これからだった。
全て分かることが出来た。
これからだったんだ。
Doppel
Act0 夢から醒めた夢
「なんだそうか……」
2人を見たとき全てが分かった。
はまらなかったピースが、カチリとはまる感覚。
抱かれたときの体の違和感。
「俺、あいつの体だもんなぁ」
18歳当時の体。
「………なんだそうなんだ」
もう一度繰り返すと、その事実がはっきりと頭の中に入ってくる。
そして目の前にリプレイする今の光景。
急勾配な坂を一気に駆け上ったような、そんな動悸と目眩が。
全てが終わって、俺を抱いたのは。
なんだかんだ言ってそんな素振りは今までなかったのに。
「………………うわ、わかりやすー……」
ずるずると壁づたいに体が下がっていく。
どこまでも落ちて行くような感覚。
急激に体温が冷えていく。
それとは反比例にこみ上げてくる吐き気。
胃のあたりがたまらなく熱い。
気配が消える。
それでも体は動かなくて、冷たい床に座り込んだままどれくらい時間はたっただろう。
聞き慣れた足音が聞こえる。
「シンタロー様!こちらにいらっしゃったのですか!?急いでください、ハーレム様が……具合でも悪いのですか!?」
座り込んでいたシンタローに、駆け寄ってきたチョコレートロマンスが矢継ぎ早にまくし立てる。
しかし、俯いたまま僅かにも動こうとしないシンタローに心配そうな声が混じった。
その声に、ようやく体と神経が繋がる。
「いいや、別に平気だよ。結構ここ、穴場だと思ってたんだけどな?」
伸びをしながらうっすら涙目で欠伸をする。
見つかっちゃったなーとにっかり笑うシンタローに、チョコレートロマンスは脱力したように手を差し出した。
「後でお忙しくなるのはシンタロー様ですよ…。早く戻ってください」
「はは、ワリィ」
その手を取って体を起こす。
目の前がチカチカと点滅する。
さっき見た風景。
黒と白が交互に。
「シンタロー様?……本当に大丈夫なんですか?」
「ああ、……ただの立ちくらみだ。行くぞ」
心配そうな色を隠さない、チョコレートロマンスに又一つ微笑んで。
シンタローは歩き出した。
自分のあるべき場所へ。
気もち、悪い。
そう大丈夫。
分かっていたことじゃないか。
昔から。
もう慣れていたことで。
この顔の向こうに誰かがいることは。
それが彼も例外ではなかったと言うこと。
今まで他の人の視線には気づけたというのに。
結構な笑いぐさだね?
「みんな、この顔好きだなーー……」
………………本当に。
秘石も粋なことをしてくれる。
あの男がドコまで浸透していたかと言うことをわかりきっていたらしい。
広いベッドに服も変えずに倒れ込んだシンタローは、その長い髪の毛が真白いシーツに散らばっているのをぼんやりと眺める。
とっくに中天を過ぎた月がその漆黒を照らしていた。
唯一違う、体のパーツ。
「マジック」
貴方も。
「勘違い、させないでくれれば……」
見ていた。
昼間見た2人の姿。
それだけでもう全てが分かった。
視線。
空気が、違った。
「………………影、ね」
輝きを失った月。
偽りの太陽。
「ここにいる意味、無くなっちまったじゃねーか……」
その呟きは、誰にも届くことはなく闇に溶けていった。
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はい、とりあえず序章~。
次からもっとお話ちっくになりますよ。
まずはマジックとジャンの関係を知るところから。
…………………………ねぇ?(ねぇっていわれても)
広告 古文。有名出典20冊の読解法と入試問題解説 通販 花 無料 チャットレディ ブログ blog
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改訂版ドッペルを読む前の注意点です。
前の注意点が自分で読んでて痛い子だと思いました…。(苦笑)
基本的に私が特定のCPしか駄目なタイプ(リバ不可)なので。
しかしパプワに関してはかーなーり雑食だということが分かり、新たに注意点が増えましたのでその上で改訂いたしました。
っつか本当に頭悪い子な文だよあれ…!!
