【限界】
いっそ嫌いになれたら良いのに。
好きだから、冷たくされる事に辛さを感じる。
だったら好きでいるのをやめれば良い。そうすれば楽になれる。
そう、頭では解かっているのに心はいつもそれを拒む。
好きでいる事よりも、好きでいる事をやめる方が
もっと辛いと感じているのか・・・
心。なんて。
そんなものがあるから苦しみ、もがいて
だがそれが無ければ、安らぎを得ることもない。
シンタロー
どうして、あの子は私の事が好きなくせに、
拒絶する言葉しか吐かないのだろう。
憎くてしょうがなくなる。
だけど好きでたまらない。
・・・出口のない迷路を彷徨っている気分だ。
認めたくないのか。自分の気持ちを。
認めたくない、理由は
私のせいか。
考えれば考える程、苛立ちを隠せなくなる。
傷つけたくなる。
大切だと、思っているのに。
抱き締めたい。
抱きたい。
滅茶苦茶に、してやりたい。
こんなに愛しいと想っているのに
壊したいとも願っている自分がいる。
―――――あぁ、そうか。
あの子は、それが怖いから私から逃げるのか・・・
静かに目を閉じる。
熱いものが頬を伝うのが解かった。
いっそ嫌いになれたら良いのに。
好きだから、冷たくされる事に辛さを感じる。
だったら好きでいるのをやめれば良い。そうすれば楽になれる。
そう、頭では解かっているのに心はいつもそれを拒む。
好きでいる事よりも、好きでいる事をやめる方が
もっと辛いと感じているのか・・・
心。なんて。
そんなものがあるから苦しみ、もがいて
だがそれが無ければ、安らぎを得ることもない。
シンタロー
どうして、あの子は私の事が好きなくせに、
拒絶する言葉しか吐かないのだろう。
憎くてしょうがなくなる。
だけど好きでたまらない。
・・・出口のない迷路を彷徨っている気分だ。
認めたくないのか。自分の気持ちを。
認めたくない、理由は
私のせいか。
考えれば考える程、苛立ちを隠せなくなる。
傷つけたくなる。
大切だと、思っているのに。
抱き締めたい。
抱きたい。
滅茶苦茶に、してやりたい。
こんなに愛しいと想っているのに
壊したいとも願っている自分がいる。
―――――あぁ、そうか。
あの子は、それが怖いから私から逃げるのか・・・
静かに目を閉じる。
熱いものが頬を伝うのが解かった。
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【理想と現実】
あぁ、この顔。
コタローの父親である顔。
きっと幼少の頃は自分好みの美少年だったろうに。
行為の後、乱れたシーツの上で 傍らで眠る父親の顔をまじまじと見つめる。
もし外見が10代そこそこの少年で、中身が今のマジックであったなら
もしかしたら最高かもしれない。
普段なら鬱陶しいと感じるスキンシップも受け入れてしまいそうな気がする。
それどころか、鼻血まで垂らす勢いだ。・・・いや、さすがにそれは無いか。
何を馬鹿な事を考えているんだ、と頭を軽く振る。
すると、後ろから華奢な両腕が生えてきて自身の身体を強く抱き締めた。
そんなに若い子が良いの?
ボーイソプラノが耳元で言葉を紡ぐ。
どくどくと心臓の音が五月蝿い。
相手の唇が触れた耳が、とても熱くて・・・
「どうなの?」
振り向いて息が止まる気がした。驚いて、眼を見開く。
長い睫毛、白い肌。金色の髪、美しい群青色の瞳。
思わず、見とれた。
少しだけ前を肌蹴させた白いシャツから覗く細い首と鎖骨に喉が鳴る。
今 自分がどんな顔をしてるか、解かってる?
