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 Side:S

 昔の夢を見た。仕官学校時代の夢だ。
 偶々、戦闘の実技演習で俺がコージと一緒になった時、俺が何気なく
 「あ、アラシヤマの奴、まだあそこか。俺たちの方が早くポイントに辿り着きそうだナ!」
 と隣に居たコージに話しかけると、
 「おんし、何でそんなこと分かるんじゃあ!?」
 ビックリしたような顔をされた。
 「えっ、だって。あの炎、アラシヤマのダロ!?」
 俺がそう言うと、コージはますますギョッとしたような顔をした。
 「炎なんて、どれも似たようなもんじゃろーが?ワシには区別はつかんわ。流石、ガンマ団ナンバーワンじゃのォ・・・」
 そうシミジミと感心したように言われたが、何故か釈然としなかった。
 一目瞭然で判るもんだと思ったし。


 (何で、今更あんな昔の夢を見たんだ?それにしても、普通、誰でも区別がつくもんじゃねーのかヨ!?)
 どーでもいいようなほんの些細なことが、いったん気になると中々頭を離れない。
 なんとなく不愉快な気分で仕事をしていると、珍しい客が来た。
 「失礼します」
 と、マーカーが入ってきた。
 どうやらハーレムの使いらしい。あのオッサン、一体どこで遊び呆けてやがんだか。
 「御無沙汰しておりました。・・・お元気でしたか?」
 と、一通りの用件を済ませたマーカーに聞かれた。
 「ああ。アンタは?」
 俺がそう聞くと、
 「相変わらずですよ」
 片頬を歪めて笑った。
 ―――どうも、苦手だと思いつつ、礼をして退室しようとするマーカーに、
 「ちょっと、聞きてーことがあんだけど」
 と言うと、ドアを開けかけていたマーカーは、
 「何ですか?」
 振り返った。


 「なァ、アンタ、アラシヤマの炎と他の炎の区別がつくか?」
 「―――ええ、それはつきますよ」
 俺は、なんとなくスッキリした気分になったが、その後に続くマーカーの言葉に地獄に突き落とされたような気持ちになった。
 「ですが、それは私があの馬鹿弟子に技を教えたからであって、普通区別はつかないと思います。もし区別がついたとしたら、よっぽど奴の事をよく見ているんじゃないでしょうか?」
 「・・・そんなハズはねぇッツ!」
 マーカーは、俺の顔をジッと見ると、ニヤリと笑い、
 「では、馬鹿弟子に実際に炎を出させてみて何か変わったところはあるのか調べてみてはいかがですか?手のひらサイズでも大技でも本質は変わりませんよ」
 「言っとくが、別に俺がどうとかいうんじゃねーからナ!!」
 「そうですか」
 「・・・言っても出さねーときはどーすんだヨ?」
 「それは、おそらく」
 俺は、マーカーの言葉を聞いて半信半疑だった。
 「―――それ、もし嘘だったら承知しねーゾ!?」
 マーカーを睨んでみたが、特に怖がる様子もなくその表情からは何を考えているのかは読み取れなかった。ただ、なんとなく面白がっているような気配は感じた。
 どうにも、食えねぇ野郎だと思った。


 SIDE:A

 わてが、シンタローはんに遠征の報告に行った際、報告が終わると何故かシンタローはんが、
 「―――アラシヤマ、ちょっと炎を出してみろ」
 と言わはった。
 わてが、
 「嫌どす」
 と即答すると、
 「何でだヨ?」
 と拗ねた子どものような顔をしはった。それは、めちゃくちゃ可愛かったんやけど、ここで負けてはと我慢して、
 「とにかく見世物やありまへんし、わては、特にあんさんには見せとうないんどす」
 そう言うと、シンタローはんは眉間に皺を寄せた。(傷つけてしもうたんやろか?)と思ったけど、わては、日常であんさんには戦場を思い起こさせるものはなるべく見せとうないんどす。
 シンタローはんが、難しい顔をして、
 「ちょっと来い」
 と言うので、(これは、殴られそうやナ・・・)と覚悟して傍まで行くと、椅子に座っていたシンタローはんが急に立ち上がり、
 不意にキスされた。
 ―――不覚にも顔が熱くなるのが自分でも分かったんやけど、どうしようもおまへん。いまにも炎のコントロールが出来なくなりそうなのを、ただ必死に堪えた。
 すぐにシンタローはんは離れようとしはったけど、わてはシンタローはんの腰を引き寄せ、今度はわての方からキスをした。
 歯列を割って舌を絡めるとシンタローはんの顔が赤くなり、逃げようとしたけど勿論離さなかった。どうやらシンタローはんの膝の力が抜けたようなので椅子に座らせると、
 「あの野郎・・・、騙しやがってッツ!」
 何やら誰かに対して怒っていた様子やったけど、
 「シンタローはん、今はわてのことだけ考えて?」
 とわてが言うと、溜息を吐き、諦めたように目を閉じはったので、もう一度シンタローはんにキスをした。
 今度はシンタローはんは逃げず、わての首に腕が回された。







