一日の仕事を終えたシンタローが、廊下を歩いていると、
「シンタローは――――ん!!」
後ろの方から叫ぶ声が聞こえた。振り返りざま、
「眼魔砲ッツ!!」
と、眼魔砲を撃とうとすると、いつの間にか近くまで来ていたアラシヤマが、
「あっ、今回眼魔砲は堪忍しておくれやす~!アイスがとけますさかいに」
コンビニの白いビニール袋をヒラヒラさせてそう言った。アイスという単語に少々気が抜けたので、シンタローはとりあえず高密度のエネルギー体を消失させた。
「何だヨ、ソレ?」
「アイスクリームどす。シンタローはんと一緒に食べようと思うて、買うてきたんどすえ~!」
「買うてきたって、オマエ。いきなりわけわかんねェし」
「だって、シンタローはん、この前何遍もわてのこと“暑苦しい”言うてましたやん。よくよく考えてみたんどすけど、それはわてが“炎”を使うイメージからくるもんやと分かったんどすー!わては暑苦しい男やないいうことをシンタローはんに証明しよう思いまして、だから、冷たいアイスなんどすvvv」
(見当違いなうえ、やっぱりコイツ、わけわかんねェ・・・)
シンタローは、アラシヤマの行動自体を指してそう言ったわけであったが、アラシヤマが、
「あんさん、一日中、冷房に当たってばっかりでしたやろ?体に悪うおます。ということで、今から外へ行きまへんか?それに、アイスは外で食べるもんどすえー!!」
と言った言葉を聞いて少し心を動かされたので、アラシヤマの勘違いについて蒸し返すのはとりあえず、やめておいた。
「まぁ、別にいいけど。今は夜だゾ?こんな時間から一体どこに行くんだよ」
「まっ、わてにまかせておくれやす」
そう言って嬉しそうに笑うアラシヤマに軽くムカつきつつ、シンタローはアラシヤマについて行った。
「―――それにしても、あちィ」
シンタローは、こめかみを伝い落ちた汗を拭った。夜になって朝よりは涼しいはずであるが、クーラーに慣れた体には、気温は非常に高く感じた。
「まだなのかヨ?」
「もう、すぐそこどすえ~」
暗い林を抜けた先には月明かりに照らされた高いフェンスがあり、
「この中どす」
アラシヤマはフェンスをよじ登り始めた。2人が身軽に飛び降りた場所は、コンクリートの上であった。微かに塩素の臭いが鼻についた。
「ここって、士官学校・・・」
「の、プールどすvやっぱり水辺は涼しゅうおますナ!これで、わてが暑苦しゅうないことがあんさんにもわかりましたやろ??」
アラシヤマは何やら非常に自信ありげである。
「・・・やっぱオマエ、暑苦しーわ」
「エッ?何でどすかッ!?こーいうこととちゃいますのんッツ??」
アラシヤマは悩んでいたが、シンタローが、
「もういいから、とっととアイス食っちまおーゼ!溶けたらもったいねーし」
そう言うと、嬉しそうに袋からアイスを取り出し、
「半分こ、どすえ~vvv」
と、照れながら、アイスを割ってシンタローに渡した。
シンタローはあまり納得はいかなかったものの、プールの飛び込み台に座ってアイスを食べながら、
「それにしても、なんでガンマ団の幹部がコンビニでこんな安いアイス買ってんだヨ?俺、こんなの食ったのってガキの時以来だゼ?」
隣の飛び込み台に座っているアラシヤマの方を向いて言うと、もう既にアイスを食べ終わっていたらしいアラシヤマが、
「シンタローはん」
真剣な顔をして近づいてきた。
「何だよ?」
一体何を言われるのかとシンタローは身構えたが、アラシヤマは、
「―――あんさん、そんなエロい食べ方したらあきまへん!いや、わての前では勿論ええんどすが(むしろ推奨)、他の男の前では絶対アイスを食べんといておくれやす―――!!!」
そう叫んだので、
「眼魔砲」