まずDoppel大前提カップリングです。
ルーマジジャンサビ。
正しくはルー→マジジャンサビ。
ジャンとマジック総帥、サービスとジャンが出来ていたというのが前提のお話です。
ある方のマジジャンを読んだのきっかけで、ばーっと話が出来上がりました。
このCPがあったとしてこのCPに至ったらと…つらつら。
で、シンタローさんがメイン。
だってシンタローさんが好きですから!
この話のカップリングはマジシンマジです。
考えてたらマジシンマジだなぁこれは、と思いまして。
直接的表現はありませんので(裏なのに!)、特にこの辺は気にしないで大丈夫かと。
空白の四年間から、シンタローさんパプワ島組にはいるまではシンタローさんサイドでお話が進みます。
シンタローさんがガンマ団から離れてからは、ガンマ団残留組で進めています。(05/10/18現在)(03年から始めていますが1年半ほどサイト休止期間がありましたので…)
や、シンタローさんの方に大きい動きがないと、もう進められないもので(苦笑)。
でもシンタローさんのお話って言うことは変わりません。
基本的に痛い話です。
まー好きでいることは綺麗事じゃねぇ!という話しなので。多分。(大層なテーマに見えるがもっと言い方ないのか)(多分だし)
マジック総帥とジャンは出来てましたし、総帥とシンちゃんも出来てる設定で進んでいきますよ。
そしてこの話ではキンちゃんはシンタローの名で通しております。
ややこしいんですが、キンちゃんの名で私がシリアスかけないもんで。(全てはグリーンリバーライトのせい…!!)
そして本誌を追いながら書いておりますので、本誌の設定と沿わない部分も出てきます。
(高松がガンマ団に4年間ずっといた等)(だっていないっていうの知る前に書いてたもので…!)
その辺はご了承を。
ではでは長々とかきましたが、痛いの平気でCP雑多で細かいところ気にしない方。
どうぞDoppelを読んでやって下さいませ。
05/10/18改訂。
上を向いて歩こう
触れた頬が思いの外に温かかく、思わず手を引っ込めた。
「まるで、眠り姫だな」
そのまま、起きる気配の無い弟の手を握り、にやけているシンタローの後ろに陣取ると弟の顔を見やる。
栄養を送るために日に数回、点滴が付けられる。
今は漸くその点滴が外され、面会が許された僅かな時間だ。
青白い面が、やや暗く調整された照明がさらに顔色を悪く見える。
「起きるさ、早いうちにな」
柔らかく、艶やかな髪を撫ぜてやり整えると漸く立ち上がった。
それでも未練がましく、顔を見つめたまま動こうとしない。
「…行くぞ」
我ながらひどい台詞だと解っているが、退出を促す。
もう一度、頭を撫ぜゆっくりとこちらを振り向いた。
「行くか」
「ああ」
出来るだけ、日の光が入るようにと選ばれたこの部屋は、今は幾重ものカーテンによって夜の寒さが防がれている。
研究棟の最上階にあるため、いくら空調が整備されていても窓から冷気が忍び寄って来る。
「早く、屋敷に戻れるといいな」
気休めにしかならないとわかっていても、そういってしまう。
起きたときにこんな寒いところに居たら、また閉じ込められたと思ってしまうだろう。
ドアには厳重にロックがされており、例え内側からでも開くことが無い。コタローにつけられている計器によって目覚めたならば、すぐにスタッフが気付くだろうか、その間に何が起こるだろうか…
閉じ込められた部屋とは違い、壁は一般的なもの。
力を解放すればいともたやすく壊すことが出来るだろう。
そうなってしまったあとでは、コタローは父親の、もしかしたら兄の言葉さえも聞き入れないだろう。
「皆、待っているしな」
シンタローもそのことを危惧しているのだが、屋敷に連れていくことが出来ずにいる。
なにかあったときのために、医療チームが傍にいたほうが良いのは確かであり、現に点滴等を投与する為、ここから離すわけにはいかない。
せめて目が覚めたとき、誰かが傍に居れば良いのだが…