まるで獲物を捕らえる前の飢えた狼みたいだよ、シンタロー。
変態・・・と静かに付け加え、少年は目を細めて唇の端を吊り上げる。
その表情に、シンタローは事後だと言うのに自分が興奮していくのが解かった。
既に露わになっている胸に手を置かれる。
そこにあるものを指で挟まれたり、嬲られたり、口で咥えられたりするとたまらなくて
目尻に涙が浮かんだ。感じる。凄く。
「くれぐれも犯罪者にならないようにね、シンちゃん。」
カッとなり、馬鹿を言うな、と大声を上げそうになったが思い留まった。
そんな事をしたら、隣で寝息を立てている男を起こしてしまうかもしれない。
しかし隣で眠っているのはマジックで、じゃあ目の前にいるこの少年は一体誰なのか。
シンタローの心の内を見透かしたように、少年は言った。
僕が誰だろうって?オマエのパパだろう、と。
同じ空間に同じ人間が二人もいるなんて、有り得ない。
しかも、一人は自分好みの美少年。
以前、マジックが言っていた『コタローはパパ似だよ』の言葉が頭の中を過ぎった。
見れば見る程綺麗だとため息を打ちそうになる。
シンタローがぼんやり見惚れていると、マジックと名乗る少年は肩を揺らして笑った。
それにむっとして、シンタローが「何だよ」と口を尖らせるとマジックは素直にゴメン、と謝った。
マジックの両手がシンタローの手首をさらい、ベッドに縫い付ける。
薄い胸板がシンタローの視界を遮った。
オマエがいつも可愛いから今日はちょっとしたサービスだよ、と告げられてしまう。
こんなサービスだったら毎日だって受けたい。シンタローは思った。
肩に顔を埋められた瞬間、名前を呼ぶ。
――――――どんな夢見てるの?
マジックに声をかけられ、目が 覚めた。
半身を起こして自分の顔を眺めている男の顔を、凝視する。
シンタローは全て夢だったのだと気付き、羞恥でかぁーっと顔が赤く染まると同時に
良い所で起こされた事に腹を立て、マジックの足を蹴った。
あぁ、この顔。
コタローの父親である顔。
きっと幼少の頃は自分好みの美少年だったろうに。
行為の後、乱れたシーツの上で 傍らで眠る父親の顔をまじまじと見つめる。
もし外見が10代そこそこの少年で、中身が今のマジックであったなら
もしかしたら最高かもしれない。
普段なら鬱陶しいと感じるスキンシップも受け入れてしまいそうな気がする。
それどころか、鼻血まで垂らす勢いだ。・・・いや、さすがにそれは無いか。
何を馬鹿な事を考えているんだ、と頭を軽く振る。
すると、後ろから華奢な両腕が生えてきて自身の身体を強く抱き締めた。
そんなに若い子が良いの?
ボーイソプラノが耳元で言葉を紡ぐ。
どくどくと心臓の音が五月蝿い。
相手の唇が触れた耳が、とても熱くて・・・
「どうなの?」
振り向いて息が止まる気がした。驚いて、眼を見開く。
長い睫毛、白い肌。金色の髪、美しい群青色の瞳。
思わず、見とれた。
少しだけ前を肌蹴させた白いシャツから覗く細い首と鎖骨に喉が鳴る。
今 自分がどんな顔をしてるか、解かってる?
まるで獲物を捕らえる前の飢えた狼みたいだよ、シンタロー。
変態・・・と静かに付け加え、少年は目を細めて唇の端を吊り上げる。
その表情に、シンタローは事後だと言うのに自分が興奮していくのが解かった。
既に露わになっている胸に手を置かれる。
そこにあるものを指で挟まれたり、嬲られたり、口で咥えられたりするとたまらなくて
目尻に涙が浮かんだ。感じる。凄く。
「くれぐれも犯罪者にならないようにね、シンちゃん。」
カッとなり、馬鹿を言うな、と大声を上げそうになったが思い留まった。
そんな事をしたら、隣で寝息を立てている男を起こしてしまうかもしれない。
しかし隣で眠っているのはマジックで、じゃあ目の前にいるこの少年は一体誰なのか。
シンタローの心の内を見透かしたように、少年は言った。
僕が誰だろうって?オマエのパパだろう、と。
同じ空間に同じ人間が二人もいるなんて、有り得ない。
しかも、一人は自分好みの美少年。
以前、マジックが言っていた『コタローはパパ似だよ』の言葉が頭の中を過ぎった。
見れば見る程綺麗だとため息を打ちそうになる。
シンタローがぼんやり見惚れていると、マジックと名乗る少年は肩を揺らして笑った。
それにむっとして、シンタローが「何だよ」と口を尖らせるとマジックは素直にゴメン、と謝った。
マジックの両手がシンタローの手首をさらい、ベッドに縫い付ける。
薄い胸板がシンタローの視界を遮った。
オマエがいつも可愛いから今日はちょっとしたサービスだよ、と告げられてしまう。
こんなサービスだったら毎日だって受けたい。シンタローは思った。
肩に顔を埋められた瞬間、名前を呼ぶ。
――――――どんな夢見てるの?