と、片手で眼魔砲を撃つと、アラシヤマは水飛沫を上げてプールに落ちた。制服のままプールに落ちたアラシヤマが、
「なっ、何しはるんどすかッツ!?」
抗議をしたものの、
「さーて、アイスも食い終わったし、そろそろ帰っかナ!」
シンタローは全く取り合わない。
シンタローが座っていた飛び込み台から立ち上がろうとすると、不意に足を引っ張られ、水の中に落ちた。
アラシヤマが抱きとめたので、顔までは水に浸からなかったが。
「お返しどすえ~v水もしたたるええ男どすナ!シンタローはん♪」
「テメェ、殺ス・・・!」
と非常にムカついたシンタローがアラシヤマを睨み上げると、アラシヤマは全く話を聞いていないようで、シンタローの下唇を親指でなぞり、
「つめとうおます。さっき、アイスを食べたからでっしゃろか?」
と、考え込んでいた。
「離せヨ!」
シンタローは、アラシヤマの腕の中から抜け出そうとしたが、馬鹿力なのか何なのか、腕は中々外れない。イライラしたシンタローがアラシヤマの指を噛み、親指の根元に赤く歯形がついた。
「あ痛!えらい凶暴な人魚どすなァ・・・」
アラシヤマはちょっとの間自分の手を眺めていたが、
「やっぱり、可愛いおます~vvv」
そう言って、キスをした。
「・・・あの、この先は?」
シンタローに睨まれつつ、アラシヤマが恐る恐るお伺いを立てると、
「考えりゃ、分かるダロ?」
「やっぱり、駄目なんどすな・・・」
アラシヤマはガッカリした様子であった。そして、シンタローを離した。
(本当は、そんなに嫌というわけじゃなかったんだけど・・・。まっ、別にいいか!)
シンタローがそう思いながら、先にプールサイドに上がると、
「シ、シンタローはーん・・・」
アラシヤマが水に入ったまま情けない調子でシンタローを小さく呼んだ。その様子がなんとなくおかしかったので、何だかそれほど腹も立たなかった。シンタローが、
「オラ、とっとと帰っぞ!」
と言うと、
「了解どす~!」
とアラシヤマは喜んでプールサイドに上がってきた。
「ヒデェ格好だナ!」
「あんさんも、たいして変わりまへんやん?」
「―――ったく、誰のせいだヨ?」
「ま、そのうち乾きますやろ」
軽口をたたきながら、2人は再びフェンスを乗り越えた。
誰もいないプールにはしばらく細かい細波が立っていたが、いつしか水面は穏やかになり、丸い月が映っていた。
わ、わたしはひょっとすると“甘い”の定義が間違っておりますでしょうか??(大汗)
ひよこ様ー!勝手に押し付けましてすみませんが、もしよろしければひよこ様に捧
げます・・・!(土下座)
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「ハァ・・・」
アラシヤマの持ってきた報告書を読み終わると、思わず口から溜め息が出た。
「し、シンタローはんッツ!!何か書類に不備や不明な点がありました!?いや、絶対にコレ、完璧なはずなんどすが・・・」
「別に、オマエの報告書に不備があったわけじゃねぇ」
そう俺が面倒げに言うと、アラシヤマはあからさまに安堵した顔をしたが、すぐに心配そうに
「ほな、どないされたんどすか?」
と聞いてきた。一瞬、どうしようかと思ったが、特に隠すことじゃねーしな。
「明日、オヤジが一緒にパーティーに出ろって言ってきやがった」
「明日、と言いいますと、各国のお歴々が来るやつどすな」
「ああ。それはまぁいいとして、何でそこで俺が社交ダンスを踊らなきゃなんねーんだヨ!」
「あんさん、ダンス苦手なんどすかぁ?」
さも意外そうに言ったので(馬鹿にしてんのか!?この野郎・・・!!)と思い、睨みつけると、
「ほな、今からわてと練習してみます?」
