「なまえ」
「シンちゃーん。バドミントンしよう。」
「ヤだ。」
ばべーんと豪快に部屋の扉を開けて入ってきたのは、やはりマジック。
手には羽とラケット。
「えーっ、しようよシンちゃん!!この頃遊んでなかったし~」
「だからって何だよバドミントンて・・・、しかもアンタ歳のくせに」
「むっ。・・あれシンちゃん、携帯鳴ってるよ?」
ウ”ウ”・・と机の上で震えていた黒い携帯を指差す。
あぁ、と手に取るシンタロー。
「げ」
「ん?」
「・・ぁいや、ただの迷惑メール。」
ウゼぇ・・と眉間にしわを寄せるシンタロー。
「良くくるのかい?」
「ん・・この頃結構くるな。アドレス変えるか・・・」
「・・・教えてね?」
「は?」
がちゃ、とマジックが持ってきたラケットを近くに置いているシンタローに近づく。
むぅ・・と頬を膨らませながら呟く。
「だってシンちゃん、アドレス変えたら教えてくれないしぃ」
「・・・いいじゃねぇか別に。嫌って程ホンモノに会ってんだから・・」
「でもっ!緊急って事が・・・!!」
「キンタローが持ってっから。」
・・そうだよね・・いつも一緒だもんね・・・と勝手に部屋の隅で暗くなり始めたマジックにため息。
そろりと近づく。
「・・・ったく・・。わかったよ」
「え?」
「考えんのメンドイからよろしく。」
「・・・イイの?」
「・・・」
渡された携帯を眺めてキラキラと瞳を輝かせる。
ああ、と一言残して部屋を去る・・・、
が。
「アイラブvマジックって打っちゃおうかな~♪」
ばたーん
「止めろぉおっ!!」
ガバッと携帯を引ったくり。
「え~・・考えていいって言ったのに・・・」
「・・そーゆーのって案外悲しいんだぞ!?送られる方とか。」
「え?」
「ほら・・たまに名前変わってたりするだろ?」
「・・あぁ・・・・なるほど。」
うん、と一瞬シンタローの話に納得しかけた様に見えたが。
ぱっと顔を上げ。
「でも、シンちゃんは好きな人変わらないし、いいよねvv」
「ちょっと待てぇ―ッ!!」
「なに?・・ほかに好きな人いるの!?いないよね!うんいない!!!」
「いないけど・・って勝手に完結すんじゃねぇ!」
はぁっはぁっ・・ しばらく大声を出していたため、乱れた息を整える。
「頼むから・・。」
「え~~・・・。わかった、シンちゃんがそこまで言うなら・・。」
しぶしぶという感じのマジックにホッと息をつく。
そして思い出したように。
「ってか、親父・・・アンタこそ変えろ。アドレス。」
「なんで?」
「・・・!!勝手に俺の名前入れるんじゃねぇって言ってんだよっ」
「ああ。・・・いいだろう?これくらい・・」
「・・・・もういい・・・。」
は~・・
シンタローは長いため息を吐いた。
END,,,
************************************************
カロス様からいただいてしまいました。
マジシンのほのぼの小説です~~!!
そして話題がメールアドレス。
何かこういう日常的な会話って良いですよね~~v
ふとした仕草に自分の気持ちがぽろりって出ちゃうような。
マジックパパの場合はぽろり所か全面に押し出していますが。(笑)
でもって最終的にほだされている(むしろ負けた……?)シンちゃんも可愛かったり。
ちなみに、私のケータイアドレスは
www.******ne.jp@~~~~だったり。
メールソフトによっては、www.がついている所為でホームページアドレス扱いになってしまうとか。
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「シンちゃーん。バドミントンしよう。」
「ヤだ。」
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手には羽とラケット。
「えーっ、しようよシンちゃん!!この頃遊んでなかったし~」
「だからって何だよバドミントンて・・・、しかもアンタ歳のくせに」
「むっ。・・あれシンちゃん、携帯鳴ってるよ?」
ウ”ウ”・・と机の上で震えていた黒い携帯を指差す。
あぁ、と手に取るシンタロー。
「げ」
「ん?」
「・・ぁいや、ただの迷惑メール。」
ウゼぇ・・と眉間にしわを寄せるシンタロー。
「良くくるのかい?」
「ん・・この頃結構くるな。アドレス変えるか・・・」
「・・・教えてね?」
「は?」
がちゃ、とマジックが持ってきたラケットを近くに置いているシンタローに近づく。
むぅ・・と頬を膨らませながら呟く。
「だってシンちゃん、アドレス変えたら教えてくれないしぃ」
「・・・いいじゃねぇか別に。嫌って程ホンモノに会ってんだから・・」
「でもっ!緊急って事が・・・!!」
「キンタローが持ってっから。」
・・そうだよね・・いつも一緒だもんね・・・と勝手に部屋の隅で暗くなり始めたマジックにため息。
そろりと近づく。
「・・・ったく・・。わかったよ」
「え?」
「考えんのメンドイからよろしく。」
「・・・イイの?」
「・・・」
渡された携帯を眺めてキラキラと瞳を輝かせる。
ああ、と一言残して部屋を去る・・・、
が。
「アイラブvマジックって打っちゃおうかな~♪」
ばたーん
「止めろぉおっ!!」
ガバッと携帯を引ったくり。
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ぱっと顔を上げ。
「でも、シンちゃんは好きな人変わらないし、いいよねvv」
「ちょっと待てぇ―ッ!!」
「なに?・・ほかに好きな人いるの!?いないよね!うんいない!!!」
「いないけど・・って勝手に完結すんじゃねぇ!」
はぁっはぁっ・・ しばらく大声を出していたため、乱れた息を整える。
「頼むから・・。」
「え~~・・・。わかった、シンちゃんがそこまで言うなら・・。」
しぶしぶという感じのマジックにホッと息をつく。
そして思い出したように。
「ってか、親父・・・アンタこそ変えろ。アドレス。」
「なんで?」
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「ああ。・・・いいだろう?これくらい・・」
「・・・・もういい・・・。」
は~・・
シンタローは長いため息を吐いた。
END,,,
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ふとした仕草に自分の気持ちがぽろりって出ちゃうような。
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【冬の醍醐味】
************************************************
遥か上空。
水蒸気は冷えて固まり 結晶となる。
シャッ
勢い良くカーテンを開ける。
目に飛び込んできたのは一面真っ白な世界。
「お―ッ、降った、降った!!キンタロー起きろっ」
「何だ、何が降った」
むくりとダルそうに起き上がる。
窓に近寄り、そして固まる。
「コレは・・ユキか?」
「そう、雪!見たことはあんだろ?」
な、と無邪気に笑う。
・・確かに、見たことは有る。何度も。
シンタローのなかで、彼の視点で見ていた白―
「な、外いこーぜ!」
「・・・コート取ってくる。」
「ぅあ―冷てぇ・・初雪~♪」
雪だまをつくりながらはしゃぐ。
ふとキンタローをみる。
「・・・・・」
ず、と手に乗せる。
手袋をしていない手に触れた雪は、じわりと解け・・やがて水へと姿を変えた。
「・・・冷たい・・・」
もう一度すくおうとした時―・・・・
ずんっ
「!!」
背中に感じる重み。
「なんだ?」
上を見ると、乗っかっていたシンタローと目が合う。
「雪だるま作ったぜ」
ほら、と後ろを指す。
そこには確かに雪だるま。
すのーまん。直訳すると雪男。(関係なし)
しかも結構でかかったりする。
「・・早いな・・いつの間に」
「キンタローが一人で遊んでっからだろ―」
ぷい、と横を向く。
幼い仕草に笑みがこぼれる。
・・・・この隙に・・。
ずしゃ。
「!?」
雪に何かが乗っかったような音に振り返る。
「ぶはっ!」
思わず吹き出す。
・・・そこにあったのは、なんとも形容しがたいモノ。
「んっだよソレ!!ダンゴ!?」
あはは、と腹を抱えて大笑い。
シンタローの目にはいって来たのは、ダンゴ。のような形のもの。
キンタローがシンタローの目を盗み、もう一つの雪だま(しかも結構でかい)をのっけたのだ。
三つになった物体は、倒れそうになりながらも何とか必死に耐えていた・・。
べっしゃ。
「ンぶッ!!」
雪だまがシンちゃんにクリーンヒット。
「笑うな。」
いつまでも笑っていたシンタローにいい加減腹がたってきたキンタローのささやかな仕返し。
「っのぉ・・・やったなコラァっ」
ぶん、と手近な雪だまを投げる。
が、しかしヒョイとかわされる。
「ふん、コントロールが甘いな」
フ、とわらう。
「むぅうう~~っ!」
「で、どーだった?」
「何がだ」
「雪の感想。」
ぬくぬくと冷え切った身体を温めつつ。
「・・・冷たくて、白くて、すぐ解けて、ダンゴ。」
「ダンゴはねーだろぉがよ・・」
プッ、とまた笑いながら言う。
「はぁ―あ・・・寒ぅっ」
ぶるぶると震える体を押えつつ。
「ぁーん?冬は寒いもんて決まってるだろうが。」
「そーだぜボーヤ」
「大体この程度で寒いなどと・・・」
口々に言う同僚&上司。
たった一言でこんな否定される自分て・・・とリキッドは今更ながらに落ち込んだ・・。
「・・・・よっしゃ、シンタローんとこ行くか。」
「えっ、何でッスか?」
いきなり、ポン、と手をつき提案したハーレムに質問。
「てめぇもシンタローも料理うめェだろ」
・・・・それは、つまり。
さきほどむりやり買って来させられたこの鍋の材料を使えと・・・・。
「わ―ぉ、鍋パーティかvv」
「・・・・・・・ふん。」
ぴんぽーん
「はーい、はいはい」
かちゃ、とドアを開ける。
「よぉ。来てやったぜv」
バタンとドアを閉める。
フー、とため息。
「おいコラ、何間髪いれずに閉めてやがる!!」
バキィ、と不吉な音が響き後ろを見てみれば・・。
そこにいたのは、やはり見間違いではなかった獅子舞と愉快な中間達(笑)
「何だ、騒がしい。」
「お、キンタロー様」
「・・・・・・・;」
「二人暮しなのかっ?」
ひょい、と姿を見せたキンタローに反応する、ハーレムにロッド、マーカー、そしてリッキー。
ずい、とロッドがシンタローに詰め寄る。
「何?何でさ二人暮し?二人っきり?何でもしほーだい?