マジックに声をかけられ、目が 覚めた。
半身を起こして自分の顔を眺めている男の顔を、凝視する。
シンタローは全て夢だったのだと気付き、羞恥でかぁーっと顔が赤く染まると同時に
良い所で起こされた事に腹を立て、マジックの足を蹴った。
【誰よりも】
他人の気持ちを解かろうとしない奴が、
自分の気持ちを解かって欲しいなんて
都合の良い事言ってんじゃねぇ!!!
シンタローが今朝方私を殴った時に叫んだ台詞だ。
シンタローの言葉と彼の悲痛な声、表情が私の胸を痛めた。
『幸せにしたい』とそう思うことは簡単なのに
どうしてそれを実行に移す事はこんなにも難しいのだろう。
「大丈夫?おとー様。」
隣に座っていたグンちゃんが心配そうに私の顔を覗く。
余程酷い顔をしていたのだろうか。
心配かけて、申し訳ない。せっかくお花見に来ているのにね。
本当は3人で来るはずだったのになぁ。
ごめんね、グンちゃん。と謝るとグンちゃんは‘気にしてないよ’と首を振った。
おとー様は?平気?と聞くので、殴られた方の頬を撫でながら
‘もう全然痛くないよ’と返事をした。
そっちじゃなくて、こっちだよ、とグンちゃんが私の胸に手を当てる。
平気?ともう一度、私に聞いてきた。
・・・あぁ。グンちゃんは、ちっとも馬鹿なんかじゃないなぁ。
私の方がよっぽど馬鹿だ。
有難う、とお礼を言ってコートの内側の胸ポケットにしまっておいた財布を取り出して
1000円札をグンちゃんに渡す。
これで甘酒を二人分買ってきて、とお願いするとグンちゃんは嬉しそうにそれを受け取って
人ごみに消えた。
満開の桜が風が吹くたび揺れて、ひらひらと音もなく花びらを落としてゆく。
―――――まるで雪みたいだ。
このまま私に降り積もって、私を消してくれたら良いのに。
どうしていつも上手に恋ができないのだろう。
ただ愛したくて、愛されたいだけなのに。
近くにあった木に寄りかかってグンちゃんが消えた人ごみの方をずっと眺めていた。
すると、一人、こちらに近付いて来るのが解かった。
それがシンタローだと解かり言葉を失う。
雑音も耳に入らない。
動けないでいると、シンタローは私のすぐ傍まで近寄ってきた。
淡い、桃色の花びらが宙を舞う。
「甘酒。欲しかったんだろ?」
甘酒の入った紙コップを一つ、私に差し出してもう一つの紙コップを自分の口に近づけると
息をふきかけながら中身を飲む。
残りの金は、グンマに渡しちまったから無いぜ。と言った。
受け取れないでいるとシンタローは飲みかけの方のコップの縁を口に咥えて
空いた手で私の手を掴み、私の分の甘酒を渡した。
しっかり、掴めよ。と、私の手に力が入るのを確認して、手を離す。
火傷しないように息をふいて、渡された甘酒を飲んだ。
「あったかいな」
シンタローの言葉に‘そうだね’と頷く。
だけど私は、シンタローと触れた部分の方がずっと暖かいと感じていた。
飲み終わったら、ぎゅっとしても良い?と聞くと
シンタローは「バカ言ってんじゃないよ」と答えた。
***
【鮮やかな】のマジ→ジャンと対になってます。
他人の気持ちを解かろうとしない奴が、
自分の気持ちを解かって欲しいなんて
都合の良い事言ってんじゃねぇ!!!