と、とんでもねーことを言い出しやがった。(男と踊るなんて嫌だし、そもそもコイツにダンスなんて踊れんのか・・・?)とアラシヤマの顔を見上げていると、
「そないに、不審そうな目で見はらんでも・・・」
アラシヤマは情けなそうな表情を浮かべたが、気を取り直したように、
「どうか、わてとワルツを。総帥」
と、かしこまって手を差し伸べてきた。
とりあえず、俺が男性パートでアラシヤマが女性パートで数曲踊ってみたが、俺はアラシヤマの足を何度も踏みまくった。別にわざとじゃねぇけど、コイツが、「もっとこう、相手に恋をするように!」とかわけのわかんねぇことを言って体を寄せてきたり、「シンタローはん!ここどす!ここで傾斜をつけず、後ろ足の引き寄せとタイミングを計りながら、相手をボディで回転させるんどすえー!!」とか踊っている最中に色々言いやがるもんだから、頭ではなんとなく理解できても、どうしてもタイミングがズレちまう。
「あー、もう、止めだ、ヤメッツ!!」
俺がドサッとソファに座り込むと、立ったまましばらく考え込んでいたアラシヤマは、
「最後に一曲、踊ってみてもかまいまへんか?今度はあんさんが女性パートで踊ってみてください。その方が分かりやすいかもしれまへん」
と言った。近づいてきたアラシヤマが、
「シンタローはん」
俺の片手をとった。そのままなんとなく立ち上がったが、いきなり腰に手を回され、互いの息がかかるほどの至近距離まで引き寄せられた。思わずアラシヤマを睨みつけると、
「本来、社交ダンスとはこーいうもんどすえ?ほな、始めましょか」
と、嬉しそうな顔をして、ぬけぬけとそう言ったのでムカついた。
最初は密着しすぎな気がしてかなり嫌だったが、アラシヤマは特に変なことをするわけでもゴチャゴチャ言うわけでもなく黙って踊っていたので、俺もただ踊ることに専念できた。女性側の立ち位置や、男性側のリードの仕方がさっきよりも百倍分かりやすかったので、嬉しかった。一通りの流れを踊り終えた後、まぁ、一応礼を言っとくかと思い、
「オマエのおかげで少しは分かったぜ。一応、ありがとナ」
そう言ってアラシヤマの肩に添えていた手を離し、ヤツから離れようとしたが、何故か腰を抱いた腕も絡ませた片手も離しやがらない。
「シンタローはん。ほんまやったら、もと居たソファまでエスコートするのが本筋やけど・・・。そこまで待てまへんわ。これも、あんさんがおぼこすぎるからどすえ?」
わけのわかんねぇことを言って一歩前に踏み出してきたので、仕方なく俺が後ずさると、背に壁が当たった。
「離せよ」
後ろはもちろん、前にも横にも避けられず、前に立つアラシヤマが視界を占領している状況下でヤツを睨みつけると、
「レッスン料、いただきます」
唐突に、キスされた。
・・・別にコイツのキスが上手いというわけじゃなく、酸素不足のせいか俺の膝の力が抜けるとアラシヤマはキスするのをやめたが、ますます俺を強く抱き寄せ、
「わて、これでも妬いているんどす」
と、耳元で囁いた。
「何にだよ?」
そう俺が聞き返すと、はぐらかすように笑い、
「―――そうどすなぁ、例えば、あんさんが無理矢理な結婚をさせられそうになったら、『異議あり!』って叫んで、あんさんを攫って逃げてあげますさかい」
そう、冗談のように言った。
「スッゲー、迷惑!それに、攫われんのは普通、花嫁の方じゃねーの?」
アラシヤマを見ずにそう言うと、
「いや、わては、シンタローはんがわてのために花嫁衣裳を着てくれるんやったら全然それでもかまへんのやけど・・・!」
とかボソボソと答えやがったので、空いた手で
「眼魔砲」
とアラシヤマに向かって超至近距離から眼魔砲を撃っておいた。部屋の隅で伸びていたが、・・・コイツのことだし、ま、これぐらいじゃ死にゃしねーだろ?