だったらオレも入れて くれたグフゥっ!!」
ロッドの言葉は途中で切れた。
・・・・本人が倒されたのだから仕方が無い。
「・・さ、さんきゅ、マーカー・・・」
「・・・・煩いから黙らせただけだ」
とんとんとん
「くっそ、何でオレが」
ブツクサ言いながら具を切る。
「すんません・・言い出したら止まんないんスよ・・」
「わ―ってるけどよぉ・・」
「いてっ」
「ど、どしたんスか!?」
いきなり響いたシンタローの声に振り返る。
そこには小さな赤の雫。
「いってー、油断した・・」
ぴるぴるとてをふる。赤がとんだ。
「ちょちょちょ・・・」
「シンタロー」
「あ、キンタロー。どした?」
ちう ――と、血に濡れた指をすくい、口付ける。
「・・・止まったか。」
「ん―、さんきゅ」
に、と笑う。 リキッドは固まったまま。
「お前も手伝う?」
「・・・・ああ。」
そんな二人の様子に。
ぅわあ・・新婚夫婦だあ・・・、とリキッドは逃避に陥っていた・・・。
「おらっ」
でん、と鍋を置く。
「おー上手そうじゃねェか」
「当たり前。オレが作ったんだから。」
いつのまにやら持ち込んでいたボトルを空けていたハーレムにキッパリと言う。
「まぁオレも手伝ったがな」
「はいはい、ありがと―な。はいこれよろしく」
ぽん、と皿を一つ。
「・・・・なんだ」
「ツマミ。照り焼き。鳥の。ハーレム叔父様のご希望で―ぇす。」
ははん、と笑う。
「・・・・・ふう。」
キンタローはためいきをついた。
「はァ――・・あったまる・・・」
はぅ、と食べながら呟くリキッド。
「おっ、それ上手そ―」
「あ、てめロッド!!・・て、マーカーまでッ!!」
両はじからチャイニーズ&イタリアンに具を奪われ叫ぶ。
「・・・あつ。」
「―んだよマーカー。熱いうちに食わねぇと意味ねえだろ」
「・・・・・では貴様が燃えろ。」
ボゥッ
「ぅあっぢゃ―ッ!!!」
バタバタと走り回る。 すると、近場でツマミを食べていたハーレムが叫ぶ。
「るっせーぞ、ロッド!!落ち着いて酒も飲めやしねえ」
ピンポォン
「んっだ、また誰か来やが・・・・」
途中で言葉が切れる。
「おにーちゃん、遊びに来たよー」
明るく高い子供の声。
「こたろぉーっ!!」
ぴょーい、と燃え尽きる寸前のロッドを踏みつけドアに急ぐ。
「お前もきたのか、コタロー」
「寒かっただろ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。暇だしね、パプワくんと来ようと思って。」
「ぱぷわ?」
下を見る。
「久しぶりだな、シンタロー!」
「・・・ぁあ、だな・・。ま、上がれよ。」
「うむ。」
「・・・・・・・」
歩いていく二人を見て、黙っているコタローに気づく。
「・・どうした」
「ん・・やっぱり仲良いね。二人とも」
「パプワとシンタローか・・・。」
「うん。」
・・・・嫉妬でもしているのだろうか・・・・?
「・・くやしいのか?」
「まさか!僕、パプワくんもおにーちゃんも大好きだもん。
さっ、早くいこ!! おじさん連中に食べられちゃうよ」
ぐ、とキンタローの服を引っ張る。
ふ、と笑いキンタローは歩き出した。
「おらぁ、おせぇぞてめーら!!」
「食い終わっちまうぜーぇ」
ひらひらと酒ビンを振り回して叫ぶハーレム。+もう復活したロッド(早!!)
「また空けやがった・・この親父」
「全く・・・・。」
「じゃあね、おにーちゃん」
「また来るぞー!」
「ああ、風邪ひかないように気をつけてな。二人とも。」
ぅう、と鼻血を吹かないように耐えつつ見送る。
「ごっそーさん、また来るかんな。覚悟してろよー」
「生言ってんじゃねぇ獅子舞!!」
「・・・・・」
ケッ、とコタローへの笑顔はどこへやら、不機嫌そうな顔で言う。
「あ、リキッド置いてけ」
「ぁん?んだよ、何で・・・て、まぁいいか」
おらよ、と首根っこをつかんで猫のように渡す。
「え、え、何スかぁ?」
理由がわからず、去っていく獅子舞を見つめる。
「片付け、手伝え!!」
「お前が一番適任でな。」
かちゃ、と皿を重ねる。
そして、一言。
「か―っ!あンの獅子舞親父どもめ・・・」
食い散らかしやがって・・・、と文句をいう。
「酒ビンもかなりッスね・・・」
「・・・・・・・・オレの酒まで・・・・。」
ぼそりと呟くキンタロー。
どうやら結構ショックだったらしい・・・・。
「はー。リッキー、キンタローお疲れ。」
とん、と残った(助かった)酒をついだグラスを置く。
「あ、どうも。」
「オレの(強調)酒だ・・・」
「はーいはいはい」
こく、と飲む。
「・・・大丈夫か?」
「?」
「指だ。」
ひょい、とシンタローの手をとる。
ぁあ、とシンタロー。
「平気。あ、でも傷ひらいたか?」
「・・・・」
「だっから舐めんなって。痛いの。」
「・・・・・ぅわ―、うわ、うわーぁ」
再びのショッキング映像に思わず横を向く。
やっぱりフツーじゃねぇ・・・・
そう思ったリキッドだが、周りのモノがほとんどフツーじゃないため・・
思いを分かち合うことはできなかった―・・・。
END.... ..
************************************************
へんだ・・・。
湯河様のお話、本当に尊敬(ギャグなど色々)しておりますので、
尚お話を送る のをためらっていたんですが、ついに送ってしまいましたv
・・・・これからもなにか送ってもよろしいでしょうか・・・・?
************************************************
きゃぁぁああ! らぶらぶぅぅ!
そして賑やかですねぇ2人の愛の巣。
キンちゃんの小ボケ(ダンゴ)や
いじめられまくるリッキーや
ちょっとマーカーを辛かっただけなのにあっさり燃やされるロッドとか。
仲のいいパプシンとか(略すな)
終始萌えっぱなしでした。
これからも何か送っても~~何て尋ねられたら私は図々しいので
喜んで受け取っちゃいますよ!
本当にありがとうございました~~!
