捲って確認してみたがどのページも真っ白だ。
ノートから目をあげ、片手に軽く持ち上げ「で、何だ?」
「いやだなぁ、シンちゃんもう忘れちゃったの?」
最近忙しすぎてもうボケ始めちゃったんじゃないのぉ~と青い目に何の邪気もなく、さり気無くひどい事を言いながら説明し始めた。
「こないだキンちゃんと一緒に言ったじゃない。僕らはお互いのことを知らな過ぎるでしょ?
だから親交を深めるために交換日記をしようよって僕が提案したら皆乗り気になってくれたじゃない」
「……こうかんにっき?」
なんだそれは、小学生か俺らは、とシンタローは頭を抱えた。いつ自分がそんな約束を交わしたのだろうか?
「皆でお酒飲んだときだよ」
長い付き合いだ、シンタローの考えていることなど分かるのだろうグンマが記憶を引っ張り出す欠片投げた。
「…………。」
酒、とシンタローは考え込む。
最近はすっかりご無沙汰だった為かちょっとたしなむ程度に舐めただけなのだが翌日ひどい目にあったあの時か。
「俺、お前の考えそうな事なら分かるし、お前だって俺の考えること分かるだろ?」
嫌なのだが分かるものは仕方がない、そんな表情を浮かべながらシンタローは続けた。
「現にさっきだって俺がいつのことだったかと考え始めたらお前が助言しただろ?
なのに今更?男三人でか?しかもこの歳になって?」
恋に恋する年頃の乙女じゃあるまいし、と吐き捨てた。
「シンちゃん、あの時はそんなこと言わなかったじゃない」
グンマはぷーとほっぺたを膨らまして拗ね始めた。
「そりゃ、酔ってたからだろうが!久しぶりに体内にアルコール入れたから肝臓が弱ってたんだよっ。
頭の判断機能も麻痺ってたんだよ!酒の席での約束なんか本気にするなっ!」
「でも、『いいぜ』って言ったじゃないのっ。それってちょこっとはいいかもって思ってくれてないと
いくら酔っていてもOKはしてくれないんじゃないの?シンちゃんは自分の嫌なことはハッキリ言うじゃない。
それに僕たちはキンちゃんの事殆ど知らないんだし!」
「あいつは俺の中にいたんだ」
苦虫を噛んだような渋い顔で反論を始めたシンタローをグンマがそこが違う、と指を左右にふり遮った。
「だから、キンちゃんは僕らのことを一方的に知っているだけでしょ?しかも単に情報として。
キンちゃんが実際に体験したわけじゃないし、それは映画を見ているようなものなんだよ。
ううん、違う。映画は見せることを前提に作っているけどキンちゃんは違うんだよ?第三者、客観的にキンちゃんが思うのと、実際にキンちゃんが手にモノを取って感じたこととは別のことでしょ?
僕は、キンちゃんが『今』をどう思っているのか知りたいし、今まで体験できなかったどんな小さいことも
一緒に感じたいんだよ。シンちゃんだって同じ気持ちでしょ?」
確かにグンマの言う通りなのだろう。
キンタローはその精神が生まれたときからシンタローの中に閉じ込められていたのだから。
いつ、どの用にキンタローが自分という存在を意識し始めたのだろうか。
人は他者が存在して初めて『自分』という自我が生まれるものではないのだろうか。
そしてそのキンタローのあり方がいつ『異常』だと思うようになり、
24年間をどのように感じ、どのように過してきたのだろうか。
シンタローはキンタローの存在を知ったのは『殺す』と言って戦いを挑んできたその時だ。
それ以前の事は全く知らない。異常な状況にいたのに何故今、普通に一族やガンマ団と接することが出来るのだろうか。
シンタローはそう常々疑問に思っていた。だから交換日記などと言うものにも肯定してしまったのだろう。
そしてグンマは純粋にキンタローの心配をしている。
きっとそれは常に己を案じてくれる人物がいたからなのだろうかと思い、
「まるで高松みたいだな……」
シンタローはキンタローの親の様なグンマの口ぶりに諦めたようにポツリと漏らした。
グンマはそれをシンタローなりの了承として受け取り、満足そうに微笑みながら
「僕がおとうさんでシンちゃんがおかあさんだね」
「ばーか。同じ歳ぐらいの息子なんていらねぇよ。それを言うなら俺が兄貴でオマエはキンタローの歳の離れた弟だろ?」
にやりと意地の悪そうな笑みを浮かべグンマをからかう。
「なんで僕が弟になるの?!しかも『歳の離れた』って何!?僕、キンちゃんよりオトナだよ!」
「いいのかなぁ、そんな事いって?あいつ、頭よさそうだぜ?そんな風にいつまでもボケボケでいるとあっという間に抜かれちまうぜ?」