二人で廊下を歩いていると、前方からグンマがこちらに向かって走って来た。
「キンちゃ~ん、シンちゃ~ん。久し振りぃ~」
目を眠たそうに擦っていたが、二人の姿を見掛けて、手を振って駆け寄って来た。
目の下に隈が出来ていて、どれだけ研究に打ち込んでいるのが容易に想像出来た。
「これから行くのか?」
「最近忙しくって会えなかったからね」
「それでも近くにいれたじゃねーかよ」
この数週間、シンタロー達は遠征に行っており、今度は支部へ視察に行かなければならない。
いつでも傍にいたいという願いとは反対に、飛び回らなければならない。
「後悔してるの?」
唐突なグンマの質問だが、何を、とは聞かない。
ただ、相変わらずの思考回路に苦笑した。
「お前、飛び過ぎ」
さすがに今の質問はわかりやすかった。
突飛な質問や疑問も、突き詰めていけばどのような意味を持つのかが理解出来る。
そのことに最近気がつき、質問の意図を確認するようにしていた。
気がついたのは、多分三人になったから。誰かが仲立ちすることで漸く、不自然さに気がつくことが出来た。
「してねーよ」
「自分で選んだことだからな」
後を継ぐように言われ、頬を掻く。
「どーせ、二人とも解ってたんだろ」
簡単に自分の決めた道を翻すわけが無い。
どんなに険しい道であっても、この道を進むことを決めた。
いつか、この道を歩いたことを誇らしげに語れるように。
そんな思いを込めて、当然というように笑って見せれば、案の定、二人は顔を見合わせて笑った。
「そんなシンちゃんが好きだよ」
「当たり前のことを聞くな」
自信満々で、笑う笑顔の為に二人が何をしているかなど、きっと一生言わないだろう。
キンタローのように傍にいるならばともかく、グンマが何かをしても、きっとシンタローは気が付くことはない。
そのことについて、キンタローはいつか聞いたものだ。
それで良いのか、と。
キンタローが言うのもおかしな話だが、この一族はなにかに執着したとき、相手の都合など考えずに突っ走る傾向がある。
一見シンタローの影のように付き添い、冷静であるように見えるが、それはキンタロー自身がシンタローの傍にいることを望み、どんな研究よりもシンタローが大切だという感情の表れに過ぎない。
グンマにしてもその兆しが無かったわけではない。
彼の研究に、ガンボットに対する執念は並々ならぬものだ。
だというのに、これほど気にかけているシンタローに対しての行動がおとなしい気がしたのだ。
そして、グンマの答えにキンタローは敵わないことを知った。
――今のシンちゃんは、キンちゃんが必要だからね――
ただ、笑っているシンタローが見たいのだと、そのためになにかが必要だというのなら、躊躇い無くグンマは動くのだろう。
それは、キンタローが見たことが無い顔だった。
少なくとも、キンタローが知っているグンマはおっとりとした、優しい従兄弟だった。
それが、たった一点シンタローのことが絡むと変わってしまう。
「ったく。聞くんじゃねえよ」
穏やかな笑みを浮かべ、シンタローは自室へと向かおうとした。
「あ~、久し振りなんだからもっと話そうよ~」
「俺は疲れてるんだよ」
能天気な声の下にある顔。
きっと、一生その全貌を見せることが無いだろう。
それでも、キンタローだけが知っている。
「明日」
「え?」
振り向くことも無く、ぼそっと呟かれた単語。
それでも、コタローのいる部屋とは反対の方向に進もうと、シンタローの後を追おうとしたグンマの耳には届いていた。
「だから、明日なら話を聞いてやるよ」
「ホント!?やった~!」
押し切られるような形でした約束だが、シンタローも嫌であるわけではない。
そして、呆れたように笑うのだ。
彼が欲しいのは、これだと知っているのはキンタローだけ。
「3時のお茶会」のかな様のところで配布されていた素敵小説。
今度は20000HIT記念です!お持ち帰り可だそうでいつものごとく右クリックです。
20000HITおめでとうございます~v
いつもいつも素敵な小説が楽しみで、これからも楽しみです!