************************************************
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遥か上空。
水蒸気は冷えて固まり 結晶となる。
シャッ
勢い良くカーテンを開ける。
目に飛び込んできたのは一面真っ白な世界。
「お―ッ、降った、降った!!キンタロー起きろっ」
「何だ、何が降った」
むくりとダルそうに起き上がる。
窓に近寄り、そして固まる。
「コレは・・ユキか?」
「そう、雪!見たことはあんだろ?」
な、と無邪気に笑う。
・・確かに、見たことは有る。何度も。
シンタローのなかで、彼の視点で見ていた白―
「な、外いこーぜ!」
「・・・コート取ってくる。」
「ぅあ―冷てぇ・・初雪~♪」
雪だまをつくりながらはしゃぐ。
ふとキンタローをみる。
「・・・・・」
ず、と手に乗せる。
手袋をしていない手に触れた雪は、じわりと解け・・やがて水へと姿を変えた。
「・・・冷たい・・・」
もう一度すくおうとした時―・・・・
ずんっ
「!!」
背中に感じる重み。
「なんだ?」
上を見ると、乗っかっていたシンタローと目が合う。
「雪だるま作ったぜ」
ほら、と後ろを指す。
そこには確かに雪だるま。
すのーまん。直訳すると雪男。(関係なし)
しかも結構でかかったりする。
「・・早いな・・いつの間に」
「キンタローが一人で遊んでっからだろ―」
ぷい、と横を向く。
幼い仕草に笑みがこぼれる。
・・・・この隙に・・。
ずしゃ。
「!?」
雪に何かが乗っかったような音に振り返る。
「ぶはっ!」
思わず吹き出す。
・・・そこにあったのは、なんとも形容しがたいモノ。
「んっだよソレ!!ダンゴ!?」
あはは、と腹を抱えて大笑い。
シンタローの目にはいって来たのは、ダンゴ。のような形のもの。
キンタローがシンタローの目を盗み、もう一つの雪だま(しかも結構でかい)をのっけたのだ。
三つになった物体は、倒れそうになりながらも何とか必死に耐えていた・・。
べっしゃ。
「ンぶッ!!」
雪だまがシンちゃんにクリーンヒット。
「笑うな。」
いつまでも笑っていたシンタローにいい加減腹がたってきたキンタローのささやかな仕返し。
「っのぉ・・・やったなコラァっ」
ぶん、と手近な雪だまを投げる。
が、しかしヒョイとかわされる。
「ふん、コントロールが甘いな」
フ、とわらう。
「むぅうう~~っ!」
「で、どーだった?」
「何がだ」
「雪の感想。」
ぬくぬくと冷え切った身体を温めつつ。
「・・・冷たくて、白くて、すぐ解けて、ダンゴ。」
「ダンゴはねーだろぉがよ・・」
プッ、とまた笑いながら言う。
「はぁ―あ・・・寒ぅっ」
ぶるぶると震える体を押えつつ。
「ぁーん?冬は寒いもんて決まってるだろうが。」
「そーだぜボーヤ」
「大体この程度で寒いなどと・・・」
口々に言う同僚&上司。
たった一言でこんな否定される自分て・・・とリキッドは今更ながらに落ち込んだ・・。
「・・・・よっしゃ、シンタローんとこ行くか。」
「えっ、何でッスか?」
いきなり、ポン、と手をつき提案したハーレムに質問。
「てめぇもシンタローも料理うめェだろ」
・・・・それは、つまり。
さきほどむりやり買って来させられたこの鍋の材料を使えと・・・・。
「わ―ぉ、鍋パーティかvv」
「・・・・・・・ふん。」
ぴんぽーん
「はーい、はいはい」
かちゃ、とドアを開ける。
「よぉ。来てやったぜv」
バタンとドアを閉める。
フー、とため息。
「おいコラ、何間髪いれずに閉めてやがる!!」
バキィ、と不吉な音が響き後ろを見てみれば・・。
そこにいたのは、やはり見間違いではなかった獅子舞と愉快な中間達(笑)
「何だ、騒がしい。」
「お、キンタロー様」
「・・・・・・・;」
「二人暮しなのかっ?」
ひょい、と姿を見せたキンタローに反応する、ハーレムにロッド、マーカー、そしてリッキー。
ずい、とロッドがシンタローに詰め寄る。
「何?何でさ二人暮し?二人っきり?何でもしほーだい?
だったらオレも入れて くれたグフゥっ!!」
ロッドの言葉は途中で切れた。
・・・・本人が倒されたのだから仕方が無い。
「・・さ、さんきゅ、マーカー・・・」
「・・・・煩いから黙らせただけだ」
とんとんとん
「くっそ、何でオレが」
ブツクサ言いながら具を切る。
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「わ―ってるけどよぉ・・」
「いてっ」
「ど、どしたんスか!?」
いきなり響いたシンタローの声に振り返る。
そこには小さな赤の雫。
「いってー、油断した・・」
ぴるぴるとてをふる。赤がとんだ。
「ちょちょちょ・・・」
「シンタロー」
「あ、キンタロー。どした?」
ちう ――と、血に濡れた指をすくい、口付ける。
「・・・止まったか。」
「ん―、さんきゅ」
に、と笑う。 リキッドは固まったまま。
「お前も手伝う?」
「・・・・ああ。」
そんな二人の様子に。
ぅわあ・・新婚夫婦だあ・・・、とリキッドは逃避に陥っていた・・・。
「おらっ」
でん、と鍋を置く。
「おー上手そうじゃねェか」
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「まぁオレも手伝ったがな」
「はいはい、ありがと―な。はいこれよろしく」
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「・・・・・ふう。」
キンタローはためいきをついた。
「はァ――・・あったまる・・・」
はぅ、と食べながら呟くリキッド。
「おっ、それ上手そ―」
「あ、てめロッド!!・・て、マーカーまでッ!!」
両はじからチャイニーズ&イタリアンに具を奪われ叫ぶ。
「・・・あつ。」
「―んだよマーカー。熱いうちに食わねぇと意味ねえだろ」
「・・・・・では貴様が燃えろ。」
ボゥッ
「ぅあっぢゃ―ッ!!!」
バタバタと走り回る。 すると、近場でツマミを食べていたハーレムが叫ぶ。
「るっせーぞ、ロッド!!落ち着いて酒も飲めやしねえ」
ピンポォン
「んっだ、また誰か来やが・・・・」
途中で言葉が切れる。
「おにーちゃん、遊びに来たよー」
明るく高い子供の声。
「こたろぉーっ!!」
ぴょーい、と燃え尽きる寸前のロッドを踏みつけドアに急ぐ。
「お前もきたのか、コタロー」
「寒かっただろ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。暇だしね、パプワくんと来ようと思って。」
「ぱぷわ?」
下を見る。
「久しぶりだな、シンタロー!」
「・・・ぁあ、だな・・。ま、上がれよ。」
「うむ。」
「・・・・・・・」
歩いていく二人を見て、黙っているコタローに気づく。
「・・どうした」
「ん・・やっぱり仲良いね。二人とも」
「パプワとシンタローか・・・。」
「うん。」
・・・・嫉妬でもしているのだろうか・・・・?
「・・くやしいのか?」
「まさか!僕、パプワくんもおにーちゃんも大好きだもん。
さっ、早くいこ!! おじさん連中に食べられちゃうよ」
ぐ、とキンタローの服を引っ張る。
ふ、と笑いキンタローは歩き出した。
「おらぁ、おせぇぞてめーら!!」
「食い終わっちまうぜーぇ」
ひらひらと酒ビンを振り回して叫ぶハーレム。+もう復活したロッド(早!!)
「また空けやがった・・この親父」
「全く・・・・。」
「じゃあね、おにーちゃん」
「また来るぞー!」
「ああ、風邪ひかないように気をつけてな。二人とも。」
ぅう、と鼻血を吹かないように耐えつつ見送る。
「ごっそーさん、また来るかんな。覚悟してろよー」
「生言ってんじゃねぇ獅子舞!!」
「・・・・・」
ケッ、とコタローへの笑顔はどこへやら、不機嫌そうな顔で言う。
「あ、リキッド置いてけ」
「ぁん?んだよ、何で・・・て、まぁいいか」
おらよ、と首根っこをつかんで猫のように渡す。
「え、え、何スかぁ?」
理由がわからず、去っていく獅子舞を見つめる。
「片付け、手伝え!!」
「お前が一番適任でな。」
かちゃ、と皿を重ねる。
そして、一言。
「か―っ!あンの獅子舞親父どもめ・・・」
食い散らかしやがって・・・、と文句をいう。
「酒ビンもかなりッスね・・・」
「・・・・・・・・オレの酒まで・・・・。」
ぼそりと呟くキンタロー。
どうやら結構ショックだったらしい・・・・。
「はー。リッキー、キンタローお疲れ。」
とん、と残った(助かった)酒をついだグラスを置く。
「あ、どうも。」
「オレの(強調)酒だ・・・」
「はーいはいはい」
こく、と飲む。
「・・・大丈夫か?」
「?」
「指だ。」
ひょい、とシンタローの手をとる。
ぁあ、とシンタロー。
「平気。あ、でも傷ひらいたか?」
「・・・・」
「だっから舐めんなって。痛いの。」
「・・・・・ぅわ―、うわ、うわーぁ」
再びのショッキング映像に思わず横を向く。
やっぱりフツーじゃねぇ・・・・
そう思ったリキッドだが、周りのモノがほとんどフツーじゃないため・・
思いを分かち合うことはできなかった―・・・。
END.... ..