「あ、そーゆーシンちゃんはいいの?」
「いいの。俺は頭脳労働派じゃないからな。拳で語るから。あいつより強いしねー」
まだ、だけど。とは心の中だけに付け加える。
シンタローのその茶化した様子にグンマはシンタローも何だかんだ言っても結局はキンタローの事を
心配しているんだと嬉しく思う。
「僕ら、キンちゃんのいいおにいちゃんでいようね?そしてコタローちゃんが目を覚ましたら
3人でコタローちゃんの自慢のおにいちゃんになれるといいよね~。
おにいちゃんが3人もいたらコタローちゃん、今度こそ絶対に寂しい思いをさせないで済むから」
家族が増えるっていいよね、とグンマは童顔が更に幼くなるような笑みを浮かべる。
「ああ。そうだな」
シンタローはコタローが目を覚ました時を思い浮かべグンマに負けず劣らずの笑顔を浮かべる。
グンマは天邪鬼なシンタローを知っているだけに『コタロー』の事になると思ったことが直ぐ顔に出る
ブラコンな従兄弟にちょっと呆れたように呟く。
「もう、シンちゃんはコタローちゃんの事になると本当に素直だね」
「ほっとけ。俺は世界一の『コタコン』になるって前に誓ったんだ!
ぐっと握りこぶしをつくりなんか文句でもあんのかよ、と目に書いてグンマを睨みつける。
「ううんー、頑張ってね、シンちゃん……」
コタローちゃん、目を覚ましたらシンちゃんに構い倒されて大変そう、とグンマはコタローの将来に同情した。
「でも交換日記って何を書けばいいんだよ?」
「その日あったこととそれに対してどう思ったかを簡単に書けばいいんじゃないの?
毎日一緒にいるわけじゃないから。ただしキンちゃんにもちゃんと分かるようにね。
僕はシンちゃんが何をしているか大雑把でも分かるけどキンちゃんは分からないと思うよ」
「でもさ、アイツも分かるんじゃないか?今までずっと見てたんだし」
「……じゃあ、何があってそれに対してどう思ったことが大切だよね。キンちゃんが何をどう思っているのか
を第一にしたいし。そっちの方をちゃんと書けば良いんじゃない?僕らがお手本にならなきゃね。
う~ん、……僕だったら今の実験がうまく言って嬉しいとか、高松が今日も出血多量になりすぎて心配したとか、
そんな感じになるけど。
あとはシンちゃんが今日もムリをして何だか顔色が悪いから心配、とかたまには弱音言ってくれもいいんじゃないかなぁとか」
グンマはそう言いながらちろっと上目遣いでシンタローの様子を伺うと
「後半のはいらん」
シンタローは思いっきり機嫌の悪そうな表情で切り捨てた。
「だいたいしょっぱなからそんな、なんつーかディープそうなの盛り込んだら絶対誤解するだろ。
前半の軽めの小学生のようなヤツでよくね?……でもそうすっと直接伝えればいいだろって気がするんだよなぁ、俺」
「う~ん。そうだよねぇ。でも僕、交換日記とか僕らが幼い頃にした事を同じようにしたいんだよねぇ」
「………そうだな。まずは俺らが子供の頃にした事、一つ一つしていくか」
「うん!皆で一つのことをするっていう事が楽しいからねっ!あとはキンちゃんがもっとこうしたいとか
ああしたいとか言ってくれたら、僕らはそれを全力でしようねっ!」
グンマは子供の純粋な気持ちがそのまま丸々残って大人になった、そんな笑顔を浮かべながら言う。
「そーだな」
二人で、キンタローの兄になるのもいいかもな、とシンタローは頷いた。
2007.8.14
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|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
--------------------------------------------------------------------------------
超小話
「大丈夫だよ、シンちゃん」
グンマが春の暖かい日差しを思わせるような穏やかな笑顔に言葉をのせる。
「シンちゃんがね、『好きだ』って思っていることは必ず伝わっているよ
僕はシンちゃんのこと大好きだよ。僕の気持ちがシンちゃんにも伝わっていて、だから
シンちゃんも忙しい合間を縫って僕と会ってくれるんだよね?従兄弟って事やガンマ団員って事を抜いてさ」
シンタローはグンマと会うのに理由なんか考えたことも無い。そう自然に、だ。
振り返ってみれば単に馬鹿騒ぎしたいときや、気分が沈んだときグンマの顔を見ると心が軽くなった。