従兄ズがすごい可愛くてああもうシンちゃん愛されてんなぁ!羨ましい!!(待て)とか悶えながら読ませていただきました!
そしてさりげなくグンちゃんが最強な模様が愛しいです。(笑)
相変わらずのキンちゃんのシンちゃん理解っぷりとか!!
コタローが目を覚まして、2代目四兄弟が仲よさげな様子がとても見たくなりましたっ。
ここには本来、かなさんの後書きが書かれております。
こちらこそよろしくお願いいたしますですッ!!
マジック×シンタロー風味のキンタロー+シンタロー バレンタインデー小説
************************************************
バレンタインデー1週間前。
「はぁ? チョコレートだぁ!?
オヤジに? 俺が!!?」
「ああ。」
素っ頓狂な声を上げたのは、我らがガンマ団現総帥シンタロー。
執務室の机にて対しているのは片腕兼秘書役のキンタロー。
『バレンタインデーに愛を込めて……』とロゴの入った冊子をシンタローに渡し、言ったところだった。
「何か言われる前にマジック伯父貴に何か送れ」と。
「何でそんなコトしなきゃいけねーんだよ。
別に俺とオヤジにはカンケーねーだろ?」
「1無量大数歩譲って、お前と伯父貴には関係ないとしても、
お前達2人と仕事量には関係がある。」
「あ?」
眉をひそめるシンタローを無視して手帳を取り出し、なにやらスケジュールをチェックするキンタロー。
「今のところ若干の遅れがあるんだ。
遅れと言ってもちょっと……2日ほど頑張れば何とか取り戻せる。」
「はぁ……」
「しかし、バレンタインデー前後にマジック伯父貴が騒ぎ出すとどうなる?」
「えーと?」
「お前逃げるだろ。」
「逃げ……ッ?」
「もしくは暴れるか。」
「ほほぉう」
「そうなると完璧に取り戻せなくなる。」
「ほぉ」
「ということで、ここはプレゼントを選ぶ時間の分だけ無駄にしても、お前達を暴れさせるわけには行かない。」
毅然とした態度で言ってくるが、いかんせん内容が情け無い。
「何か適当にプレゼントすれば向こうは納得するさ。
そんなに気を背負う物じゃないだろう」
「あのなぁ……」
「決まったら呼んでくれ。
それとも――――
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
――――くっそぉ……
内心歯がみしながらシンタローは呻いた。
口が自由に使えるのなら歯ぎしりの1つもしていただろう。
が、それが出来ない理由があって……
――――あのクソ親父……自分の思い通りにならねーとすぐこれだ……!
口に巻かれたリボンを噛みちぎる勢いでシンタローは体中に力を入れた。
それが無駄だと分かっていたけれど。
「シンちゃん。
今年のプレゼントは最高だねぇ……」
目の前の扉が開き、父親が入ってくる。
シンタロー達が今いる場所はマジックの自室。
シンタローグッズで囲まれた中、リボンでぐるぐる巻きにされた本物が一人。
ギロリとマジックを睨め付けるが、彼は意に介さない様子で受け流す。
ベッドの上に放られ、身動きできない体を楽しそうに眺めつつ、ゆっくりと近づいてくる。
牽制のつもりなのか、う~~と唸るシンタローにむかって微笑みさえ浮かべ。
「そんな目で睨まないでくれるかな。
パパ傷ついちゃうよ」
――――そんなタマか!
シンタローの視線がますます険しくなるのに肩をすくめ、
マジックはもう幅広のリボンを取り出した。
それで迷うことなくシンタローの目を覆い隠す。
「最近のリボンは、こんな太いのも市販で売られてるんだねぇ……」
楽しそうに呟きながら、マジックは息子の体から更に自由を奪っていった……
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「――――何て展開になるかも知れないぞ」
キンタローが言うのを、シンタローは机に頭を突っ伏して聞いて……いなかった。
「どうした?」
不思議そうに尋ねてくる双子(もどき)。
「どうしたもこうしたもあるかぁあ!!」
がばぁ!!と身を上げる。
その勢いで、机の上にあった書類が何枚か落ちたが、それを気にしている場合ではない。
「何でそーゆー話になるんだよ!!」
激高するシンタローに、キンタローは涼しい顔で、
「『バレンタインデー→プレゼント→リボン→縛りプレイ』だろ?
