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 僕は、シンちゃんってもの凄く鈍いよなぁって思うときが時々ある。
 どんな時かっていうと、主としてキンちゃんが絡んでいるときに思うんだけどね。
 今現在、僕とシンちゃんとキンちゃんは、キンちゃんの研究室にいるんだ。最初に僕がキンちゃんの所に来たんだよね。ちょっと貸してほしい本があったんだ。それでそのまま少し喋ってたら、シンちゃんが珍しく研究室に来たんだよ。キンちゃんに用事があったみたいで。
 でね。シンちゃんが来たときのキンちゃんの嬉しそうな顔といったら、ちょっと僕が赤面しそうなほどだったんだよ。キンちゃんってそんなに優しげな笑みを浮かべることもあるんだって思っちゃったしね。じゃぁこんな表情で迎えられたシンちゃんはどうなんだろうって、僕がドキドキしながらシンちゃんを見たら、シンちゃん普段と変わってないし。こんなにもキンちゃんはシンちゃんのことが好きだっていう態度が露骨に出てるのに、そこに無反応なの?
「あれ?グンマもいたんだ」
 何て僕に一言声をかけてくれて、そのままキンちゃんの傍によると仕事の話を始めちゃった。
 ねぇ、シンちゃん。反応として、もっと何かないのー?
 僕はもの凄く突っ込みを入れたくなったけど、真面目にお仕事の話をしているときに邪魔しちゃうのも悪いよねと思って、二人の話が終わるのを大人しく待つことにした。
 シンちゃんが持ってきた資料を二人で見ながら真剣な顔をしてお話ししてる。
 僕には会話の内容が何だかよく判らなかったけど、仕事中の二人は何かカッコイイなぁなんて思いながら従兄弟達の姿を眺めてた。やっぱりこの二人は自慢したくなっちゃうなぁって思う。だってシンちゃんとキンちゃんの二人が揃ったときの迫力って並大抵のものじゃないんだもん。
 二人のお話が終わるのをしばらく待って、それから三人で少し雑談をしてたんだけど、僕の意識は会話の内容よりもキンちゃんとシンちゃんの様子に傾いちゃう。だってシンちゃんが喋ってるときのキンちゃんの表情の軟らかさといったら───見た人全員が溶ろけそうなんだけど。
 でも残念ながらシンちゃんの様子は普通なんだよなぁ。何でぇ?気付いてないの?
「オイ…グンマ、オメェ聞いてんのか?」
「え?あ、何?ゴメン、聞いてなかった」
 シンちゃんに呼ばれて僕は慌てて返事をする。全然違うこと考えてて話を聞いてなかったよ。
「だから、今日の夕方ちょい前から俺とキンタローは外に出ンだけど。そのまま飯食いに行くかって話になったから、お前は夜外出てこれんのか?って聞いてんだけど…」
「僕も混ざって良いの?」
 おもむろにキンちゃんの方を見て僕はそんなこと言っちゃって、しまったと思ったらキンちゃんに首を傾げられた。不思議そうな顔をして僕のことを見つめてくる。
「お前が行きたがっていた店の話をしたらシンタローも行きたいということになったんだが…」
 僕が行きたがってるお店なんて沢山ありすぎて、どのお店を指しているのか直ぐに判らなかったけど、それよりも普通に僕がメンバーの中に入ってるのが嬉しくて二人に抱きつきそうになっちゃった。もう二人とも大好きだから上手くくっついてよぉー。僕、応援するよ?