だがそれを素直に認めるのは癪に障る。なにせ能天気と書いてグンマと読むような人間が相手だ。
「……勝手にオマエがここまで押しかけてるんだろ」
一拍置いてそんな事を言っても、それは却ってグンマの言い分を肯定しているようなものだ。
事実、シンタローからグンマに会いに行く割合は半々と行った所だろうか。
従兄弟の照れ屋ぶりを重々承知しているのでグンマはうん。と頷き、知ってた?と続ける。
「僕と一緒にいるときのシンちゃん、間抜けな顔してるでしょ。それ見れるの僕だけだと思うとちょっと自慢」
そんなシンタローには分からないことをいいながらにゅっと両手を伸ばし、人差し指と親指で軽くシンタローの頬を掴むと横へと引っ張る。
「何すんだよっ」
シンタローは珍しくグンマがまじめな顔をして話すものだから油断してあっさりと頬を摘まれた。
青の一族にしては筋肉の付いてない細っこい腕を振り払う。
「ね?」
茶目っ気たっぷりに微笑む。
ふんっと顔を背ける。
「耳、あかいよー」うふふと女の子のような忍び笑いを漏らしながらグンマは素直じゃない従兄弟をからかう。
「うっせ」
横に向いたままのシンタローの頬を両手で挟み、バツが悪そうに目をそらせようとするシンタローの伏目がちな黒い目と無理やり視線を合わた。
「大丈夫だよ」
グンマは繰り返す。
「僕は、僕達は、シンちゃんのことが大好きだから」
H18.5.22
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超小話
「大丈夫だよ、シンちゃん」
グンマが春の暖かい日差しを思わせるような穏やかな笑顔に言葉をのせる。
「シンちゃんがね、『好きだ』って思っていることは必ず伝わっているよ
僕はシンちゃんのこと大好きだよ。僕の気持ちがシンちゃんにも伝わっていて、だから
シンちゃんも忙しい合間を縫って僕と会ってくれるんだよね?従兄弟って事やガンマ団員って事を抜いてさ」
シンタローはグンマと会うのに理由なんか考えたことも無い。そう自然に、だ。
振り返ってみれば単に馬鹿騒ぎしたいときや、気分が沈んだときグンマの顔を見ると心が軽くなった。
だがそれを素直に認めるのは癪に障る。なにせ能天気と書いてグンマと読むような人間が相手だ。
「……勝手にオマエがここまで押しかけてるんだろ」
一拍置いてそんな事を言っても、それは却ってグンマの言い分を肯定しているようなものだ。
事実、シンタローからグンマに会いに行く割合は半々と行った所だろうか。
従兄弟の照れ屋ぶりを重々承知しているのでグンマはうん。と頷き、知ってた?と続ける。
「僕と一緒にいるときのシンちゃん、間抜けな顔してるでしょ。それ見れるの僕だけだと思うとちょっと自慢」
そんなシンタローには分からないことをいいながらにゅっと両手を伸ばし、人差し指と親指で軽くシンタローの頬を掴むと横へと引っ張る。
「何すんだよっ」
シンタローは珍しくグンマがまじめな顔をして話すものだから油断してあっさりと頬を摘まれた。
青の一族にしては筋肉の付いてない細っこい腕を振り払う。
「ね?」
茶目っ気たっぷりに微笑む。
ふんっと顔を背ける。
「耳、あかいよー」うふふと女の子のような忍び笑いを漏らしながらグンマは素直じゃない従兄弟をからかう。
「うっせ」
横に向いたままのシンタローの頬を両手で挟み、バツが悪そうに目をそらせようとするシンタローの伏目がちな黒い目と無理やり視線を合わた。
「大丈夫だよ」
グンマは繰り返す。
「僕は、僕達は、シンちゃんのことが大好きだから」
H18.5.22
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○月×日
今日もシンちゃんなぐられた。頭にたんこぶができてしまった。
少しふくらんだそこをそーっとさわるとふにふにしていた。
ぼくはその一言を忘れないようにこうして書く。
シンちゃんは『悪りぃ、いつかわびするよ』と言った。
「グンマぁ、入るぞー?」
シンタローがグンマの研究室を訪れる。
グンマはまだ二十歳にも満たないが専用の研究室をガンマ団本部に持っている。
高松に『僕も高松の様な部屋が欲しいな』と何気ない一言を漏らした翌日、グンマ専用のが出来た。
「遅いよー、シンちゃん。僕待ってたんだからね」
スーツの上に白衣を羽織ったグンマが、休憩用の椅子に座って不満そうに文句を言う。
テーブルの上にはすっかり冷めてしまったであろうお茶とお菓子がのっていた。
「いや、悪いな。練習が伸びちまってよ」