シンタローが今朝方私を殴った時に叫んだ台詞だ。
シンタローの言葉と彼の悲痛な声、表情が私の胸を痛めた。
『幸せにしたい』とそう思うことは簡単なのに
どうしてそれを実行に移す事はこんなにも難しいのだろう。
「大丈夫?おとー様。」
隣に座っていたグンちゃんが心配そうに私の顔を覗く。
余程酷い顔をしていたのだろうか。
心配かけて、申し訳ない。せっかくお花見に来ているのにね。
本当は3人で来るはずだったのになぁ。
ごめんね、グンちゃん。と謝るとグンちゃんは‘気にしてないよ’と首を振った。
おとー様は?平気?と聞くので、殴られた方の頬を撫でながら
‘もう全然痛くないよ’と返事をした。
そっちじゃなくて、こっちだよ、とグンちゃんが私の胸に手を当てる。
平気?ともう一度、私に聞いてきた。
・・・あぁ。グンちゃんは、ちっとも馬鹿なんかじゃないなぁ。
私の方がよっぽど馬鹿だ。
有難う、とお礼を言ってコートの内側の胸ポケットにしまっておいた財布を取り出して
1000円札をグンちゃんに渡す。
これで甘酒を二人分買ってきて、とお願いするとグンちゃんは嬉しそうにそれを受け取って
人ごみに消えた。
満開の桜が風が吹くたび揺れて、ひらひらと音もなく花びらを落としてゆく。
―――――まるで雪みたいだ。
このまま私に降り積もって、私を消してくれたら良いのに。
どうしていつも上手に恋ができないのだろう。
ただ愛したくて、愛されたいだけなのに。
近くにあった木に寄りかかってグンちゃんが消えた人ごみの方をずっと眺めていた。
すると、一人、こちらに近付いて来るのが解かった。
それがシンタローだと解かり言葉を失う。
雑音も耳に入らない。
動けないでいると、シンタローは私のすぐ傍まで近寄ってきた。
淡い、桃色の花びらが宙を舞う。
「甘酒。欲しかったんだろ?」
甘酒の入った紙コップを一つ、私に差し出してもう一つの紙コップを自分の口に近づけると
息をふきかけながら中身を飲む。
残りの金は、グンマに渡しちまったから無いぜ。と言った。
受け取れないでいるとシンタローは飲みかけの方のコップの縁を口に咥えて
空いた手で私の手を掴み、私の分の甘酒を渡した。
しっかり、掴めよ。と、私の手に力が入るのを確認して、手を離す。
火傷しないように息をふいて、渡された甘酒を飲んだ。
「あったかいな」
シンタローの言葉に‘そうだね’と頷く。
だけど私は、シンタローと触れた部分の方がずっと暖かいと感じていた。
飲み終わったら、ぎゅっとしても良い?と聞くと
シンタローは「バカ言ってんじゃないよ」と答えた。
***
【鮮やかな】のマジ→ジャンと対になってます。
【眠れない】
マジックとシンタローはお互い背を向けてベッドに横たわっていた。
何故こんな事をしているのかと言うと、事は数時間前に遡る。
マジックが、今度の休日に二人きりでピクニックへ行こう!とシンタローに
強請るように持ち掛けた。
シンタローははっきりと、そしてゆっくり‘い・や・だッ’と憎憎しげに答えた。
しつこくお願いをされて、いい加減ウンザリしたシンタローは
だったら、もし、
今夜同じ布団に入って、手を出さない事ができたら一緒に行ってやっても良い。
と一つの条件を立てる。
マジックは即・‘無理’と答えた。
だったら大人しく諦めるんだな、とシンタローはマジックから視線を外し
手元の新聞に目線を移す。
シンタローの素っ気無い態度に落ち込むものの
いいや、諦めてなるものかとマジックはその条件を飲んだ。
そして今に至るわけだが。
マジックはベッドから落ちるぎりぎりまで自分の身体を外側に寄せる。
隣にシンタローが眠っていると思うと、もうそれだけで理性がぐらついた。
シンタローの微かな息遣いが鼓膜を刺激する。
自分が一番愛してる者が傍で無防備な姿を晒しているのにこれで欲情しない男がいるだろうか。
いや、断じているはずがない!と、自分勝手な考えを頭の中で叫んでいた。
しかし今は耐えなければいけないのだ。
そうしなければ、休日にシンタローと二人でお弁当持ってピクニック計画が台無しになるのだから。
しかし暫くして、マジックの中で疑問が生まれた。
自分は、果たして、こんな苦痛に耐えてまでピクニックに行きたいのだろうかと。
ひょっとしたら馬鹿なんじゃないか・・・?とさえ思い始めていた。
それ程彼は極限状態に追いやられていた。
