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k
憎みたい  愛したい
 殺したい  愛されたい

 ぶつかり合う言葉
 せめぎ合う心
 そしてメビウスの輪の如くこの身体を駆け巡る

 何が正しくて何が悪いのか
 そんな事は関係が無く
 己がどうしたいか…ただそれだけ…

 「お前の好きにすれば?」

 不意に掛けられた言葉
 顔を上げれば目前にアイツが居て

 「お前にはその権利がある」

 俺の心中等知らぬ筈
 なのにまるで全てを理解している様な言葉
 愛憎どちらが勝るとも解らぬまま目の前の男の首元へと腕を伸ばす

 「キンタロー…」

 触れた手に微動だにせず
 懇願でも同情でもない眼差しを向けてくる
 その態度に苛立ちが募る
 このまま力を込めて全てを終わりにするのは簡単な事だ

 「力を貸せ」

 短く放たれた言葉
 好きにしろと言いながらもまだ未来を作る気の男
 その矛盾さに苛ただしさを押さえる事無く首に触れた指に力をゆっくりと加える
 それでも苦しさからか僅かに眉を潜めただけで身じろぐ事なく言葉を繋げた

 「…青でもなく赤でもなく、俺にしか出来ない方法で良くしていきたい」

 『何を』とも『どんな』とも言わない自分勝手な言葉
 それでも見つめる瞳は熱い決意に溢れていて…
 俺は指を解いて離した

 急に開かれた気管に流れ込む空気にむせ返る男
 何故俺は手を離した?
 情熱にあてられて…いや、違う…

 「コホッ…まあ、何だ。お前の力も必要なんだよ。四の五の言わずに貸せって。その代わり…」

 一旦途切れる言葉
 長い髪を掻き乱し逸らされた視線
 再びソレと合った時には笑みを浮かべていて

 「その代わり、ソレが終わったらこの命だろーと何だろーとお前にやるよ。しょうがねェからな」

 諦めた訳でも無く本当に『仕方が無い』と全てを受け入れた様にふっと零した笑み

 

 唐突に理解した 俺はこの笑顔が見たかったのだと

 

 包み込む様な優しい眼差し 暖かい表情
 それは一瞬で消えてしまったのだけれど…
 その温もりは確実に凍てついていたこの心を溶かして…

 「シンタロー…」

 張り付く喉から無理矢理に出した声は霞んでいる様に感じる
 初めて呼んだかつては自分の
 そして今は半身である相手の名

 「ンだよ、文句でもあるってのかよ?」

 嬉しそうに笑いながら
 でも何処か拗ねた響きを含む声で掛けられた問い
 気がつけば俺自身も笑みを浮かべていて

 「…良いだろう。その時までは俺が全力でサポートしてやる。お前を止める役所が必要だろうしな」
 「待て、止めるって…何でそーなるんだよ」
 「此処は感謝する所だぞ。血の気の多いお前を止める損な役割をしてやるんだ、素直に感謝の意を示しておけ」
 「はーいはいっと。だったらお前無しじゃ困るって言わせる位に頑張ってくれよ」
 「当然だ、俺を誰だと思っている」

 自信はあった
 これから入れなければならないであろう膨大の知識を入れる苦労も
 シンタローとなら平気な気がした

 「…凄ェ自信だな」

 目を丸くして俺を見る半身は次の瞬間に肩を揺らして笑い出す
 俺は何か可笑しな事を言っただろうか…?

 「その調子で頼むぜ、キンタロー」

 気がつけば笑いを収めた半身が俺の肩を軽く叩いていて
 俺の横を通り抜ける表情は大きな何かに立ち向かう不安…
 それを覆い隠すほどに強い意思を露わにしていた

 「行くぞ」

 背中越しに掛けられた短い言葉
 それを当然の如く受け止め後に続く
 その不思議な感覚…決して嫌ではない

 全てを終えた時本当にくれるのだろうか
 お前の命 お前の心
 お前の全てを

 「キンタロー?」

 立ち止まり不思議そうに振り返ったシンタローに何でもないと首を横に振る
 引っ掛かりを覚えた様子の相手はだがそれ以上は聞かずに再び歩き出した

 終わりまで待てるかは解らない
 けれどその時までは共に歩いていけたら…と思う

 シンタローと言う名の長く深い闇の中に見つけた一筋の光のお前と…

 