それとも何か――――」
ここで一呼吸置いてから、キンタローはじっとシンタローの目を真っ正面から見据え……
「お前はマジック伯父貴が何にもしないと思っているのか?」
「――――う!」
マジック信用なし。
「プレゼントはこのカタログから選べば問題ない。
1時間もあれば決まるな?
適当に選んでくれれば後でこっちから注文しておこう」
シンタローが言葉に詰まったのを好機と見て取ったのか、どんどんと話を進めていくキンタロー。
「決めるのは良いんだが……」
「何もお前は「バレンタインデー用」のつもりじゃなくても良いんだ。
日本式バレンタインデーだと思うから悪いんだ。
『ちょっとお世話になっている人にお礼のつもりで……』でも問題はない。
後は向こうが勝手に解釈してくれる」
「それが腹立つんだろうが……」
こっちが『いつもお世話になっているあなたへ』のつもりでも、
向こうが『俺……父さんのことが…………』などと解釈されたら泣くに泣けない。
が、勘違いと縛りプレイ。どちらかがまともかと言ったら……
扉から出ていくキンタローを見届けた後、シンタローはカタログをめくりだした。
「プレゼントってもなぁ……」
パラパラとカタログをめくり、めぼしい物を探す。
キンタローの言うとおり、本当に『適当』で良いのなら、パッと目に入った物でも良いのだ。
それでもそれをしない辺り、自分の気持ちと良心が現れる。
お菓子の詰め合わせ、花束、おそろいのカップやグラス。
色々あるが、どれも「コレ!」という要素に欠けている。
「う゛ーう゛ーう゛ー……」
カタログを受け取ってからとっくに1時間は過ぎている。
2時間後。
とっくに諦めたシンタローは、書類に目を通していた。
バレンタインデー前日。
再び総帥室にキンタローがやってきた。
「そういえばあのカタログどうしたんだ?」
「ああ。結局こうした。」
そう言ってシンタローは、真っ赤な包みを取り出した。
「……なんだコレは」
「チョコ。」
「……結局自分で作ったのか?」
「あぁ。グンマに材料買いに行ってもらってな。」
どうやら『何を送ろうかカタログ見て迷ってるなら、自分で作った方が手っ取り早い』と結論を出したようだ。
「明日暇見つけて渡しに行くさ。」
「そうか。」
言うシンタローの顔は、何処かすっきりしていた。
心の重荷が1つ消えたからだろう。
次の日。
つまりはバレンタインデー当日。
「じゃ、渡しに行ってくる」
ちゃっと手を挙げ、総帥室のドアノブに手をかける。
「頑張れ。」
処理された書類を確認しながら横目でキンタローは送り出した。
2/15日
時間には意外に厳しいガンマ団総帥が朝寝坊したのは、
既に全員の予想通りだった。
「……世話になってる礼だって言ったのに…………」
「あの男に通じる訳ないだろう」
「テメェ……言い出しっぺ」
「おかげで例年より遅れが少ない。良いことだ。」
「ほぉおおおぅう」
ギロリと睨み付けてみるが、キンタローはどこ吹く風で今日の予定を読み上げ始めた。
変わらぬ声
夜中に寝ぼける癖はいつからか。
横にある温もりに、満足そうに笑うのはなぜか。
本人も知らない、切ない癖。
音をたてない様にと気をつけてベットから降り立つ。
時刻は午前3時。一般的には真夜中とされている時間に、一緒に寝ている彼を起こすつもりはない。
スースーと寝息を立てているのを確認し、そのままバスルームへと向かう。
ドアも注意して閉め、明かりをつける。暗いところからいきなり照明をつけたため、眼が眩む。
どんなに眩しくともとも月明かりなどでは絶対に目を覚まさないくせに、人工的な明かりが灯ると起きてしまう、なんとも奇特な彼の為にキンタローは細心の注意を払っている。