何故か、当サイトでアラシヤマの誕生日を祝うのが2回目となりました・・・。
じ、実はアラシヤマの誕生日を管理人はまた勘違いしておりました~(死)。
それにしても、一人称、久々です・・・。この話は誕生日とは関係のないような気もしますが、
とりあえず、HAPPY☆BIRTHDAY!アラシヤマ~!!

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 一日の仕事を終えたシンタローが、廊下を歩いていると、
 「シンタローは――――ん!!」
 後ろの方から叫ぶ声が聞こえた。振り返りざま、
 「眼魔砲ッツ!!」
 と、眼魔砲を撃とうとすると、いつの間にか近くまで来ていたアラシヤマが、
 「あっ、今回眼魔砲は堪忍しておくれやす~!アイスがとけますさかいに」
 コンビニの白いビニール袋をヒラヒラさせてそう言った。アイスという単語に少々気が抜けたので、シンタローはとりあえず高密度のエネルギー体を消失させた。
 「何だヨ、ソレ?」
 「アイスクリームどす。シンタローはんと一緒に食べようと思うて、買うてきたんどすえ~!」
 「買うてきたって、オマエ。いきなりわけわかんねェし」
 「だって、シンタローはん、この前何遍もわてのこと“暑苦しい”言うてましたやん。よくよく考えてみたんどすけど、それはわてが“炎”を使うイメージからくるもんやと分かったんどすー!わては暑苦しい男やないいうことをシンタローはんに証明しよう思いまして、だから、冷たいアイスなんどすvvv」
 (見当違いなうえ、やっぱりコイツ、わけわかんねェ・・・)
 シンタローは、アラシヤマの行動自体を指してそう言ったわけであったが、アラシヤマが、
 「あんさん、一日中、冷房に当たってばっかりでしたやろ?体に悪うおます。ということで、今から外へ行きまへんか?それに、アイスは外で食べるもんどすえー!!」
 と言った言葉を聞いて少し心を動かされたので、アラシヤマの勘違いについて蒸し返すのはとりあえず、やめておいた。
 「まぁ、別にいいけど。今は夜だゾ?こんな時間から一体どこに行くんだよ」
 「まっ、わてにまかせておくれやす」
 そう言って嬉しそうに笑うアラシヤマに軽くムカつきつつ、シンタローはアラシヤマについて行った。