アラシヤマを中に放置したまま、総帥室を出て、
「う―――ん!」
と思いっきり伸びをすると、さっきよりもいくらか気分が軽くなっているような気がした。
―――でもまぁ、とりあえず、俺にワルツは向いてねぇ。
ロックさまー!素敵サイト2周年おめでとうございますvvvv
そして、素敵萌えアラシンフリー絵もUPさせていただきましてありがとうございまし
た・・・!(土下座)もう、素敵絵を観たときから、とんでもなく萌えで、思わずイメー
ジ文を書きたくなっちゃいまして、このようなSSを・・・(泣土下座)。
ご、ご迷惑かとおもいますが、ロックさまに捧げさせていただきたく思います☆
いつもほんまに色々とありがとうございますです・・・!(涙)
グンマ博士作の薬のせいで、猫耳と尻尾が生えたシンタローであったが、肝心のグンマはおやつを食べに行ってしまってその場にいなかった。キンタローが代わりに薬の成分を分析したところ、明日になれば消えるので、薬品などで無理に消そうとしない方がよいとのことであった。しかし、猫耳のついた姿をむやみと他人に見せるわけにもいかないし、シンタロー自身決して見られたいものではない。午後からの会議は決定事項の報告のみであったので、キンタローに代わりに出席してもらうことにした。
「そんじゃ、俺の代理をお前に頼んだからナ!」
「あぁ、任せておけ」
シンタローは、もっと猫耳姿をみていたかったらしいキンタローが名残惜しそうに書類を抱えて会議に向かう姿を見送り、ドアが完全に閉まるとソファーに行儀悪く寝転んだ。
(・・・ったく。馬鹿グンマのせいでとんでもねぇ目にあったゼ。でもまぁ、キンタローは絶対今日中にこのクソ忌々しい猫耳と尻尾が消えるって言ってたし、面倒くせぇ会議にも出なくてすんだのはよしとするか)
目が疲れた気がしたので少し目を閉じたところ、シンタローはいつの間にか眠ってしまった。
シンタローは、気持ちよく眠っていたが、ドアをノックする音で目が覚めた。眠っていたのは時間にして十数分程度であったらしい。コンコンという音と共に、
「シンタローはーん!あんさん今から会議とちゃいますの?遅れますえ~!?」
と叫ぶ声が聞こえた。
(ウッセーなぁ・・・)
シンタローは、眠りを妨げられて不機嫌であった。寝起きで頭がボーッとしていたが、一言文句を言ってやろうといつものようにドアを開けると、アラシヤマが、
「あの、どないしましたん、ソレ・・・?」
おそるおそる、シンタローの頭上を指差した。
シンタローは、アラシヤマに廊下で色々と叫ばれると嫌だったので、仕方なく部屋に入れた。アラシヤマは何らかのショックを受けていたようで、ソファに座ったまま無言であった。いつもとは違う様子のアラシヤマに、対面に座っていたシンタローは少々居心地が悪く感じた。
「・・・なぁ、」
「・・・シンタローはん」
沈黙に耐えられず、シンタローが何か言おうとした時、同時にずっと何か考えていたらしいアラシヤマも口を開いたので、
「何だヨ?」
シンタローが先を促すと、アラシヤマは真顔で、
「―――も、もしかして、遠まわしに誘ってはるんどすか?照れ屋なあんさんも可愛いおますけど、そんな凝ったものつけはらんでもわてはいつでも準備OKどすさかい、安心しておくれやすーvvvあっ、でも控えめに希望を言わせてもろたら、猫耳には鈴のついた首輪一つ(あとは裸)で!」
と力強く言った。
「―――死ね。眼魔砲ッツ!!」
部屋が半壊状態になった中、シンタローは、
「誘ってもいねェし、これは好きでつけてんじゃねぇッツ!馬鹿グンマのせいでこーなったんだよッツ!!」
そこだけはしっかりと主張しておいたが、はたして部屋の隅で伸びているアラシヤマに聞こえていたかどうかは分からなかった。
「シンタローはーんっ、おぼこうおます~vvv」