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k
「黄色い薔薇ァ?」
 総帥室でシンタローの仕事の補佐をしながら何気に聞いた言葉。よほど驚いたのか、突然問われた内容を聞き返す従兄弟。不思議そうに見つめる視線が何となくおかしくて、声を押さえて笑うと従兄弟は俺を一睨みしてすぐに視線を外す。
 「ンだよ…ソレがどうかしたのかヨ、キンタロー。」
 書類に視線を落としたままそっけなく言い放つ言葉も拗ねてると解れば愛しい限りで…それを悟られない様にと、見つめていた視線をごく自然に逸らすと笑いを収めて促されるままに言葉を続ける。
 「いや、高松がよく俺に黄色い薔薇をくれるんだ。赤でもなく白でもなく黄色の薔薇だけを。不思議に思ったからグンマや当人に聞いてみたんだが、教えてくれなくてな。」
 総帥である従兄弟から回って来た決裁済みの書類に印を押すべく印を取ると、その手を止めてシンタローを見て言外に聞き直してみる。
 「バーカ、少しは雑学も頭に入れておけヨ」
 深い溜息と共に吐きだされる言葉。確かに人生経験が少ない俺は雑学もそう詰め込んではいない。だから反論こそはしなかったがやはり少し悔しい。心中が態度に出てしまったのか、相手の瞳に映る呆れた色が深くなった様な気がする。
 「お前、相当大事にされてんのナ。確か…黄色の薔薇は『家族愛』だったと思う。そんで白い薔薇は『死者へ手向ける愛』赤い薔薇が『恋人・伴侶への愛』…花言葉だとそうなるんだ。要するに愛する家族って事で黄色い薔薇を送ってたんじゃねェ?」
 「花言葉…?」
 予想にしなかった返答に俺は驚く反面、恐らく『豆鉄砲を喰らった鳩』とはこの事を言うんだろうなと冷静に思う自分を感じた。
 家族…俺の肉親は居ても家族はもう居ない。そう、どれだけ望んでいても手に入るものでは無い筈の存在。なのに何故此処でその単語が出るのかが不思議で仕方が無い…暫しの間思考を巡らせていると紙が落ちる音が聞こえ、シンタローの方を見遣る。従兄弟は手にしていた書類を机の上に放り出し、呆れた眼差しを隠そうともせず向けていた。
 「お前はルーザー叔父さんの息子だしお互いの立場上言えねーんだろうケド、高松にとっちゃお前は息子同然って事じゃねぇの?血は繋がってなくても親子…か。良かったな、キンタロー」
 「…その台詞をそのままお前に返しても良いか?」
 「五月蝿ェよ。」
 今や家族とは血の繋がり所か存在さえも不安定な目の前の男は短く反論するとそっぽを向いてしまった。その態度が少し切なそうで…
 「シンタロー…」
 呼んでも振り向きもしない従兄弟に机を挟むように近づいて、腕を伸ばして頭を抱える様に己の胸に引き寄せる。吃驚して離れようとするシンタローを抱き締める腕に僅かな力を込めて囁く。
 「ありがとう…俺は幸せだな。俺を一族の一員と認めて貰って、家族と思ってくれる俺も大事な高松が居て」
 そこで一度言葉を止めて、腕の中の人物を見る。高鳴る心臓の音が聞こえやしないかとハラハラしたが、シンタローは至って冷静そうで。軽く落胆の吐息を吐くと瞳を伏せて額に口付けて言葉を続ける。
 「そしてお前が居る…」
 言葉の所為か行動の所為かは判断がつかなかったが、明らかに照れたシンタローは力いっぱい俺を押し退けると一つ咳払いをして放り投げた書類を手に取る。
 「…ホラ、早くやんねーと終わンねーだろ」
 明らかに話題を逸らした相手にそれ以上言うつもりの無かった俺は従う事にして、再び仕事に取り掛かる。

 しばらくして小さな声で聞こえた小さな礼の言葉。僅かに笑みを浮かべたが聞こえない振りをして…

 
 -シンタローを大事に想う気持ちはまだ己の中に秘めておこう
  少なくともこの気持ちに自信が持てるまでは-

 
s
いることの苦しさ、いないことのもどかしさ


 手を伸ばしても届かない場所にいる相手の名を呼ぶが、絶対に振り返らない。
 声は届く距離のはずなのに…。
 何度も何度も名前を呼べば呼ぶほど遠くなっていく。

 
「シンちゃん、シンちゃん!」
 体をゆすられ目を開けると、パジャマにカーディガンを引っ掛けたグンマが覗き込んでいた。
 日付が変わる寸前に帰宅して、ビールを冷蔵庫から出してテレビを見ながら一本あけたところまでしか記憶がない。残っている空の缶ビールの本数も一致している。
 つまり今の時間まで居間のソファの上で寝ていたのだ。
「……オレ寝てたのか」
「うん。怖い夢でも見ていたの?すごくうなされてたよ」
 時計を見ると二時半。
「…覚えてねぇ……」
「とりあえず部屋に戻って寝なよね。風邪引くよ」
「グンマ…」
「なあに、シンちゃん」
「オレ……何か…言っていたか?」
 テレビを切ろうとリモコンを探していたグンマは一瞬動きを止め何か考えたようだったが、すぐに顔を上げて答える。
「何も。あーとかうーとか唸っていたけどね」
 シンタローは確信した。グンマは偶然おきだしてきたのではない。
 自分を心配したのか、もしくはうわごとに気づいて駆けつけてきたのだ。
 