「うん。そうだろうな、とは思っていたんだけど」
グンマの長く伸ばした金色の髪と、くりっと大きな青い目から判るように青の一族だ。
いっぽう、グンマに言われる前に勝手に向いに座ったシンタローは一族の特徴と言われるその色を持たない。
黒の髪は訓練着の襟に掛かるかどうかという長さで、切れ長の瞳に輝くのは意思の強そうな髪と同色の黒だ。
本人はそれをとても気にしているようだかそれを表に出している姿をグンマは見たことはない。
「スーツに着られたグンマがこうして研究室に篭っているってのも慣れねーなぁ」
「いいの。僕、自分専用の研究室欲しかったんだから。だからそれに見合うような格好しているんじゃない」
「まぁ、そんなことはいいか。で、用件って何だ?」
シンタローは自分を呼んだ理由をグンマに訊ねた。
「そうそう!僕、別に世間話する為にシンちゃん呼び出したわけじゃないんだよ!」
力んで言う。すっと立ち上がるとそのままスタスタとなにやら色々機材の置いてある机に向う。
ばらばらと雑多に置いてあるものの中から一冊のノートらしきものを取ると、シンタローの元へと戻る。
が、今度は椅子に腰を落とさず、シンタローを威圧するように仁王立ちになり、
持ってきたノートをシンタローに突きつけた。
「何だよ?」
不審そうに何も説明無しにノートを押し付けたグンマに説明を求める。
「その付箋がある箇所開いてみてよ」
グンマがそういうのでシンタローはまずはそのノートの表紙を見ると毛筆で渋く『日記』と書かれていた。
グンマの日記とはすなわちほぼ恨み言だ。
それを重々承知しているシンタローはげんなりした様子でグンマを見上げる。
グンマは何も言わず無言で早く開け、という視線で応じる。
が、シンタローは再び表紙に視線を落としたままいっこうに開こうとしない。
グンマは「もう」と呟くと、ノートを開こうとしないシンタローの手からそれを取り上げ、
テーブルの上にバンッとその問題の日記を広げ、指差していた。
「シンちゃん! 僕、このときのお詫びまだしてもらってないよっ!!」
「…………お前さー、コレ何時の事よ?」
「え?」というと、パタンと日記を閉じ、手に取る。
さん然と輝く『日記』の文字のしたには□年、と書かれていた。
「えーっと、□年だから6年前かな?」
グンマはとしれっと当たり前のように答えた。
「なぁ」
シンタローは深いため息と共に言葉を吐き出す。
「なに?」
お詫びってなにしてくれるのかな?と期待に満ち満ちた目でシンタローを見る。
ご褒美をまっている子犬のようにつぶらな瞳だ。
「なんでお前って、そんなどーでも良さそうなことには細かいワケ?」
『どうでも良い』にかなり力を入れている。
「ひっどーい、シンちゃん!」
どうでも良い事、と言い切られグンマは憤慨する。
「どうでもいいことの分けないでしょ?僕、痛かったんだから!あ、いまでも殴られた所触ると痛い」
きっと殴られた箇所であろうところを指で触って痛いと繰り返す。
「んなわけあるかっ! 6年も前ことだろうがっ!!」
「痛いもんっ!!」
珍しくグンマもシンタローに劣らずの怒鳴り声で応じる。
そしてそのままの勢いで叫んだ。「だから看病して!!」
「はぁ~~?」
思い切り胡散臭そうに返事をする。無論承諾では無い。暗に馬鹿?と含ませている。
「何、シンちゃん。その返事」
グンマは頬をぷっくり膨らませて拗ねる。
青年には似合わない子供のような表情だが、グンマにはよく似合う。
その外見の可愛らしさの為だろうか。
「馬鹿らしい。そんな用事なら俺、帰るわ」
シンタローはグンマのそんな表情など見慣れたものなのだろう、チラッと一瞥すると気にも留めずにそう言い放ち腰をうかしかける。
「待ってよ!シンちゃん!」
慌ててシンタローの背後に回り肩に手をかけ椅子に押し戻そうとする。
が、グンマの力ではシンタローを引き止めることは出来ない。
どうしてもシンタローに看病というか、構ってもらいたいのかグンマは食い下がる。
「じゃあ、こうしようよ。僕の生まれてからのこの『日記』にあるシンちゃんの僕に対する
酷い事したの、全部チャラにしてあげるよ」
「『生まれからの日記』?」
不審そうに呟くとそのままストンと椅子にもう一度座る。
グンマは取り敢えずは聞く体勢に戻ったシンタローにほっと息をつき肩から手を外し、
ごくごく当たり前の事のように答えた。
「そうだよ。0歳からの」
文字どころか感情すら上手くもてなかった赤ちゃんから?
