キミと私の温度差に、ひどく落胆するのは
もうウンザリだ。
毎日毎日仕事も忙しい中、一緒に食事ができるようになるべく早く帰宅するよう心掛けたり
週末には絶対に予定が立て込まないよう気を配っているのは
一体誰のためなのか、解かっていないわけじゃないだろうに
どうしてシンタローは、
パパに何も言わずに何処かへ行っちゃうんだよ。
執事に行き先を言付けるよりは
せめて、紙切れ一枚でも良いから書き置きを残して行く位の思いやりは欲しい。
行き先を教えるよりも、シンタローの言葉を パパに頂戴。
シンちゃんがパパを置いて友達と旅行に出かけてしまう事や
その間、顔も合わせられない事よりも、
それが平気なシンちゃんの事の方がずっとずっと寂しいよ。
パパはシンタローほど、強がりじゃないから
泣きそうになったら我慢なんてできない。
お願いだから
そんなに意地悪しないで。
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「遠征先より、マジック様からお電話です」
執事の言葉に、ただでさえ元々不機嫌なシンタローの眉間に一層濃い皺が寄る。
何日ぶりだろうか。あの男の声を聞くのは。
傍にいると喧しいし暑苦しいのに、いなければいないでイライラして何もかもが上手くいかない。
どうしてあんなアホ親父のために自分が振り回されなければならないんだ。
マジックのくせに。
シンタローは執事を追い払おうと『あっちへ行け』の動作を片手でやりながら無言で悪態をついた。
彼が部屋から出て行くと、満足げに椅子の背もたれに寄りかかって足を組んで読みかけの本に目を通す。
暫らく経ってからもう一度執事が部屋を訪れた。
ここまではシンタローも予想していたから、アイツはどんな言葉でオレを呼び出すつもりなのかと
興味深げに身を乗り出す。すると、執事は極めて淡々とした口調で
「『私の愛しいベイビーちゃんは居留守を決め込むつもりなのかな?』と、申しております。」
と、彼に言ってのけた。
何故そんな台詞を恥ずかしがらずに無表情で伝えられるのか不思議でたまらない。
シンタローはと言えば椅子から転げ落ちて床に突っ伏していた。
怒りにまかせて電話のところまで走ると、受話器を持って叫んだ。
「このクソ親父!」
「やっと出てきたね。
久しぶりだって言うのにどうしてシンタローはそんなに素っ気無い態度をとるのかな?
パパの声が聞きたくないのかい?」
悪びれた様子も見せずにいつもの調子で語りかける父親に肩がわななく。
ちょっとは疲れた様子でも見せやがれ!と、シンタローは思った。
「あーあー、別に望んじゃいなかったよ。
それより他所様に変な言葉を吹き込まないで下さい迷惑です。」
「変な言葉・・・?おかしいな。パパは日本語は愚か母国語含めて軽く8カ国語はペラペラのはずなんだけれど。
何か問題が?」
「オ、マ、エって何でそームカつく言い回ししかできねぇんだ?!
何が‘愛しのベイビーちゃん’だ!オレを幾つだと思ってやがるッ」
「‘ベイビー’は赤ん坊って意味じゃなくて、口説き文句で言ったんだよ。シンタロー」
マジックが軽く笑うと、シンタローは威勢良く‘アホか!’と怒鳴った。
「どこの世界に息子に向かって口説き文句を言う父親がいるっつぅんだよ!」
「ここにいるよ。」
「オマエ・・・頭どっか可笑しいんじゃねーの?いや、今さらだったか・・・。」
「そう、パパは狂ってる。
シンちゃんと話す時は、いつだってシンちゃんを口説くつもりで話しているからね。」
マジックの気違い染みた言動に、シンタローはますます頭に血を昇らせる。
だが、頬が紅いのは怒りのせいだけではない。
その事を認めたくなくて早く電話を切ってしまいたいのに
マジックはそうさせてくれなかった。
「もう、とっとと仕事戻れよ。暇じゃないんだろ?」
「おや、珍しいね。パパに気を遣ってくれているの?」
「~~~~切るぞ、良いな?」
「帰ったら一番に抱きしめるよ。」
独特の低い、掠れた声で告げられた言葉に
シンタローは返事をせずに受話器を置いた。
とんでもない親父だと呆れながら、その男に心を乱される自分が確かにいて
マジックの声が耳から離れてくれない。
シンタローは今日も眠れぬ夜を過ごす事になるだろう。
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「シンちゃんてさ、おとー様の事嫌い?」
グンマの無邪気な質問に対し、シンタローは至って爽やかに
「大ッ嫌いだ。」
と答えた。
「ふーん。そんなにおとー様に纏わり疲れるの、嫌?」
「嫌ですね。ついでに言うと今のこの状況もオレは大変不満だ。
何なんだ?何がしたいんだ?」
「シンちゃん。良いものあげようか。」
コトン、とテーブルの上に小さな小瓶が置かれる。
中には水のような透明な液体が入っていた。
奇妙なそれにシンタローは訝しげに首をひねる。
コレは?と問えばグンマは可愛らしい笑顔で魔法の薬だよ、と言った。
「魔法の薬?」
「高松にお願いして作ってもらったんだ!