   
 ここ数日酒の助けを借りないと眠りにつけないことが多かった。
 自宅に戻って、父のサイドボードから失敬した極上の酒を部屋で引っ掛けてベッドにもぐりこむが、結局訪れるのは浅くて短い眠りだけ。
 総帥室の横の仮住まいでも同じだった。
 最初はほんの少しだった量が見る見るうちに増えていった。


「シンちゃん?」
 グンマの声に顔を上げると、目が合った。
 寝起きで充血している目の中央で揺らめく不思議な青。
 地上で、青の一族しか持たない不思議な青の瞳。

 その青を見るとどうしても思い出してしまう。

 数ヶ月前に袂を分かった一族の一人を。


「大丈夫だ。部屋に戻って寝るから」
「ん、おやすみ。あまりムリしないでよ」
 
 今ムリをしないでいつする!?
 そういう風に鼓舞してきた結果がこれか。

 次々と報告される戦況の悪化。
 ガンマ団が密かに保有、投資している企業の株価の下落。
 
 ハーレムがたった三人の部下を引き連れ出て行ってから二日も経っていないのに、世界はシンタローに牙をむいた。

『これが世界の評価だ』
 デスクの書類を握り締めた自分に父が淡々と告げた。
『つまりオレはハーレムがいないと…何もできないというのかよ』
『私はそうは思わない。だが、世界はそれを不安要素とみなし、付け込む好機とみなした』
 トーキョーに続きロンドン、ニューヨークでも株の下落は続いているという報告が秘書から新たに告げられた。
『たった四人で何ができるというんだ、あの叔父貴にっ』
 だがそのたった四人が巨大組織のガンマ団を震撼させ、隙あらばという輩を暗躍させた。
『今おまえとハーレムが袂を分かったことを知られるわはいかない。それは分かるよね?』
 ハーレムを追い込んで敵国に駆け込ませさせないように…敵に抱きこませないように…シンタローは秘書に特戦部隊の掃討捕獲作戦を取り下げるように命じるしかなかった。



 子供の頃、たまにハーレムが訪れた時にはグンマと先を争ってかけつけ、その大きな体躯によじ登って遊んでいた。その度に叔父は逃げ出そうとしては子供に追いつかれ、憎まれ口を叩きながらも眼は笑っていて…そして大きな肩に載せてくれた。

…今いるこの居間で。

  
 手放しに同じ道を行くと信じていた自分が甘かった。
 叔父をひれ伏せさせるつもりなどなかったし、色々と教えてもらいたいこともあった。
 どうしてこんなことになったのだろう。
「何故だ…何故オレではダメなんだ」
 再びたったで一人残された居間のソファに沈み込みながら顔を覆う。
 
 未だに自分は叔父を下から見上げている子供で、上から手を差し伸べられるのを待っていたというのか。
 対等の高さで手を差し伸べ握ることができるには…まだまだ高くて……。
 
 
 訪れた眠気にとらわれる前…遠くに去ろうとする大きな背中と黄金の髪が目の奥でちらついて……それに目がくらむと同時にシンタローは眠りの淵に突き落とされた。
 
 







 下の方でいきなりドスンという音がしたので見下ろしてみると、子供がしりもちをついていた。
 黒い髪の五歳くらいの男の子だった。

 前の方から走ってきた者にさえ興味がないというのは…自分は余程重症らしい。
 これが三ヶ月前だったら、相手が子供だろうが老婆だろうが銃に手をやっていたところだったのに。

 走るのに夢中で前を見ていなかった子供は、助け起こさなくても一人で立ち上がり、にまっと笑った。
「おじさん、ごめんなさい」
「おう…」
 ハーレムが怒っていないと分かると、子供はまた慌しく走っていく。あの調子ではまたどっかで誰かにぶつかっているだろうなぁ…と思いつつハーレムはタバコを取り出した。
 黒い髪、黒い瞳の子供はこの界隈では珍しくはない。
 華僑の町では住民のほとんどが黒髪と黒い瞳で、自分のような金髪碧眼の方が珍しい方だ。
 繁華街に向かう道からちょっと入りこんだこの場所に来たのは偶然だった。
 いかにも下町という風情の場所で、夕方の今人の往来は多い。
 大半は家路に着く女子供だ。おかげで自分はあまりにも悪眼立ちしすぎていた。
 道行く者が避けて通る中、ぶつかってきた子供の神経の図太さをこの場合褒めるべきなのだろうか、それとも何も考えていないだけだろうか。