 「―――それにしても、あちィ」
 シンタローは、こめかみを伝い落ちた汗を拭った。夜になって朝よりは涼しいはずであるが、クーラーに慣れた体には、気温は非常に高く感じた。
 「まだなのかヨ?」
 「もう、すぐそこどすえ~」
 暗い林を抜けた先には月明かりに照らされた高いフェンスがあり、
 「この中どす」
 アラシヤマはフェンスをよじ登り始めた。2人が身軽に飛び降りた場所は、コンクリートの上であった。微かに塩素の臭いが鼻についた。
 「ここって、士官学校・・・」
 「の、プールどすvやっぱり水辺は涼しゅうおますナ!これで、わてが暑苦しゅうないことがあんさんにもわかりましたやろ??」
 アラシヤマは何やら非常に自信ありげである。
 「・・・やっぱオマエ、暑苦しーわ」
 「エッ?何でどすかッ!?こーいうこととちゃいますのんッツ??」
 アラシヤマは悩んでいたが、シンタローが、
 「もういいから、とっととアイス食っちまおーゼ!溶けたらもったいねーし」
 そう言うと、嬉しそうに袋からアイスを取り出し、
 「半分こ、どすえ~vvv」
 と、照れながら、アイスを割ってシンタローに渡した。
 シンタローはあまり納得はいかなかったものの、プールの飛び込み台に座ってアイスを食べながら、
 「それにしても、なんでガンマ団の幹部がコンビニでこんな安いアイス買ってんだヨ?俺、こんなの食ったのってガキの時以来だゼ?」
 隣の飛び込み台に座っているアラシヤマの方を向いて言うと、もう既にアイスを食べ終わっていたらしいアラシヤマが、
 「シンタローはん」
 真剣な顔をして近づいてきた。
 「何だよ?」
 一体何を言われるのかとシンタローは身構えたが、アラシヤマは、
 「―――あんさん、そんなエロい食べ方したらあきまへん!いや、わての前では勿論ええんどすが(むしろ推奨)、他の男の前では絶対アイスを食べんといておくれやす―――!!!」
 そう叫んだので、
 「眼魔砲」
 と、片手で眼魔砲を撃つと、アラシヤマは水飛沫を上げてプールに落ちた。制服のままプールに落ちたアラシヤマが、
 「なっ、何しはるんどすかッツ!?」
 抗議をしたものの、
 「さーて、アイスも食い終わったし、そろそろ帰っかナ!」
 シンタローは全く取り合わない。
 シンタローが座っていた飛び込み台から立ち上がろうとすると、不意に足を引っ張られ、水の中に落ちた。
 アラシヤマが抱きとめたので、顔までは水に浸からなかったが。
 「お返しどすえ~v水もしたたるええ男どすナ!シンタローはん♪」
 「テメェ、殺ス・・・!」
 と非常にムカついたシンタローがアラシヤマを睨み上げると、アラシヤマは全く話を聞いていないようで、シンタローの下唇を親指でなぞり、
 「つめとうおます。さっき、アイスを食べたからでっしゃろか?」
 と、考え込んでいた。
 「離せヨ!」
 シンタローは、アラシヤマの腕の中から抜け出そうとしたが、馬鹿力なのか何なのか、腕は中々外れない。イライラしたシンタローがアラシヤマの指を噛み、親指の根元に赤く歯形がついた。
 「あ痛!えらい凶暴な人魚どすなァ・・・」
 アラシヤマはちょっとの間自分の手を眺めていたが、
 「やっぱり、可愛いおます~vvv」
 そう言って、キスをした。
 「・・・あの、この先は?」
 シンタローに睨まれつつ、アラシヤマが恐る恐るお伺いを立てると、
 「考えりゃ、分かるダロ?」
 「やっぱり、駄目なんどすな・・・」
 アラシヤマはガッカリした様子であった。そして、シンタローを離した。
 (本当は、そんなに嫌というわけじゃなかったんだけど・・・。まっ、別にいいか!)
 シンタローがそう思いながら、先にプールサイドに上がると、
 「シ、シンタローはーん・・・」
 アラシヤマが水に入ったまま情けない調子でシンタローを小さく呼んだ。その様子がなんとなくおかしかったので、何だかそれほど腹も立たなかった。シンタローが、
 「オラ、とっとと帰っぞ!」
 と言うと、
 「了解どす~!」
 とアラシヤマは喜んでプールサイドに上がってきた。
 「ヒデェ格好だナ!」
 「あんさんも、たいして変わりまへんやん?」
 「―――ったく、誰のせいだヨ?」
 「ま、そのうち乾きますやろ」
 軽口をたたきながら、2人は再びフェンスを乗り越えた。
 誰もいないプールにはしばらく細かい細波が立っていたが、いつしか水面は穏やかになり、丸い月が映っていた。










わ、わたしはひょっとすると“甘い”の定義が間違っておりますでしょうか??(大汗)
ひよこ様ー!勝手に押し付けましてすみませんが、もしよろしければひよこ様に捧
げます・・・!(土下座)



 雨が降っており、昼間にも関わらず辺りは暗かった。その中、遠征中であった部隊がガンマ団に帰ってきた。特に出迎えるものも無く、部隊はいつもどおり帰還後の作業を淡々とこなしていた。


 夜半になっても相変わらず雨は降り続いている。
 アラシヤマは、戦場とは一転して清潔そうなガンマ団内の廊下をノロノロと歩いていた。
 とあるドアの前に立ち止まりドアの方に手を伸ばそうとしたが、少しためらった末、手は力なく下に下がった。そのまま踵を返し、元来た方向に足を踏み出したところ、
 ―――ドアが開いた。
 「オマエ、ウゼーんだヨ!部屋に入るなら入る、入らねーんなら、来んな。俺は、ハッキリしねェのは嫌いだ」
 シンタローは、不機嫌そうにそう言った。
 アラシヤマはぼんやりと、総帥服を着ていないシンタローを見て、
 「・・・あの、入ってもええんどすか?」
 と聞くと、
 「知るか!」
 という返答が返ってきた。