コックを捻ってシャワーを浴びる。そのときも思いっきり浴びたいのを我慢し、水の音が外に漏れないよう、気を付ける。
最近の激務続きで幾分細くなった彼が十分な睡眠をとっているはずもなく、出来ることならこのまま朝まで寝かせておきたかった。
とはいえキンタローのほうも学会が近く、今まさに追い込みであり、これから研究室のほうへ行かなければならない。
そうでなければ、このまま朝まで暖かさを共有していた。疲れている彼を癒すためにも。
服はサイズが同じなため、少しばかり拝借する。それは寝る前にここへと運んでおいたものだった。
照明を消し、ドアを開けるとベットのほうに向かう。ここから出て行く前に、もう一度彼の顔を見るために。
覗き込んで顔を見ようとすると、うっすらと目が開いた。
起こしてしまったことに対して、謝ろうとする前に、彼が口を開いた。
聴きたくない言葉を、発するために。
「ん…パプワ…まだ、寝てろ…」
そしてぐいっと体を引き寄せると、また寝息を立てる。
満足そうに、笑いながら。
帰ってきてからどれくらい経つのだろう。
一緒に、こうして同じベットで寝るようになったのは何回目だろう。
それでも、時々こうして隣にいる男のことを間違える。
幸せそうに、嬉しそうに笑って。
本人も自覚していない、彼の癖。
ささやかな、悲しく、切ない癖。
それでも、キンタローはその癖が嫌いではなかった。
これから先、こうして一緒にいるのは自分だから。
いつか、自分の名前を読んでくれると信じているから。
そして、この癖を知っているのは――自分だけだから。
しわくちゃになってしまうであろう服に少し申し訳なく思いながらも、キンタローもシンタローの体に手を回し、眠りについた。
朝日によって目を覚ますと、自分が抱きしめているものにそっと目をやる。
そして、自分はまたやってしまったのだと気が付く。
日を受けてきらきらと光る髪をそっと梳く。
相手の服が自分のものであることを確認し、苦笑した。
キンタローが夜中に研究室に行くことは時々あり、この部屋から向かっていくこともあった。
ごそごそという音に目を覚まし、出かけていく彼に声を掛けたこともある。
こうして、寝ぼけて阻止することも。
そんなとき、彼はどんなに忙しくともこの手を解いたことはなかった。
そのまま一緒に傍にいてくれる。腕を回し、その暖かさを与えてくれる。
こうして、我侭に付き合ってくれる。
「ありがと、な」
耳元で囁くと回されている腕を起こさないように気を付けながら解き、起き上がる。
いつもはコーヒーとトーストで済ましてしまう彼に、美味しい朝食を作る為に。
その言葉を聴いて、満足そうに笑っているキンタローに気が付くこともなく。
悲しい癖も、こうして暖かく変わっていく
だから、この癖を変えないで
たとえ、求めているものが違っていても
結局は選んでくれるのでしょう?
「3時のお茶会」のかな様のところで配布されていた素敵小説ッ!
5000HIT記念だそうで、FDとなっているところ速攻で強奪ダウンロードしてきました。
5000HITおめでとうございます!
その上こんな素敵な小説をフリーで配布してくださるとは……本当にありがたいことです。
パプワくんとキンちゃんとシンちゃん!(パプワくんいないけど)
ものすごくツボな……、読んでいて思わず涙ぐんだんですが。
すごく切ないのに、それでもほっとできるような。
私のボキャブラでは語れないっての。読めばわかると思いますです。
無意識の確信犯(んだそりゃ)なシンタローさんに愛です。
ああもうキンタローさんてばッ!