 
「あまりにも無用心ではないですか?」
 一緒についてきていたマーカーはあっさりと子供にぶつかられた自分を呆れているようだった。
「ガンマ団の刺客にしちゃあ抜けすぎだ」
「ですが…もう少し用心してもらいたいものです」
 こんな身になっても着いてきてくれている部下に、煩いだの放っておいてくれだの言う気はなかった。
 
 何故ならさっきの光景に一瞬心を奪われていたのが原因だったから。


 二人の兄の子供たちがまだ幼い頃、たまに実家に戻ると二人して揃っていることが多かった。

 年に一度か二度しかない数日にわたる滞在期間の間、蜂の巣をひっくり返したような騒ぎがチビどもが起きている間ずーっとまとわりついていた。

『さっさと寝ろ。叔父様にも休憩というものをくれ』
 昼寝しようという気のないシンタローとグンマを両側の小脇に抱えて部屋に連れて行けば二人はキャッキャッと声を上げて喜び、ベッドにもぐってもスプリングのきいたマットレスを揺らして遊ぶばかりだった。
 そして急におとなしくなったと思ったら二人して寝ていた。
 戻ってきた兄に、特上の酒を振舞わせながら昼間のことを愚痴ると、子守を押し付けた張本人は『おまえたちの子供のころとなんら変わりないよ』と笑うだけだった。




 その子たちが時代を継ぐ時がが来た、と告げられたのはあの時。

 あの時ルーザーの体を得た青の番人に嫌悪と激しい憎悪を感じながらも手も足もでなかった自分たちの代わりに、硬直していた事態を切り開いたのはグンマの一言だった。

 ああ…思えばあの時からこうなることは分かっていたのかもしれない。
 シンタローという何者でもなかった、そして何者にも化けれる可能性をもった男が再び舞い降りた時…青の運命に囚われる自分たちの時代は終わったのだと。


 それから青の運命は変わりつつある。シンタローたちが変えようとしている。
   だが、自分は?
 
 数年で何が変わる?
 

 歴史の舞台から退場した兄のように見守ることはできない。

 長兄の絶対的な力の抑制はもはやない。次兄への恐怖もない。

 青の一族の宿命に従う必要もない。破壊と狂気の時代は終わったのだ。

 だが、身内に巣くう狂気の歴史と流れ続ける血はそのままだ。
 誰がこの狂気と渇望を制し癒せる?

 自分が自分であるために飛び続けていた翼を捨てどこへ行けというのだ。


「てめぇにゃ無理なんだよ」
 口から出てきた言葉に自分で驚き、目を見張る。
 マーカーの不安そうな目と視線が合い…気にもしていなかったことを口にてごまかす。
「ここいらでおいしい酒ってのはどんなんだ?」
 マーカーからいろいろと種類や味について説明が始まったが、結局ハーレムの耳にはいってすり抜けるだけだった。

 足元の次第に長くなりつつあった影はいつしか周りの闇に溶け込んでいった。

 

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皐月の空に


 ガンマ団本部の中庭の一角で、甲高い子供の声が響いていた。
 通りかかったものは怪訝そうな顔でその一角を見るが、誰がそこにいるのかが分かると納得した顔つきで、彼らのジャマをしないようにそっと立ち去っていく。

 それでもそのうちの何人は足を止めて、彼らがしている作業を物珍しそうに見ていた。


「おにーちゃん、はやくー」
「そうはいってもな、コタロー。ちゃんと結んでおかないと風で飛んでいってしまうんだぞ」
 最近立てられたポールの下で総帥ことシンタローがロープに結んでいるのは、こいのぼりだった。
 絡まらないように尻尾の方を捕まえているグンマまでもが
「シンちゃん、まだなの~?」
 と言ってきたのをシンタローは眉間にしわ寄せて横目でにらんだ。
「グンマおまえまでせかすんじゃねーよ。ちゃんと結んでおかないと…風で飛んでいったりしてこれを無くしたら日本からまた取り寄せるのは大変だなんだぜ」
「あはは、ごめーん。でも早くみたいよねーコタローちゃん」
「うん、ボクも早くみたい!」
 コタローにまで言われたら逆らえないのを分かっていて同意を求めるグンマに、苦笑しながらシンタローは作業に集中しはじめた。

「進んでいるか?」
「キンちゃん」
「キンタローおにいちゃん」
「おせーよ、キンタロー」
 遅れて駆けつけたキンタローに三人から三様の答えが返ってくる。
「遅れてすまない…何か手伝えることがあれば手伝うが」
「手伝って~。もうシンちゃん不器用でさぁ~」
「うるせーぞ、グンマ」
「もう~ケンカするヒマがあったら早くしてよね」
 コタローとグンマに畳み掛けられ、またもや立場がまずくなったシンタローはもはやそれ以上の反論はやめて作業を続けることにした。