シンタローが机に戻って書類に判を押していると、いつの間にか立ち直っていたらしいアラシヤマが、背後から抱きついてきた。
「―――超ウゼぇ。離れろ!」
そう言ったが、アラシヤマは、
「嫌どすえ~」
と、シンタローにますますギュッと抱きつき、猫耳に頬擦りした。
「柔らこうおます・・・!たまには、グンマはんもええことしますナ!!」
シンタローはムカついたので、前に回されていたアラシヤマの腕に噛みついた。が、
「痛いけど、幸せどす!!ってことで、死んでも離れまへんえvvv」
アラシヤマは一向に離れる気配は無い。
「あっ、シンタローはん!耳をこう折ると“おたべ”みたいどすえー!!新商品の“黒おたべ”どすvvv」
耳を動かし、悪戯をするアラシヤマの手を払いのけたりしながら、シンタローは、普段よりも疲れが倍増しているような気がした。相変わらず背後霊のようにベッタリとくっついているアラシヤマを振り払う気力は既になかったが、せめてもの意趣返しに尻尾でアラシヤマの体をパタリ、パタリと叩くと、
「えっ?『はようキスして』!?すんまへん、わてとしたことがッツ!」
座っていた椅子をアラシヤマの方に向けられ、キスされた。
「ん――――ッツ!!(違うッツ!!)」
やっと、固定されていた頭を解放され、
(今日はとんでもねぇ厄日だゼ・・・)
そう思いつつ、アラシヤマの肩にコトンと頭を預けると、
「今日はあんさんが積極的で嬉しおす~vvv」
もう一度、今度は少し深めに、キスをされた。
ロックさまー!いきなり勝手にこんなものを捧げましてすみません・・・!(土下座)
ロックさまの素敵萌え猫耳シン&アラ絵を観た時からいつか書かせていただきた
く思っておりました・・・!いつもほんまにありがとうございます!(涙)
夕方のガンマ団内の公園で、士官学校生が2人、自主トレのためにロードワークを行っていた。2人は広い公園を並んで黙々と何周か走っていたが、ある時、1人が、
「―――オイ、あのずっと向こうの木の蔭にいるのって・・・、確か幹部のア」
そう口にすると、彼の友人は、
「シッ!その名前を口に出すなッツ!見なかったことにしろ!!」
と、小声で注意した。
「えっ?何でだよ??まぁいいか・・・。あっ、あのベンチに座っているのって、新総帥のシンタローさんじゃねぇか!相変わらずカッコいいし、なんつーか、男だけど綺麗だよなぁ・・・。隠し撮り写真が売れるのも分かる気がするなっ!!」
約100メートル程先のベンチには、トレーニングウェア姿のシンタローが、ベンチにドッカリと座ってタオルで汗を拭いていた。
「ちょっと、待て」
と、友人が走るのをやめて立ち止まったので、
「ん?何だ??」
と彼も立ち止まった。友人が手招きするので近づくと、
「オイッツ、あまり大声で喋んなよッ!もし万一聞こえてたらどーすんだ!?」
と、友人は小声で叱るように言った。
「フツー、こんな距離からは聞こえねぇんじゃねーの?それに、総帥は、こんなことぐらいで一々怒るほど心が狭かねーと思うぜ?」
「馬鹿ッ、お前、まだわかんねーのか!?問題は総帥じゃねーんだよ!」
そう言って、シンタローのいる方角を見ると、
「マズイッツ!」
と友人は青ざめた顔になり、
「気付かれたかもしんねーけど、とにかく逃げるぞッツ!!」
と言って彼の腕を引っ張り、もと来た方向に猛ダッシュで走り始めた。
「なっ、何だぁ!?」
どうにも状況が把握できていないような彼に、友人は逃げながら、
「とにかく、俺は、演習で目の敵のよーにシゴかれたり、将来、戦死確定な戦闘地域に配属されるのだけは勘弁してほしいんだよっ!」
そう小声でまくし立てた。
「??」
彼は、今だに状況をよく理解できていないようであったが、とりあえず友人に引っ張られるまま走っていった。
アラシヤマは、木の蔭で溜息を吐いた。