 そんなことを思っていると、シンちゃんが「じゃ、夜に合流な」と言って研究室から出ていっちゃった。シンちゃんがドアを閉める前に「キンタロー、後でな」って言いながら浮かべた微笑を見た瞬間、僕は二人の間に飛ぶ花びらが見えて思わず感嘆を洩らしちゃったよ。
 キンちゃんが後ろで不思議そうな顔をして僕を見てるのが判ったけどいいんだもん。
 その位置からじゃ見えなかっただろうけど。これから上手くいくとイイネ、キンちゃん。
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 リビングで暴れる猛獣が二匹いる。真っ黒な獣が言うことを聞かないのか何なのか、金色の獣がその上に乗り上がって相手の動きを封じ込めようとしていた。
「だーかーら、味見でもいいっつってんだろ?」
「ふざけんなッ何の味見だッオッサンは味見じゃすまねぇーだろッ」
「んー…じゃぁ、一発やらせろ?」
「死ねッ」
 しばらく見ない内に、予想外の方向へ傾いた甥っ子に少々興味を覚えた叔父は、とんでもない要求をしながら陽気にじゃれついていた。ハーレムとしては叔父として甥っ子とじゃれているつもりなのだが、シンタローの方はそう暢気にも構えていられなかった。この叔父の冗談は冗談で済まされないほどぶっ飛んでいるからだ。まず「一般的に」と言う言葉が最初から辞書にない。
「とにかく退けェーッ」
「いーじゃねぇーかよ、一発や二発、三発…変わんねぇーだろ?」
「三ぱ…増えてんじゃねぇーかッ!!俺はやんねぇー、やらせねぇー、借金返せオッサン」
「最後の一言は余計ェだろ、コラ」
 自分の下で暴れるシンタローを面白そうに眺めながら唇を指でなぞる。すると当然のように相手は噛みついてきた。本気で歯を立ててきた痛みで一瞬顔を蹙めたハーレムだが、直ぐに悪戯心を起こして仕返しと言わんばかりにシンタローの首筋に噛みつく。少し跡がつく程度に歯を立てると、シンタローの体がその刺激でビクリと跳ねた。その反応が非常にお気に召したハーレムが調子に乗って「いーい反応だなぁ…誰に慣らされちゃったんだろうなぁ~?」とからかうと、拳が飛んできた。現状が気に入るはずのないシンタローはとても攻撃的で全身を震わせ怒りを顕わにしている。そこでハーレムも一歩引けばいいのだが、この叔父にその様な対応が出来るはずもなく、堂々とシンタローの着衣に手を掛けた。
「止めろっつってんだろ!!獅子舞ッ退けッ!!」
「んだとぉ?誰が獅子舞だ」
「オメェだオッサン!!一発ヨロシクは女ンとこ行けェーッ!!」
 シンタローに女と言われてハーレムの動きが止まった。上に乗ったままイキナリ天を仰ぐ。
「そーだよ…この間、スゲェイイ女がいたんだよ…」
「…オッサン?」
「すこぶるふるいつきたくなるような女だったんだけどよぉ」
 いきなり変わった話題に疑問符が飛んだシンタローだったが、ハーレムから女の話なんて珍しいと思い、自分の危機も忘れて思わず「ふるいついたのか?」と問い返した。
「オメェが仕事で遠くの地まで飛ばしてくれたもんだから終了した。責任とれシンタロー」
 色話にはつい耳を傾けてしまうシンタローは、そんなこんなであっさり上半身を剥かれる。
「…ッ止めろっつってんだろッ!!後でヒデェ目に遭うだろッ」
 俺が、と続けるシンタローと「俺は気にしねぇ」というハーレムの言葉が重なった。
 シンタローは自分の失言に直ぐ気付いたのだが、時は既に遅く、ハーレムがニヤニヤしながら上から見つめてくる。意地の悪さがよく表れた青い眼が真上で笑っていた。
「ふーん。誰にどうヒデェ目に遭わされンのか叔父さんに話してみろや」
 この台詞に真っ赤な顔をして涙目になっているシンタローを見ながら『やっぱコイツはからかうと面白ェや』などとハーレムは上機嫌に笑った。
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『仕事が全く進まない…』
 パソコンの画面から視線を移動させると、俺をじっと見つめるシンタローと眼があった。
 一体彼に何が起きたのか全く判らないが、俺がいるこの研究室にふらりとやってきて、一言二言言葉を交わした後、来客用のソファに座ると何をするわけでもなくずっとこっちを見つめている。シンタローが俺のことをこんなにも長い時間見つめてくるなんてことは今までに一度もなかった。はっきり言って俺は困っている。何故ならば、ドキドキして仕事に集中出来ないからだ。