「この色はどこに結ぶんだ?」
 緑色のちょっと小ぶりなこいのぼりを手にしたキンタローが尋ねた。
「次に結ぶ青の隣…一番下だ」
 シンタローが今結んでいるのは三つ目の大きな黒い鯉で、そして、後一つ青い小ぶりなこいのぼりが残っている。
「分かった」
 キンタローが緑の鯉を一旦置き、青を取り上げたとき、コタローがシンタローの服のすそをひっぱった。
「どうした、コタロー」
 コタローは申し訳なさそうな顔で兄を見上げ、少しためらった後…
「おにいちゃん、やっぱり一番上の黒い鯉の次にそれで、その後に青い鯉にしたいんだけど…」
 といった。
「どうしてだ?」
「だって…パプワくんはおにーちゃんとぼくの友達でしょ?だったらボクだけの隣って不公平じゃん」
 ああそれでこの緑色のこいのぼりなのか、と兄と従兄は顔を見合わせた。

 今年の端午の節句には、みんなのこいのぼりを揚げようよ~と言ったのはグンマだった。

 そういえば幼いころは、父が母から教わったといってこいのぼりを揚げてくれたっけ…とシンタローも思い出した。
 本来ならそのこいのぼりはグンマのものだったし、キンタローは祝ってくれる父も母もいない。そして…コタローはというと、話にきけば、パプワ島で「男児祭」というお祝いをしてもらったということだったが、当然ながら自分は完全に蚊帳の外だった。
 それにコタローの端午の節句を初めて祝った身内があの叔父だという対抗心も働いて、
「コタローちゃんが眼を覚ましたんだから、今年はこいのぼりを揚げてお祝いしようね」
 というグンマに二つ返事でシンタローは決めた。

 そして、そのことを告げられたコタローは、どうしても五つほしい、といい、カタログにあった緑色を真っ先に指差した。

 
 健やかに育ってほしい、元気でいてほしいと思う気持ちはあの子供に対しても同じだ。
 

 
 シンタローはコタローの黄金色の頭に手をやり、にっこりと笑った。
「いいよ。コタロー。オレとおまえの間にアイツを入れような」
「ありがとう、おにいちゃん!」
 すまなさそうにしていたコタローの顔が一瞬にしてほころび、それにつられて兄たちも笑顔を浮かべる。

「そうと決まればさっさとやっちまおうぜ。コタローおまえはこっちを押さえてくれ。グンマはキンタローを手伝ってくれ」
 シンタローは二番目の鯉のヒモをもう一度ときにかかった。
「うん、分かった」
「オッケー、シンちゃん」

 みんなで力をあわせたおかげで、こいのぼりはあれよあれよという間にロープにくくられた。
「さあてと…揚げるぞ」
「うん」
 シンタローとコタローが二人でロープを引いていくと、カラカラという滑車の音と共に五つの鯉が上っていく。

「これでよし」
 シンタローがロープを固定したとき、タイミングよく海からの風が吹き上げてきて、風を孕んだ五つの鯉は力強く泳ぎ始めた。



 
 忙しい兄と従兄は、鯉のぼりが無事に泳ぎだしたのを確認すると、それぞれの仕事に戻っていった。

 だが、コタローは一人残されても特に寂しいとも残念だとも思わなかった。
 青い空にはためく鯉を眺めるのは不思議と飽きなかった。

 それからどれ位の時間が経っただろうか…。
 不意に名を呼ばれて声のした方を見ると、父が立っていた。
 
「無事に立ったようだね」
 コタローは父に鯉のぼりを立てる時のことを身振り手振りを交えて話し始めた。
 鯉の結ぶ位置のバランスがおかしくて何度も結びなおしたこと。
 結んでいる途中で風が吹いて尻尾があっちにいってこっちにいってして絡まりそうだったと。
 父は穏やかな笑みを浮かべてコタローの話に耳を傾けていた。
 そして、ひとしきり話終わったコタローは、父をじっと見上げた。
「ん?どうしたんだ?」
「あのね、お父さん」
「なんだい?」
「肩に載せて」
 高いところで見たいんだ、とコタローが言うと、マジックは頷き身をかがめ、コタローは大きな肩に腰を下ろす。
 一瞬視界が揺れたかと思うと、視線が一気に高くなった。

