アラ:「シンタローはーん!どうやら、わての熱中症の対処法は、間違ってたみたいどすえ~。この 前部屋を大掃除してましたら、箱の中から仕官学校時代の保健の教科書がでてきたんどすが、 そこに熱中症のことが載っててわてのやり方がちょっと間違ってたことが分かったんどす~! ―――ここはひとつ、わてとシンタローはんで、正しい熱中症の応急手当を実演してみまへ んか?」
シン:「ヤダ。何で俺が」
アラ:「わ、わてら心友ですやろ??協力してくれはっても、ええんちゃいますのん?ここはひとつ、 アラシン30題「10.暑い夏の日」を読んだ方々の誤解を解くためにもお願いしますえ?もし、 協力してくれはったら、この前の賭けの借金、チャラにしますえ?」
シン:「(借金チャラか・・・)仕方ねぇな。あっ、言っとくが“心友”じゃねェからナ(笑顔)。でッ、 どっちが熱中症の役なんだ?」
アラ:「えっ?今、心友やないて聞こえた気がしますが、たぶんわての空耳どすな!もちろん、熱中症 役はシンタローはんどすえ~。ホラ、実際に熱中症にかかった人の方が症状とかよく分かって ますやろ?」
シン:「って、言われてもよく覚えてねェんだけど」
アラ:「・・・ただ、寝ててくれはるだけでよろしおすから」
シン:「じゃぁ、とっとと終わらせろヨ!」
アラ:「へぇ。それでは、はじまりますえ~」
アラシヤマは、仕官学校時代の保健の教科書の、『いざというときの応急手当~熱中症~』という項を開いて手順を確認していた。
「えーっと、まずは、“風通しのよい涼しいところに静かに寝かせる”と書いてありますな。ほな、ちょっと失礼しますえ?涼しいところというとあそこの茂みが丁度ええどすな!(人目にもつきにくうおますし・・・)」
アラシヤマは、シンタローを抱え上げて人気の少ない木陰の茂みに移動した。シンタローを横たえると総帥服のボタンを外し始めた。どうも手つきが怪しかったので、不審に思ったシンタローは、
「―――オイ、本当に手順通りなのかよ?」
と、疑いの目でアラシヤマの方を見上げると、アラシヤマはビックリしたような顔をし、
「えっ?もちろん、本の通りやってますえ?“衣類をゆるめ、水で濡らしたタオルを首、脇の下につけて冷やし、同時に風を送る”とここに書いてありますしな。タオルで冷やすためには服をはだけさせないと冷やせまへん!!」
と、胸を張って言った。そして、どこからか水で冷やしたタオルを用意し、シンタローの首や脇の下にタオルを当て、持ってきていたうちわで扇いだ。その日は暑い日だったのでその行為は気持ちよく、なんとなく釈然としないながらも、特にシンタローも文句は言わなかった。木陰は風がよく吹きこみ、涼しかった。
「さて、次どすがシンタローはん。意識があるときバージョンと意識が無い時バージョンのどちらがええどすか?」
(ったく、面倒くせぇナ。もう適当でいいや)
「じゃ、意識がない方」
シンタローが適当にそう言うと、アラシヤマは、ほんの一瞬嬉しそうな顔をした。不審に思ったシンタローが、やっぱり意見を変えようとしたが、その前にアラシヤマが、
「じゃあ、シンタローはん、目を閉じて黙っててくれはります?」
と言ったので、素直に目を閉じてしまった。
(あー。なんか、眠くなってきた。昨日も徹夜で書類読んでたし。もう、アラシヤマの茶番に付き合うのなんかやめてここで昼寝でもすっかなぁ・・・)
シンタローがそう思っている一方で、アラシヤマは、1人でブツブツ言っていた。
「えーっと、まず意識の確認で、意識がない時は気道の確保どすか。で、呼吸の確認どすが、呼吸があるのを確かめてからすぐ救急車を呼ぶ?そんなん、面白うおまへん。―――やっぱり、やるなら呼吸がない場合の方どすな。うーん、この図やと寝たままどすが、この体勢やと都合が悪、イヤ、やりにくうおますな。ってことで、ちょっと失礼しますえー。あ、まだ目は閉じてておくんなはれ」