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へんだ・・・。
湯河様のお話、本当に尊敬(ギャグなど色々)しておりますので、
尚お話を送る のをためらっていたんですが、ついに送ってしまいましたv
・・・・これからもなにか送ってもよろしいでしょうか・・・・?
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きゃぁぁああ! らぶらぶぅぅ!
そして賑やかですねぇ2人の愛の巣。
キンちゃんの小ボケ(ダンゴ)や
いじめられまくるリッキーや
ちょっとマーカーを辛かっただけなのにあっさり燃やされるロッドとか。
仲のいいパプシンとか(略すな)
終始萌えっぱなしでした。
これからも何か送っても~~何て尋ねられたら私は図々しいので
喜んで受け取っちゃいますよ!
本当にありがとうございました~~!
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それはあまりに雄大で。
明かりにも輝いていて。
同じほどの腕を備えた身でも。
煌めく色素を携えていても。
決して手は届かないのだと思い知らせるのです。
…………伸ばす腕を、知って下さい。
忘れ果てた回帰
いつものように台所に立つすらりとした背の男。刻まれる包丁の音はリズムを取っているようで乱れがなかった。
それを横目でちらりと見つめ、こっそりと動く影。
先ほど男が何かを作っていたよう気に手を伸ばし、中にあるものをひとつまみ取り出した。
しおしおとした少し濃い桃色に小首を傾げ、口にぽいと入れるのと男の声が響いたのは同時だった。
「あ、こらチャッピー、食べるな!」
「きゃうんっ」
いつもの叱られたのとは違うチャッピーの鳴き声にびっくりしたようにパプワが声をかけた。
「どうした、チャッピー」
「きゃうん、きゃうん」
「あーあ………だからダメって言っておいただろ?」
先ほど作り終えた容器の蓋をもう一度閉め、清潔な布巾を水で絞ってシンタローがチャッピーの前にしゃがみ込んだ。涙目で見上げる犬はどうにかして欲しいと目だけで訴えている。
「ほら、舌出して。まだ飲み込んでねーな?」
出された舌の上でどうする事も出来ずにたたずんでいるものをつまみ上げ、軽く拭ってやる。それだけでもかなり変わるだろう。近くに置いておいたコップに水を満たし、チャッピーに渡してうがいを促した。
ガラゴロとうがいの音が響く中、パプワが不思議そうにシンタローの手の中にある容器を見つめる。
それがなんなのか、自分も知らない。先ほどシンタローが何か作っていて、でもご飯ではないようだったから、デザートなのかもしれない。
デザートのつまみ食いなら自分もしたいけれど、チャッピーの様子からいって違うらしい。
「それは一体なにが入っているんだ?」
「ん? ああ、これは桜の花びらだよ。それを塩漬けしてんの」
楽しそうに答えたシンタローの笑顔につられて笑いかけながら、その物体の用途がしれずに眉をしかめる。
…………そんなものを食べたのだから、さぞチャッピーも驚いただろうと思いながら。
「………………?」
疑問を視線に溶かして投げかけたパプワに気付き、シンタローがしゃがみ込んでその視線を同じくした。さらりを長い髪が頬を滑る様がすぐ間近に見える。こうしてきちんと目を合わせ、言葉をまっすぐ向ける瞬間が、パプワは好きだった。
「コレはお湯に薄めて香りを楽しむものなんだよ。だからこのままじゃ食べれないし、うまくもない。………解ったか、チャッピー」
こっそり後ろで丸まって聞いているチャッピーに苦笑しながら声をかける。伸ばされた腕が優しくその毛皮を撫でているのを見てパプワはぎゅっとチャッピーを抱きしめた。………そうするとその大きな手のひらが自分の頭も撫でてくれる事を知っているから。
柔らかな仕草で晒される慈愛の御手。
心温まる絆の再現。
………決して、それは他者を介入させない。
否、それらは全てが優しく、しかも決して内へ入り収縮する類いではなく、広がり数多のものを包む様相を示しているのだ。そう思う事こそが劣等感なのかもしれないと小さく息を吐く影が、一つ。
自嘲気味な笑みを残し、吐いた息を飲み込むように唇を閉ざすとパッと笑顔を咲かせた。
「シンタローさん、俺昼飯の材料集めてきますね。パプワ、なにがいい?」
楽しげに弾んだリキッドの声にきょとんと小首を傾げ、パプワがジッとシンタローを見上げる。
どこか幼いその仕草を愛でる瞳は優しい。
「なんでもいいぞ」
「………それが一番困る回答だってーの」
呆れたため息の中、シンタローはきちんとその言葉の含む意味を汲み取っている。だから零す笑みは柔らかく、照れたようにパプワの頭を少し力を込めて撫でた。
微笑みを、零さずにはいられない風景。まるで絵画の中にしかないような美しき絆。決して現実にはあり得ないと思わせるほどの崇高さに、何故か痛む胸を持て余す。
ほんの少し遠いところに立っているだけで、遥か彼方にたたずむような虚無感を感じるのはきっと、浅ましさなのだろうと思いながら……………
てくてくとジャングルの中を歩きながら辺りを見回す背中を見遣る。
彼が前を歩き、自分は後ろ。荷物持ちは強制ではなく志願したのだが、そうでもしないと一緒に材料集めなど同行させてもらえないような気も、する。
思わず吐きそうになる息は重く、そんなものを晒したなら機嫌を悪化させるだろう目の前の人物を思えば落とす事も出来ない。
「お、これこの島にもあるのか。パプワたち好きだから多めに持ってくぞ」
「え? ………あ、これ……でも前に食いませんでしたよ?」
差し出された果物を見て訝しげに首を傾げた。
甘酸っぱくて果肉が少し堅い柑橘系の果物。そのまま出しても食べないだろうと思ってジャムにしたが、あまり好評ではなかった。そう思って疑問を口に出すと逆にシンタローは小首を傾げた。
「そうか? 前ん時は砂糖漬けにしたの保存用に多めに作ったけど、全部たいらげやがったぞ、あの大食らいたちは」
どこか楽しげな声で話す言葉は、軽い。ふと過る過去の姿。………考えてみると、まともに顔をあわせたのは前のパプワ島での戦闘の時だった。
さぞ印象が悪いだろう事は自分への対応の冷たさで十分知れる。確かに一番はじめに彼の仲間に重傷を負わせたのは自分なのだから、なにも言い訳はないけれど。
多分、自分が知っている彼の顔は少ない。なにせ晒されるすべてがパプワたちの為なのだから。
自分の為にむけられた笑みは記憶にない。当然と言えば当然なのだろうけれど。
「本当にシンタローさんはパプワたちの事よく知ってますね」
苦笑を交えて僅かな羨望とともに呟いたのは、無意識。
…………どちらへの羨望かさえ、あやふやだった。
けれど呟いた途端に後悔する。どうせ回答は解っているのだ。自信の溢れ得たあの笑みで、当たり前だと言われるに決まっている。
決して自分が入り込めない世界の、清艶なる絆の存在。伸ばす腕すら携えず、ただ傍観する事以外、為す術もない。
いっそ潔く諦めて、加えて欲しいのだと声を大にして叫べばまだ救いもある。けれどそれすら出来ないのは多分に望みが違うからだと、解っている。
溜め息を飲み込んで、与えられるだろう言葉に傷つかない為の準備をする。そうして見遣った視線の先には、けれど想像とはまるで違うものがたたずんでいた。
振り返った影。揺るぎない雄々しい背中。風に揺れた長い黒髪が頬を撫で、静かに包む。
そのひとつひとつが網膜に焼き付くように静かに流れた。
瞬く瞳。どこか、憂いさえ乗せて。………自分の予想した回答が紡がれる事はないと、はっきりと示された。
姿は変わらず、決して脆弱には見えないのに。………頑強であり揺るぎないと思わせるのに。
それでもこんなにも儚く思わせるものは一体なんだと言うのだろうか…………?