おとー様はシンちゃん好きだけど、シンちゃんはおとー様嫌いでしょう?」
「あぁ。」
「そしてその状況にウンザリしている。」
「あぁ。」
「でもおとー様はシンちゃんにメロメロだから、シンちゃんに冷たくされる度に泣いちゃう。」
「オマエの前でも泣いてんのかいアイツは。」
「だからさー、おとー様がシンちゃん嫌いになっちゃえば良いと思わない?」
「…はァ?!」
一気にシンタローの声のトーンが上がる。
グンマはそれを気にもしない様子で両腕を組み、ウンウン、としきりに頷いていた。
「もっと早い内からこうすれば良かったんだよ。
そしたらシンちゃんも大嫌いなおとー様から解放されるし
おとー様もシンちゃんが大嫌いだから、例えシンちゃんに嫌われてもちっとも悲しくなんかならない。
一石二鳥だと思わない?僕ってば天才!」
「・・・・。」
「シンちゃん?」
「あー…あぁ、そうだな。名案だな…」
晴れやかなグンマの表情とは逆に、シンタローの表情は暗雲に満ちていた。
「じゃあ、これからおとー様来るから紅茶の支度をするね。
おとー様のカップの中にこの薬を混ぜるから、シンちゃん傍で見てると良いよ。」
暫くするとグンマの手筈通りにマジックが訪れる。
マジックは自分の視界にシンタローが入るなり、それは嬉しそうに
シンちゃんだー!と彼に近寄った。
「シンちゃんもグンちゃんのお茶会に呼ばれたの?!
嬉しいなー!嬉しいなー!!」
幸せそうなマジックの笑顔が更にシンタローの顔を曇らせる。
マジックは自分や身内には甘いが他人にとても厳しい面も持っていて
あの、感情の篭らない冷たい視線が
グンマの用意した薬を飲んだ後、自分にも向けられるのかと思うと
途端に胸が苦しくなる。
そんなのは嫌だと、気が付けば心の中はそればかりだった。
「おとー様~!はい、ミルクティーですよ~」
「ありがとー!グンちゃん!」
グンマから渡されたカップを受け取り、マジックがそれに口をつけようとした瞬間、
シンタローは乱暴にテーブルを叩き「やめろ!!」と大きな声で怒鳴った。
「それを飲んだら死んでやるッツ!!!」
シンタローの悲痛な叫びにマジックが目を丸くする。
‘死’と言う言葉に動揺を隠せない。
「え、死ぬって、シ、シンちゃんが?」
「飲むな!」
「の!?いや飲まないけど…シンちゃんこれ欲しいの?」
そんなに怖い事を言って脅さなくてもあげるよ?とマジックは大人しくシンタローに言われるまま
カップを下に置いた。
きっと今、自分は相当酷い顔をしているに違いない。
グンマの視線が痛くて顔を上げることができずにシンタローが俯いていると
グンマはシンちゃん、と呼んで一言。
「アレ、実はただの水だから安心してね。」
シンタローの顔がカァ――――――ッと赤く染まる。
(ホントに死にたい…)
そう思わずにはいられなかった。
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『あの人は とても可愛い人なんですよ』
いつも親父の傍について雑務をこなしてくれる有能な秘書の一人がオレに言った。
オレンジがかった瞳でオレを見つめるその眼差しは何か、深みのある複雑な感情が込められていて
オレは胸が焼けるように熱くなったのを感じた。
「シンちゃん飛ばしすぎ飛ばしすぎ―――…!」
オープンカーの助手席に親父を座らせて、オレは黙々と車を運転していた。
普段はオレ達二人が車に乗る時は、親父の無理な誘いにオレが仕方なしに付き合うから
必然的に親父がハンドルを握る役なのだが、
今回はオレが親父を誘い出したと言う事もあってオレがハンドルを握っている。
乱暴な操縦に親父が苦情を上げるがオレは構わず運転を続けた。
涙目の親父の顔を横目で一瞥する。
イライラがおさまらない。
この、クソ親父…
『パパはシンちゃんの事しか見てないのに』って
そんな事言って、オレがいない間にオマエは誰と何してんだよ?!