シンタローは(?)と疑問に思ったが、とりあえず言われた通りにしていると、アラシヤマに少し抱き起こされる気配がした。
「シンタローはーん!あれ?意識がおまへん!!大変どす~」
アラシヤマのふざけた調子の芝居に、シンタローは思わず笑いそうになったが、
「ほな、まず、気道の確保どすな!」
そう言って、アラシヤマはシンタローの顎を持ち上げた。
予想外の出来事にシンタローはビックリしたので、目を開けようとすると、アラシヤマの手が目を覆い視界は真っ暗なままであった。
そのまま上を向かされた状態にシンタローは非常にムカついたので、アラシヤマに至近距離から眼魔砲を撃とうとすると、
「眼魔、」
「おっと、シンタローはん、呼吸が止まってますえ?ということで、人工呼吸どす~vvv」
と、シンタローはアラシヤマにキスされた。
「ん―――!!(怒)」
と言葉にならないながらも抗議しながら、シンタローは圧し掛かるアラシヤマの体を遠ざけようとしたが、体勢が悪かったせいとキスをされて力が抜けていたおかげで、アラシヤマを引き剥がすことはできなかった。
シンタローにとっては、かなり長い間と感じられる時間が経った後、やっと口付けから解放され、目の上から手がどけられたので、シンタローはアラシヤマを睨みつけた。
体に力が入らなかったので、シンタローはアラシヤマに抱えられたままアラシヤマをキッと睨んでいると、アラシヤマは、しばしシンタローの顔を見つめ、
「かっ、可愛おすー!!そんな、色っぽい目で見つめられると、燃えますえー!シンタローはーん!!さて、最後の応急処置どすが、手足などの筋肉にケイレンを起こしている場合は温かいタオルを当てるとなっていますな。ってことで、シンタローはん。総帥服は長袖長ズボンですさかい、服を全部脱いでもらいますえー!!」
そう言って、アラシヤマがシンタローの既に肌蹴かけている服を脱がそうと手をかけると、
「―――アラシヤマ君、熱中症の患者は応急手当後、医師の診断を受けないと駄目なんですよ。ってことで65点。不合格」
と、突然、向こうの茂みの方から高松の声が聞こえた。
そんな所に人がいるとは全く思わなかった2人は固まった。
「ゲッ、ドクター・・・(わて、どうもこの人は苦手どすわ)」
「もしよかったら、新総帥をそのままここに置いて行ってもらってもいいんですよ。フフフ・・・、私がじっくり診ておいてあげますからねvvv」
「そ、それは嫌どすッツ!!変態ドクターに、わてのシンタローはんを預けたら、一体何をされるかわかったものやおまへん!!ってことで、逃げますえー!シンタローはーん!!」
そう言って、アラシヤマはシンタローを抱えあげると、ものすごい勢いで逃げていった。
残された高松は、
「おや、冗談なのに。そんなに急いで逃げなくても・・・。それにしても、五月蝿い(←ほぼアラシヤマのみ)若造どもが出て行ったおかげで、これでやっと読書に集中できますよ。ったく、こんな所で始められたらたまったものじゃありませんからね。・・・お医者さんゴッコをしようなんて100年早いですよ(それにしても、アラシヤマは“変態ドクター”って言っていましたね。忘れませんよ)」
そう言って、高松は寝そべったまま、再び本を読み始めた。
オチはドクターです(って、落ちてませんよね・・・)。
一応、本当の熱中症の応急手当を参考にしながら書いたのですが(汗)。
ちなみに、“意識があるとき”は、スポーツドリンク(水分&塩分)を補給するとよいそうです。
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昨日は、夢見が悪かった。
もう、何の夢を見たか忘れたが、とにかく嫌な夢だったことだけは分かる。
気が乗らないまま、総帥室で書類を眺めていると、アラシヤマが部屋に入ってきた。
「シンタローはーん!あんさんのアラシヤマが来ましたえ~vvって、どないしはったんどすか?なんや顔色が悪うおますえ?」
アラシヤマは机に書類を置くと、机越しに心配そうに俺の顔をのぞきこんだ。