本当に素敵な物をありがとうございました。
これからも頑張って下さいませ~。
夜中に寝ぼける癖はいつからか。
横にある温もりに、満足そうに笑うのはなぜか。
本人も知らない、切ない癖。
音をたてない様にと気をつけてベットから降り立つ。
時刻は午前3時。一般的には真夜中とされている時間に、一緒に寝ている彼を起こすつもりはない。
スースーと寝息を立てているのを確認し、そのままバスルームへと向かう。
ドアも注意して閉め、明かりをつける。暗いところからいきなり照明をつけたため、眼が眩む。
どんなに眩しくともとも月明かりなどでは絶対に目を覚まさないくせに、人工的な明かりが灯ると起きてしまう、なんとも奇特な彼の為にキンタローは細心の注意を払っている。
コックを捻ってシャワーを浴びる。そのときも思いっきり浴びたいのを我慢し、水の音が外に漏れないよう、気を付ける。
最近の激務続きで幾分細くなった彼が十分な睡眠をとっているはずもなく、出来ることならこのまま朝まで寝かせておきたかった。
とはいえキンタローのほうも学会が近く、今まさに追い込みであり、これから研究室のほうへ行かなければならない。
そうでなければ、このまま朝まで暖かさを共有していた。疲れている彼を癒すためにも。
服はサイズが同じなため、少しばかり拝借する。それは寝る前にここへと運んでおいたものだった。
照明を消し、ドアを開けるとベットのほうに向かう。ここから出て行く前に、もう一度彼の顔を見るために。
覗き込んで顔を見ようとすると、うっすらと目が開いた。
起こしてしまったことに対して、謝ろうとする前に、彼が口を開いた。
聴きたくない言葉を、発するために。
「ん…パプワ…まだ、寝てろ…」
そしてぐいっと体を引き寄せると、また寝息を立てる。
満足そうに、笑いながら。
帰ってきてからどれくらい経つのだろう。
一緒に、こうして同じベットで寝るようになったのは何回目だろう。
それでも、時々こうして隣にいる男のことを間違える。
幸せそうに、嬉しそうに笑って。
本人も自覚していない、彼の癖。
ささやかな、悲しく、切ない癖。
それでも、キンタローはその癖が嫌いではなかった。
これから先、こうして一緒にいるのは自分だから。
いつか、自分の名前を読んでくれると信じているから。
そして、この癖を知っているのは――自分だけだから。
しわくちゃになってしまうであろう服に少し申し訳なく思いながらも、キンタローもシンタローの体に手を回し、眠りについた。
朝日によって目を覚ますと、自分が抱きしめているものにそっと目をやる。
そして、自分はまたやってしまったのだと気が付く。
日を受けてきらきらと光る髪をそっと梳く。
相手の服が自分のものであることを確認し、苦笑した。
キンタローが夜中に研究室に行くことは時々あり、この部屋から向かっていくこともあった。
ごそごそという音に目を覚まし、出かけていく彼に声を掛けたこともある。
こうして、寝ぼけて阻止することも。
そんなとき、彼はどんなに忙しくともこの手を解いたことはなかった。
そのまま一緒に傍にいてくれる。腕を回し、その暖かさを与えてくれる。
こうして、我侭に付き合ってくれる。
「ありがと、な」
耳元で囁くと回されている腕を起こさないように気を付けながら解き、起き上がる。
いつもはコーヒーとトーストで済ましてしまう彼に、美味しい朝食を作る為に。
その言葉を聴いて、満足そうに笑っているキンタローに気が付くこともなく。
悲しい癖も、こうして暖かく変わっていく
だから、この癖を変えないで
たとえ、求めているものが違っていても
結局は選んでくれるのでしょう?
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5000HITおめでとうございます!
その上こんな素敵な小説をフリーで配布してくださるとは……本当にありがたいことです。
パプワくんとキンちゃんとシンちゃん!(パプワくんいないけど)
ものすごくツボな……、読んでいて思わず涙ぐんだんですが。
すごく切ないのに、それでもほっとできるような。
私のボキャブラでは語れないっての。読めばわかると思いますです。
無意識の確信犯(んだそりゃ)なシンタローさんに愛です。
ああもうキンタローさんてばッ!
本当に素敵な物をありがとうございました。
これからも頑張って下さいませ~。