 いいか。あのシンタローが黙って俺のことを見つめているんだ。視線を合わせても一切逸らすことなく真っ黒な眼は俺の方に向けられている。これでは早まった鼓動は一向に落ち着かない。
「シンタロー」
 これ以上ドキドキしていたら心臓に疾患が見つかりそうで、俺はシンタローの意識を他へ持っていこうと会話を切り出した。名前を呼べば普段と変わらぬ声で「何?」と返事が返される。
「今日は一日オフなんだろう?せっかく時間が空いたんだから、コタローのところにでも…」
「もう行った。朝からずっと顔見てたんだけど、今はメディカルチェック中で傍にいらんねぇ」
「………そうか。では偶には少しは長く睡眠をとった方が…」
「昨日は上がりが早かったからその分早く寝たし、俺はピンピンしてんぞ」
「………それなら良かった。ならば…」
「昼飯は親父が何か作るって張り切ってた。夜は俺が作るから楽しみにしとけよ」
「……………楽しみにしておく」
 シンタローの台詞に頷きを返すと、会話が終わってしまった。これではダメだ。一緒にいてくれるのは嬉しいが、今はダメなんだ。このデータを早くまとめなくてはならないし、昨日送られてきた資料に目を通して、それを元に実験データと合わせて今日中に別の資料を作成して通信で送らなくてはならなくて、それから───とにかく、この仕事に集中出来ない状況は困るんだ。
 そう思いながらも俺がシンタローに向かって「一人にしてくれ」と言えないのは、アイツが自分の意志で俺の傍にいてくれるのが嬉しいからだ。
 滅多に休みを取らないシンタローが周りの説得に応じてやっと一日休むことを了承したというのに、何故俺は仕事なんだ。仕事でなければこの状況を手放しで喜ぶことが出来るんだが。
 シンタローの視線をじっと受けながらこの状況をどうしたらいいのかと思案を巡らせていた俺は、アイツが動く気配で意識を現実に引き戻した。シンタローがゆっくりした動作で俺の傍まで歩み寄ってくる。それだけでも心臓が一際大きく鼓動を打った。俺は末期かもしれない。
「何か、全然進んでねぇーみてぇだけど?」
「………お前がいるから全く集中出来ない」
 困り果てて本音を洩らすと、パソコンの画面を覗き込んでいたシンタローがふっと笑って俺の方を向いた。至近距離の笑顔に俺は思わず見とれる。
「お前が普段やってることと同じことをやっただけなんだけどな」
 そう言ってシンタローは更に顔を近づけ、俺の唇に触れるだけの軽い口付けをくれた。
 あのシンタローが陽の高い内から、俺の髪でも額でも目蓋でも頬でもなく、唇に、だ。
 俺が驚きすぎて硬直状態にいると、シンタローは耳元に唇を寄せ「じゃぁ仕事終わったら俺のこと構えよ」と囁き、ひらひらと手を振って研究室から出ていった。
 意外とあっさり去っていくシンタローの後ろ姿を俺は呆然としながら見送る。
 仕事をするのはとても好きなんだが、今日ほど仕事を憎く思った日はないだろうな…。

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『オッサンが…何でか俺のことを凝視してる…』
 一族特有の青い眼で不思議そうな顔をしながらじっと見つめてくるハーレムに、シンタローはどう反応すればいいのか判らず固まってしまった。
 ハーレムに会ったのは十分程前。シンタローが自室から出てきたところで偶然顔を合わせた。
 久しぶりにお互いの顔を見たのだが、相変わらずの二人は一分も経たない内に軽い挨拶が罵詈雑言に変わった。ここまではいつも通りで、何ら珍しいものでもなかったりする。
「とっとと借金返せよ」
「男だったらロマンを解れ」
 この台詞自体が二人の挨拶なんじゃないかと思うくらい毎度平行した言葉をぶつけ合う。
 そして次もお馴染みとなった“男同士の語り合い”に移ろうかというときに、ふとハーレムの動きが止まった。そして訝しげな表情を浮かべながら、目の前の甥をじっと見つめる。
「…何だよ、オッサン」
 ハーレムの行動を不審に思って、シンタローも同じ様な表情を浮かべて相手を睨み付けた。
 シンタローが投げ付けてくる鋭い視線は意に介さず、ハーレムはしばしの間その姿を青い眼に映し続けた。それから一歩近寄ると更に至近距離で見つめてくる。思い切り顔を覗き込まれて、シンタローはたじろいだ。
「………ハーレム?」
 もう一度呼びかけてみるものの、その声に何の反応も示さない。何だか身に危険を覚えて、そっと離れようとしたシンタローだが、半歩動いた瞬間にがっちり腕を掴まれた。それに驚いて振り払おうとすると、シンタローが逃げないようにするためか、壁に体を押し付けられる。
「何しやがるッ!!」