「何でもねぇヨ」
面倒だったが、俺が少し笑って見せると
「それは嘘ですな。あんさん、今明らかに作り笑いしてはりますし」
深刻そうな顔でアラシヤマはそう言うなり、いきなり俺の両頬をつまんで引っ張った。
「ホラ、シンタローはん。スマイル、スマイル。やっぱり、あんさんには笑った顔が似合いますわ!」
俺は、アラシヤマの手を振り払い、
「・・・てっめぇ、ソレ、本気で言ってんのかヨ!?眼魔砲ッツ!!」
アラシヤマに向けて眼魔砲を撃った。
「い、痛うおす~」
アラシヤマは丈夫なのかなんなのか、しばらくすると、立ち直ったみたいだ。
「ほんまに、シンタローはんは容赦おまへんなぁ・・・。普通の人やったら死んでましたえ?まぁ、わてはガンマ団№2やさかい、なんとか大丈夫どすけど。そんなことより、元気出はりました?あぁ、その顔を見ますと、もう大丈夫そうどすな」
アラシヤマが苦笑しながらそう言うので、俺は、
「何で、オマエにそんなことが分かんだヨ?」
と聞くと、
「そりゃぁ、わてはいつもシンタローはんを見てますさかいな。例え、あんさんが逃げようと、地の果てまでも追っかけていきますえ~vvv」
それを聞いた俺は、
(怖ぇ。このストーカー)
と思ったが、少しだけ嬉しいような安心したような気持ちも確かにあった。
確かに、コイツなら、やりそうだと思った。
「俺、いつ消えるかもわかんねぇゼ?一回死んでるし」
俺がそう言うと、
「なんや。あんさん、そんなこと心配してましたんか」
アラシヤマは、机を回り込み、椅子に腰掛けている俺を包み込むように抱きしめた。
俺は、不意をつかれたせいか、どうしてもその腕を振り払うことが出来なかった。
頭を抱えられて、目の前のアラシヤマの服しか見えない俺の頭上で、アラシヤマが言った。
「大丈夫どす。ほら、日本の神話で夫婦の神様がおりましたやろ?神様やいうても死にはるんで、女神の方が死んでしまったんですわ。それをたいそう嘆いた男神は、愛する妻を取り戻そうと黄泉の国、マァ、死後の世界どすな、に出かけました。結局、彼は妻に会えたものの逃げ帰って来たんどすが、わてやったらそうはしまへん。必ずシンタローはんを見つけて、例えどんなあんさんであっても、絶対連れて帰ってきます。あんさんもご存知のとおり、わては不可能を可能にする男どすえ?」
俺は、何か言うべきだろうと思ったが、涙しか出てこなかったので、誤魔化すようにアラシヤマの服に顔を押し付けた。
アラシヤマの腕に力が込められ、少し苦しかった。
俺は、叶わない願いだと何処かあきらめつつも、どんな形であれ、この腕がずっと俺の傍に在り続ければいいと思った。
シンタローはんは、よく、わてが好意を示す言葉を言うと、疑ってはる。
好意だけやのうて、どんな言葉であっても、嘘は許されない。
わてからシンタローはんへの言葉は、もちろん、いつも真実のものやけど。
そやかて、たまに、よく考えずに「愛している」と言ってしまう(実際、愛してるさかい、間違ってまへんやろ?)。
そうすると、シンタローはんは、何処か失望した目をし、わてから目を逸らしてしまう。
わては、失望したシンタローはんを見ると、心から血が流れて止まらへんような感覚を体験する。
・・・わてばかりが悪いんやのうて、シンタローはんかて、ズルいと思いますえ?
わては、シンタローはんを思わず責めてしまいそうになる言葉を言ってしまいそうになる自分自身を必死で押し留める。
それを言ってしまえば、シンタローはんが2度とわてを心に入れへんようになることは、簡単に想像が付く。
―――ただ、わては、推測でしか動けんのが時々キツイんどす。
わてかて、人間やさかい、迷うときもありますわな。
たまには、あんさんも、わてにどうしてほしいか言ってみておくんなはれ。
そうすれば、わても、あんさんの望みに沿うことが出来るし、間違いはせんと思うんどす。
もっと、言葉にして求めてくれはってもええんどすえ?