「なにも俺は知らねぇよ」
静かに告げられた音。震えすら帯びず、力みすらない。ただ淡々と事実を語るように穏やかだ。
そのくせ潔く頭(こうべ)すら下げかねない寂しそうな瞳に息が詰まる。………誰よりも何よりも互いを理解していると見えるのに。けれど決して解ってはいないのだと悲しげな音が囁いた。
困惑して、干上がる喉をむち打ち声を上げる。掠れるような叫びに聞こえる見苦しさに舌打ちしたくなりながら。
「だって…………!」
あんなにも解りあえているではないか。望むものを互いに与えあって、それでも解らない事があるのなら、どうやって理解が通うと言うのか。
自分は彼よりも長くパプワの傍にいた。それでも解らない事だらけで、途方に暮れる事の方が多い。
全てに柔軟に対応し、慈しみ抱きしめ必要な時に必要なだけの腕と言葉と、信頼を捧げる。
そんな理想的な事、他では決して見られない。……見られるわけがない。
もどかしく言葉に出来ないそれらを喉奥に蟠らせて唸るように唇を噛む。どれほど、それこそ血反吐を吐く思いで訴えても、決して受理されないと肌で感じた。
ゆっくりと瞼を落とし、それらの感情すべてを見極め受け流した瞳は常と変わらぬ威厳を甦らせて前方を見遣った。
………静かに細く吐き出された吐息を受け止めたのは、ただ前方に広がる柔らかな緑たちだけだったけれど…………
空には星が煌めいている。シンタローはそれを見上げた。もう眠っているだろうパプワたちの寝息すら聞こえてきそうな静寂はそう体験出来るものではなかった。
見上げた空の様相の見事さに感嘆を覚え、同時にその不可解さに面白みが込み上げる。海底の奥底に沈んだ島にありながらここには太陽があり星がある。前に島と変わらない静けさと美しさ。
息を吸うごとに浄められるような不可思議な感覚。身の裡の奥底で凝り固まったものを柔らかく溶かしてくれる。
ゆっくりと落とした瞼の底、過去に映されたのはかつての島だった。
けれど今は、ガンマ団の面々も浮かぶ。かつては切り捨て自由になる事ばかり考えていたのに、今はあの場もまた、自分の帰る場所と変わった。
「……………………」
息を落とし、微睡むように頤を下げた。呼気は静まり眠りを誘うように風が作り上げた木々の歌声が身を包んだ。
けれど眠りは訪れない。不意に感じ取った気配にそれらは妨げられた。
殺された足音。滲ませる事のないように気づかわれた気配。木々の密集した場では見事という他ないほどその気配は無音を身にまとって近付いて来た。その静寂さが逆に奇妙に虚空に残されてはいたけれど。
小さく息を吐き、眼前の人を見遣る。起き上がってどこかに消えたから散歩程度かと思えばなかなか帰ってこなかった。………このままではパプワたちも起きてしまうのではないかと危惧して探してみればこんな間近な場所で眠りこけている。………本当に、よくわからない人だ。
誰よりも何よりもかつての島を愛し、そこに住う命をかけがえのないものと尊んでいるくせに。
誰よりも何よりも漂流した命を思い、手放せないと思い寄せているくせに。
この二人はそれでも決して同じ道を進もうとはしない。離別を、いっそ潔いまでに受け入れ、そうして進む強さ。
見ていてどれほど歯がゆいものかなんて、当の本人たちは知りもしないのだろうけれど。
それほど人は強くはないのだ。自分を理解してくれるものを、手放す事などできない。……それなのにただ相手が喜ぶからと、別離すら受け入れ笑う根拠が、リキッドには理解できない。
「……もし………」
小さく息を飲み呟いた、声。
聞き届けられる事のない事を願い晒された音は、けれど続きはしなかった。言いたくなかったと自身で解っていた。
彼が自分の代わりにこの島に残ったならどれほどの幸があっただろうか。彼は強く、自分に出来ない事だって何でも出来る。正直、ここまで完璧な人間を自分は知らない。苦手とする分野すらない彼が信じられない。
それでも、あるいはだからこそ、か。彼はこの島を探すのではなく舞い戻り組織を改革した。
………自分の生きる意味を知っている事は、幸福なのだろうか?
そう問いかけたくなる。
ただ我が儘に己の為にだけ生きればいいと、自分は思うのに。二人はそれでは笑えないのだと、笑う。
夜気が忍び寄り、風が少し強く肌をなぶった。南国の島のようであり、けれど海底に沈んだこの島は時折吹く風がひどく冷たい。
それに思考を舞い戻らされたリキッドは膝を折りシンタローの前にしゃがんだ。やはり起こして帰った方がいいだろうかと一瞬悩み、腕を伸ばす。
風が、吹きかける。漆黒の髪を揺らし、青い月影に晒された肌を影に染める。
眩く輝く己の髪とは対極にあるそれを眺める。思いのほか長い睫毛が色濃く影を落とし、風に揺れる様すら見て取れる距離。………決して、自分には許されないだろうと諦めていたのに。
伸ばす腕が触れる事が出来る。ほんの少し近付けば重なる肌。
呼気すら埋(うず)めて、無意識に風に押されるように身体が揺れる。
…………あと、ほんのすこし。
落とされた瞼の先には鮮やかな彼の姿。自分ではない誰かが傍に居て初めて晒される彼の本質。
痛みを飲み込むように寄せられた眉。悔恨すら覚悟して近付けられた唇は、緩やかな呼気に触れて弾かれるように身を離した。
触れる事すら、罪な気が、した。
口吻けるだけでなく、その身にまとう空気すら穢す事が出来ない。
彼の事も、彼の思う子供の事も理解できない自分に、触れるような資格すら、ない。
噛み締めた唇で苦みを飲み下し、ゆっくりとリキッドは立ち上がる。
せめて夜風に凍えないように毛布くらい持ってこようと歩む背は、それ故に気付かない。
ゆっくりと開かれ微睡む仕草のままに見遣った視線に。
「………度胸ねぇな……」
噛み締めるような声音に己で小さく笑う。
触れて来たならどうするかすら考えていない身で、その言もないだろうと再び瞼を落とした。
もう少し、またあの男が来たなら目を覚まし帰ろう。
きっと子供が自分がいないと不機嫌に顔を顰めて布団にうずくまっているだろうから……………
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いや~、ある意味PAPUWAは初めてですか。前に一回PAPUWAがはじまる前の話書いたけど。
今回はリキッド→シンタローですかね。
でもどっちかと言うと憧れが強い感じで。
なんだかへたれっぷりがアラシヤマと同列になった気がしました。
…………どっちに謝ればいいでしょうか(笑)
もちろんPAPUWAがあるのですからパプワも書きますよ。
私は南国の方が好きな人間ですから!
でもこの話、実は連載になっても不思議ではない長さを無理矢理短くしてまとめたのでちょっと心残り。
なにかきっかけでもあれば改めてまたちゃんと書きたいものです。
この小説はお持ち帰りフリーですv
……私のサイトではたしてコレを見る人、いるのでしょうかね………(基本パプ&シンなのに)
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さーて私的一番の萌えポイントは!
パプワと目線を合わせて説明するシンタローさん。
も、もちろん!
キスしそうになったリキッド君にも『あぁ惜しい!!』という賛辞を……
そっちはおいといて。
私はなんかこう大人が小さい子に合わせて行動するってのが大好きなんですよ。
他にも頭なでなでとかぎぅっとか!
「しょうがないなぁ」とかため息をつきながらにっこり後始末する様とか!
