「シンちゃん、パパの愛は重い?」
抱きしめながら、マジックが言った。
Contradiction.
何を今更言っているのだろう。
『重い』と言えば、マジックは俺を手放してくれるのだろうか。
そんなこと考えるまでもなく、答えはノーだ。
くっと笑いが漏れた。
「シンちゃん?」
俯いていた顔を、片手で顎を捉えられ上げられる。
覗き込む青い目を見据える。
昔、何度も怖いと思った青い目。
その目から逸らすことなく告げた。
「どんな答えをしても、手放す気なんてないくせに」
「そうだね。
例えシンちゃんが、パパの愛は重いって言ったところで手放せないよ」
ごめんね、と言いながら、マジックは困ったように笑った。
そんな顔で笑わないでほしい。
だから、この男は嫌いなんだ。
いつもいつも矛盾している。
離す気などないくせに、離してほしいかと訊いてくる。
正直に離して欲しいと告げても、それは一度も叶えられたことはない。
いつも『ごめんね』と言いながら、抱きしめキスをして有耶無耶に帰すのだ。
離す気などないなら、最初から聞かなければいい。
期待をさせないで欲しかった。
何度それで傷ついたか、マジックは知っているのだろうか…。
今はもう期待を抱くことなどないけれど、
その代わりにマジックが見せる笑顔を見るのが苦痛になった。
傷ついているのはマジックじゃなくて俺なのに、マジックのほうが傷ついた顔をする。
そしてそんなマジックの顔を見て、俺が傷つくんだ…。
マジックの笑顔から視線を逸らせば、
顎を掴んでいたマジックの手に力が入り、また向き合うようにさせられた。
青いマジックの目には、怯えた俺が映っていた。
そんな自分の姿など見ていたくないから、目を閉じる。
そして、降ってくる優しいキス。
またキスで有耶無耶にされると解っていても、目を開けることはできなかった。
目を開けることが、怖いのかもしれない。
マジックの目に怯えるのでもなく嫌悪するでもない俺が映っていれば、どうしたらいい?
マジックだけが俺を好きなのではなく、
考えたくないだけで、自分もマジックのことが好きだったら?
俺はマジックのキスのせいにして、考えることを放棄しているだけだったら?
そんなことは、あってはならないのに…。
そう思うのに、目が開けられない。
キスで有耶無耶にすると批難しながら、
マジックへの感情を考えることを放棄したいために、俺が有耶無耶にされたいだけなのかもしれない。
――それならば、矛盾しているのはマジックではなく俺だ。
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