それは、全然、怖いことでも、恥ずかしいことでもあらしまへん。
求めてくれはったら、わては報われます。
好意だけやのうて、どんな言葉であっても、嘘は許されない。
わてからシンタローはんへの言葉は、もちろん、いつも真実のものやけど。
そやかて、たまに、よく考えずに「愛している」と言ってしまう(実際、愛してるさかい、間違ってまへんやろ?)。
そうすると、シンタローはんは、何処か失望した目をし、わてから目を逸らしてしまう。
わては、失望したシンタローはんを見ると、心から血が流れて止まらへんような感覚を体験する。
・・・わてばかりが悪いんやのうて、シンタローはんかて、ズルいと思いますえ?
わては、シンタローはんを思わず責めてしまいそうになる言葉を言ってしまいそうになる自分自身を必死で押し留める。
それを言ってしまえば、シンタローはんが2度とわてを心に入れへんようになることは、簡単に想像が付く。
―――ただ、わては、推測でしか動けんのが時々キツイんどす。
わてかて、人間やさかい、迷うときもありますわな。
たまには、あんさんも、わてにどうしてほしいか言ってみておくんなはれ。
そうすれば、わても、あんさんの望みに沿うことが出来るし、間違いはせんと思うんどす。
もっと、言葉にして求めてくれはってもええんどすえ?
それは、全然、怖いことでも、恥ずかしいことでもあらしまへん。
求めてくれはったら、わては報われます。
‘ オレって、元番人だから歳とらねーし、死なねぇんだよね ’
ジャンに言われた言葉だ。
突然、何を言い出すのかと思った。
言って、それから奴はふらっと姿を消した。
すっかりいなくなってしまった。
その時はただ、変な奴だと背中を見送ったけれど
アイツがいなくなってから、その言葉をオレはふと考えるようになった。
夜、ベッドに入ってからもその言葉がずっと頭から離れなくて。
じゃあ、オレはどうなんだろう。と考え出して止まらなくなった。
死なないって
嫌だな。と思った。
あの島で、オレは
マジックを倒すために自分は造られたのだと赤い秘石に教えられて
でも実はそれは青い秘石がとっくに消していて
オレはジャンにそっくりに造られた青の番人、の影で
じゃあオレって何なんだろう。
オレも死なないのかな。
死なない、ってそう思った時に咄嗟にマジックが頭を過ぎる。
あの男が自分だったらどうするだろうか。
オレはいないのに、アイツは生きる。
今度こそ、世界を壊してしまうかもしれない。
オレがいない世界だから。
狂っちまうんだ。
絶対、泣く。
オレはとっくにいないのに、毎日オレの名前を呼んで
オレを、探すんだ。アンタは。
でも、
そんな事はきっと無くて、
オレが不老不死だろうが、そうじゃなかろうが、
アンタは、オレよりも先に土に還る存在で
オレはアンタを思い出に変えちまうんだ。
残酷だな。
不老不死でも、そうじゃなくても、
オレにとっては一緒なんだ。
だって、
アンタがいないもの。
―――――だったら
不老不死の方が、オレは良いよ。
だって死んだら、何もかも忘れて別の誰かに生まれ変わって
また別の人間を好きになっちまうんだろう。人間ってそうだろう?
生まれ変われなくても、全部消えちまうのは確かだ。
好きだった事は、形として何処かに残るかもしれないけど
今まであった事、楽しかった事とか、それだけじゃなくて
悲しかった事とか許せなかった事
オレが、どうしてアンタを好きになったのかも
そう言ったオレが記憶したもの全部
オレが死んだらオレと一緒に消えちまうんだ。
オレは、残したい。
消したくない。
アンタは死んで、
何処かで生まれ変わってオレじゃない誰かに恋をしても良いよ。
だってもうそれは、アンタじゃない誰かだから。
オレの知らない人だから。
オレは、アンタが死んでからも
オレの中のアンタと一緒に生きていく。
死なないって、オレは勝手に心に決めて
眠気に身をまかせた。
アンタはすぐオレに好きだと言って、
オレはアンタに好きだなんて言った事ないけど
多分オレは、アンタよりアンタを想ってると思うよ。
【なみだ】
時々、自分の中にもう一人の自分がいるような感覚に陥る事があるよ。
外の自分がしている事を、中にいるもう一人の自分が、それを止めるでもなく
ただじっと見つめて眺めている 感覚。
自分がしている事なのに別の誰かがしているように感じるんだ。
おかしいかな?