流石 月兎様……萌えポイントをよく理解してらっしゃる……。
キラキラキラキラ、輝くもの。
固くて透明で。
………でもとっても脆いもの。
キレイでキレイで大好きで。
そっと伸ばした指先に。
壊れないでと祈りを込めました。
硝子のことば
あっけらかんとした青空を見上げながらふと苦笑がもれる。
特になにがどうしたというわけでもないけれどもれたそれに目敏く気づいた子供が問いかけてきた。
………それはとても日常的な姿。
「なんだ、シンタロー。空になにかあるのか?」
ついとパプワの見上げた先に広がるのは真っ青な空と入道雲。いつも見ていて、けれど飽きることのない美しい色。
別にそのほか変わったものなど見当たらないと不思議そうに問いかければ、またシンタローの視線は空へと奪われる。………どこか郷愁さえ浮かべながら。
「なんもねぇんだけどな。それが………」
いいかけて、言葉を濁す。
…………それに気づき、眉を顰めた。このあと晒されるものをパプワはよく知っているから。
「綺麗なもんだって思っただけだ。気にすんなよ」
曖昧な言葉に躱すような優しい笑顔。諭すように見せ掛けて、それは怯えて逃げる悪い癖。
言葉に怯えた莫迦な大人は、それ故になにも知らない自分に与えることを恐れている。痛めつけるのではないかと……………
それを知らないわけではない。いい加減、子供の洞察力を舐めていると思うのだ。言葉を知らなくても、自分達は知ってしまう。その些細な変化を知って、それでも教えてくれないからきっと晒し方を覚えられずに大人に成長してしまうだけ。
そんな間抜けなまね、自分はしたくはない。
手を伸ばす時を間違えたくはないのだ。子供だからと見くびられたくもない。掬いとることができると、信じさせて欲しい。
「シンタロー」
その名を呟いて、いまだ丸みの抜けない幼い腕が精悍なその腕をとる。
不可解そうな瞳が注がれる。きっと、シンタローの中で先程の会話はもうすでに終了し、いまの自分の行動はまた新たなものと認識されているのだ。だから必死でなにを訴えるのかを見つめている。取りこぼさないようにと、それこそ真剣な姿で。穏やかな顔を晒しながら、その実どこまでも相手の機微を見極めようと足掻いている。
………どちらが幼いかなんて、自分は解らない。
当たり前に腕をのばせることが勇気なのか、相手を知ろうと心砕くが故に傷つけることを恐れることが優しさなのか。
その境界も意味もあまりに微妙で移り変わりやすいから。
せめていま感じるものだけを晒す。拙さ以上の甘えを込めて、幼さを利用して。
どこかシンタローの甘さや不器用さに付け込んでいると思いながら、けれど決してそれだけではないことを祈って。
「空はキレイだ。雲も。パプワ島はいつだって優しいから、なんだってキレイだ」
一見醜いものさえ、それは誰かを活かすためにある。だから、その生き様は美しく尊い。
全てを包む優しい島は、だからこそ外界の者にはなにもかもが目を奪うほどに煌めいている。
それはこの島以外を知らない自分には解らない感傷。美しくない場所なんて知りはしないから。それでも、解らないけれど知りたくないわけではない。
「お前も、キレイだろ?」
精一杯この島で生きている。それはそれだけで尊いもの。
それでもまだそれを受け入れることのできない彼が、なににこだわっているかなんてわからない。
自分は知りたいのだと示すようにその腕を引き、不遜なままにその膝に足を乗せる。自分は立って、彼は座っているこの状態でさえ、視線を絡めることが出来ないのだからこの小さな身体は時にひどく不便だ。
真直ぐに瞳を覗けば苦笑の気配。
躱すつもりかと眉を顰めてみれば、とったはずの腕が離れ………包まれる。
きょとんとそれを見つめてみれば深く息を吸い込む音がきこえた。
………話してくれるのだとわかって、それならば顔を晒したくないというなけなしのプライドくらいは許そうかとその腕を甘受した。
「なあパプワ………言葉ってのは硝子みたいだな」
不意に囁いた言葉に不可解そうにパプワはシンタローを見上げる。もっとも、肩に頬を押し付けるいまの体勢ではその顔を覗くことは不可能だったけれど。
呼気が背中に触れる。今更ながらに自分達の体格差が悔しく感じた。
シンタローは自分を包んでくれるのに、自分の腕では彼を包めない。こんなにも必死で震えることを拒んでいる背中を見つめるだけなんて、ある意味拷問だ。
せめてものぬくもりをと間近な腕を包み、ゆっくりと瞼を落とす。
彼の言葉を聞き落とさないように、忘れないように。掬いとれることを願いながら…………
「綺麗で…見るだけでも目を奪われるけど、それがもし過って壊れた時は直せないし………その破片が人を傷つける」
深い声音は感情が灯らない。多分、意図的にそうしている。
……それはつまり、灯らせたならば嘆きに変わるということか。あるいはもっと他の、シンタローがパプワには晒したくないと思っている感情か。
己の中の負を晒すことを恐れて、それを子供に欠片でも植え付けることに怯えて。
………まるで、天使を前にした信者だ。清いものは清いまま存在させたいのだと祈るっている。
それを相手が望む望まざる関係なく、ただ穢れなさに焦がれて聖域のように近付かせない。
救いすら、求めてはくれずに………………
だから声はどこか絵空事のように響く。
「強そうに見えて、結構脆いもんだからな………」
それは硝子のことをいっているのか、言葉のことをいっているのか判断出来ないほど深い囁き。
………後悔と、いうべきなのか。悔恨というにはあまりに悲しく切ない。未練といった方がそれはより近かったかもしれない。
過去にどんなことがあったかなんて知らない。教えてくれないのだから解るわけがない。
けれど、その全てが美しく優しいものだなんて思う気もない。哀しみも嘆きも知らない魂が、こんなにも優しくなれるわけがない。
知らない感情を知らないままでいることが正しいなんて思わない。それがどれほど痛みを刻むものでも、彼が知っているのならば……自分もまた知りたいと思うことは愚かか。
哀れみでも同情でもなく、共有ともまた、違う。
苦しいのだと息を吐く場所を求めている大切な人の為に、それを手に入れたいと思うことは傲慢だろうか。
拙い指先で抱き締めた腕を引き寄せる。縋るようだとどこか思いながら。
「シンタロー、僕はこの島が大切だし大好きだ」
言葉が硝子のようだと、彼はいう。
………壊れたなら直せず、時に人を傷つけると。
それは多分正しく、彼自身がずっと感じてきたことなのだろうとも、思う。
けれどそれだけが全てではないことを彼は知っている。ただ少しだけいま、怯えているだけ。
「お前のことも好きだぞ。それだけちゃんとわかって、言葉にできればいいんだろ?」
壊れた言葉を直せないなら、また作ればいい。傷つけたのならば癒せばいい。
……………それはきっと単純で、もっとも難しい方法。
大人になると色々なことがあって、言葉がとても難しいものになる。思うがままに呟くことが出来なくて、時に謝罪すら繕えない無意味なプライドが築かれる。
それでもせめて、大切なその言葉だけは忘れなければいいと、子供は優しく囁く。たった一言、それだけを忘れず呟くことができるなら、壊れたものも作りなおせる。
「だからお前もたまには言ってみろ。ちゃんと、待ってやるから」
言葉にすることがこれほど怖い言葉もない。それをシンタローを知ってからパプワは知った。
それは呪縛であり、枷にもなる。自由を謳う呟きが、いつの間にか相手を縛るために用いられることさえある。
だからいますぐとは言わない。
………いつか、言ってくれればいい。
過去にどんなことがあって、言葉に恐れているかなんて興味もない。怯えているなら自分が癒すだけ。その権利を、自分に与えてくれればそれでいい。
いまだ抱き締めることも出来ない拙い小さな腕で、それでも精一杯の言葉で抱き締める。
抱き締めてくれる腕は微かに震えていて、多分………彼の中で必死でそれを囁こうと思っているのだろうことが窺えた。
無理はしなくていいのだと小さく囁けば、息を飲む気配。
…………そうして、微かに呟かれた言葉は耳に触れたなら消え入るほどに小さくて、聞き間違いかと疑えたけれど。
縋るような腕が強まって、言葉に怯えた大人の恐れと憧憬が流れ込む。
囁くことを恐れたくはないのだと訴えるその腕を抱き締めて、子供はゆったりと微笑んだ。
…………言葉は硝子。
綺麗に煌めき優しく瞬く。
日の光を浴びたならそれは淡く輝き人を心喜ばせる。
どうかいまこの硝子を壊さずに。
……祈りとともに抱き締めた、硝子の言の葉。
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見ての通り残暑見舞い限定小説はみんな同じ冒頭から始まります。
そして全部「硝子」がコンセプト。
…………しかしまあ……涼しさの欠片もないわね……硝子なのに。
子供は大人以上に色々なことを知っていると思います。
常識とか知識とか、そういうものじゃなくてもっと根源的なもので。
話していると泣きたくなることもしばしばです。
なのでどうしてもパプワを書くとそれが強く出てしまいます。
………ああ、こういう感じだったのかな~とか思いながら。
さすがに私の書くパプワとシンタローほど顕著ではないですけど(笑)
でも子供達に沢山のことを教わったので、それを形にしたいとは思います。
忘れたくないのと、ちゃんと子供は知っているんだってことを知ってもらうために。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
原作でシンタローさんが素直に素直になれるのってパプワ君の前だけな様な気がします。
あるいは全く逆の意味でタンノ君・イトウ君の前。
パプワ君が子供だからか、それとも運命の人だからか。
前も書いたような気がしますが、刹那様の小説は登場人物の心情の表現が見事なんですよ!(力説!)