「なんやの、あのガキども・・・。しっかり聞こえてましたわ。わては、そこまで心の狭い男やおまへんで?大人どすし、常識ぐらいありますしな。でもまぁ、今度演習の機会があったら、お望みどーり、からかってやりまひょか。そして、シンタローはんの隠し撮り写真は当―然っ、没収どすな。それよりも、今はシンタローはんの方どすえ~!」
アラシヤマが木の陰からベンチの方を窺うと、シンタローの姿は一瞬の間に消えていた。
(あっ、ベンチに居てはらへんッツ!?わっ、わてのベストショットがー!!“タオルで汗を拭くシンタローはんv”を撮り逃したやおまへんかッツ!! )
アラシヤマがかなり焦って、木の陰から一歩踏み出すと、
「そこかッツ!眼魔砲ッツ!!」
いきなり高密度のエネルギーの塊が襲ってきた、ので、命の危機を感じたアラシヤマは、ガンマ団ナンバー2の実力で、ギリギリで避けた。
「シ、シンタローはーんッツ!!本気でわてを殺すおつもりどすかッツ!?」
冷や汗を掻きながら、道に出たアラシヤマがシンタローにそう言うと、
「チッ、外したか・・・」
シンタローは、忌々しそうにそう言った。そして、
「さっきから、どーも、キモい視線を感じるとおもったら、やっぱオマエか。ってゆーか、変態は死ね」
と言ったが、
「シンタローはーん!変態ってなんどすのんッツ!?酷うおます~!!!」
「・・・その、手に持ってるデジカメは何なんだヨ?」
アラシヤマはさらに冷や汗をダラダラ流しながら、明らかに作り物の笑顔で、
「えっ!?これどすかぁ!?もちろん盗さ、じゃなくて、ホラ、風景写真どすッツ!わては自然大好きっ☆どすから!!」
デジカメを持った手を後ろに隠した。
「フ―――――ン。」
シンタローは、明らかに信用していない目でアラシヤマを見、手を前に差し出した。
「なっ、何どすか??」
「見りゃわかんだろ?とっとと、カメラ渡せッツ!」
「い、嫌どすえ~」
「あっそ。えーっと、確か、一年半ぐらいかかる遠征の募集があったよなァ・・・」
「わ、わかりました・・・。渡しますから、一年半は勘弁しておくれやす」
アラシヤマは、明らかにガックリときた様子で、渋々シンタローにカメラを手渡した。
と、シンタローはいきなり、地面にカメラを思いっきり叩きつけた。カメラはバラバラに壊れた。
「あ゛――――ッツ!!」
「あんだヨ?なんか文句あっか!?」
シンタローが喧嘩腰にそう言うと、
「いえ、何もありまへん・・・。ただ、このカメラ、お気に入りやったんどす」
自業自得とはいえ、あまりにもアラシヤマの落ち込み様がひどかったので、シンタローは少々罪悪感が芽生えたのか、
「―――カメラの弁償はしねーからナ!・・・ただし、1分だけなら何でもオマエのいうこときいてやってもいいゼ?」
と提案した。
アラシヤマは、
「えっ!?ほんまどすかぁ??」
思いがけないチャンスにオロオロしていたが、シンタローが腕時計を見て、
「20秒経過。」
と言うと、
「ほ、ほな、目を閉じといておくれやすッツ」
そう言ったので、シンタローは目を閉じたが、何事も起こらなかった。
「あと、10秒だゼ?」
と言うと、ようやく覚悟を決めたのか、シンタローの頭を両手で引き寄せ、キスをした。
(あっ、コイツ舌入れやがって)
シンタローは、(調子乗ってんじゃねぇッツ!)とムカついたが、ふと、アラシヤマの背中に手を回すと、彼の舌に自分の舌を絡めた。
そして、突然、シンタローはアラシヤマから離れた。
「なっ、何どすのんッツ!?」
未だに状況把握が出来ていないアラシヤマに向かって、シンタローは、
「ゼロ」
と言って、ニカッと笑った。
「シ、シンタローは~ん・・・」
アラシヤマは思わずその場にしゃがみ込んだが、シンタローは、
「これでチャラだからなッツ!あと、今度ストーカー行為と、隠し撮りをしやがったら、殺す」