 部屋の中に入ったものの、アラシヤマがドア付近に突っ立っていると、
 「オマエ、どーせ何も食ってねェんダロ?何か作ってやっから、座ってろ」
 シンタローがそう言って、キッチンの方に姿を消そうとすると、
 「シンタローはんッツ!わてもそっちに行ってもかまいまへんか?」
 アラシヤマは必死な様子であった。
 彼は、シンタローが、テキパキと忙しそうに立ち働く姿を食卓の椅子に座ってぼんやりと見ていた。手伝えることは、何も無いと判断されたらしい。
 「オラ、残すと承知しねーからナ!」
 と、アラシヤマの前に丼が置かれた。蓋を開けると卵丼である。
 ガツガツと食べ始めたが、だんだんと落ち着いてきたようで、最後の一口をゆっくりと味わうように食べると、箸を置いた。
 「御馳走さまでした」
 「ああ。やっと正気に戻ったか」
 「・・・迷惑かけて、すみまへん」
 「後片付けはしておけヨ」
 「モチロンどす。それにしても、シンタローはん。シンタローはんの作ってくれはったご飯を食べますと、他のは食べられまへんわ」
 そう、アラシヤマは苦笑いしている。そして、何か考え込んだ様子であった。
 「―――時々、ええんやろか思う時もおます」
 椅子に片膝を立て、その上に頬杖を衝いて座っていたシンタローは、
 「オマエがそんなことを言うなんて、いつも以上にキモイ」
 と断定した。
 「い、いつも以上てなんどすかッ!?もしかするとひょっとして、あんさんいつもわてのことキモイ思うてましたんッツ!?・・・ひどうおます~!わての繊細なハートが傷つきましたえー!!」
 「―――どーでもいいけど、俺はもう寝っから。じゃーナ!」
 「えっ?今夜は久々にわても一緒に・・・」
 「眼魔砲!」
 しばらくして、台所からは水音が聞こえてきた。











夜、久しぶりに二人で飯を食いに行った。

ケンカの真っ最中に遠征に出てしまったもんだから本当にほんの少しだけ
ヤツがどうしてるか気になっていたのに
帰って来るとマジックはいつも通りのあの笑顔で強引にオレを車に乗せてしまった。
こう言う時いつも思う。

オレの事なんて、オレが思ってる程コイツは気にしてねーんだろうな。って。

助手席に座りながらハンドルを握っているマジックの横顔を見る。
気づかれて目が合った。どうしたの?と聞かれて目を逸らしてしまう。
別に、と答えた。
・・・まったく馬鹿らしい。
‘オレ達ケンカしてたんじゃなかったっけ?’なんて言う方が恥ずかしい気がする。
だってコイツにとっちゃ、こうしてオレが帰ってきたら忘れちまうくらい些細な事で。
そりゃ、確かに、ケンカの内容なんて、コイツが食べるのを楽しみにしてた冷蔵庫の中のプリンをオレが
風呂上りに勝手に食っちまって、それを‘悪かった’って一応謝ってやったのに‘気にしてないよ’なんて言いながら
チクチクチクチク‘あーあ楽しみにしてたのに’だの‘どーして自分のものじゃないのに食べるかなぁ’だの
思いっきり気にしてるじゃねーか!!と言いたくなるよーな事をアイツがしつこくしつこく言うからオレがキレて、
でもやっぱり自分のものでもねーのに食べたくなったからって勝手に食べるなんて悪かったなーって
オレは仕事で家を離れている間も頭の隅でずっと考えてて、帰ったら 癪だけどちゃんと埋め合わせしてやろうって
そんな事考えてたのに。
コイツは、オレが2週間前に勝手にコイツのものを食べちまった事とか
それからどうしてお互いが怒鳴り合っちまったのかなんて事、きっともう忘れてんだろーなぁ・・・
それが腹ただしいやら、悲しいやら、寂しいやらで・・・