シンタローは、グンマが遂に本当の馬鹿になったのかと思った。
「んなもんあるわけ無いだろうがっ!!」
「あるもん!」
勢いよくビシッと後の本棚を指差す。
そこの一部は日記コーナーになっていた。
シンタローがそちらに目を向けると、確かに、グンマが生まれたその年からの本が並んでいた。
「これ、最近は少しずつデジタル保存しているんだよ」
「……なに、画像読み込んだのか?」
シンタローは聞かずにはいられなかった。
一年は365日ある。1日1ページ、見開きで2日分だと、183ページ。
単純計算で十年で約1830ページ、二十年だとその倍の3660ページ。
それを全部読み込もうというのか、この単純馬鹿な従兄弟は。
その執念深さにあきれ返る。
「違うよ。それじゃあ、検索も出来ないし、容量食うし、見難いじゃない。
画像を読み込んだらね、文字だけ取り込んでちゃんと文字データにしてくれる
読み取り機械作ったんだよ。しかも特定の言葉を予め入れていたらそこだけ色もつくよ
ちなみにキーワードは『シンちゃん』」
シンちゃんという言葉が出てきたら大体僕、苛められた事しかないし
と付け加える。
「…その日記の為だけに?作ったのか?それを?」
「うん」
正真正銘の馬鹿がいた。こいつは頭はいいが馬鹿だ。
シンタローは強く、そう思う。
「そもそもお前が自分でつける前のは誰が書いた?」
「嫌だなぁ、シンちゃん。高松に決まっているじゃない」
「ああ、あの変態。」
グンマ様命と公言して憚らない高松なら、と深く納得する。
「シンちゃん!高松のことそんな風に言わないでよ!」
「変態を変態と言って何がわるい。お前の一挙一動に『グンマ様』って鼻血流してるんだから
立派な変態じゃないか」
「それ言うならおじさまだって変態じゃない。シンちゃんの事見るたびに鼻血だしてるよ
しかもお手製のシンちゃん等身大人形をいつも抱いているし。高松はちょっと出血するだけだけど
おじさまは実の息子をかたどった人形に囲まれて暮らしているんだよ?凄く変だよ」
それで反論したつもりなのか、とシンタローは鼻で笑う。
「ああ。そうだよ。アイツは変態の馬鹿だ」
「シンちゃん」
とグンマは口調を改め真顔で言う。
「高松はね、僕のお父さまのような存在だけど、おじさまはシンちゃんの実のお父さまだよ?」
「いいんだよ。俺はあんなヤツ親父だなんて思っていないからな」
「主観はどーあれ、客観的には立派に血の繋がったお父さまだよ」
「知らん」
一言で切り捨てた。
「あれ?」
グンマは話の流れが違う方向へ行っているのに気がつく。
「シンちゃん!話を逸らそうとしても駄目だからねっ!」
撒けなかったか、というようにちっとシンタローは舌打ちする。
「か・ん・びょ・う」
一字一字強調する。
「お前、元気に話しているじゃん。必要ないだろーが」
「必要なの!して欲しいの!」
シンタローはグンマの真剣に訴える瞳を見つめながら考える。
もし、このまま大人しく言う事を聞いてやれば取り敢えず今までの事は綺麗サッパリ無くなる。
今までの人生の中で、果たしてどれだけグンマに恨みを買っているだろうか?
検討も付かない。本当に些細な事まで書くのだ、コイツは。
ここは一つ、聞いた方が俺の為ではないだろうか?
そう結論づけると観念したように口を開いた。
「わーったよ」
「本当だね?!」
その言葉を聞くと嬉しそうにそう言う。
「で、看病って何すりゃいいんだよ?まさか本当に看病するワケじゃないだろ?