「すごーい」
 コタローは空に向って手を伸ばした。鯉を捕ろうとしているかのようなしぐさにも見えたが、空がどれだけ近くなったか図って確かめているようにも見えた。
「すごく高いよ、父さん」
 肩に乗せてやる年頃はもう過ぎたと思っていた息子の見せたあどけない仕草に父の手に力が篭る。
「あのもう一つの鯉はあの子の分だって?」
「そう」
 父の問いにコタローは答えた。
「パプワ君にもずーっとずーっと元気でいてもらいたいから」


 この空が彼のいる空に続いていないのは分かっているけど…だけどこのみんなの思いはきっと伝わるとおもう、と、どこまでも晴れ渡る空をもう一度見上げたコタローは思った。

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「あんまりここにはいなかったと思っていたんだけど、こうしてみると結構あるね」
 マジック一家の居住区に引っ越す荷物を作りながらグンマは言った。
「そうだな」
 引越しを手伝ってくれているのは、グンマと入れ替わりにここで暮らすことになっているキンタロー。
 ここは本来はルーザーが結婚したときに作った彼の家族の為の住まいだった。
 だが、ルーザーがここで妻と過ごしたのは一年にも満たない短い間で、その妻のも亡くなり、残された唯一の『家族』は高松のところに居ついてしまった。

 グンマが成人したときに正式に譲られはしたが…結局彼は高松やラボの周囲でばかり過ごしていて、彼の子供のころからの発明品や使わなくなったものが高松のところからもってこられて留守番をしているだけの家となっていた。
 
 今日の引越しの主役はまさにそれらだった。

 高松曰くの『グンマ様の歩み』こと、彼が発明したものは一応整理されてはいるがその数はかなりのもので、荷造りするグンマが『あ、これは○才の時に作ったやつー』と懐かしがっては手を止めるため、はかどらず、
「グンマ、それは向こうで荷解きするときにしてくれないか?」
「あ、ごめーん、キンちゃん」
 というやり取りを何度か繰り返し、ようやく荷造りが終わった。
 
「ふぅ~これで終わりかな」
「そうみたいだな」
 積み重ねられたダンボールの山を前に、二人は汗をぬぐった。
「ねぇ、キンちゃん。上に持っていく前にさ、一休みしない?」
 『キンちゃん』という呼び方ももうすんなりと口から出て行く。
 最初の時こそ『ボクのイトコはシンちゃんだけだ』と言い張っていたが、あの島から帰ってからは、キンタローがいない生活というものが想像つかないくらいに、この新しいイトコは大切な存在になっていた。
「そうだな。冷蔵庫に何かあったか?」
「ジュースがあるけど、それでいい?」
 グンマの提案にキンタローが同意しようとした時だった。
 玄関のロックが解かれる音がし、聞きなれた足音がこちらに向ってきた。
「おーい、まだ終わってねぇのか?」
 そういいながら入ってきたのはシンタロー。
「荷造りは終わったよ。今からちょっと一休みしようって言ってたところ」
 と、グンマが説明をする。
「そう…ってなんだよ、このダンボールの山はっ!」
 シンタローは片隅に積まれている山を見て叫んだ。
「おめー一人でなんでこんなに荷物があんだ?」
「それはボクが今までに発明したものとか、高松のところに入りきらなかったから置いてた分なんだって」
「おめーうちにゴミとガラクタを持ち込むつもりかっ!」
「ゴミやガラクタじゃないよ~。ボクが発明したモノだって!」
「それをゴミといわずしてだな……大体うちにそんなの置くスペースないって!」
「叔父さま二人が自分たちの部屋使っていいって開けてくれたのにないわけないじゃん」
「いくら叔父さんたちでもゴミを置くためにそう言ってくれたんじゃないんだぞ」
「だからゴミじゃない~って~」
「いい加減にしてくれ」

 いつまでも平行線の上を走る会話にピリオドを打ったのは、二人の間に割って入ったキンタローだった。

「とりあえず休憩にしよう。オレもグンマもシンタローも引越しの仕度で忙しく疲れている、だから一緒に休憩でいいだろ?」
「ああ…」
「キンちゃんがそういうなら…」
 不毛なケンカをしていた二人はおとなしくキッチンへ入っていった。