 予期せぬ相手の行動にシンタローは声を荒立てたが、目の前で喚いてもハーレムの耳には全く届いていないようであった。何かを考えるように真剣な顔をしながら迫り来るハーレムの雰囲気にのまれて、シンタローは完全に固まってしまう。それでも尚じっと見つめ続けたハーレムは、唇が触れるか触れないかの距離まで顔を近づけてから、ようやく口を開いた。
「何かお前、エロくなったな」
 ハーレムの台詞にシンタローが絶句すると、いきなり目の前にいた叔父が吹き飛んだ。
 誰が放った眼魔砲だとシンタローが横を向けば、非常に恐い顔をしたキンタローが眼に入る。自分の『半身』の様子に顔が引きつり思わずこの場から逃げ出そうとしたシンタローだが、あっさりと捕獲された。キンタローの腕にがっちりと抱き締められる、と言うよりも捕まえられる。
「ちょっ…何すんだよッ」
「お前は黙ってろ、シンタロー」
 キンタローは、自分が放った眼魔砲で吹き飛ばした叔父が埋もれる瓦礫の山を鋭い眼光を湛えた青い眼で見つめる。勿論この位でくたばるわけがないハーレムは「痛ェ」と言いながら瓦礫の中から現れた。そのまま文句を言おうとしたのだが、二人の甥の姿を目にした瞬間、ぽかんと口を開けた。キンタローとシンタローを交互に見つめた後「へぇー」と納得いったように頷く。
 一所懸命威嚇してくるキンタローと、その甥の腕にがっちり捕まえられながら現状理解が出来ていない為に大人しくしているシンタローを見ながら、ハーレムは心底面白そうに笑った。
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「なぁ、キンタロー…」
「何だ?」
 俺は背後にピッタリくっついて離れない金髪の従兄弟に向かって何度目になるか判らない抗議を上げるべく名前を呼んだ。それに対するキンタローの返事は、相変わらず淡々としてる。
 ここ三日間、キンタローがずっと俺から離れようとしねぇ。朝から晩まで、それこそ寝るときもベッドに潜り込んでくる始末だ。原因は判ってるけどいくら何でもやり過ぎだろと俺は思う。
「あのさ…お前は何でそんな…」
「傍にいたいからだ」
 俺が台詞を言い終わる前に、もう何回聞いたか覚えてないくらい耳にした台詞を返してきた。
「いや、だから…」
「嫌なのか?俺が傍にいるのは」
「そーじゃなくてだな…」
 口調はいつもと変わんねぇし、飄々とした態度も少し鋭い視線も普段通りで、上品なスーツを着こなす紳士の姿もずっと見てきたもんなんだけど、その何でか漂う哀愁は何とかなんねぇのかよ。おかげでこっちは強く出れやしねぇ。
「ならば、良いということだな」
「……………」
 何でコイツの頭の中はゼロか十しかねぇんだよと思いながら俺は閉口した。
 キンタローがこうなった原因は俺にある。
 一週間、俺はキンタローのことを完全に放置した。その原因が仕事だったらこうはなんなかったんだろーけど、久しぶりに会った仲間と盛り上がって連日飲み歩いてたのが理由だから、俺は何も言えなかったりする。だけど異なる任務で帰還日が全員バラバラだったんだから仕方ねぇだろ?…って言ったらグンマに怒られた。確かに目先の楽しみに捕らわれて、まだ時々不安定になるキンタローを完全に放っておいたんだから原因は百パーセント俺にある。あぁ、判ってるよ。
 だけどほぼ二十四時間ずっと一緒だぞ?三日間だから七十二時間……やりすぎだろ、コレは。
 そう思って抗議を上げてみたものの、キンタローは傍にいるのが良いのか嫌なのか、二択で問い返してくるから、返答に窮するんだよ。嫌じゃねぇけど限度を知れって言ってやりてぇ。言ってやりてぇけど、コイツが背負ってる何とも言えねぇ哀愁がその邪魔をしやがる。
 あーあ、と心の中で溜息ついて、俺はキンタローをじっと見つめた。それからふと思いついて動物を愛でるような気持ちで綺麗な金糸が輝く頭を撫でてみた。
 そしたら漂ってた哀愁が消えて嬉しそうな空気が俺等の周辺を取り巻いた。何だよコノ反応。
「………お前って、ホントに俺のことが好きだな」
「今更だ」
 嫌味を言ったつもりが真顔で肯定されて、また俺は閉口する羽目になる。
 今度はキンタローの目の前で盛大に溜息をつくと、俺は「…行くぞ」と促した。
 後ろを歩いてくっついてくるキンタローを気配で確認しながら、何だかんだでコイツを受け入れてる俺も相当なもんだと思った。ホント、俺もお前のことが好きだな。










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