まさか、なんてそんな事
微塵も考えたくないのに。
ティラミスのあの一言がオレの心をどんどん蝕んでいく。
問い詰めて確かめたいのに。
自分の考えてる事が真実だったら、と思うと怖くて聞けない。
『違うよ』と言ってくれたら、オレは『嘘をつくんじゃねぇ!』と怒って
それでも
何だかんだ言ってその、微かな希望に縋ってマジックの言葉を信じてしまうのだろう。
でも、
もし、
『そうだよ』と言われたら、オレは一生聞いた事を後悔してしまう。
疑惑を真実に変えたくなくて問いただす事ができない。
オレはコイツの前だと途端に臆病になる。
昔からこの男が怖くてしょうがなかった。
ほんの些細な事で、オレを支配してしまうこの男が。
車を止める。
シンタローは今日、どうしたのかな。
そう、ゆっくり話しかけられた。
ハンドルに両手をかけて顔を埋める。
つらい。
どうしてなんだとか、いちいち考えることが。
何度この男から逃げようと思った事か。
だけど、何処へ行ってもこの男は必ず追いかけて来るだろうし
何より オレ自身が頭の何処かでそれを期待してしまっている。
その時点で、もうオレはコイツからは逃れられないのだと思う。
オレが幸せになる方法なんてもっと他に、
たくさんあるはずなのに。
なのに、結局はコイツの元へ戻ってしまうのは
やっぱりオレはコイツじゃなきゃダメなんだって
そんな事
こんな形で知りたくなかった…。
「泣いてるの」
聞かれて、
オレは何も答えなかったが
意地でも顔を上げなかった。
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嫉妬に苦しむシンタローと、ささやかにシンタローを苛めるティラミス。
マジ←ティラを含むマジシンも萌え。です。
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マジック様とシンタロー様のケンカはとても激しい。
果てには部屋の床が落ちるんじゃないかと危惧する程のバトルを延々と繰り返している。
秘書である私は常にマジック様がシンタロー様とのケンカで万が一命を落とす事がないように
同じく秘書のチョコレートロマンスと共に監視カメラのモニターでこっそりと二人の様子を伺っている。
今日も元気良く親子は喧嘩を開始したようだ。
飽きもせず、よくやるもんだとある意味尊敬する。
バリバリと良い音を立てて煎餅を食べるチョコレートロマンスの横で
私は二人分の番茶を注いだ。
彼は毎度画面に釘付けになっているが、見ていておもしろいのだろうか。
私はどうもヒヤヒヤしてしまってまともに様子を見ていられないのだが・・・
あのさ、と珍しくチョコレートロマンスがモニターから目を離して私に尋ねた。
「何でマジック様はほとんど防戦一方なんだろうな。」
・・・こいつは本当に私と同じように秘書として教育されているのだろうか・・・。
教育云々以前に、これ程マジック様の傍に長く仕えていながらそんな疑問を抱く事自体
間違っている気がしてならない。
あの方が、シンタロー様に手を上げない理由なんて一つしか思い浮かばないだろうに。
最も簡単で、単純な答え。
それは‘シンタローを傷つけたくない’。
ただ、それだけだろう。私は極めて簡潔に彼の質問に答えた。
「っへ~~~。マジック様って結構優しいな。」
―――――それもどうか、と
チョコレートロマンスの率直な感想に私は同意できず頭を悩ませる。
ケンカの原因をつくっている大半は決まってマジック様であり、
元々マジック様がシンタロー様を怒らせるような事をしなければ喧嘩にもならないわけで・・・。
ようするにあの人は幼稚で、シンタロー様に構いたくてしょうがないのだろう。
親子喧嘩なのか痴話喧嘩なのか
まったく、仲のおよろしい事で。
果てには部屋の床が落ちるんじゃないかと危惧する程のバトルを延々と繰り返している。
秘書である私は常にマジック様がシンタロー様とのケンカで万が一命を落とす事がないように
同じく秘書のチョコレートロマンスと共に監視カメラのモニターでこっそりと二人の様子を伺っている。
今日も元気良く親子は喧嘩を開始したようだ。
飽きもせず、よくやるもんだとある意味尊敬する。
バリバリと良い音を立てて煎餅を食べるチョコレートロマンスの横で
私は二人分の番茶を注いだ。
彼は毎度画面に釘付けになっているが、見ていておもしろいのだろうか。
私はどうもヒヤヒヤしてしまってまともに様子を見ていられないのだが・・・
あのさ、と珍しくチョコレートロマンスがモニターから目を離して私に尋ねた。
「何でマジック様はほとんど防戦一方なんだろうな。」
・・・こいつは本当に私と同じように秘書として教育されているのだろうか・・・。
教育云々以前に、これ程マジック様の傍に長く仕えていながらそんな疑問を抱く事自体
間違っている気がしてならない。
あの方が、シンタロー様に手を上げない理由なんて一つしか思い浮かばないだろうに。
最も簡単で、単純な答え。
それは‘シンタローを傷つけたくない’。
ただ、それだけだろう。私は極めて簡潔に彼の質問に答えた。
「っへ~~~。マジック様って結構優しいな。」
―――――それもどうか、と
チョコレートロマンスの率直な感想に私は同意できず頭を悩ませる。
ケンカの原因をつくっている大半は決まってマジック様であり、
元々マジック様がシンタロー様を怒らせるような事をしなければ喧嘩にもならないわけで・・・。
ようするにあの人は幼稚で、シンタロー様に構いたくてしょうがないのだろう。
親子喧嘩なのか痴話喧嘩なのか
まったく、仲のおよろしい事で。