 …が、キッチンのあちこちにあるお菓子やジュース類を見たシンタローから驚きと不機嫌オーラが立ち上り始めた。

「オイ…この菓子もまさか持っていくつもりじゃないだろな?」
 大量のチョコやキャンディー、マシュマロ、クッキー。ここは本当に一人暮らしの家なのか?と思うくらいに山と積まれた一角からそのうちの一箱を取り出しながら、グンマが答えた。
「そうだよ~、キンちゃん、いるものがあるなら置いておくけど?」
 キンタローはどうしたらいいかという顔をし、言い合いをするよりも脱力が先にきたシンタローは力なくキッチンの椅子に腰掛ける。
 そして、冷蔵庫の中からアップルジュースを取り出し氷を入れたグラスに注いでいるキンタローの方を向いて言った。
「キンタロー、おまえ、いっそのことうちにきたらどうだ?グンマが引越ししてくるよりもずーっと楽だぞ」
「シンちゃんひどっ」
 グンマの抗議に、シンタローはちょっと意地の悪い顔をして、ニヤニヤと笑いながらグンマに向き直る。
「身一つのキンタローがうちに来るほうがずーっと早いって。うちにゴミも溢れないし…言うことなしだぜ」
「そんなことは言わないでくれるか」
 人数分のグラスを持って横に立ったキンタローの思いがけないきつい口調に、二人はハッとして彼を見た。
 シンタローの目の前に手荒に置かれたグラスからアップルジュースが零れ、テーブルクロスに染みを作る。
「ど、どうしたの、キンちゃん…」
 いつになく険しい顔のキンタローに、おそるおそるグンマが尋ねた。
「グンマにここにいろというのなら、オレは出て行く」
 テーブルに置かれ、握り締められたキンタローの手は堅く握り締められている。
「お、落ち着けよ。キンタロー」
 なんとか落ち着かせなければ、と、「キレた」状態のキンタローのことを痛いほど知っているシンタローは、キンタローの手をとって座らせようとした。
 キンタロー口がわななく。

「グ…グンマが引っ越してくるのをマジック伯父貴も楽しみにしてるんだ。
 グンマが家族みんなと住めるって喜んでいた。それをジャマするくらいならオレはどこにもいかないし、ここにもいない」
 自分の中で渦巻く感情をそのままこの二人に出すわけではない、ということは理解できていた。爆発的な感情にしないように、だが、言うべきことは言わなければという内側の葛藤を…残念ながら今の彼には、顔に出さずに済ませることはできなかった。
 突然のキンタローの発言に、二人は慌てた。
「…ちょっと…キンちゃん待ってよ!シンちゃんそう意味で言ったんじゃないんだって」
 というグンマに続いて、突然のことに動きを止めていたシンタローも釈明を始める。
「落ち着けよ、キンタロー。あれは冗談だって!」
「冗談?」
 一気に気抜けした聞き返しに、シンタローとグンマは何度も頷いた。
「あれは冗談だったのか?オレはてっきり…シンタローがあの荷物見てあんまりにも怒っているから…」
 そんなにオレ怒っていたか?とシンタローは思わずグンマに訊いた。
 グンマも苦笑して、ボクはシンちゃんは本気で言っていると思ってなかったよ、と言った。
「そりゃ、グンマの為に部屋を空けるのに朝から掃除してやっと片付いたってときにあんなの見せられてちとムッときたけどさ…グンマに来て欲しくないなんてこれっぽっちも思ってねぇよ…」
 二人が本気でなかったとわかって安心したキンタローは、ようやく残りのグラスをテーブルに置き、椅子にかけた。
「だからね。安心してよ」
 グンマは箱から出したクッキーを載せた皿を三人の中間の位置に置いた。

 チョコチップのたっぷりと入ったクッキーはいかにもグンマの好みだったが、意外にも甘さは上品で、次々に三人の手が伸びていく中、シンタローは言う。
「だけどおまえ本当に大丈夫なのか?暫くは上でオヤジやグンマと暮らして、自分一人でできるって自信がついたらここで暮らしたらいいじゃないか」
 一気に何もかもすすめるのはこの場合どうだろう、という懸念はシンタローだけでなくマジックも言っていた。
 父との対立そして死を乗り越え、精神的に安定してきたとはいえ、このまま一人にしてもいいものだろうかという不安はある。

 キンタローは暫くグラスの中の残り少なくなったジュースと氷をかき混ぜていたが、顔を上げるとはっきりとした口調で言った。
  
「おまえたちの気持ちは嬉しいが…ここはオレがおまえでなくなる最初の場所だとおもってるんだ」
 シンタローは首をかしげる。
「…何言ってんのかわかんねぇ」
「何て言ったらいいんだろうか…おまえはここで暮らしたことはないだろう?それを始めにするってことは……」
「つまりキンちゃんが一人でする初めてのことって…言いたいんだよね」
 ああ…そういうことか。
 おまえがしたことないからするんだ、というと子供の主張とは違う。
 シンタローはシンタローであって、キンタローはキンタローだ、というのは易い。
 
 いないものとされていたいたキンタローが、空白の部分を埋めて行きたいとあせる気持ちと「キンタロー」としての部分を確認したい気持ちは、何者でもなかったと突きつけられたシンタローには痛い程に分かるので、こう言うしかなかった。
「まぁ…おまえがそういうなら止めねぇけど…」
「大丈夫だよね、キンちゃん。それに困ったときにはすぐに来れるし」
 考えてみれば直通のエレベーターで数秒の距離だった。
 それが独立というのは笑止かもしれないが、キンタローにとっては大きな一歩であり、全ての始まりなのだろう。
 