お前元気だしさ。どっか遊びに行くのやら実験やらに付き合えば言い訳?」
お前の作ったロボットとの対戦ぐらいで済むなら安いもんだよ、と。
グンマは至って元気だ。
「うーん。でも本当の看病と似たようなものかな?」
「は?お前本当に具合悪いの?」
健康的なつやつやとした綺麗な肌。先ほども元気に叫んでいた。
とてもそんな風には見えない。
「ううん。別に病気なんかじゃないよ?それよりちょっと待っててね」
そのままロッカーが置いてある奥まで引っ込む。
暫くのち、グンマが「お待たせ~」と戻って来た。手に白いものを携えて。
「はい、シンちゃん、これ」
満面の笑みを湛えシンタローにそれを差し出す。
シンタローは素直にそれを受け取り、取り敢えず何か確認しようと広げる。
「……ナース服?」
「そうだよ。大きいサイズだから手に入れるの苦労したんだから」
「で、お前は何をしたいワケ?」
「看護婦さんと病人ごっこ」
グンマはぴっと人差し指を立て、真顔でのたまった。
「…………」
「この間、おじさまに教えてもらったの~。僕、シンちゃんにどーしてもその格好してもらいたいの。
それで看病してもらいたかったんだ」
本当に嬉しそうに笑う。その筋の人間が見たら一発で陥落するであろうとても綺麗な笑顔だ。
その筋とは違うがグンマ馬鹿に名を連ねる、その筆頭の高松がこの場にいたら
どんな凄惨な事件が起こったのかという惨状になったこと間違い無しだ。
シンタローのそれを纏った姿を想像したのだろうか、グンマの笑顔が更なる輝きを放つ。
それを受け取りぷるぷると震える手で握り締めるその様子に気づかずに。
「新しい思い出が欲しいか、グンマ?」
勢いよくそれを投げ捨てると、グンマによく見えるように拳を固める。
「え?」
見る間にグンマの顔がザァと青ざめる。
過去、眼魔砲を食らったその悪夢が走馬灯の様によぎる。
「シ、シンちゃんの嘘つきーーーっっ」
魂の悲鳴が木霊した。
H17.2.2→H17.4.4
|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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○月×日
今日もシンちゃんなぐられた。頭にたんこぶができてしまった。
少しふくらんだそこをそーっとさわるとふにふにしていた。
ぼくはその一言を忘れないようにこうして書く。
シンちゃんは『悪りぃ、いつかわびするよ』と言った。
「グンマぁ、入るぞー?」
シンタローがグンマの研究室を訪れる。
グンマはまだ二十歳にも満たないが専用の研究室をガンマ団本部に持っている。
高松に『僕も高松の様な部屋が欲しいな』と何気ない一言を漏らした翌日、グンマ専用のが出来た。
「遅いよー、シンちゃん。僕待ってたんだからね」
スーツの上に白衣を羽織ったグンマが、休憩用の椅子に座って不満そうに文句を言う。
テーブルの上にはすっかり冷めてしまったであろうお茶とお菓子がのっていた。
「いや、悪いな。練習が伸びちまってよ」
「うん。そうだろうな、とは思っていたんだけど」
グンマの長く伸ばした金色の髪と、くりっと大きな青い目から判るように青の一族だ。
いっぽう、グンマに言われる前に勝手に向いに座ったシンタローは一族の特徴と言われるその色を持たない。
黒の髪は訓練着の襟に掛かるかどうかという長さで、切れ長の瞳に輝くのは意思の強そうな髪と同色の黒だ。
本人はそれをとても気にしているようだかそれを表に出している姿をグンマは見たことはない。
「スーツに着られたグンマがこうして研究室に篭っているってのも慣れねーなぁ」
「いいの。僕、自分専用の研究室欲しかったんだから。だからそれに見合うような格好しているんじゃない」
「まぁ、そんなことはいいか。で、用件って何だ?」
シンタローは自分を呼んだ理由をグンマに訊ねた。
「そうそう!僕、別に世間話する為にシンちゃん呼び出したわけじゃないんだよ!」
力んで言う。すっと立ち上がるとそのままスタスタとなにやら色々機材の置いてある机に向う。
ばらばらと雑多に置いてあるものの中から一冊のノートらしきものを取ると、シンタローの元へと戻る。
が、今度は椅子に腰を落とさず、シンタローを威圧するように仁王立ちになり、
持ってきたノートをシンタローに突きつけた。