私の場合ギャグしか書けない物だから勢いが必要で
そうすると登場人物の心情を細かく掘り下げて掘り下げて書くなんてコトできないんです。
しかもそれが染みついている物ですから、今から方向修正なんてとてもとても★
キャラクターの心情がしっかり書けるって意外にも難しいこと何ですよねぇ……
私なんかその難しいことが出来ないからキャラクターが壊れてしまうんですよ。(汗)
2005年 バレンタインデー小説 マジック×シンタロー
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去年はシンちゃんから手作りのチョコレートをもらった。
なんでもキンちゃんから渡せとせかされたらしい。
今年はどうなるのだろうと心弾ませていたら、キンちゃんから思いもよらない言葉を聞いた。
「今年は、去年以上に余裕がない」
・・・・・・うわぉう。
シンタローとは毎日食事で顔をあわせるし、
職場=家のようなものだから何かにつけて会いに行ったりするが、
最近どうにも仕事がうまくいっていないようだ。
いや、国境を越えたテロリスト達に、
同じく国境を持たない我々が対抗している。という点においては成果を挙げている。
世界平和を無視した軍事政策を執っている国に対しての制裁も同様。
ただ、なるべく身内に・・・あるいは敵にも被害を出したくない。そういうコンセプトの基に建てられる計画は、
兵を大量投入した大規模な軍事作戦ではなく、少数精鋭で敵の頭を叩く。そういうものになっているのだ。
その少数精鋭に、総帥自らが含まれる事も多々ある。
シンタローが自分から参加しているのだが。
そして敵国から凱旋して来たシンタローを迎えるのは、
たった今時分がしてきた事を書類にまとめ、広報部に報告する作業。
一体いつ休んでいるのやら。
・・・・・・・・・・私もあのくらいのときはそうだったろうか?
説明が長引いたな。
つまり、毎日食事で顔をあわせるたびに、シンちゃんの顔に疲れがたまっているのが分るのだ。
やれやれ。私だってまだまだ現役なのだから、シンちゃんの代わりに戦場へ行ったっていいのに。
・・・・・・いっそのことガンマ団に新兵として入団試験受けちゃおうかなー。
「ごちそうさまでした。」
『ごちそうさまでした。』
せめてシンちゃんの励ましになれば良いとたくさんの具を煮込んだカレーを作る。
食べ応えもあり栄養満点。
今夜のカレーはちょっぴり甘め。
グンちゃん以外は辛いほうが好みだが、胃を荒らしても困るので、おなかに優しく作ったのだ。
「んじゃ、俺は部屋に戻ってソッコー寝る。」
「おやすみー」
「おやすみなさーい♪」
「おやすみ」
シンちゃんはあぁ言ったけれど、実際はそうじゃない。
この後も部屋に持ち込んだ仕事を片付けるのだ。
・・・・・・なんで知っているのかって?
・・・ふ。理由は詳しくいえないが、ヒントを出すとしたら
『シンちゃんのベッドの下や、机の引き出しの陰、ソレとすべてのコンセント差込口を調べてみると良い』
───といったところか。
何はともあれ、シンタローは今日も寝るのが明日になりそうだ。
・・・・・・うーん・・・
2月14日 23:30
シンタローの部屋の前。
ココアとチョコケーキを持って中の様子を窺う・・・
手にしたグンちゃん特製『ペン型受信機』で。
30秒ほど窺っていたが、ときおり「くそっ」とか「うっし」とか聞こえるということは、
まだまだ仕事の真っ最中なのだろう。
しかしここでじっとしているわけにもいかない。
廊下は寒いからココアが冷めちゃう。
コンコンコンッ
「シンちゃん? 起きてるんだろう?」
『起きてるけど・・・何かあったのか?』
入れとは言われてないが、すぐに返事が返ってきたので、ドアを開けて顔を覗かせる。
「お夜食の差し入れだよv
チョコレートケーキとミルクココアv 」
どちらも2人前♪
「チョコケーキとココア・・・か?」
うーん。ソコだけ聞くとなんとも凶悪な組み合わせだねぇ。
「ケーキはブランデーをたっぷり使いつつほろ苦い大人の味だよ。
ココアは甘いけどね。さ。召し上がれw」
パソコンラックから椅子を借りてシンちゃんの横に座る。
「チョコづくめってコトは・・・バレンタインデーか?」
「その通り! いつもパパがもらっているからね。
男同士は女役があげなきゃいけないって不文律があるけれど、
あくまで不文律でしかなんぶっ!」
「そーゆー事は思ってても言うんじゃねぇ・・・」
ティッシュボックスを人に向かって投げるんじゃありません。
至近距離だったにもかかわらず、悦に入っていてかわせなかった私も私だけど。
「仕事しながらで良いから一緒に食べようね♪
はいwあーん♪」
「・・・自分で食える。」
そう言うと思ったよ。
「いいの。シンちゃんはお仕事していなさい。ギリギリなんだろう?」
だったら持ってくるなといつものシンちゃんなら言い返しているだろう。
そう言って来ないということは、やはり小腹がすいていたようだ。
では改めて。
「はいあーんv」
「・・・んあ」
しばらくの逡巡の後、可愛らしい唇が開かれ(マジック美ジョン)差し出したケーキを口に含む。
・・・・・・・・・・・・幸せ・・・。
「どう?」
「悪くはないな」
つまり美味しいということらしい。
シンちゃんがお仕事している横で私が待機。
飲み込むのを見計らって一口サイズにきったケーキを差し出す。
噛んでいる最中、カップに手を伸ばしたら、ココアを一口飲んでから。の合図。
ふ。戦闘で鍛えた観察眼がこんな所で役に立つとは思わなかったよ。
気がついたらシンちゃんの分のケーキは終わっていた。
「もっと食べられるかい?」
そう聞くと、シンちゃんの顔がこちらを向く。
私のは食べる暇がなかったから、まだ口をつけないまま残っているのだ。
「こっちも食べられるかな?」
「・・・それアンタのだろ?」
「そうだけど、シンちゃんのために作ったんだからね。
君が満足できるのが一番だよ。
それに、1ホール作ったんだし、まだ残ってるから。」
だから私の分は気にしなくていいよ。と言うと、シンちゃんは少し考えた後、
「じゃぁ・・・お言葉に甘えさせてもらおうかな」
「はい。たーんとめしあがれv」
ココアのお代わりもあるよ。
2月15日 0:45
「ごちそうさまでした」
「おそまつさまでしたv」
食べている間にもシンちゃんの手は安まず動き、
パソコンの中身は正面からじゃないと見えないよう保護フィルムが貼ってあるから、
私にはどうなっているのか分からないけれど、
プリンターが動いたということは、何かの仕事がひと段落ついたという所だろう。
サイバーテロというか、ハッカー対策のため、
本当に重要な書類はサーバーや個人のパソコンなどを含むコンピューターの中には長期間保存しないようにしている。
印刷した後封筒にまとめて金庫の中に保存しておくのだ。不要になったら燃やして処分。
この時代には原始的だが、だからこそ確実なのだ。
「まだケーキあるけど?」
あと1ホールの6分の4ほど残っている。
「いや、いい。これ以上食ったら眠くなる。」
「そう? でもポットは一応置いておくよ。まだ入ってるから」
「あんがとよ。
・・・アンタはまだ寝ないのか?」
できることならずっとシンちゃんの横で見ていたいけれど、そういうわけにもいかないだろう。
「いや、これを片付けたら寝るよ」
「のこしときゃ俺洗っとくぜ?」
忙しい人にソコまで任せられるわけないだろう?
「大丈夫。そんな暇があったら君はゆっくり休むことだ
───それじゃ、おやすみ」
「おやすみ」
椅子から立ち上がると、シンちゃんも立ちかけたが、それを制して肩に手を置く。
「見送りは結構。
体を壊さない程度に頑張るんだよ?」
シンタローの額に軽く唇を落として立ち上がる。
「ホワイトデーのお返し楽しみにしているからね~♪」
真っ赤になっているシンタローを残して、私は部屋から出て行った。
・・・久々のスキンシップだったからなぁ。
私も妙に気分が高まっている。
・・・・・・・・・・・・・・・暴走しないでよかった。
今暴走したらシンちゃんの体を壊す上にキンちゃんに怒られるからね。
************************************************
3月13日───
「シンタロー。まだ礼の品が決まらないのか?」
「るっせーな! 今までとは勝手が違うから困ってんだよ!!」
「他の女の子達と同じでいいんじゃないかな?」
「いやだ!」
「なんで?」
「ここで既製品を買ってみろ!
俺の負けだろうが!」
「・・・・・・そうなのかなぁ?」
「さぁな」
「畜生手作りの飴ってベッコウ飴か!?
アイツがチョコケーキだったからキャンディケーキか!?」
「・・・僕そんなの聞いたことないよ?」
「こうなったら鍋いっぱいのベッコウ飴作って俺の気持ちだと送りつけてやろうか。」
「それって感謝の気持ちのほかに対抗心とか色々混ざってるよね
───あ、僕いいコト考えた♪」
「・・・期待はしてねーが一応言ってみろ」
「水あめと一緒にリボン巻いたシンちゃんをプレゼントw」
「なるほど。「かけて食べろ」か? 楽だな」
「うん!」
スパーンッ! ばしぃ!