そうする事で責任から逃れようとしているのかもしれない。
でも、中にいる私も止めないんだから同罪だよね。
椅子の背凭れに深く寄りかかりながら淡々とした口調で言う。
今、どんな表情をしているのだろう。それすらも解からない。
いや、表情なんてないのかもしれない。
後ろにいたシンタローの気配が近くなったのを感じる。
手が、伸びて、目を塞がれた。
痛い。と呟いてみる。
本当はそんなに痛くもないけど。
でもシンタローの方がもっと痛いんだろうな。
ごめんね。こんな事言って。
心の中で謝る。口では言わない。
だって苦しめるために言ったから。
お前は優しいから、こんな『可哀相な私』を捨てられないだろう?
狡くて、汚くてごめんね。
でも、
シンタローがパパのものになるんだったら、どんな手だって使ってやる。
どんな隙にだって付け込むよ。
「・・・こんなに」
こんなに綺麗な、青い目をしているのに
オマエの目は何も見えていない。
どうしたら伝わるんだ。どうしたら理解してもらえるんだ。
どうしたら・・・
シンタローの声は震えていた。
きっと振り返ってはいけないんだと思った。
だけど、抱き締めたかったから、
私の目を抑えていたシンタローの両手を顔からはずして、立ち上がって振り返った。
予想通り、彼の目許は赤く染まっていて、思わず苦笑してしまう。
それにカッとなったのか、シンタローの手が頬に飛んできたのを、掴んで引き寄せた。
唇と唇が、触れ合う。
深く交わして、漏れる吐息が熱い。
世界なんて、
オマエと私だけがいれば良かったのに。
時々、自分の中にもう一人の自分がいるような感覚に陥る事があるよ。
外の自分がしている事を、中にいるもう一人の自分が、それを止めるでもなく
ただじっと見つめて眺めている 感覚。
自分がしている事なのに別の誰かがしているように感じるんだ。
おかしいかな?
そうする事で責任から逃れようとしているのかもしれない。
でも、中にいる私も止めないんだから同罪だよね。
椅子の背凭れに深く寄りかかりながら淡々とした口調で言う。
今、どんな表情をしているのだろう。それすらも解からない。
いや、表情なんてないのかもしれない。
後ろにいたシンタローの気配が近くなったのを感じる。
手が、伸びて、目を塞がれた。
痛い。と呟いてみる。
本当はそんなに痛くもないけど。
でもシンタローの方がもっと痛いんだろうな。
ごめんね。こんな事言って。
心の中で謝る。口では言わない。
だって苦しめるために言ったから。
お前は優しいから、こんな『可哀相な私』を捨てられないだろう?
狡くて、汚くてごめんね。
でも、
シンタローがパパのものになるんだったら、どんな手だって使ってやる。
どんな隙にだって付け込むよ。
「・・・こんなに」
こんなに綺麗な、青い目をしているのに
オマエの目は何も見えていない。
どうしたら伝わるんだ。どうしたら理解してもらえるんだ。
どうしたら・・・
シンタローの声は震えていた。
きっと振り返ってはいけないんだと思った。
だけど、抱き締めたかったから、
私の目を抑えていたシンタローの両手を顔からはずして、立ち上がって振り返った。
予想通り、彼の目許は赤く染まっていて、思わず苦笑してしまう。
それにカッとなったのか、シンタローの手が頬に飛んできたのを、掴んで引き寄せた。
唇と唇が、触れ合う。
深く交わして、漏れる吐息が熱い。
世界なんて、
オマエと私だけがいれば良かったのに。