「何だよ?」
不審そうに何も説明無しにノートを押し付けたグンマに説明を求める。
「その付箋がある箇所開いてみてよ」
グンマがそういうのでシンタローはまずはそのノートの表紙を見ると毛筆で渋く『日記』と書かれていた。
グンマの日記とはすなわちほぼ恨み言だ。
それを重々承知しているシンタローはげんなりした様子でグンマを見上げる。
グンマは何も言わず無言で早く開け、という視線で応じる。
が、シンタローは再び表紙に視線を落としたままいっこうに開こうとしない。
グンマは「もう」と呟くと、ノートを開こうとしないシンタローの手からそれを取り上げ、
テーブルの上にバンッとその問題の日記を広げ、指差していた。
「シンちゃん! 僕、このときのお詫びまだしてもらってないよっ!!」
「…………お前さー、コレ何時の事よ?」
「え?」というと、パタンと日記を閉じ、手に取る。
さん然と輝く『日記』の文字のしたには□年、と書かれていた。
「えーっと、□年だから6年前かな?」
グンマはとしれっと当たり前のように答えた。
「なぁ」
シンタローは深いため息と共に言葉を吐き出す。
「なに?」
お詫びってなにしてくれるのかな?と期待に満ち満ちた目でシンタローを見る。
ご褒美をまっている子犬のようにつぶらな瞳だ。
「なんでお前って、そんなどーでも良さそうなことには細かいワケ?」
『どうでも良い』にかなり力を入れている。
「ひっどーい、シンちゃん!」
どうでも良い事、と言い切られグンマは憤慨する。
「どうでもいいことの分けないでしょ?僕、痛かったんだから!あ、いまでも殴られた所触ると痛い」
きっと殴られた箇所であろうところを指で触って痛いと繰り返す。
「んなわけあるかっ! 6年も前ことだろうがっ!!」
「痛いもんっ!!」
珍しくグンマもシンタローに劣らずの怒鳴り声で応じる。
そしてそのままの勢いで叫んだ。「だから看病して!!」
「はぁ~~?」
思い切り胡散臭そうに返事をする。無論承諾では無い。暗に馬鹿?と含ませている。
「何、シンちゃん。その返事」
グンマは頬をぷっくり膨らませて拗ねる。
青年には似合わない子供のような表情だが、グンマにはよく似合う。
その外見の可愛らしさの為だろうか。
「馬鹿らしい。そんな用事なら俺、帰るわ」
シンタローはグンマのそんな表情など見慣れたものなのだろう、チラッと一瞥すると気にも留めずにそう言い放ち腰をうかしかける。
「待ってよ!シンちゃん!」
慌ててシンタローの背後に回り肩に手をかけ椅子に押し戻そうとする。
が、グンマの力ではシンタローを引き止めることは出来ない。
どうしてもシンタローに看病というか、構ってもらいたいのかグンマは食い下がる。
「じゃあ、こうしようよ。僕の生まれてからのこの『日記』にあるシンちゃんの僕に対する
酷い事したの、全部チャラにしてあげるよ」
「『生まれからの日記』?」
不審そうに呟くとそのままストンと椅子にもう一度座る。
グンマは取り敢えずは聞く体勢に戻ったシンタローにほっと息をつき肩から手を外し、
ごくごく当たり前の事のように答えた。
「そうだよ。0歳からの」
文字どころか感情すら上手くもてなかった赤ちゃんから?
シンタローは、グンマが遂に本当の馬鹿になったのかと思った。
「んなもんあるわけ無いだろうがっ!!」
「あるもん!」
勢いよくビシッと後の本棚を指差す。
そこの一部は日記コーナーになっていた。
シンタローがそちらに目を向けると、確かに、グンマが生まれたその年からの本が並んでいた。
「これ、最近は少しずつデジタル保存しているんだよ」
「……なに、画像読み込んだのか?」
シンタローは聞かずにはいられなかった。
一年は365日ある。1日1ページ、見開きで2日分だと、183ページ。
単純計算で十年で約1830ページ、二十年だとその倍の3660ページ。
それを全部読み込もうというのか、この単純馬鹿な従兄弟は。
その執念深さにあきれ返る。
「違うよ。それじゃあ、検索も出来ないし、容量食うし、見難いじゃない。
画像を読み込んだらね、文字だけ取り込んでちゃんと文字データにしてくれる
読み取り機械作ったんだよ。しかも特定の言葉を予め入れていたらそこだけ色もつくよ
ちなみにキーワードは『シンちゃん』」
シンちゃんという言葉が出てきたら大体僕、苛められた事しかないし