 そうか、こういうのを『スープの冷めない距離』っていうのか、とシンタローが納得すると、グンマも『そうそう』という。
 ささやかな、だけど大きな一歩をとめる気持ちはもう誰にもなかった。


「じゃあ、そろそろ荷物を上に持っていこうぜ」
 ジュースもクッキーもなくなったところでシンタローが腰を上げると、グンマが、
「あ、忘れてた!」
 と言って慌てて席を立った。
「オイ、荷造り終わったって言ってたの誰だよ」
「違うの。キンちゃん、本の入ったダンボールはどのあたりにあったっけー?」
「てめぇの恨み言日記ならダストシュートに放り込んどけって言ったろうが」
「本の類は…確か…」
 シンタローの言うことはムシしてキンタローとグンマはダンボールの山を次々と床に下ろしては中を開き始め、シンタローはがっくりと肩を落とした。
 幸い、目的のものはすぐに見つかり、グンマが「あったあった」と言って箱から青い表紙の分厚いアルバムを取り出した。
 表紙に『グンマ様の歩み』と書かれているのを見ると、高松が作ったのだろう。

「アルバムなんかどうすんだ?」
 と、覗き込んだ二人に、グンマは一番最初のページを開いて示す。

 一枚の台紙に一枚だけの写真。
 明らかに普通の印画紙とは違うそれに写っているのは、真っ黒な中、一部だけ扇のように切り取られ、白いものが微かに写っているそれは…。
「これはね、お母さんのおなかの中にいるキンちゃんなんだよ」
 へえー!と驚きの声がシンタローから上がり、キンタローも目を見張る。
「この写真っていうか…正確に言うとエコーで撮った子宮内の断層写真なんだけど…。
 これはルーザー叔父様が戦場に行くときに持って行ってたものなんだって」
「父さんが?」
 グンマは頷く。
「ルーザー叔父様のいた激戦区でね、奇跡的に無傷で発見されて…お父様のところに届けられたんだって。それを高松がアルバムに張って残してくれていたんだ」
 この小さな紙切れが残っていた、ということに、二人はそういうこともあるんだ、と驚きを隠せず、互いをみやった。特に戦場の現実を知っているだけにシンタローはどうも納得できなかったのだが、残された病院施設にたまたま置かれていたのが回収されたのだと聞くと納得した。 


「…高松が教えてくれたんだけど、ここのこの影が…キンちゃんだって」
 胎児の形さえもろくにとっていない微かな影を指してグンマは言った。
「これが…オレか」
 キンタローはグンマの指す部分を何度も指先でなぞる。
 父が、まだ見もせぬ自分の『写真』を持っていたという事実が彼の声を詰まらせてしまい、なかなか言葉にならず…暫くして、ようやく顔を上げるとグンマに声をかけた。
 
「グンマ…これ…」
「うん。分かってるよ」
 グンマは、そのつもりだった、といい、それを台紙から剥がし始め、時間をかけて丁寧に台紙から外した。
「キンちゃんのアルバムの1ページ目に貼ってね」
 そして綺麗に外された写真をキンタローに手渡す。
「あ…ああ」
「キンちゃんは、今からいーっぱいいーっぱい思い出を作って、沢山写真もとるんだから。
 アルバム作らなかったら承知しないよ?」
「分かったよ、グンマ」
 キンタローは写真をまるで壊れ物のようにそっと受け取ると、居間のサイドボードに持って行く。
 そこには若い男女二人が並んで写っているフォトスタンドが据えられており、キンタローはその前にグンマから受け取った写真をひとまずおいた。
「ルーザー叔父様に、やっと返すことができたね」
「ああ…」
 シンタローも神妙に相槌を打つが、彼は自分がここにきた本来の目的を思い出し、パンパンと手を打って二人を自分の方に向けさせた。
 
「早いところ済ませちまおう。オヤジが待ちくたびれてるから」
「伯父貴が?」
「引越し祝いっていうか手伝いの礼っていうか…とにかくおまえもメシに招待したいらしいぜ。
 本当いうと、オレ、おまえらがあんまり来ないもんだから、呼びにこらされたんだよな」
「あーゴメンね、シンちゃん。すっかりと遅くなっちゃって」
 キンタローとグンマは慌てて開いた箱の中に物を詰め直し始めた。
「分かってんだったら、さっさと運んだ運んだ」
 シンタローは荷物を軽々と抱えると、スタスタと出口に向う。
 その後に、同じようにダンボールを抱えた二つの影が続き、彼らを待つ者がいる所へと向っていった。


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