と言い捨てると、その場を後にした。
「かっ、可愛いおす!あっ、鼻血が・・・」
勿論、その後、アラシヤマのストーカー行為は止む事は無かった。
キモアラ万歳同盟様参加記念に書かせていただきましたが、アラシヤマが目指していたよりもキモくな
く、結構オイシイ思いをしている気が・・・(反省)。ロック様~!もし、こんな話でよろしければ、ロック様に
捧げます・・・(土下座)。
部屋の中では、仕事が一段落ついたシンタローが椅子に座ったまま、「うーん」と伸びをしていた。
「そろそろ、晩飯でも作っかな」
シンタローが椅子から立ち上がろうとすると、不意に、ドンドンとドアをノックする音がした。
「シンタローはーん!祇園仮面アラシヤマ、ただいま参上いたしましたえ~!!」
という台詞と共に、バンッツ、といきなりドアが開き、祇園仮面の格好をしたアラシヤマが総帥室に入ろうと一歩踏み出した瞬間、
「眼魔砲。」
ドウッツ!!と音がし、アラシヤマは眼魔砲の衝撃で吹き飛ばされた。
しばらく間が空き、
「な、なんで、いきなり眼魔砲ですのん~??」
と言いながら、ボロボロになったアラシヤマが床をズリズリと這いながら総帥室に入ってくると、
「イヤ、だって。変なものが来たと思ったから、つい。」
と、シンタローは答えた。それを聞いたアラシヤマは、
「変なものって、ひょっとすると、もしかして、わてのことどすかぁ??あっ、今の言葉でダメージ倍増ですわ。わてってデリケートやさかい・・・」
彼が、力尽きてバタリと倒れようとすると、シンタローは、
「ここで倒れてんじゃねぇヨ!後始末が面倒だろーが。どうでもいいけど、とりあえず着替えてくれば?」
アラシヤマの近くまで歩いて行き、そう言った。
アラシヤマはヨロヨロと起き上がると、
「へぇ。ほな、もう一回出直してきますわ」
部屋から出て行った。
アラシヤマが部屋から出て行くとシンタローは部屋に1人取り残されたが、何故か部屋の床にはカボチャが、丸々1つ、転がっていた。それは、何処からどう見ても、ただのカボチャであった。
「何だ、コレ?まさか、アラシヤマが持ってきたのかな?」
シンタローは、カボチャを手にとって眺めてみたが、何のために彼がカボチャを持ってきたのか、その意図が全く分からなかった。
彼はしばらく悩んでいたが、そのうちコンコンとドアをノックする音がし、ドアを開けるとそこには団服に着替えたアラシヤマが立っていた。
シンタローが部屋に入るように促すとアラシヤマは部屋に入って来たので、シンタローは疑問に思っていた事を聞いた。
「なんで、あんな格好してたんだ?それに、このカボチャ、オマエが持ってきたのか?」
「そうどす。だって、シンタローはん、今日は外国のカボチャのお祭りの日で、みんなで仮装するんですやろ?この前コージはんから聞きましたえ?この南瓜はわてからシンタローはんへのプレゼントどすえ~vvvなんや、南瓜のお祭りって、冬至みたいどすな!」
「・・・アラシヤマ。ハロウィンって知ってるか?」
「なんどすか?ソレ??」
「―――イヤ、もういい。しょーがねーから、このカボチャ、煮物にでもすっか・・・。責任とって、オマエも食えヨ!!」
「えッツ?わても一緒に食べてええんどすか??シンタローはんの手料理、嬉しおす~vvv」
「簡単なものしか作んねぇからナ!」
「南瓜祭りって、ええもんどすなぁ・・・」
「・・・もういいから、カボチャ祭りのことは忘れろ。」
嬉しそうなアラシヤマとは対照的に、シンタローは溜息をつきながら、そう言った。
ひょっとすると、もしかして、アラシヤマが「ア、イタタ!な人」すぎでしょうか・・・??
ハル様~!私も、ハロウィンが何であるかを、よく理解しておりませんです。すみませ
ん・・・(大汗)。も、もし、こんな話でよろしければ、ハル様に捧げますのでー!!