と付け加える。
「…その日記の為だけに?作ったのか?それを?」
「うん」
正真正銘の馬鹿がいた。こいつは頭はいいが馬鹿だ。
シンタローは強く、そう思う。
「そもそもお前が自分でつける前のは誰が書いた?」
「嫌だなぁ、シンちゃん。高松に決まっているじゃない」
「ああ、あの変態。」
グンマ様命と公言して憚らない高松なら、と深く納得する。
「シンちゃん!高松のことそんな風に言わないでよ!」
「変態を変態と言って何がわるい。お前の一挙一動に『グンマ様』って鼻血流してるんだから
立派な変態じゃないか」
「それ言うならおじさまだって変態じゃない。シンちゃんの事見るたびに鼻血だしてるよ
しかもお手製のシンちゃん等身大人形をいつも抱いているし。高松はちょっと出血するだけだけど
おじさまは実の息子をかたどった人形に囲まれて暮らしているんだよ?凄く変だよ」
それで反論したつもりなのか、とシンタローは鼻で笑う。
「ああ。そうだよ。アイツは変態の馬鹿だ」
「シンちゃん」
とグンマは口調を改め真顔で言う。
「高松はね、僕のお父さまのような存在だけど、おじさまはシンちゃんの実のお父さまだよ?」
「いいんだよ。俺はあんなヤツ親父だなんて思っていないからな」
「主観はどーあれ、客観的には立派に血の繋がったお父さまだよ」
「知らん」
一言で切り捨てた。
「あれ?」
グンマは話の流れが違う方向へ行っているのに気がつく。
「シンちゃん!話を逸らそうとしても駄目だからねっ!」
撒けなかったか、というようにちっとシンタローは舌打ちする。
「か・ん・びょ・う」
一字一字強調する。
「お前、元気に話しているじゃん。必要ないだろーが」
「必要なの!して欲しいの!」
シンタローはグンマの真剣に訴える瞳を見つめながら考える。
もし、このまま大人しく言う事を聞いてやれば取り敢えず今までの事は綺麗サッパリ無くなる。
今までの人生の中で、果たしてどれだけグンマに恨みを買っているだろうか?
検討も付かない。本当に些細な事まで書くのだ、コイツは。
ここは一つ、聞いた方が俺の為ではないだろうか?
そう結論づけると観念したように口を開いた。
「わーったよ」
「本当だね?!」
その言葉を聞くと嬉しそうにそう言う。
「で、看病って何すりゃいいんだよ?まさか本当に看病するワケじゃないだろ?
お前元気だしさ。どっか遊びに行くのやら実験やらに付き合えば言い訳?」
お前の作ったロボットとの対戦ぐらいで済むなら安いもんだよ、と。
グンマは至って元気だ。
「うーん。でも本当の看病と似たようなものかな?」
「は?お前本当に具合悪いの?」
健康的なつやつやとした綺麗な肌。先ほども元気に叫んでいた。
とてもそんな風には見えない。
「ううん。別に病気なんかじゃないよ?それよりちょっと待っててね」
そのままロッカーが置いてある奥まで引っ込む。
暫くのち、グンマが「お待たせ~」と戻って来た。手に白いものを携えて。
「はい、シンちゃん、これ」
満面の笑みを湛えシンタローにそれを差し出す。
シンタローは素直にそれを受け取り、取り敢えず何か確認しようと広げる。
「……ナース服?」
「そうだよ。大きいサイズだから手に入れるの苦労したんだから」
「で、お前は何をしたいワケ?」
「看護婦さんと病人ごっこ」
グンマはぴっと人差し指を立て、真顔でのたまった。
「…………」
「この間、おじさまに教えてもらったの~。僕、シンちゃんにどーしてもその格好してもらいたいの。
それで看病してもらいたかったんだ」
本当に嬉しそうに笑う。その筋の人間が見たら一発で陥落するであろうとても綺麗な笑顔だ。
その筋とは違うがグンマ馬鹿に名を連ねる、その筆頭の高松がこの場にいたら
どんな凄惨な事件が起こったのかという惨状になったこと間違い無しだ。
シンタローのそれを纏った姿を想像したのだろうか、グンマの笑顔が更なる輝きを放つ。
それを受け取りぷるぷると震える手で握り締めるその様子に気づかずに。
「新しい思い出が欲しいか、グンマ?」
勢いよくそれを投げ捨てると、グンマによく見えるように拳を固める。
「え?」
見る間にグンマの顔がザァと青ざめる。
過去、眼魔砲を食らったその悪夢が走馬灯の様によぎる。
「シ、シンちゃんの嘘つきーーーっっ」
魂の悲鳴が木霊した。
H17.2.2→H17.4.4