一方、シンタローの方は眠っているかと思いきや、実はちっとも眠ってなどいなかった。
マジックの事だ。一時間ももたず襲ってくるに違いないと思っていたのに
予想に反してマジックは五時間以上自分に手を出さず、しかも寝返りを打つフリをして振り返れば
ベッドに入った時の姿勢のままでいるではないか。
どーいうつもりだこの野郎ッツ!!!と怒鳴ってやりたい気持ちをなんとか押し殺す。
このままでは貴重な休日がアホらしい予定で潰れてしまう、と言う不安よりも
何故同じ布団で、自分が直ぐ隣で寝ているのにも関わらず何もして来ないのだと言う怒りの方が強かった。
絶対に手を出して来ると思っていたからこそあんな条件を出したのだ。
それなのに手を出して来ないと言う事は自分が思っている程この男は自分に惚れていないと言う事なのか。
マジックの背中に殺意を覚える。
今すぐ蹴り飛ばしてベッドから追い出してやりたい気分だった。
少し経って、シンタローは突然思いついたようにマジックの身体に身を寄せると彼の後ろ首に額を押し当てる。
(・・・ちょっと強引すぎただろうか)
それにしても恥ずかしすぎる。大体自分はこーゆー事には慣れていないのだ。
しかしどれだけ待っても何の反応も返って来ないので、ますますシンタローの怒りは増していくばかりだった。
マジックはと言えば、今の接触で鼻から血を垂らして枕を濡らしていた。
まずい。非常に不味い事になった。
枕が濡れて気持ち悪いから起き上がって取り替えたい気持ちもあるが
今起き上がると眠っているシンタローを起こしてしまう。
そうするとせっかく身体が密着しているのに離れなければいけないはめになってしまう。
あぁ、くそ!どうする!!
悩みに悩んだ末、マジックは起き上がって枕を取り替える事にした。
マジックの身体が動いたので、シンタローはぎゅっと目を瞑りながら身構える。
が、来ると思っていたものがちっとも来ないのに焦れて僅かに目を開けるとマジックはそこにいなかった。
怒りで身体が震える。
ベッドから身を起こし、シンタローはマジックに向かって―――――
眼魔砲を、撃った。
「・・・何で、パパ、撃たれちゃったのか聞いても良いかな。」
床に倒れ付しながらマジックはシンタローに問う。
シンタローは、
「さぁな」
と、部屋を出て行った。
何故、まだ何もしていないのにこんな目に合わなければならないのだと彼は泣き喚いたが
よもや、『何もしなかったから』こうなったのだとは夢にも思わないだろう。
マジックとシンタローはお互い背を向けてベッドに横たわっていた。
何故こんな事をしているのかと言うと、事は数時間前に遡る。
マジックが、今度の休日に二人きりでピクニックへ行こう!とシンタローに
強請るように持ち掛けた。
シンタローははっきりと、そしてゆっくり‘い・や・だッ’と憎憎しげに答えた。
しつこくお願いをされて、いい加減ウンザリしたシンタローは
だったら、もし、
今夜同じ布団に入って、手を出さない事ができたら一緒に行ってやっても良い。
と一つの条件を立てる。
マジックは即・‘無理’と答えた。
だったら大人しく諦めるんだな、とシンタローはマジックから視線を外し
手元の新聞に目線を移す。
シンタローの素っ気無い態度に落ち込むものの
いいや、諦めてなるものかとマジックはその条件を飲んだ。
そして今に至るわけだが。
マジックはベッドから落ちるぎりぎりまで自分の身体を外側に寄せる。
隣にシンタローが眠っていると思うと、もうそれだけで理性がぐらついた。
シンタローの微かな息遣いが鼓膜を刺激する。
自分が一番愛してる者が傍で無防備な姿を晒しているのにこれで欲情しない男がいるだろうか。
いや、断じているはずがない!と、自分勝手な考えを頭の中で叫んでいた。
しかし今は耐えなければいけないのだ。
そうしなければ、休日にシンタローと二人でお弁当持ってピクニック計画が台無しになるのだから。
しかし暫くして、マジックの中で疑問が生まれた。
自分は、果たして、こんな苦痛に耐えてまでピクニックに行きたいのだろうかと。
ひょっとしたら馬鹿なんじゃないか・・・?とさえ思い始めていた。
それ程彼は極限状態に追いやられていた。
一方、シンタローの方は眠っているかと思いきや、実はちっとも眠ってなどいなかった。
マジックの事だ。一時間ももたず襲ってくるに違いないと思っていたのに