車から降りて、いかにも金がかかってそうな豪華な飯を食っても、ちっとも美味いと思えなかった。
こんなのより、オレやアンタが作った 家で食う飯の方が美味いって 
そう感じてるのもオレの方だけなんだろうか。
わざわざ着飾って、その店のシェフがテーブルにやって来て、
この料理には何が入ってるのかとか何を工夫したのかとか聞かされて
改まった場所だから当たり触りのない会話ばかり交わして。

アンタはそんなのが楽しいのかよ。

飯の途中で席を立ち上がり、外へ出る。
店の前で待っててやると、マジックが‘気に入らなかった?’と尋ねてきた。
まぁな、と返事をする。
「もっと美味い店知ってるから、そっちに行こう。でなきゃこのままオレは一人で帰るよ。」
と言うと、‘帰る’が効いたのかマジックは慌てて首を縦にふる。
車に乗ろうとするので、それを引き止めて狭い路地裏に連れて行く。
建物の壁と壁の間が狭くて体格の良いオレと親父が通るのはちと苦しかった。
だけど進んで、進んだ先にあった寂れたスパゲッティ屋に入る。
こんな所が本当にさっきのお店より美味しいの?!とマジックは驚愕していたが
そんなの、知るか。オレだって入るのは初めてだ。
でもオレは少なくともさっきの店よりはマシだと思った。
席に座って、注文を頼むと、出てきたスパゲッティはやはり美味しいとはお世辞にも言えない味だったが
マジックがそれにぶちぶち文句をつけて‘シンちゃんて変なの おかしいよ、舌’と言うのを見ていたら
やっぱり店を移って良かったとオレはその時思った。

あぁ、こりゃ確かに不味いな。と言うと‘ほらぁ!’とマジックが怒り出す。
「もっと美味い店知ってるからって!シンちゃんやっぱりこの店入るの初めてじゃない!」
「あーあーあーあー。うるせーなー。いいから、頼んだからには最後まで食えって。」
オレが奢ってやるからさ。と付け加えて。二人でクソ不味いスパゲッティをたらふく平らげた。

まったくオマエは変な子だよ、と帰りの車の中でマジックが言う。
あ、そ。と心の中で返事をしてやった。
オレが変ならアンタは何だ。ウルトラスーパー変な親父のくせに。
変って言うか、変態。

「この前だって。」

人のプリン、勝手に食べておいて怒っちゃうんだからさ。

そんな事を言われて。オレは。
思わず相変わらず窓に向けていた顔を勢い良くマジックに向けてしまった。
しまった、と思ったが。そう思うより先にマジックの目がオレの顔を捉えてしまった。
あぁ、くそ。恥ずかしい。
ホント変な子、と目元に軽く口付けられる。
目頭が熱くなったのを感じた。これは。やばい。

耐えろ、オレ。

家に辿り着いてそのまま車庫に入ると、車内で隣の男がまた、オレに近づいて来て。
悔しいことに、オレは。恥ずかしい事に。
キスをされて、唇にヤツの吐息がかかると、口を開けて
マジックの舌を受け入れてしまった。

口と口を合わせて舌を絡ませ合っているだけなのに。
脳の奥の方が、じーんとしている。
なんだよオレ。何で。なんで。何でアンタって

「 おかえり、シンちゃん 」

唇が離れて、耳元で囁かれた言葉は、オレの胸を締め付けてただ苦しかった。
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だから!なに人がちょっと目を離した隙に余計なモン籠に入れてんだヨ!

オレが怒るとマジックは不思議そうな顔をしてオレを見る。
奴が勝手にオレの持っている買い物籠に入れたものを元にあった場所に戻して、
睨み付けてやった。
これだから一緒にスーパーに行くのは嫌なんだ。

大体、何で、オレが籠持ってるんだよ!

と言ってやったら一つの籠に二人で選んだものを入れるのが良いんだよ、と笑う。
だったらオマエがこの籠を持てよと思ったが
コイツに持たせるとポイポイいらん物を選んでは籠に入れそうだったので 黙った。

それでも、オレが余所見をしているちょっとした間に後ろからひょいひょい入れて来る。
オレはそれを戻して、また怒る。
良いな、と思っただけですぐ買おうとするんじゃねーよまったく。

レジを出て、買った物を袋に詰めてスーパーを出る。

アンタってホント、オレがいないとダメだよな。と言ったら
何故か喜んでいた。

喜ぶところじゃないだろ。反省するところだ。
わかってんのか クソ親父。



嬉しいって、 馬鹿じゃないの。
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