「・・・なんで俺まで」
「やかましい」
「お父様一番喜んでくれると思うんだけどなぁ。」
「俺がうれしくねーよ!」
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去年はシンちゃんから手作りのチョコレートをもらった。
なんでもキンちゃんから渡せとせかされたらしい。
今年はどうなるのだろうと心弾ませていたら、キンちゃんから思いもよらない言葉を聞いた。
「今年は、去年以上に余裕がない」
・・・・・・うわぉう。
シンタローとは毎日食事で顔をあわせるし、
職場=家のようなものだから何かにつけて会いに行ったりするが、
最近どうにも仕事がうまくいっていないようだ。
いや、国境を越えたテロリスト達に、
同じく国境を持たない我々が対抗している。という点においては成果を挙げている。
世界平和を無視した軍事政策を執っている国に対しての制裁も同様。
ただ、なるべく身内に・・・あるいは敵にも被害を出したくない。そういうコンセプトの基に建てられる計画は、
兵を大量投入した大規模な軍事作戦ではなく、少数精鋭で敵の頭を叩く。そういうものになっているのだ。
その少数精鋭に、総帥自らが含まれる事も多々ある。
シンタローが自分から参加しているのだが。
そして敵国から凱旋して来たシンタローを迎えるのは、
たった今時分がしてきた事を書類にまとめ、広報部に報告する作業。
一体いつ休んでいるのやら。
・・・・・・・・・・私もあのくらいのときはそうだったろうか?
説明が長引いたな。
つまり、毎日食事で顔をあわせるたびに、シンちゃんの顔に疲れがたまっているのが分るのだ。
やれやれ。私だってまだまだ現役なのだから、シンちゃんの代わりに戦場へ行ったっていいのに。
・・・・・・いっそのことガンマ団に新兵として入団試験受けちゃおうかなー。
「ごちそうさまでした。」
『ごちそうさまでした。』
せめてシンちゃんの励ましになれば良いとたくさんの具を煮込んだカレーを作る。
食べ応えもあり栄養満点。
今夜のカレーはちょっぴり甘め。
グンちゃん以外は辛いほうが好みだが、胃を荒らしても困るので、おなかに優しく作ったのだ。
「んじゃ、俺は部屋に戻ってソッコー寝る。」
「おやすみー」
「おやすみなさーい♪」
「おやすみ」
シンちゃんはあぁ言ったけれど、実際はそうじゃない。
この後も部屋に持ち込んだ仕事を片付けるのだ。
・・・・・・なんで知っているのかって?
・・・ふ。理由は詳しくいえないが、ヒントを出すとしたら
『シンちゃんのベッドの下や、机の引き出しの陰、ソレとすべてのコンセント差込口を調べてみると良い』
───といったところか。
何はともあれ、シンタローは今日も寝るのが明日になりそうだ。
・・・・・・うーん・・・
2月14日 23:30
シンタローの部屋の前。
ココアとチョコケーキを持って中の様子を窺う・・・
手にしたグンちゃん特製『ペン型受信機』で。
30秒ほど窺っていたが、ときおり「くそっ」とか「うっし」とか聞こえるということは、
まだまだ仕事の真っ最中なのだろう。
しかしここでじっとしているわけにもいかない。
廊下は寒いからココアが冷めちゃう。
コンコンコンッ
「シンちゃん? 起きてるんだろう?」
『起きてるけど・・・何かあったのか?』
入れとは言われてないが、すぐに返事が返ってきたので、ドアを開けて顔を覗かせる。
「お夜食の差し入れだよv
チョコレートケーキとミルクココアv 」
どちらも2人前♪
「チョコケーキとココア・・・か?」
うーん。ソコだけ聞くとなんとも凶悪な組み合わせだねぇ。
「ケーキはブランデーをたっぷり使いつつほろ苦い大人の味だよ。
ココアは甘いけどね。さ。召し上がれw」
パソコンラックから椅子を借りてシンちゃんの横に座る。
「チョコづくめってコトは・・・バレンタインデーか?」
「その通り! いつもパパがもらっているからね。
男同士は女役があげなきゃいけないって不文律があるけれど、
あくまで不文律でしかなんぶっ!」
「そーゆー事は思ってても言うんじゃねぇ・・・」
ティッシュボックスを人に向かって投げるんじゃありません。
至近距離だったにもかかわらず、悦に入っていてかわせなかった私も私だけど。
「仕事しながらで良いから一緒に食べようね♪
はいwあーん♪」
「・・・自分で食える。」
そう言うと思ったよ。
「いいの。シンちゃんはお仕事していなさい。ギリギリなんだろう?」
だったら持ってくるなといつものシンちゃんなら言い返しているだろう。
そう言って来ないということは、やはり小腹がすいていたようだ。
では改めて。
「はいあーんv」
「・・・んあ」
しばらくの逡巡の後、可愛らしい唇が開かれ(マジック美ジョン)差し出したケーキを口に含む。
・・・・・・・・・・・・幸せ・・・。
「どう?」
「悪くはないな」
つまり美味しいということらしい。
シンちゃんがお仕事している横で私が待機。
飲み込むのを見計らって一口サイズにきったケーキを差し出す。
噛んでいる最中、カップに手を伸ばしたら、ココアを一口飲んでから。の合図。
ふ。戦闘で鍛えた観察眼がこんな所で役に立つとは思わなかったよ。
気がついたらシンちゃんの分のケーキは終わっていた。
「もっと食べられるかい?」
そう聞くと、シンちゃんの顔がこちらを向く。
私のは食べる暇がなかったから、まだ口をつけないまま残っているのだ。
「こっちも食べられるかな?」
「・・・それアンタのだろ?」
「そうだけど、シンちゃんのために作ったんだからね。
君が満足できるのが一番だよ。
それに、1ホール作ったんだし、まだ残ってるから。」
だから私の分は気にしなくていいよ。と言うと、シンちゃんは少し考えた後、
「じゃぁ・・・お言葉に甘えさせてもらおうかな」
「はい。たーんとめしあがれv」
ココアのお代わりもあるよ。
2月15日 0:45
「ごちそうさまでした」
「おそまつさまでしたv」
食べている間にもシンちゃんの手は安まず動き、
パソコンの中身は正面からじゃないと見えないよう保護フィルムが貼ってあるから、
私にはどうなっているのか分からないけれど、
プリンターが動いたということは、何かの仕事がひと段落ついたという所だろう。
サイバーテロというか、ハッカー対策のため、
本当に重要な書類はサーバーや個人のパソコンなどを含むコンピューターの中には長期間保存しないようにしている。
印刷した後封筒にまとめて金庫の中に保存しておくのだ。不要になったら燃やして処分。
この時代には原始的だが、だからこそ確実なのだ。
「まだケーキあるけど?」
あと1ホールの6分の4ほど残っている。
「いや、いい。これ以上食ったら眠くなる。」
「そう? でもポットは一応置いておくよ。まだ入ってるから」
「あんがとよ。
・・・アンタはまだ寝ないのか?」
できることならずっとシンちゃんの横で見ていたいけれど、そういうわけにもいかないだろう。
「いや、これを片付けたら寝るよ」
「のこしときゃ俺洗っとくぜ?」
忙しい人にソコまで任せられるわけないだろう?
「大丈夫。そんな暇があったら君はゆっくり休むことだ
───それじゃ、おやすみ」
「おやすみ」
椅子から立ち上がると、シンちゃんも立ちかけたが、それを制して肩に手を置く。
「見送りは結構。
体を壊さない程度に頑張るんだよ?」
シンタローの額に軽く唇を落として立ち上がる。
「ホワイトデーのお返し楽しみにしているからね~♪」
真っ赤になっているシンタローを残して、私は部屋から出て行った。
・・・久々のスキンシップだったからなぁ。
私も妙に気分が高まっている。
・・・・・・・・・・・・・・・暴走しないでよかった。
今暴走したらシンちゃんの体を壊す上にキンちゃんに怒られるからね。
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3月13日───
「シンタロー。まだ礼の品が決まらないのか?」
「るっせーな! 今までとは勝手が違うから困ってんだよ!!」
「他の女の子達と同じでいいんじゃないかな?」
「いやだ!」
「なんで?」
「ここで既製品を買ってみろ!
俺の負けだろうが!」
「・・・・・・そうなのかなぁ?」
「さぁな」
「畜生手作りの飴ってベッコウ飴か!?
アイツがチョコケーキだったからキャンディケーキか!?」
「・・・僕そんなの聞いたことないよ?」
「こうなったら鍋いっぱいのベッコウ飴作って俺の気持ちだと送りつけてやろうか。」
「それって感謝の気持ちのほかに対抗心とか色々混ざってるよね
───あ、僕いいコト考えた♪」
「・・・期待はしてねーが一応言ってみろ」
「水あめと一緒にリボン巻いたシンちゃんをプレゼントw」
「なるほど。「かけて食べろ」か? 楽だな」
「うん!」
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「お父様一番喜んでくれると思うんだけどなぁ。」
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