予想に反してマジックは五時間以上自分に手を出さず、しかも寝返りを打つフリをして振り返れば
ベッドに入った時の姿勢のままでいるではないか。
どーいうつもりだこの野郎ッツ!!!と怒鳴ってやりたい気持ちをなんとか押し殺す。
このままでは貴重な休日がアホらしい予定で潰れてしまう、と言う不安よりも
何故同じ布団で、自分が直ぐ隣で寝ているのにも関わらず何もして来ないのだと言う怒りの方が強かった。
絶対に手を出して来ると思っていたからこそあんな条件を出したのだ。
それなのに手を出して来ないと言う事は自分が思っている程この男は自分に惚れていないと言う事なのか。
マジックの背中に殺意を覚える。
今すぐ蹴り飛ばしてベッドから追い出してやりたい気分だった。
少し経って、シンタローは突然思いついたようにマジックの身体に身を寄せると彼の後ろ首に額を押し当てる。
(・・・ちょっと強引すぎただろうか)
それにしても恥ずかしすぎる。大体自分はこーゆー事には慣れていないのだ。
しかしどれだけ待っても何の反応も返って来ないので、ますますシンタローの怒りは増していくばかりだった。
マジックはと言えば、今の接触で鼻から血を垂らして枕を濡らしていた。
まずい。非常に不味い事になった。
枕が濡れて気持ち悪いから起き上がって取り替えたい気持ちもあるが
今起き上がると眠っているシンタローを起こしてしまう。
そうするとせっかく身体が密着しているのに離れなければいけないはめになってしまう。
あぁ、くそ!どうする!!
悩みに悩んだ末、マジックは起き上がって枕を取り替える事にした。
マジックの身体が動いたので、シンタローはぎゅっと目を瞑りながら身構える。
が、来ると思っていたものがちっとも来ないのに焦れて僅かに目を開けるとマジックはそこにいなかった。
怒りで身体が震える。
ベッドから身を起こし、シンタローはマジックに向かって―――――
眼魔砲を、撃った。
「・・・何で、パパ、撃たれちゃったのか聞いても良いかな。」
床に倒れ付しながらマジックはシンタローに問う。
シンタローは、
「さぁな」
と、部屋を出て行った。
何故、まだ何もしていないのにこんな目に合わなければならないのだと彼は泣き喚いたが
よもや、『何もしなかったから』こうなったのだとは夢にも思わないだろう。
【意外】
SEXよりも、キスの方が好きだ。
シンタローの口から出た台詞に驚き、思わず飲んでいたコーヒーを
ほんの少し吹き出してしまった。
隣に座っている従兄弟を見れば、心ここにあらず、と言った感じで
頬杖をついて直ぐ下の机を眺めていた。
きっとまたマジックと何か揉めたのだろう。
さっき出た一言から言ってそうとしか考えられない。
・・・しかし。SEXよりも、キス・か。
随分ロマンチストなのだな。虚を衝かれた。
どう言った経緯でそんな言葉が出るのか甚だ疑問だが・・・。
試しに何故、キスの方が好きなのかと問い掛けると、
SEXなんて誰とやったって程度の差はあってもそれなりに気持ち良い。
と語った。
「でもキスは違う。」
シンタローははっきりとそう付け加えた。
キスをしてると泣きそうになる事がある、とも。
感情が昂ぶり過ぎて、それが涙になって出てくるのだと
シンタローは言った。
キスの先よりも、キスだけをずっとしていたい。
最後にそんな事を告げて机に顔を突っ伏してしまった。
SEXよりも、キスの方が好きだ。
シンタローの口から出た台詞に驚き、思わず飲んでいたコーヒーを
ほんの少し吹き出してしまった。
隣に座っている従兄弟を見れば、心ここにあらず、と言った感じで
頬杖をついて直ぐ下の机を眺めていた。
きっとまたマジックと何か揉めたのだろう。
さっき出た一言から言ってそうとしか考えられない。
・・・しかし。SEXよりも、キス・か。
随分ロマンチストなのだな。虚を衝かれた。
どう言った経緯でそんな言葉が出るのか甚だ疑問だが・・・。
試しに何故、キスの方が好きなのかと問い掛けると、
SEXなんて誰とやったって程度の差はあってもそれなりに気持ち良い。
と語った。
「でもキスは違う。」
シンタローははっきりとそう付け加えた。
キスをしてると泣きそうになる事がある、とも。
感情が昂ぶり過ぎて、それが涙になって出てくるのだと
シンタローは言った。
キスの先よりも、キスだけをずっとしていたい。
最後にそんな事を告げて机に顔を突っ伏してしまった。